*********************************
或る夫婦が営む古書店が在る。鎌倉の片隅にひっそりと佇む「ビブリア古書堂」。其の店主は古本屋のイメージに合わない、綺麗な女性だ。そして、其の傍らには、女店主にそっくりな少女の姿が在った。
女店主は少女へ、静かに語り聞かせる。1冊の古書から紐解かれる不思議な客人達の話を。古い本に詰まっている、絆と秘密の物語を。
人から人へと受け継がれる本の記憶。其の扉が今、再び開かれる。
*********************************
三上延氏の小説「ビブリア古書堂の事件手帖シリーズ」は、「古書に関して並外れた知識を持つ古書店の店主・篠川栞子(しのかわ しおりこ)が、客が持ち込んで来た古書に纏わる謎を、アルバイトの五浦大輔(ごうら だいすけ)と共に解き明かす。」という内容。
今回読んだ「ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~」は、同シリーズの第8弾。第7弾迄は恋人同士という関係だった栞子と大輔だったが、今回の作品では2人は結婚している。第7弾の時代設定は2010年から2011年の間だったが、今回は2018年秋、即ち此の作品が上梓された時期と重なる。“作品の中での時間”が、“現実の時間”に追い付いた訳だ。又、結婚した2人の間には扉子(とびらこ)という名前の娘が居り、彼女は母・栞子と同様、本に対して強い関心を持っている。
第7弾迄とは異なり、「ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~」では4つの本に纏わる“過去の出来事”に関して、栞子が扉子に語るという形を取っている。自分同様、本に対する愛情が非常に強い娘に嬉しさは在るものの、「本の好きな人=善人」と思っている娘には危うさを感じている栞子。“本を通して成長して行く扉子”というのを、作者は今後描いて行きたいのだろう。
自分が読んだのは初版だが、明らかにおかしな点が2つ在った。其れは表記ミスで、ネット上で同じ指摘をしておられる方が居た。良い作品なだけに、こういう単純ミスは大きな失望を生む。
本大好き人間なので、本に関する蘊蓄が詰まった「ビブリア古書堂の事件手帖シリーズ」は読むのが楽しみ。でも、扉子が登場した今回の作品は、正直「うーん・・・。」という思いが。子供だから仕方無いのだろうけれど、“古書店の人間”としては考えられない様な行為をしているのが、どうしても好ましく感じられないから。そういう部分も、今後の成長で改まって行くのだろうけれど・・・。
総合評価は、星3.5個とする。