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ラジオのパーソナリティ・桐畑恭太郎(きりはた きょうたろう)は、魅力的な声の持ち主で在るものの、冴えない容姿というギャップに、コンプレックスを持っている。今夜も、行き付けのバー「if」で仲間達と過ごすだけの毎日を、楽しくて面白おかしい話に作り変えて、リスナーに届ける。
恭太郎が「if」で不審な音を耳にした或る雨の日、びしょ濡れの美女が店に迷い込んで来た。ひょんな事から彼女の企てた殺害計画に参加する事になる彼等だが・・・。
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文壇デビューから、昨年で10年目を迎えた道尾秀介氏。比較的“外れ”の少ない作家の1人だったのだが、“TVドラマの原作”という前提で上梓された小説「月の恋人 ~Moon Lovers~」辺りから、「此れは酷いなあ・・・。」と思ってしまう作品が散見される様になった。去年読んだ「貘の檻」が散々な出来だった(総合評価:星1.5個)ので、今年初めに上梓された「透明カメレオン」には不安を感じていたのだが・・・。
「魅力的な声を持つも、冴えない見た目のラジオ・パーソナリティ。」という恭太郎の設定には、「声は凄く良いのに・・・。」と散々言われ続けて来た自分も感情移入出来たりした。
彼が番組内で話す“作り話”に付いて、最後の最後で“事実”が明らかとなるのだが、此の点に関しては「そういう事だったのか。」という驚きは在った。でも、「其れだけの小説」というのが正直な所。
「小説なのだから、奇想天外な設定が在っても良い。」とは思うけれど、全体的に設定が余りにも現実離れしていて、其の点ではのめり込めなかった。“逃走シーン”は破茶滅茶し、抑、「透明カメレオン」というタイトル自体が、上手く付けた様で、実は凄く下手な感じがする。
読後に読み手をホロッとさせたかったのかもしれないが、御都合主義な結末が鼻に付き、「こんな終わり方かよ・・・。」と嘆息するしか無かった。