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「昆虫種の『壊滅的崩壊』、地球規模で進行中 研究」(2月12日、AFPBB News)
世界の全昆虫種の半数近くが急速な減少傾向に在り、其の3分の1程が地球上から姿を消す恐れが在るとの研究結果が、此の程発表された。「此れにより、食物連鎖や農作物の受粉に於て悲惨な結果が齎される。」と、研究は警告している。
今回の研究を纏めた査読済みの論文は「人類が食物生産の方法を変えなければ、数十年後には全ての昆虫が絶滅の道を辿る事になる。」と結論付けている。此の論文は、4月に学術誌「バイオロジカル・コンサヴェーション」に掲載される予定だ。
減少傾向は、静水域に生息する様々な昆虫種に見られ、こうした傾向に付いて論文は、過去5億年間で6回目となる「大量絶滅」の一環だと指摘している。「我々は、ペルム紀末期や白亜紀末期以降の地球上で、最大規模の絶滅事象を目の当たりにしている。」。
2億5,200万年前に起きたペルム紀末期の大量絶滅では、地球の生物種の9割以上が死滅した一方、6,600万年前の白亜紀末期に突如として発生した大量絶滅では、陸生恐竜が姿を消した。
オーストラリア・シドニー大学のフランシスコ・サンチェス・バヨ氏と豪クイーンズランド大学のクリス・ウィクホイス氏の研究チームは、「減少傾向に在る種の現在の割合は、昆虫種全体の41%で、脊椎動物(背骨を持つ動物)の其れに比べて、2倍高いと推定される。」と報告。又、「現時点で、昆虫種全体の3分の1が、絶滅の危機に晒されている。」とした。
研究者等は、「毎年1%が、新たに絶滅危惧種の仲間入りをする。」と推定しているが、昆虫のバイオマス(生物量、生物体の総重量)は、全世界で年間約2.5%の割合で減少している。
研究結果に付いて論文の執筆者等は、「生態系の壊滅的崩壊を回避出来るのは、断固たる行動だけだ。」と警告し、「原野の回復と、農薬及び化学肥料の大幅な使用料削減が、昆虫の減少ペースを減速させる為の最善の方法で在る事が考えられる。」と述べた。
今回の研究では、世界各地で収集されたデータ群70以上の内容が纏められた。中には、100年以上前に遡るデータも在った。
昆虫の減少と絶滅危機の理由に付いては、森林破壊、都市化、農地への転換等、生息域の変化が最大の要因として浮上した。其の次に大きかったのは、商業的農業に於ける農薬の広範な使用と汚染だったが、最大要因との差は大きく開いていた。
地球の生物種全体の約3分の2を構成する昆虫は、約4億年前に出現して以来、主要な生態系を支える基盤となって来た。然し、「昆虫が多くの脊椎動物の餌としての重要な役割を担う事に付いては、忘れ去られている事が多い。」と研究チームは指摘する。
土竜やハリネズミ、蟻食、そして蜥蜴や両生類、大半の蝙蝠に鳥や魚の多くは、昆虫を常食とし、子を育てる為に、昆虫に依存している。
然し、減少傾向の昆虫種によって出来た「穴」を別の昆虫が埋める事(バイオマスの急激な減少を補う事)は不可能と思われると論文には記された。
又、昆虫は、世界最多の受粉媒介者でも在る。カカオ、珈琲、アーモンド、サクランボ等を含む世界の食用作物の上位115種の75%が、こうした生物による花粉の媒介(動物媒)に依存している。
然し、花蜂の場合では、局地的に6種に1種が既に絶滅している。地中海沿岸地方の食糞性コガネムシ類も大きな打撃を受けており、種全体の60%以上に、個体数の減少傾向が見られると言う。
個体数の減少が確認されている昆虫分類群の割合に付いては、英国が全体の60%で、次いで米国が51%、欧州全域が44%となっている。
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過去にも書いたけれど、38年前に「生物が一日一種消えてゆく ~滅びの動物学~」という本を読んだ時は、非常に大きな衝撃を受けた。「1日1種の割合で、生物が絶滅して行っている。」というのが、とても信じられなかったから。
今回の研究によると、「世界の全昆虫種の半数近くが急速な減少傾向に在り、其の3分の1程が地球上から姿を消す恐れが在る。」と言う。「約3分の1が絶滅する。」というのが、具体的に何の位先の可能性なのかは判らないが、「人類が食物生産の方法を変えなければ、数十年後には全ての昆虫が絶滅の道を辿る事になる。」という事から考えると、そんなに先の話では無いという事か・・・。