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「丸で幽霊を追い駆けている様だ。」。
焼け落ちた屋敷から見付かったのは、都議会議員と元女優夫婦の遺体だった。華やかな人生を送って来た2人に、何が起きたのか?
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東野圭吾氏の小説「架空犯」は、捜査1課強行犯係の刑事・五代努(ごだいつとむ)を主人公にした「五代努シリーズ」の第2弾。2021年に上梓された第1弾の「白鳥とコウモリ」には総合評価「星4つ」を付けていたので、期待して読む事に。
「都議会議員と元女優夫婦の遺体が、彼等の焼け落ちた屋敷から発見された。」所から、ストーリーは始まる。最初は無理心中かと思われたものの、直ぐに殺人事件と判明したのは、余りに稚拙な"偽装工作の跡"が在ったからだ。其の後、"犯人"から脅迫が届くが、「用心深さを感じさせる手口と、事件現場に残された余りに稚拙な偽装工作とのギャップ。」に疑問を感じつつ、捜査に当たる五代努。捜査では所轄で生活安全課に所属するの警部補・山尾陽介(やまお ようすけ)と組む事に成るが、定年間近のヴェテラン捜査員の言動に、五代は違和感を覚えて行く。
「怪しそうな人間は、先ず"真犯人"では無い。」というのが、ミステリーの常識。なので、如何にも怪しい或る人物に付いては、「事件に何等かの関わりは持っているだろうが、真犯人では無いな。」と早い段階で察しは付いた。「架空犯」というタイトルの「架空」という部分も、推理を働かせる上で大きなヒントと成ったし、東野氏にしては珍しく"凡その展開が読める作品"だった。
読んでいて、スッキリした気持ちには成れない内容。人間の持つ身勝手さを痛感させられるし、報われ無さを感じたりもするからだ。「大なり小なり、人間には"裏"と"表"の部分が在る。」物だけれど、嫌な感じを覚えてしまう。
"40年近く前の出来事と今回の事件との関係性"には、少々無理を感じ無くも無い。又、「凡その展開が読めてしまった。」という点も含め、東野作品としては及第点が与えられない作品だ。
総合評価は、星3つとする。