1966年に公開されたアメリカのSF映画「ミクロの決死圏」【動画】「脳に障害を起した要人を救うべく、ミクロ・サイズに縮小された科学者グループが、特殊潜水艇に乗り込み、其の体内に入り込む。」というストーリー。
余談に成るが、「似通った設定の漫画『吸血魔団』を、18年前の1948年に手塚治虫氏が発表しているので、『ミクロの決死圏』は『吸血魔団』のパクリで在る。」と言われたりしている。(1994年に公開されたアニメーション映画「ライオン・キング」【動画】も、1950年に発表された手塚氏の漫画「ジャングル大帝」のパクリだと思っている。)
で、話を元に戻すが、自分が初めて「ミクロの決死圏」を見たのは、1970年代に入ってだが、ストーリーの面白さも然る事乍ら、「人体内部の造形や、其の中を航行する潜水艇といった特撮がとても斬新。」で、此れ迄に何度見返した事か。(現代の特撮技術からすれば、非常に初歩的なレヴェルなのだけれど、当時としては"衝撃的な映像"だった。)
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あらゆる臓器に同時多発的に癌が生じる奇病「シムネス」は、星嶺医大附属病院の伝説的外科医・火神郁男(ひがみ いくお)の命迄も奪った。
火神の死から3年、ナース・エイド(看護補助者)と外科医の二刀流で働く桜庭澪(さくらば みお)は、新時代の癌治療装置「オームス」のテスト・オペレーターとして、ハイレベルな手術を一手に引き受けていた。
オームス実用化に向けた重要な手術を控えた或る日、医師免許を剥奪され、海外に渡っていた竜崎大河(りゅうざき たいが)が突然姿を現す。澪と大河は再びタッグを組み、シムネスの驚くべき秘密に迫って行くのだった。
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現役の医師で在り、人気小説家でも在る知念実希人氏。今回読んだ小説「サーペントの凱旋 となりのナースエイド」は、彼の「『となりのナースエイド』シリーズ」の第2弾。2023年に上梓された第1弾「となりのナースエイド」は未読なので、今回の第2弾を先に読んだ事に成る。
黒い光沢を放つ巨大な繭状の装置「オームス・オペレーティング・ユニット」は、一部の癌を除いて、どんなに末期的な癌で在っても、"完全に"取り除く事が出来る。そんな夢の様な癌治療装置の実用化を巡る話。
「火神郁男が発明した"火神細胞"にバイオコンピューターを組み込む事によって生み出された"新火神細胞"を、患者の血管内へと投与し、其れをスーパーコンピューターで制御し、オームス・オペレーティング・ユニットに"搭乗"した執刀医が、画面に映し出される人体内部の映像を見乍ら新火神細胞を操作する事で、全ての癌を取り除く。」というのは、「冒頭で紹介した『ミクロの決死圏』と、(機械内に搭乗して操作するという点で)アニメ「マジンガーZ」【動画】が重ね合わさってしまう様な設定。」だ。(加えて言えば、「医師免許を剝奪された、天才的な腕を持つ外科医・竜崎大河。」というのは、手塚氏の漫画「ブラック・ジャック」の設定が重なる。実際、「サーペントの凱旋 となりのナースエイド」」内で大河の事が、「ブラック・ジャックみたい。」と譬えられているし。)
莫大な利益を生み出すで在ろうオームスに、或る疑惑が生じる。其の疑惑を澪と大河は明らかにし様とするのだが、莫大な利益を生み出す可能性が在るだけに、其の疑惑を力尽くで封じ込め様とする者達も。手段を選ばない連中からの"攻撃"が、次々と澪達を襲う展開に、読者は引き込まれて行く事だろう。
どんでん返しに次ぐどんでん返しも悪くは無いのだが、少なくとも"最後に明らかに成る敵"に関しては、早い段階で想像が付いた。其の点に付いては、評価を下げざるを得ない。
タイトルに在る「サーペント(serpent)とは、英語で蛇の別名。」なのだとか。大河はそんな異名を付けられているのだが、個人的にはしっくり来ない。此の手の異名やキャラクター設定は、同じく医師で在り作家でも在る海堂尊氏の"十八番"といった感が在るのだが、知念氏は海堂作品を意識したのだろうか?
総合評価は、星3.5個とする。