首位のジャイアンツから最下位のスワローズ迄のゲーム差が、僅か3.5ゲーム。開幕からもう少しで3ヶ月経とうとしている中、こんな大接戦を繰り広げているセ・リーグ。此処迄の“混セ状態”となった最大要因は、「1位のジャイアンツと3位のベイスターズの大失速」に在る。此処10試合だけを見ても、ジャイアンツは「2勝8敗」、ベイスターズに到っては「0勝10敗」なのだから、「こんな酷い結果で、良くAクラスに留まっていられたなあ。」と感心してしまう。
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ギャンブル・スタート:野球で三塁走者が、打者がボールを打った瞬間、打球の方向や高さに拘わらず、本塁に向けてスタートを切る事。打球がフライやライナーの場合は併殺のリスクが在るが、内野ゴロの場合は走者が生還出来る可能性が高くなる。其の名の通り、非常にギャンブル性の高い戦術。
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此方の情報によると、「ギャンブル・スタート」という言葉を使い出したのは野村克也氏なのだとか。スワローズの監督としてライオンズと闘った1992年の日本シリーズの第7戦、同点の場面で三塁走者の広澤克実選手が、内野ゴロに対して本塁へのスタートが遅れ、本塁でアウトになってしまった。【動画】此れで“流れ”が代わり、結果としてライオンズが日本一になる訳だが、以降、野村氏はギャンブル・スタートを命じる様に。
野村氏は以前、「自分は、弱いチームの監督許り引き受けて来た。だから、自分が用いるのは『弱者ならではの戦術』が少なく無い。」と語っていた。確かに彼が用いた戦術を振り返ると、そんな面が強かった様に感じる。
此処10試合で、「2勝8敗」と大苦戦しているジャイアンツ。「チャンスで点が取れない。」、「スコット・マシソン投手、山口鉄也投手、澤村拓一投手のリリーフ陣が、揃いも揃って不調。」等、大苦戦の要因は幾つか在るけれど、「ギャンブル・スタートを含む“ギャンブル野球”が、チーム状態を更に悪化させている。」のも大きいと思う。
「打球や状況を一切考慮せず、塁上の走者が“暴走”してアウトになった場面。」を、此の数試合だけでも何度見た事か。例えば13日の試合、チャンスで牽制死を食らった坂本勇人選手もそんなケースだが、原辰徳監督は「攻撃的な中で、ああいうミスは、余り責めたくない。」とし、坂本選手を擁護していた。
其れに対し評論家の得津高宏氏は、「『何を考えているんだ。』と言いたい。原監督も庇って言っている事だと思うが、一番大事な走者。本当ならば、罰金物ですよ。ジャイアンツは、12球団の『見本』となる野球を遣って来た筈。一体、どうしてしまったのか?」と苦言を呈していたが、全く其の通りだ。
「積極性」は、勿論大事だ。でも、「積極性」と「不注意さ」及び「無鉄砲さ」は全く別物。勝てない焦りが在るのだろうけれど、今のジャイアンツには「不注意さ」及び「無鉄砲さ」が蔓延している。チーム状況を変えるべく、時に“ギャンブル野球”を試みるのは「在り。」だが、ギャンブルは飽く迄もギャンブル。冷静に状況を考慮した上で「勝ち目が在るかも。」と判断し、“偶に”行うからこそ成功したりする訳で、“何度も”行うと、失敗して更にチーム状況を悪くするだけ。
そして何よりも、ギャンブル・スタート等のギャンブル野球は、弱者が試みてこそ効果が在る、或る意味“捨て身の戦術”だと思うので、ジャイアンツの様に戦力が比較的揃っているチームは多用すべきでは無い。チーム状態が悪い時こそ、基本に忠実なプレーを心して欲しい。