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天明4年5月の十三夜。番方・幣原喬十郎(しではら きょうじゅうろう)は、湯島の路上で男女の惨殺体を発見する。傍らには、匕首を手に涙を流す若い男が1人。喬十郎は咄嗟に問い質すが、隙を付かれて取り逃がす。
軈て、逃げた男は大盗「大呪の代之助(だいすのよのすけ)」の一味・千吉(せんきち)と判明。殺害された男の周辺を洗う中、再び遭遇するも、千吉は殺害を否定し、再び姿を晦ませる。
10年後、喬十郎は、銭相場トラブルで一家を殺害された塩問屋の事件を追う過程で、両替商となった千吉事、利兵衛(りへえ)に出合う。火付盗賊改長官・長谷川平蔵(はせがわ へいぞう)に助言を仰ぐも、突然の裏切りに遭い、左遷されてしまう。
己の面目に掛けて悪事に立ち向かう喬十郎と、闇社会を巧みに立ち回る千吉。幕政に翻弄された2人の因縁は・・・。
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月村了衛氏の小説「十三夜の焔」は、「天明4年(1784年)5月の十三夜、殺人現場で番方の幣原喬十郎が怪しい男・千吉と出会う場面。」から話が始まり、「58年後の天保13年(1842年)の十三夜、2人が会話を交わす場面。」で話が終わる。同い年乍ら、置かれた環境が“表”と“裏”と全く異なる2人が、“不倶戴天の敵”として相見えて行く58年間を描いた作品。
「鬼平犯科帳」の長谷川平蔵や「遠山の金さん」の遠山金四郎等、実在した歴史上の人物が次々と登場。特に長谷川平蔵と遠山金四郎は、主人公・幣原喬十郎と密接な関係に在り、両“有名人”の存在は、読者をより深くストーリーの中に引き込んで行く事だろう。
唯、ストーリー展開としては、起伏に乏しい感じがする。“予定調和的結末”だし、「十三夜で始まり、十三夜で終わる。」というのも、物語とはいえ“在り来りな設定”。もっとサプライズが欲しかった。
総合評価は、星3つとする。