落語家の林家木久扇氏が現在、東京新聞(夕刊)の連載コラム「この道」で、半生を綴られている。毎回面白い内容なのだが、6月14日は「所変われば品変わる」という諺を改めて感じさせられる話が載っていた。
今でこそ関連本が多く刊行される等、ラーメンは幅広い人気を持つ食べ物となっているが、ラーメン人気が高まり始めた頃の1982年、木久扇(当時は木久蔵)氏と横山やすし氏が「全国ラーメン党」を結成した。以降、国内外に全国ラーメン党の店舗を展開。最盛期には27店舗を数えたと言う。
1989年10月、夏季オリンピック開催に向かうスペインのバルセロナに、全国ラーメン党の店舗がオープンした。当時は1992年のバルセロナ・オリンピック、セヴィリア万博、コロンブス500年祭、そしてEUが発足の見込みと、4大イヴェントで沸くスペインは、経済的な大躍進を期待されており、其れを狙っての出店。オープン初日、多くの来賓で店は一杯となり、用意した食事は全て無くなったのだが・・・。
*********************************
さて商売をはじめてみるとリスクはたくさん噴出。水道水が硬水で、うまく麺がゆでられない、ワインを提供するのでアルコール販売の許可がいる。開店は昼12時だがシエスタ(昼寝)の習慣があるので客が来ない。猫舌の民族らしく熱いラーメンをさまして1杯2時間くらいかけて食べるから客足の回転が悪い。プライドが高いので相席はしない。
柔道も教えている佐藤さんの紹介で、弟子のアントニオ・トニー(19歳)が来日し、東京・代々木店で3ヶ月間の研修を終え帰国。ところが当時のスペインには徴兵制度があり、軍隊にとられてしまった。スープのとり方、麺のゆで方、餃子の焼き方まで教えたのに・・・あぁ。
*********************************
「事前のリサーチが足りなかった。」と言われれば其れ迄だが、異国でビジネスを始める際には、文化や風習等の違いから、当惑させられる事は多い。
自分も以前、海外で幾つかの拠点の立ち上げに従事した際、当惑させられた事が何度も在る。特にイスラーム圏では、“宗教に関する縛り”に辟易とさせられた。「従業員に、ハラール食を用意しなければいけない。」や「ラマダーン(断食)間は、生産性が大幅ダウン。」の他、「配偶者の居る女性と、配偶者以外の男性が2人きりになる状況は厳禁。(実際問題、秘書だった配偶者が居る女性を。男性の同僚が善意から車で家迄送り届けた所、「車内で2人きりだった。」という事で、大問題になった事が在った。)」なんていうのも在ったし。