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昔、「NHK連続TV人形劇」というのが放送されていた。第1弾は1953年2月20日~同年10月30日に放送された「玉藻前」で、途中"休止期間"を挟み乍らも、第17弾の「シャーロックホームズ」(2014年10月12日~2015年2月15日)に到っている。
自分がリアル・タイムで最初に見た作品は第5弾の「ひょっこりひょうたん島」(1964年4月6日~1969年4月4日)【動画】で、最初から見たのでは無く、途中からだった。リアル・タイムで、且つ最初から最後迄通して見た最初の作品は、第8弾の「新八犬伝」(1973年4月2日~1975年3月28日)【動画】。滝沢馬琴(曲亭馬琴)の長編小説「南総里見八犬伝」を原作とし、一部に同作者のた作品(「椿説弓張月」等。)』を換骨奪胎して取り入れた内容で、怪異さ溢れる勧善懲悪物。
「閑話休題」等、子供に媚びない難しいフレーズが結構使われていたが、そういうのは"大人の世界"に触れた様な感じがしたし、ストーリーの面白さ、そして何よりも登場する人形達の優美さに、自分はすっかり魅了されてしまった。学校の授業が終わると、友達と川や丘、公園等で遊び、そして「新八犬伝」の放送に間に合う様に家に帰る。そんな感じの子供達が、当時は自分を含めて多数だったと思う。
"日本史的な物"に触れた最初が「新八犬伝」だったと思うし、「新八犬伝」が無かったら、恐らくは自分がこんなにも日本史好きになる事は無かったろう。其れだけ大きな影響を与えてくれたTV番組。第9弾「真田十勇士」(1975年4月7日~1977年3月25日)【歌】以降も通しで見た作品は多いが、「NHK連続TV人形劇」の中では断トツで好きなのが「新八犬伝」だ。(2004年の「新八犬伝フォーエバー」等、当ブログで過去に何度も、記事で取り上げている程。)
「南総里見八犬伝」を題材にした映画は過去に数多く製作されているが、1983年に公開された「里見八犬伝」【動画】は幻想的で在り、又、千葉真一氏や真田広之氏のアクション・シーンがキレッキレで実に格好良く、此れ迄何回見た事か。
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江戸時代、人気作家の滝沢馬琴(役所広司氏)は友人の浮世絵師・葛飾北斎(内野聖陽氏)に、構想中の物語を語り始める。其れは里見家に掛けられた呪いを解く為、運命に引き寄せられた犬塚信乃(渡邊圭祐氏)、犬川壮助(鈴木仁氏)、犬坂毛野(板垣李光人氏)、犬飼現八(水上恒司氏)、犬村大角(松岡広大氏)、犬田小文吾(佳久創氏)、犬衛親兵衛(藤岡真威人氏)、そして犬山道節(上杉柊平氏)という、其れ其れが"不思議な霊玉"を持ち、肉体に牡丹の痣が在る8人の剣士達の戦いを描く物語「南総里見八犬伝」だった。
北斎を瞬く間に魅了した其の物語は大人気に。執筆作業は馬琴のライフワークと成るが、息子の鎮五郎(磯村勇斗氏)を若くして亡くし、妻・お百(寺島しのぶさん)からは生活苦を詰られる等、決して安泰とは言えない日々を送っていた。そして、連載開始から25年経ち、物語もクライマックスに差し掛かった時、馬琴は両目を失明してしまい、「南総里見八犬伝」の執筆を続けられない危機に・・・。
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今回観て来た映画「八犬伝」は、「『南総里見八犬伝』の作者で在る滝沢馬琴と其の家族等を描いたシーン。」と「『南総里見八犬伝』内で描かれる8剣士のシーン。」が、交互に映し出されて行く。色々意見は在るだろうけれど、個人的には「『南総里見八犬伝』内で描かれる8剣士のシーン。」"だけ"で良かった様に思う。8剣士の描かれ方が、思っていた以上に良かったので、余計にそう感じた。
「信乃と現八が、芳流閣で相見える場面。」、「女装した毛野(板垣李光人氏の何と美しい事か!)が舞を舞い乍ら、仇の扇谷定正(塩野瑛久氏)を討とうとする場面。」、「大角が、亡霊に肉体を乗っ取られてしまった父親を討つ場面。」等々、「新八犬伝」でも描かれた名場面がきちんと映像化されていたのは感動したし、又、網乾左母二郎(忍成修吾氏)や船虫(真飛聖さん)等の"御馴染みの悪役"が登場していたのは嬉しかった。
28年間という長い年月を掛けて完結した「南総里見八犬伝」だが、晩年に失明した滝沢馬琴に代わって、息子の嫁・お路(黒木華さん)が8ヶ月を掛けて口述筆記した事で、無事完結したと言う。「漢字が満足に書けなかった。」とされる彼女が、必死になって口述筆記した事で、彼の名作が完結出来た訳で、其れを思うとお路の存在は非常に大きかったのだ。
親兵衛役の藤岡真威人氏が俳優・藤岡弘、氏の子息なのは知っていたが、小文吾役の佳久創氏が嘗てドラゴンズ等で投手として大活躍した郭源治氏の子息というのを、今回初めて知った。
「『南総里見八犬伝』の作者で在る滝沢馬琴と其の家族等を描いたシーンは不要。」という思いが在り、其の点は"減点ポイント"に成ってしまうが、「『南総里見八犬伝』内で描かれる8剣士のシーン。」はとても良かった。
総合評価は、星4つとする。