女優の赤木春恵さんが今朝方、心不全で亡くなられた。94歳という年齢を考えれば、大往生と言って良いのかも知れないが、幼い頃よりずっと目にして来た有名人の訃報は、何とも言えない寂しさを感じてしまう。
赤木さんの存在を初めて知ったのは、ドラマ「水もれ甲介」(動画)だったろうか。主人公・三ッ森甲介(石立鉄男氏)の継母・三ッ森滝代役を演じていた。「血の繋がらない息子に対し、深い愛情を注ぐ母親。」というのが、非常に印象的だった。
「おんな太閤記」(動画)のなか役、「赤い激突」(動画)の大谷松子役、「渡る世間は鬼ばかり」(動画)の小島キミ役等、印象に残る役を多く演じて来た彼女だが、大好きだったドラマ「3年B組金八先生シリーズ」の君塚 美弥子校長役は特に忘れられない。スペシャルを除けば、第1シリーズ、第2シリーズ、第4シリーズ、そして第7シリーズ(元校長という役)と4つのシリーズに出演されたが、校長役が実に似合った。合掌。
「3年B組金八先生シリーズ」と言えば、初期シリーズでは“受験戦争”と“家庭不和”が大きなテーマだった。1979年10月26日~1980年3月28日に放送された第1シリーズでは、激烈な受験戦争に悩む受験生達の姿を描くと共に、「優秀な息子を大事にする一方、中学生で子供を身籠もった娘を嫌悪する父親。」という形で家庭不和が取り上げられていた。其の父親は、大事にしていた息子が自殺した事で、娘に対する思いが変わって行くのだけれど、“エリート家族の悲劇”という一面が在ったと思う。
第1シリーズが終了したのは1980年。其の年の今日(1980年11月29日)、今も忘れられない大事件が発生した。“受験戦争”と“エリート家族の悲劇”が重なり合った「神奈川金属バット両親殺害事件」だ。父母と兄がエリートという家族に育ち、二浪状態に在った男子予備校生Aが、自宅で就寝中の父母を金属バットで撲殺した事件。当時は連日の様に、此の事件が大きく取り上げられていたし、比較的近所に知り合いが住んでいた事から、事件に関する話も良く聞いていた。
当時20歳だったAは、結局、懲役13年の刑が確定。1997年、刑期 満了で出所したと言う。存命ならば、還暦間近のA。自身が罪を犯した此の日、一体、何を思っているだろうか。