或るイヴェントに行って来た。会場内は多くの屋台が設置され、幾つかの催し物が行われていた。過去に3度行った事の在るイヴェントだが、楽しみの1つが蜜柑の摑み取り。開始時間の30分前から整理券を配り始め、100人限定で参加出来る。参加費は1人100円で、全額募金に回される。
蜜柑の摑み取りと言っても、衛生面や掴んだ事による傷みを考慮し、直接蜜柑を摑み取りするスタイルでは無い。中が覗き“辛い”箱に4種類のカラー・ボールが入っており、中に手を突っ込んで1個を取る。色によって貰える蜜柑の数が決まっているという形で、「黄色:4個、緑色:6個、青色:8個、ピンク色:もう2回ボールが取れる」となっている。最初にピンク色を取れば、其のピンク色のボールを取り除いた上で、更に2個ボールが取れるのだが、次に取り出したボールは又箱に戻し、もう1個取る事になる。詰まり、1人が貰える蜜柑の数は最低で4個(黄色)、最大で16個(青色+青色)という事だ。
自分の順番は最後の方だったので、ずっと見ていたのだが、「世の中には、色んな人が居るなあ。」と改めて感じさせられた。
整理券を配り終えた後、スタッフが掲げる「蜜柑の摑み取りの整理券は、全て配り終えました。」と書かれた看板を見て、「もう整理券配り終えちゃったんだー。残念。」と、苦笑いして去って行く人が何人か居た。まあ、此れは“普通の反応”だろう。だが、開始時間の頃にのこのこ来た婆さんは、非常に“異質な反応”だった。看板を掲げるスタッフに「参加したいんだけど。」と言い、「申し訳在りませんが、もう整理券を配り終えてしまったので、参加は出来ないんですよ。」と言われると、「何故、参加出来ないのだ。」とか「おかしいじゃないか。」とかと、延々と食って掛かっていた。時間にして5分近く、彼女は執拗に文句を言い続け、其の間、「申し訳在りません。」と謝罪し捲るスタッフ。彼女が持参していた散らしには「〇時〇分(開始時間の30分前)から、100人限定で整理券を配布します。整理券が無ければ、参加出来ません。」という旨が記されていたし、場内にはそういう掲示もされていた。言っちゃ悪いが、高が蜜柑の摑み取りで、そんなにも文句を言い捲るというのは、非常にみっともなく感じたし、そんなのを相手にしなければならないスタッフが気の毒だった。
で、4種類のボールが入った箱は「中が覗き“辛い”」様になっていると上記した様に、作りが非常に“甘い”事から、手を突っ込む際に箱の中をチラッと見様と思えば、ボールの位置が確認出来なくも無い様だった。だから、参加者は大きく分けると、3つのタイプに分かれていた。
年輩の人に多かったのは、「私は絶対にインチキなんかしません!」という意識が強いので在ろう人。箱に手を突っ込む前から顔を不自然な程に横にし、そして手を突っ込む。見ていて、潔さを感じた。(中をチラ見したい気持ちは在ったけれど、インチキと思われるのは不本意なので、自分は此の形で臨んだ。籤運の無い人間なので、「どうせ黄色だろうな。」と思ってボールを取り出すと、何とピンク色のボール。続けて取り出した2つは緑色と青色のボールで、合計14個もの蜜柑を貰える事に。)
一番多かったのは「箱に手を突っ込む前、そして突っ込む際、チラッと箱の中に視線を向ける人。」で、感覚的に言えば全体の6割位か。「中が覗けそうだな。でも、露骨に覗いているのがばれてしまうと、“藤木君の様な卑怯者”と思われてしまう。」という思いが在るのだろう。
で、非常に少数派だったのは「露骨に中を見様とする人。」で、本人は「誰も気付かないだろう。」と“自然な感じ”で視線を箱の中に注いでいるのだろうが、周りからすると余りにも露骨さを感じてしまうレヴェル。100%近い確率でピンク色のボールを取り出すも、流石に気付いたスタッフから「中を見ないで下さいね。」と注意され、恥ずかしそうに横を向いて2つボールを取り出していた。
面白かったのは、2~3歳の子供がボールを取る時。(彼等からすると)高い位置に箱が置かれているので、大人が抱っこして取る事になる。顔が取り口に大接近するので、当然、中が完全に覗ける。中には、頭が完全に箱の中に突っ込んでしまった子も。でも、全ての子がピンク色のボールを取り出さなかった。絶対に見えているのに、取り出さない。(貰える蜜柑の数が一番少ない)黄色のボールを取り出す子も何人か居たりと、大人の様な“計算高さ”の無い純粋さが感じられ、とても微笑ましい気持ちに。