ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「蒼き狼 地果て海尽きるまで」

2007年03月07日 | 映画関連
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部族間の闘争が激化していた12世紀のモンゴル。ボルジギン族の長イェスゲイ・バートル(保阪尚希氏)は、メルキト部族の男の妻を略奪し自らの妻とした。やがてその妻、ホエルン(若村麻由美さん)は一人の男の子を出産する。テムジンと名付けられたその子こそ、後に「東は中国朝鮮半島迄、西は東欧アナトリアシリア、南はアフガニスタンチベットビルマユーラシア大陸の大部分に跨がるモンゴル帝国」のを築いたチンギス・ハーン反町隆史氏)で在る。

14歳になったテムジンは、イェスゲイに連れられて花嫁捜しの旅に出る。「神が遣わした蒼き狼が白き雌鹿を妻とし、その血を受け継いだのがモンゴル部族だ。」と教わったテムジンは、一夜の宿を借りたオンギラト部族の族長デイ・セチェン(榎木孝明氏)の娘ボルテ菊川怜さん)と出逢った瞬間恋に落ち、二人は婚約を交わす。

オンギラト部族の住む地に暫く滞在する事となったテムジンは、ボルテから幼馴染のジャムカ(平山祐介氏)を紹介される。「血みどろの戦いに明け暮れている各部族を統合し、戦いの無い平和な統一国家を作りたい。」と夢を語るジャムカに共鳴したテムジンは、生涯に渡って友情を死守するという”按達(あんだ)の誓い”を彼と交わした。そんなテムジンの元に、父イェスゲイが対立するタタール族によって毒殺されたとの報が届く。テムジンは「必ず迎えに来る。」とボルテに言い残して帰郷する。しかし、父の死後新しく族長となったタルグタイ(神保悟志氏)は、「メルキト族の妻だったホエルンから生れ落ちたテムジンには、蒼き狼の血は受け継がれていない。」としてテムジン一家を置き去りにし、一族を率いて去ってしまう。

それ迄の生活から一変し、苦難の日々を送るテムジン一家。やがて青年に成長したテムジンは、リーダーとしてのカリスマ性を発揮。そしてホルテを妻に迎え入れ、次第に勢力を拡大して行くのだった。
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「蒼き狼」という言葉を見聞すると、つい学生時代に夢中になったKOEIシミュレーション・ゲーム「蒼き狼と白き雌鹿」の事を思い出してしまうのだが、モンゴル建国800周年を記念して角川春樹氏が制作総指揮を執った映画「蒼き狼 地果て海尽きるまで」を封切り当日に鑑賞。流石に話題作だけ在って、大入り満員状態だった。

観終わっての感想だが、先ずは良かった点を挙げたい。CG全盛の御時世に、敢えて人海戦術で臨んだのが功を奏している。何でもモンゴル軍の全面協力を得たとの事で、騎馬隊での戦闘シーンにはモンゴル軍兵士5,000人が馳せ参じた。又、クライマックスのチンギス・ハーン即位式には、ウランバートルの全人口の35人に1人が参加した計算となる2万7千人のエキストラが動員されたという。CGでは醸し出せない、ド迫力がスクリーンから伝わって来る。

それにシナリオが良く練られている。ストーリー展開に無駄が無く、サクサクと話が進んで行く為、136分という上映時間内で飽きが来る事は無かった。モンゴルの広大な風景も、観る者の心を鷲掴みにして離さないだろう。つまりストーリー&映像共に、かなり上質な仕上がりとなっているのだ。

しかし、これだけ素晴らしい環境を整えていながら、肝心のキャスティングが全く駄目。ケレイト族の王トオリル・カンを演じていた松方弘樹等ベテラン勢は流石の演技だったが、若手&中堅の俳優達の多くが棒読みの演技だったり、一本調子の演技だったりで興醒め。*1主役の反町隆史氏は相変わらずの一本調子の演技で、力みまくった演技の為に見ているこちらが疲れてしまった”嘗ての”宇津井健氏を思わせる。キムタクが何の役を演じても、キムタクを演じているとしか思えない様に、反町氏も結局は反町隆史を演じている様に見えてしまう。あれだけのルックスと目力を持っているのだから、もう少し肩の力を抜いた演技をすれば良いのにと残念でならない。

そんな中、キラリと光る才能が無かった訳では無い。テムジンの息子ジュチを演じた松山ケンイチ氏は良い!彼が出演している映画作品を見るのは「男たちの大和/YAMATO」と「デスノート the Last name」に次いで3作品目に過ぎないが、作品毎に全く違った個性を見せてくれている。否、全く異なった個性を演じ切っているというのが正しいだろう。何処と無く哀愁を帯びた顔立ちに確かな演技力と、高評価し過ぎかもしれないが高倉健氏や故松田優作氏の様な役者になるのではなかろうかと密かに期待している。それだけの逸材だと思うし、反町ファンの方には申し訳無いが、今回の主役も松山氏が演じたら又違った深みが出た様にすら感じる。*2

自らの出自に付いて懊悩したテムジンが、やがては自らの息子のジュチの出自を疑い、その事で父子の間に埋め難い溝を作ってしまったのは何とも皮肉。「そんな二人が御互いに判り合えたのは、ジュチが死の床に就いた時だった。」というのも、そして「嘗ては共に夢を語り合い”義兄弟”の契りを結んだテムジンとジャムカが、やがては対立してテムジンの手でジャムカが殺される事になる。」というのも哀しい現実で在る。

ストーリー&映像は星4つ。しかし残念ながらキャスティングに難在りという事で、総合評価は星3.5個とする

*1 ”時代劇用語”の幾つかに、明らかにイントネーションのおかしな物が在った。その言葉自体を、真に理解して発していないのか?はたまた言葉自体は理解しているものの、正しいイントネーションを知らなかったのか?どちらにしても役者としては御寒い話だし、何よりも現場のスタッフがきちんと直させる可きだったと思う。

*2 女性兵士クランを演じているAraさん。演技力に関しては未だ未だだが、兎に角可愛い!

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4 コメント

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映画情報ありがとうございました (マヌケ)
2007-03-07 09:40:57
昔、角川映画でがっかりした覚えのある「天と地」を思い出してしまい劇場まで足を運ぶ気が起こりませんでしたが、ジャイアンさんのコメントを拝見しまして気が変わりました。 「天と地」ではカナダでロケを行い参加した現地のボランティアのエキストラが明らかにニコニコと笑いながら合戦を楽しんでいたようで迫真の演技が薄らいでいた感がありました。 しかも黒澤映画との比較もされ中身の薄さが否めませんでした。 そういえばあの「椿三十郎」がリメイク中だと聞きました。 今週末は「墨攻」と「蒼き狼」の予定を入れることにします。
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>マヌケ様 (giants-55)
2007-03-07 10:26:19
書き込み有難うございました。

ハッキリ言いまして、この作品に対するネット上の感想は賛否両論です。否、恐らく否定的な感想の方が多いでしょう。あのおすぎ氏がこの作品を激賞していたそうで、彼が激賞する作品で良いと思った物はこれ迄殆ど無かった為、その意味で彼と意見が一致するのは意外?でも在るのですが(笑)、個人的には「何でそんなに世評が良くないのかなあ?」と不思議な感は在ります。

映画「天と地と」は未見故、何とも言えないのですが、今回の戦闘シーンは迫力を感じました。そもそも角川映画テイストが結構好きなものですから、もしかしたら潜在的に贔屓目に今回の作品を観てしまっているかもしれません。そして間違い無く言えるのは、黒澤作品を比較対象にしてはいけないという事。黒澤作品が相手ならば、それと比肩出きる作品はそうは無いでしょうね(笑)。

上記しました様にネット上の評価がかなり芳しくない事から考え、私見はかなりマイノリティーの部類に入る事を御含みおき下さい。

尚、マヌケ様が触れられていた「椿三十郎」のリメイク、館内で予告編が流れていました。これを見る限りでは、「うーん・・・。」といった感じでした。
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反町が演じたのは (破壊王子)
2007-03-07 22:45:22
テムジンであってテムジンにあらず。迷った反町氏、が角川(最近身長が伸びた)春樹氏に相談したところ、
「俺を演じろ」
だったのですから。
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Unknown (小六)
2007-03-08 22:36:37
こんばんは、TBありがとうございました。
他の方のレビューを見ていたら結構酷評されていましたね。
でも、個人的には、そんなに悪くなかったと思いますよ。
チンギス・ハーンの即位式のシーンは鳥肌が立ちました。
あれがCGじゃないなんて、今の時代に逆行してますが、それがより一層迫力を増しましたね。
では、また~
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