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動物生態学の学者だった都鳥博士(ととり ひろし)は警視庁の中途採用試験に合格し、43歳にして捜査1課に刑事として配属される。仮説・実験・証明を繰り返し、論理的思考力で常に物事の原因を追及する彼を待っていたのは、指導役で正義感の強い若手刑事・安永哲平(やすなが てっぺい)と、巧妙な完全犯罪の数々だった。年上で変わり者の新人刑事と若くて熱血漢の先輩刑事がコンビを組み、次々と起こる事件に立ち向かう。
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今回読んだ小説「実験刑事トトリ」(原案:西田征史氏、ノベライズ:吉田恵里香さん)は、2012年に放送された刑事ドラマ「実験ドラマトトリ」の脚本を小説化した物。表紙に描かれた個性的なイラストだけを見ると、書店で自分が手に取らないで在ろう感じ。公共施設の「御自由に御持ち帰り下さい。」と書かれたコーナーに置かれていたので、持ち帰って読んだのだ。
動物生態学者として有名な存在だった都鳥は、「先が見えてしまった。」という理由から、警視庁の刑事に転身したという超変人。そんな43歳の新人刑事を指導するのが、15歳も年下の安永。どう見ても立場が逆としか思えないコンビが、謎を解いて行くという設定。
“後輩”で在る都鳥に対し、“先輩”としての凄さを見せ様とする安永だが、都鳥から軽く往なされてしまう。「遥かに年下の上司に使われる、遥かに年上の部下。」というのは双方にとって遣り難そうだが、安永の悪戦苦闘に対し、都鳥の“何処吹く風”といった感じが面白い。
動物生態学者として磨き上げて行った論理的思考で、事件の謎を解いて行く都鳥。事件解決の過程で、何気無く話す動物に関する事柄に、彼の前職を感じ取れる。一番興味深かったのは、「『浦島太郎』に登場する亀は、雄か雌か?」という話。論理的思考で根拠にて、彼は「雌。」と推理するのだが、「成る程。」と納得してしまった。
「読者(見ている側)は最初に犯人が判った上で、トリックを解き明かす。」というスタイルの倒叙ミステリ。同じスタイルというだけでは無く、風変わりなルックスや超変人という共通点も在り、古畑任三郎と重ね合わせてしまう。でも、ストーリーの深みやトリックの驚きという面では、古畑任三郎には及ばない。
総合評価は星3つ。