日本人は特に、「限定物」に弱いと言われている。「限定30品」とか、「20名様限定で」等といった掲示やアナウンスが在ると、衝動的に其れを購入してしまい、後になって「何で、こんな物を購入してしまったのだろう・・・。」と反省したりも。
「日本にて、今回の様に広範囲で見られるのは932年振り。今回を逃せば、日本にて同様の規模で見られるのは、300年後の2312年4月8日。」というのが、昨日早朝の金環日食(太陽と地球の間を月が横切り、中心部を隠された太陽がリング状に見える天文現象。)の“前宣伝”だった。932年前と言えば1080年で、日本では平安時代に当たる。「一世代」を「30年」とするならば、約32世代前という事になるのだから、正に“long long ago”だ。其れからすると短いけれど、「300年後」というのも相当な年月。
「限定物」に弱い自分としては、「今回を見逃すと死ぬ迄、生では見られない。」と言われているに等しい前宣伝を見聞すると、天文に然して詳しい訳でも無いが、金環日食を見ない訳にはいかなかった。
金環日食が見られると言われていた時間より30分程前、曇り空から雨粒が落ちて来た。「折角の金環日食も、此の曇り空では見られそうにも無いなあ。」と落胆するも、徐々に天気は回復。10分程前には雲間から太陽が顔を覗かし、見事に金環日食を見る事が出来た。金環日食の仕組みは頭で理解しているものの、実際に眼前にすると理屈抜きに感動。又、周りで数多の人間が上空、其れも同じ方向を見上げ、「おーっ!」と大歓声を上げている光景を目にするのも、或る意味感動的だった。
「太陽神で在る天照大神が、天岩戸に隠れてしまった事で、世界が真っ暗になってしまった。」という神話は、「日食を指しているのではないか?」という説も在るが、記録として残る「日本最古の日食」は628年の事とか。日本書紀に推古天皇の崩御直前の記述として「日有蝕尽之」というのが在り、「太陽が蝕み尽くされた。」という意味。
記録として残る「日本最古の金環日食」となると、平安時代の歴史書「日本三代実録」に873年の現象として記されているのだとか。
又、平安末期の1183年には、源氏と平氏が岡山県倉敷市で戦った「水島の戦い」の最中に金環日食が起き、日食を知らなかった源氏がパニック状態に陥る一方で、「公家として『暦』を作る仕事に従事し、日食を予測する知識が在ったと思われる。」平氏は優位に戦え、結果として勝利を収めたという話も在る。
「ドラえもん」に、「ハリーのしっぽ」という作品が在る。「1910年にハレー彗星が地球に接近した際、『一時的に、地球から空気が奪われてしまう。』とのデマが飛び交い、『空気が無くなっている間、中に蓄えられた空気を吸って生き延びよう。』と考える人達が自転車のタイヤのチューブ等を争って買い求めた。」という話を基にした内容。現代人からすれば「馬鹿な事を。」と一笑に付してしまう出来事だけれど、其れは科学の発展によって、我々は“或る程度の”事を知っているからで在り、当時の人達を馬鹿には出来ない。
嘗て「日食」を、「凶事の前触れ」として恐れていた時代が在ったと言う。古の人々が不可思議な自然現象に触れ、畏怖の念や畏敬の念を抱いたりしたとしても、何等不思議な事では無いだろう。
小学生の時、部分日食が半年後に見られるという話を年の瀬に聞いて、当日の晴れを祈願する文章を絵馬に書き、当日は、前の学年の授業で配られた遮光版をひっぱり出してきて観察したというのに、こんな一歩引いた大人になってしまうとは。食べ物の限定品には弱いくせに(笑)
時代劇「遠山の金さん」の中に、天保年間の日食を取り上げた回があります。天文学者の生涯を描く伝記作品以外で日食を取り上げたのはかなり珍しいのではないかと。日食が起こるとの予報を天文方から聞いた幕閣の面々が話し合うシーンや江戸市中がパニックになるシーンがあったと記憶しています。幕末に近く、異国の文物や学問もどんどん流入してくるようになった時期とはいえ、庶民にとっては恐ろしいものだったでしょうね。しかし、どういう展開で桜吹雪を見せつけたのかは覚えていません
水島の合戦における金環食の話は今年の大河でも出てくるでしょうか。
根がミーハーなものですから、金環日食は是が非でも生で見ようと思っていました。観測日が近付くに連れ、観測グッズの便乗値上げ&品切れが予想されたので、2ヶ月位前に書店で最安値の商品(確か300円一寸だったかと。)を購入し、昨日に備えていた次第。
唯、仰る様に雲が良い塩梅で出ていた為、裸眼でも綺麗に見られましたが、雲が切れると急に日光が強くなり、観測グッズは必要不可欠だったと思います。
天文学に纏わる話が時代劇で取り上げれるのは、確かに珍しいかも。其れだけに、天文暦学者・渋川春海を主人公に据えた小説「天地明察」(http://blog.goo.ne.jp/giants-55/e/d66990753aa628c003de523a8c939e0e)は興味深かったし、凄く面白かったです。
金環日食が起こった今年だからこそ、又、視聴率的に苦戦している状況だからこそ、話題作りの意味からも、「平清盛」で水島の合戦が描かれるのではないかと踏んでおります。