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葉村晶(はむら あきら)の働く書店で、“鉄道ミステリー・フェア”の目玉として借りた弾痕の在るABC時刻表が盗難に遭う。行方を追う内、葉村は思わぬ展開に巻き込まれ・・・。(「逃げだした時刻表」)
「相続で引き継いだ家に何時の間にか居座り、死んだ女の知人を捜して欲しい。」いう依頼を受けた葉村は・・・。(「不穏な眠り」)
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「吉祥寺に在るミステリー専門書店『MURDER BEAR BOOKSHOP』の店員として働く葉村晶は、店主が冗談半分で始めた『白熊探偵社』の唯一の調査員でも在る。調査員として何度も何度も危険な目に遭い、満身創痍な彼女だが、そんな不幸も乗り越え、事件を解決して行くタフさを持っている。」というのが、若竹七海さんの「葉村晶シリーズ」の主人公。原作がTVドラマかもされ、ミステリー関連の年間ブック・ランキングの常連にもなっているシリーズで、今回読んだ「不穏な眠り」も「このミステリーがすごい! 2021年版【国内偏】」の10位に選ばれている。
「日常生活に潜む人間の悪意を、ドライな視線で描いている。」というのが、葉村晶シリーズの魅力。蓮っ葉さを漂わせつつも、内面は熱い葉村を主人公に据えているからこそ、そういう魅力が光っている。
4つの短編小説から構成されている「不穏な眠り」も、日常生活に潜む人間の悪意が盛り込まれている。一番最初の「水沫隠れの日々」という作品は、其の最たる例だろう。水沫隠れとは「水の泡の下に隠れて見えない事。」を意味するそうだが、「“善意”という泡の下に隠れて見えない“悪意”。」という物を、最後の3行で強く感じさせる。
残り3作品に関しては、個人的に面白さを感じなかった。特にタイトルにもなっている「不穏な眠り」に付いては、自分の理解力が悪いのかも知れないけれど、「意味が判らない作品だなあ。」という印象。
総合評価は、星2.5個とする。