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「駐車場にはプライヴァシー無し? ~車のナンバー読み取り ビジネス利用に道~」(8月21日付け東京新聞【朝刊】の「こちら特報部」より)
車のナンバーから使用者の大まかな住所や車種等の情報を収集し、ビジネス活用するシステムが始まっている。駐車場等にカメラを設置、顧客分析等に利用すると言う。法的問題は無いと言うが、「知らない間に、自分の情報が使われている。」と不安の声も在る。
「ショッピング・モール等、複数の会社から、引き合いが来ている。」。顧客情報の分析を行う駐車場コンサルティング会社「駐車場綜合研究所」(東京)の担当者は話す。
同社は、商業施設等の駐車場にカメラを設置して、車のナンバーを読み取り、データを自動車検査登録情報協会(自検協)に送信。協会から、車検証に登録されている使用者の大まかな住所や車種、メーカー等の情報を取得する。同社が其の情報を、地図等に加工して提供する。
使用者の居住地等を把握出来れば、例えば、散らしの配布等で効率的な宣伝が出来る。今年2~3月に埼玉県内のパチンコ店で試験運用した際は、推定していた地域以外から来店していた客が一定数居た事が判ったと言う。同社は「未だ、実際の運用はされていない。カメラの存在を告知するかどうか検討している。」としている。
提供される情報の住所は町名や字名迄で、枝番は伏せられている。氏名も除かれている。国土交通省自動車情報課の担当者は「個人が特定される情報では無く、法的な問題は無い。」と話す。オンライン照会は2008年4月から始まっており、既にビジネス目的で利用された例も在ると言う。
元々、車の登録情報は、不動産登記と同じ様に社会で共有し、財産の保護を図る為に、公開が原則となっている。嘗ては、運輸局等で申請すれば、誰でも入手出来た。だが、プライヴァシー意識の高まりや、悪用防止の観点から、2006年の道路運送車両法改正で、事実上、第三者が取得するのは難しくなった。
オンライン照会に付いて、国交省の担当者は、「商圏や統計の調査等に、車の情報を活用したいという社会的ニーズに応えた。個人情報保護とのバランスを取り、氏名等を伏せている。」と説明する。
国の審査を自検協が窓口となり、申請を受け付ける。軽自動車の情報は「全国軽自動車協会連合会」が窓口となっている。何れも、手数料が掛かる。
プライヴァシーの侵害には当たらないのか。個人情報問題に詳しい藤本尚道弁護士は「車種によって或る程度の所得が判ってしまうし、町名や字名から個人の住所を突き止める事も可能だ。」と疑問視する。
他の情報と組み合わせれば、個人の行動を追跡・監視するシステムも構築出来るかもしれない。プライヴァシー保護に詳しい板倉陽一郎弁護士は「保護すべき個人情報の一歩手前だ。法的に問題は無くても、此の儘放置して良いとは思えない。」と話す。監視社会を拒否する会共同代表の田島泰彦・上智大教授は「個人情報保護法に準じる形で、一定のルールを作るべきではないか。」と指摘した。
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「此れだけ様々な情報で溢れ返っている御時世なので、“或る程度の”個人情報が漏洩してしまう事は在るだろうな。」とは思いつつ、先日の「ベネッセ個人情報流出事件」の様なとんでもないレヴェルの個人情報漏洩が実際に発生すると、「酷いなあ。」と狼狽してしまうのが、自分を含めた多くの人の実際だと思う。
今回の件、提供される情報が極めて限定されているし、「良い気分はしないけれど、まあ許容範囲かなあ。」と思う一方で、「他の情報と組み合わせれば、個人の行動を追跡・監視するシステムも構築出来るかもしれない。」(近年の政府は、「国民を抑え込む。」事に汲々としている感が。)という懸念が否定出来ない怖さも在る。
そして何よりも、情報を与える窓口の「自動車検査登録情報協会」や「全国軽自動車協会連合会」が如何にも“役人の天下り組織”っぽく、そういった組織に新たな手数料を与え、肥えさせる為の認可ではないかという気がする。
実際に運用するので在れば、「個人情報保護法に準じる形で、一定のルールを作るべき。」だと思うし、カメラの存在を顧客に告知するのは必須だろう。