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東日本大震災から10年目の仙台で、「被害者の全身を縛った状態で放置して、餓死させる。」という連続殺人事件が発生。別の事件で服役し、刑期を終えて出所した許りの利根泰久*1(佐藤健氏)が、容疑者として捜査線上に浮かぶ。被害者2人から或る共通項を見付け出した宮城県警の刑事・笘篠誠一郎(阿部寛氏)は、其れを元に利根を追い詰めて行く。
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人気小説家・中山千里氏の作品「護られなかった者たちへ」を映像化したのが、今回観た「護られなかった者たちへ」だ。
真犯人当てという点では、早い段階で想像が付いたので、物足り無さを感じる。でも、作品のテーマで在る「生活保護費の受給」に関しては、とても考えさせられた。
当ブログで過去に何度も書いている事だけれど、不正受給をしている連中が批判されるのは当然だ。でも、本の一部の不埒者の存在を元に、十把一絡げで「生活保護費受給者は、全て悪。」と面白おかしく叩く風潮は、全く受け容れられない。「“社会のセーフティー・ネット”が十二分に機能しなくなっている現代に在って、誰もが昔よりも格段に“生活保護費を受給する側”に陥る可能性は高くなっており、必死で頑張っても受給せざるを得ない状態に在る者を面白おかしく叩くのは、真面な人間の所業では無い。」と考えるからだ。
生活保護費を受給して当然の状態に在っても、「他人様に迷惑を掛けたく無い。」、「受給が人に知れらたら、バッシングされてしまう。」等の理由から、申請を躊躇する人が少なく無いと聞く。「護られなかった者たちへ」に登場する、他人の痛みを自分事として受け止める優しい老婆・遠島けい(倍賞美津子さん)も、そんな1人だ。東日本大震災で罹災し、日々食べる物にも事欠く状況。同じ罹災者の利根達の勧めも在って、一旦は申請を行うも、或る理由から申請を取り下げてしまう。其の或る理由というのが、堪らなく悲しい。
「生活保護費受給者は、全て悪。」と面白おかしく叩く連中は、こういう作品を読んだり、観たりしても、多分何とも思わないに違い無い。「自分は絶対、そんな側に陥らない。」と、全く根拠の無い自信を持っているだろうから。
総合評価は、星3つとする。
*1 原作では「利根勝久」。