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中西安奈(なかにし あんな)は、自分にそっくりな女性を町で見掛けた。其れが、奇怪な出来事の始まりだった。後日、捜し人の散らしが届き、其処には、安奈と瓜二つの顔が描かれていた。掲載の電話番号に掛けると繋がったのは・・・。
羽生さつき(はにゅう さつき)は養護施設で育ち、謎の援助者“足長仮面”の御蔭で、今迄暮らして来た。突如、施設に不穏な散らしが届く。其処には、さつきと瓜二つの女性の願が描かれていて・・・。
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折原一氏の小説「双生児」。折原氏と言えば、叙述トリックを十八番とする作家。叙述トリックとは、「人物や時間等の記述を意図的に暈す事で、読み手をミスリードさせる手法。」で在る。
「日の本探偵社」50歳前後の女性が訪れ、「半年程前から行方不明となった娘を捜して欲しい。」と依頼する。彼女は若い女の写真と、「此の女性を見掛けたら、下記に連絡して下さい。謝礼進呈。」とだけ印刷された散らしを渡すだけで、其の他の情報は一切教えなかった。自分の素性すらもだ。
行方不明となった女性を捜す探偵。そして、其の女性と瓜二つの顔を持つ2人の女性。彼女達は一体、どういう関係なのか?
「時間をミスリードさせる為、登場人物達が矢鱈と意識を失う。」というのが折原作品の特徴の1つで、余りの多用にウンザリさせられる事が。今回の作品では、珍しく其の手法が多用されていないけれど、状況を追う“視点人物”がコロコロ変わり、中には正体不明の人物が出て来たりするものだから、頭の整理が逐一必要。叙述トリックの性とは言え、そういう厄介さが苦手な人には、御薦め出来ない作品だろう。
厄介では在るのだけれど、「そういう事だったのか!」という驚き&完璧に騙された爽快感が折原作品の魅力。でも、今回の作品に関しては、読み終えた後に、そういう感覚は残らない。「無理な結論に持って行く為に、無理な筋立てを作り上げた。」という感じがするので。
総合評価は、星2つとする。