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「イチロー『ローズが喜んでいれば全然違うが・・・。』」(6月16日、読売新聞)
初回は、しぶとく足で稼いだ内野安打、9回は右翼線への2塁打で、イチローはピート・ローズ氏を抜き去った。
「そんなに大きな事という感じは、全くしていない。」と言う。米国内で日米通算の記録を認めない声が在る事も知っている。だから、「ピート・ローズが喜んでくれていれば、全然違う。でも、そうじゃ無いって聞いているので。だから、僕も興味が無いっていうか。何時かアメリカだけで、ローズを抜く選手が出て来て欲しい。」。
42歳。マリナーズでは不動のレギュラーだったが、2012年に移籍したヤンキースでは出場機会が減り、マーリンズでも立場は「第4の外野手」。「去年迄の3年間は、一寸きつかった。明らかにリズムが変わった時期だった。」と明かす。だが今季は、そんな環境にも適応して、好調を維持。代打の1打席のみの出場も多い中で、6月は14試合で16安打を放ち、一気にローズ氏を超えた。
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村長様が御自身の記事「ローズがローズを・・・」の中で触れられている様に、ピート・ローズ氏はイチロー選手の記録に付いて、「メジャー・リーグ・ベースボール(MLB)よりもレヴェルが低い日本野球機構(NPB)での記録を加え、日米通算でどうこう言うのはおかしい。」という趣旨の発言をしている。
日本人の1人として自分も面白く無い発言と感じるが、「立場を変えた場合、自分達も似た様な言動をしている事が在るなあ。」と思ったりもする。アメリカを“上”として認識する一方で、同じアジアの国々を“下”と認識する。」事が、無意識の内に在ったりするからだ。
例えば「NPBで300本の安打を放ち、其の後に韓国プロ野球や台湾プロ野球等、MLB以外のプロ野球で1,700本の安打を放ったとしても、『通算で2千本安打と言っても、NPBとはレヴェルが違い過ぎる。だから、通算2千本安打とは認められない。』と主張する人は少なく無いだろうし、特に当該選手が日本人で無ければ一層だろう。
此の手の「レヴェルが違うのだから、記録として認めるのはどうか。」という主張は、何時の時代にも在る物だ。古くは1977年、通算ホームラン数としては当時世界記録だった「ハンク・アーロン氏の755本」を、王貞治選手が抜き去った際も、「アメリカよりも日本の投手はレヴェルが低いし、球場の大きさ自体も狭いので、世界記録とは認められない。」という声が結構在ったし。
考え方は色々在ろうが、記録を“全く同じ状況”で判断するというのは、抑が無理だと思っている。NPBに限っても、“今”と“昔”とでは、選手の能力や道具の質の差、球場の大きさ、ルールの違い等々、異なる要素が一杯在るから。極端に言ってしまえば、天候の差が与える影響だって在るし。
イチロー選手がプロ入りしてからの過去24年間の安打記録を見ると、「NPB(9年間):1,278安打、MLB(15年間):2,935安打」となっている。「NPBでは平均142.0安打/年、MLBでは195.6安打/年」放っている計算だ。詰まり、ローズ氏が言う「レヴェルが低いNPBよりも、レヴェルが高いMLBでの方が、通算安打数も年間の平均安打数も上回っている。」のだ。“たられば”を言っても無意味だが、MLBでの年間平均安打数を基準にすれば、イチロー選手が最初からMLBに在籍していた場合、昨年迄の24年間で「約4、696安打」を達成している事になる。疾っくにローズ氏の記録「4,256安打」を超えている訳だ。
イチロー選手がMLBで安打記録を次々と更新していた際、張本勲氏が「イチロー選手の場合は日米通算だが、私は日本だけで達成した。年間の試合数も彼の方が多いし、意味合いが違う。」という趣旨の発言をしていた。子供染みた発言では在るが、同時に「自身の記録に対し、強い誇りを持っているのだろうな。」という思いも在った。
ローズ氏の一連の発言も、自身が積み重ねて来た記録への強い誇りというのが在るのだろうし、其れは其れで理解出来るのだが、イチロー選手の記録に付いては、「凄い!」の一言だけで良いと思う。イチロー選手が追い抜いたとはいえ、ローズ氏の記録が低く見られるべき物では無いのだから。
何度か書いた事だけれど、「周りの目を非常に意識した、ナルシシズム溢れる言動が鼻に付く。」という理由から、イチロー選手は余り好きでは無い。(嫌いという事では無いが。)でも、今回の記録は「凄い!」の一言だし、又、ローズ氏やMLBのファンに配慮した今回のコメントは「大人だなあ。」と感心する。
イチロー選手、おめでとう!
私もイチロー選手はあまり好きじゃないですが、今回のことについては、昨今日本の選手に限らず、日本のプロ野球で活躍している選手は、アメリカ大リーグでも活躍しているし、アメリカで通用しなくなった選手は、日本でも通用しなくなっているので、レベルの差はあんまりないように感じていましたから、ピート・ローズさんの、マイナーリーグとプロ野球を同レベルにみなすような発言にはがっかりしていました。
でも、彼はプライドの高い人なんでしょうし、その意味でイチロー選手と共通するものがありますね。
以前書いたのですが、自分がイチロー選手の事を初めて知ったのは、観戦しに行ったジュニアオールスター戦でした。当時は「鈴木一朗」という登録名だった彼が、同試合で大活躍し、MVPを獲得。一緒に観戦した友人に「凄い選手だなあ。」と言った所、「確かに凄いね。でも、名前が地味だから、意外とぱっとしない選手で終わったりしてね。」と冗談めかして返され、「確かにそうかも。」と言った物。全く見る目が無かった訳です。
イチロー選手としてブレークし始めた頃の彼は、インタヴューにも茶目っ気たっぷりで答える等、親しみを持てる雰囲気だったのですが、メディアでどんどん取り上げて行く中、自分の意に沿わない質問をした相手に対し、露骨に小馬鹿にした態度を見せる等、“残念な選手”になって行ってしまいました。
そんな彼ですが、今日の記者会見を見ていると、「丸くなったなあ。」という感じが。尖がった所が無くなったのは、矢張り年齢が為せる業でしょうか。
誰しも自国の選手は贔屓したくなる物ですが、だからと言って「他国の選手を侮蔑する事で、自国の選手の立場を上げ様とする。」のは決して好ましく無い。自分が逆の立場だったら、どう感じるか?ピート・ローズ氏が選手として超一流だった事は疑う余地が無いのですから、人としても超一流な言動をして欲しい物です。