ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「ハッピーエンドにさよならを」

2007年11月11日 | 書籍関連
当ブログをしばしば覗いて下さる方ならば御判りだとは思うが、自分の読書傾向はミステリー、それも日本のミステリーが主体。20年以上熱を上げている東野圭吾氏を始めとして、内田康夫氏や綾辻行人氏、貴志祐介氏、西村京太郎氏、折原一氏、横山秀夫氏、今邑彩女史石田衣良氏、最近で言えば道尾秀介氏や高野和明氏、三崎亜記氏等は全作品を読破しているし、海堂尊氏や雫井脩介氏に関しては全作読破に向けて進行中という状態。その他にも話題になったミステリーは殆ど目を通しているのだが、有名どころで言えば歌野晶午氏の作品は「葉桜の季節に君を想うということ」しか読んでいない。この作品は2004年版の”このミス”で国内部門1位を獲得した事から読んだものの、個人的にはイマイチ感を覚えていた。それだけに彼の作品としては2冊目となる「ハッピーエンドにさよならを」で、彼の真価を評価しようと思った次第。

「ハッピーエンドにさよならを」は「おねえちゃん」、「サクラチル」、「天国の兄に一筆啓上」、「消された15番」、「死面」、「防疫」、「玉川上死」、「殺人休暇」、「永遠の契り」、「In the lap of the mother」、「尊厳、死」という11の短編から構成されている。つまり「ハッピーエンドにさよならを」というタイトルの作品は存在しない訳で、この本のタイトルは全てのストーリーがアンチ・ハッピーエンド・ストーリー、即ちハッピーエンドでは無い作品ばかりというのに起因している。

自分が手塚治虫氏や東野圭吾氏の作品をこよなく愛している理由には、その多くがハッピーエンドで終わらないという点に在る。何とも言えない理不尽さ&物哀しさがの如く心に残り、何時迄も忘れられないのだ。だからこそ、アンチ・ハッピーエンド・ストーリーの集合体で在るこの作品に期待しつつ、頁を捲っ行った。

「読者の予想を何としても裏切ってやる。」という歌野氏の心意気が見え隠れしている。頁数の少なさをデメリットでは無くメリットに転じており、短編ならではの作品群と言えよう。特に「死面」が個人的には良かった。楳図かずお氏が描く”恐怖の世界”を一寸感じさせる作品だからだ。

突出して素晴らしいという作品は無かったが、どれも一定の基準を満たした作品というのは立派。総合評価は星3.5個としたい。

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