ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「海の底」

2013年07月13日 | 書籍関連

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4月。桜祭りで開放された米軍横須賀基地停泊中の海上自衛隊潜水艦「きりしお」の隊員が見た時、喧噪は悲鳴に変わっていた。後に“レガリス”と呼ばれる事になる、巨大な赤い甲殻類の大群が基地を闊歩し、次々に人を襲い、そして食べ始めたのだ。

 

自衛官として問題児扱いされていた夏木大和(なつき やまと)三尉冬原春臣(ふゆはら はるおみ)は、救出した子供達13人と潜水艦へ立て籠もるが、彼等は何故か“歪んでいた”。

 

一方、警察自衛隊、そして米軍駆け引きする中、機動隊凄絶な戦いを強いられて行く。

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小説「海の底」は、著者有川浩さん曰く「海の底から来た奴等」という意味のタイトルで、「奴等」とは環境の変化によって巨大化した“躄蟹擬き”を指す所謂自衛隊シリーズ」に当該し、先日紹介した「空の中」が航空自衛隊を題材にしているのに対し、「海の底」は海上自衛隊を題材としている。

 

植物図鑑」では「植物」に対して、「図書館戦争」では「書籍」に対して、「県庁おもてなし課」では(有川さんの故郷)「高知県」に対して、「阪急電車」では「ローカル線」に対してと、様々な分野の事柄に深い愛情を見せる有川さんだが、「空の中」と同様に「海の底」では、「自衛隊」に対する深い愛情が垣間見える。其の知識も含め、“女・石破茂”といった感じ。

 

有川さん自身が「SF小説」というのに固執してしまったなのだろうか、「空の中」は回りくどい記述が多い等、非常に読み難い所が在ったのだけれど、「海の底」は“良い意味で”エンターテイメント徹した小説だと思う。一部にスプラッター映画的なシーンも見受けられるが、ストーリー展開が読者の関心をぐいぐい惹き付け、最後一気に読み進んでしまった。

 

「警察」及び「自衛隊」という“組織が抱える苦悩をさらりと読者に訴える一方で、「夏木と(立て籠もった子供達の中の1人で、女子高校生の)森生望(もりお のぞみ)とのもどかしい恋の行方」で読者を翻弄させるのは、恋愛小説の女王”ならではのテクニック。最後の最後にああいう展開になるとは・・・本当に上手い

 

敢えて残念な点を言えば、超難敵という感じで描かれていたレガリスなのに、後半では「呆気無く倒されてしまったなあ。」という感じがする事。もう一山も二山も、盛り上げ場所が在っても良かったかなあ。という思いは在る。

 

総合評価は、星3.5個 


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2 コメント

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Unknown (マヌケ)
2013-07-13 17:50:40
百田尚樹コーナーに有川浩コーナー、それに夏休みも近いので中高生向けの夏いちコーナーなども。 有川浩さんの作品は最後のハッピーエンドがいつも心地よいです。 中高生の読書感想文の課題にもよいと思います。 吉田修一の「さよなら渓谷」を以前に読んだことに気づかずに購入してしまい、途中から気づいて二度読みになりました。 今は伊坂幸太郎の「オー!ファーザー」と青来有一の「爆心」を併読中です。 そういえば、海上自衛隊の潜水艦の乗組員との恋を描いた有川浩さんの「クジラの彼」という作品もありましたね。 この作品で潜水艦というのはその性質上隠密活動することが通常で、乗組員もたとえ家族や恋人といえども作戦に入れば行き先や行動時間が何日におよぶかまでも口にすることができないという特殊な任務にあることが描かれています。 どうして有川浩さんはこれほどまでにミリタリー系のオタクなのでしょうか。 阪急電車でも、軍事オタクで奥手な大学生が登場して自衛隊のヘリコプターのうんちくを語る場面がありましたし。 
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>マヌケ様 (giants-55)
2013-07-13 20:46:09
書き込み有難う御座いました。

“飛ぶ鳥を落とす勢いの作家”と言えば、男性では百田尚樹氏、女性では有川浩さんといった感じですよね。共に其の作品を読んだのは、つい最近の事なのですが、今ではすっかり嵌っています。基本的には「恋愛小説」というジャンルが不得手なので、“恋愛小説の女王”と呼ばれる有川さんの作品は避けていた面が在るのですが、軍事系のテーマが多い等、男性作家的な匂いが結構在る事も在り、「単純な恋愛小説」というのとは雰囲気が違うのも、彼女の作品に魅了される所かもしれません。

「石破茂氏vs.有川浩さん」という組み合わせでの軍事対談っていうのを、是非見てみたい。“政党色”を排除した物でというのが前提ですが。
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