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ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「きことわ」

2011年02月19日 | 書籍関連
先月、第144回芥川賞(2010年下半期)及び第144回直木賞(2010年下半期)の受賞者が発表された。両賞の受賞者が2人ずつというのは第130回(2003年下半期)以来7年振りの事で、賑わいを感じさせる発表の場だった。好きな作家の1人で在る道尾秀介氏が5度目の候補作品でやっと直木賞を受賞したのは嬉しいけれど、受賞作品の「月と蟹」は同氏の此れの作風とは大分毛色が異なっているばかりか、「直木賞受賞を意識し過ぎた様な文体」という感じがしてしまって、「此の作品では受賞して欲しくないなあ。」と思っていたので、正直複雑な気持ちでは在る。

今回の受賞発表で何よりも注目されたのは、直木賞受賞者の2人だろう。「華麗なる文学一族の才媛vs.中卒のフリーター」や「美女と野獣」等々、2人のルックスや経歴が余りに違い過ぎる点に関心が集まった感が在る。受賞記者会見の場では、おっとりとした口調で難解な表現を繰り広げる朝吹真理子さんに対し、「受賞が決まった瞬間は何をされていましたか?」との記者の質問に「自宅でそろそろ風俗に行こうかなと思っていました。」と真顔で答えた西村賢太氏。思わず爆笑してしまったのは、言う迄も無い。

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永遠子(とわこ)は夢を見る。貴子(きこ)は夢を見ない。

葉山の高台に在る別荘で、幼い日を共に過ごした貴子と永遠子。或る夏、突然断ち切られた2人の親密な時間が、25年後、別荘の解体を前にして、再び流れ始める。
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朝吹さんの受賞作「きことわ」。此の風変りなタイトルは、主人公の女性2人の名前から付けられている。母親・淑子が別荘の管理人をしていた関係から、幼い頃より葉山の別荘に度々通っていた永遠子。別荘の持ち主で在る春子&和雄という姉弟から可愛がられた永遠子は、やがて生まれた春子の娘・貴子と姉妹の様な関係になる。7歳違いの彼女達が最後に会ったのは25年前の夏、永遠子が15歳(高校1年)、貴子が8歳(小学3年)の時で、以降は会う事も無いままに時を経る。25年振りに再開する事となった2人の姿を描いたのが此の作品なのだが、同じ様な文体が延々と続く事も在って全体的に単調な感じが。

四半世紀という時を経て、33歳と40歳になった2人。9歳の時に母を病で亡くした貴子は自身が其の享年を過ぎ、永遠子は自身の娘が最後に会った時の貴子と同じ年齢となっている。遥か昔の自分達を振り返り、そして現在の自分達を見詰め直す。「大きく変わってしまった部分」と「当時とは変わらない部分」とが交差しているのが、印象的では在る。

芥川賞受賞作品は「読ませる作品」と「退屈な作品」とにハッキリ二分され勝ちだが、自分の場合「きことわ」は「退屈な作品」だった。内容もピンと来ないし、テクニックに走り過ぎた感も在る。失礼を承知で言わせて貰えれば、話題性を重視した上での受賞という気も。総合評価は星2.5個

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