2年前、「老衰」という記事を書いた。「暴力団や被差別部落等、社会問題を扱った著書を上梓し、1984年~1985年に起きた『グリコ・森永事件』では、事件に関与したとされる“狐目の男”と疑われた事でも有名な作家の宮崎学氏が、76歳で亡くなられた。」事に関し、彼の死因が「老衰」だった事から、「76歳で、死因が老衰!?老衰って、もっと高齢な人の死因では?」と違和感を覚えたからだ。
で、色々調べてみた所、老衰の“意外な事実”を知った。詳しくは当該記事を読んで戴けたらと思うが、意外な事実を知って以降も、「老衰=結構な高齢者の死因」というイメージは完全払拭出来ていない。そこそこ高齢で在っても、「割合最近迄、元気に活躍していた印象が在る方。」が亡くなった際、其の死因が老衰だと、「老衰って・・・意外だなあ。」と思ってしまう。最近で言えば、「坂田利夫氏(享年82)と篠山紀信氏(享年83)の死因も老衰。」だった。
1月18日付けの「日刊ゲンダイ」に、「27年間で8.3倍増の老衰とは穏やかな最期なのか?」という記事が載っていた。老衰は近年急激に増えていて、厚労省発表の「人口動態統計2022年(確定版)」によると「老衰は1995年の総死亡数92万2,139人の内2万1,493人(男性:6,684人、女性:1万4,809人。総死亡者数に占める老衰死者の割合は約2.3%。)だったが、2022年には156万9,050人中17万9,529人(男性:4万9,964人、女性:12万9,565人。総死亡者数に占める老衰死者の割合は約11.4%。)と、27年間で約8.35倍に急増している。」のだとか。
「死因に於ける老衰の順位は、1995年の6位から、2022年には3位に上がっている。」、「老衰に於ける男性の割合は31%から27%に低下する一方で、女性の割合は68.9%から72.2%と増加。」、「『人口動態統計2022年(確定版)』によると、死因が老衰とされた年齢は『70代:5,938人、80代:5万573人、90代:10万4,492人、100歳以上:1万8,210人』となっているが、60代でも313人も存在した。」というのも、興味深い事実。
老衰が増えている理由は幾つか在り、「医学の進歩によって、“病気”で亡くなる人が減り、“天寿を全うする人”が増えた。」というのも事実だが、他には「嘗ては『死亡欄に死因不明の老衰と書く事を、“医学の敗北”と考える医師が多く、『心不全』等と尤もらしい病名を記していたが、其の後、死亡診断書記入マニュアルに、WHOのルールを理由として『(死亡の原因の欄には)疾患の終末期の状態としての心不全、呼吸器不全等は書かない様にします。』との注意書きが加わった。」事等が在り、最も大きな理由として「本人や家族も老衰を望む様になった。」というのが在ると。「老衰には苦しむ事無く、穏やかに旅立った。」、「充分生き切った。」というイメージが一般的に在り、勿論、医師は死因に虚偽を書く事は出来ないけれど、85歳以上では基本、(家族がホッと出来る意味でも)原因死に老衰と書く事が多い様に思います。」という医師の証言も。
で、元記事によると、「老衰=眠る様な死」というイメージが一般的に在るけれど、確かに9割程はそういう“穏やかな死”。でも、老衰で在っても苦しむ場合が在り、其れは「自然死に向かう最期の段階で、其れに逆らうかの様な不必要な治療を施すケース。」だと。具体的には「『食べられないのは可哀想。』と無理に食べさせて、誤嚥性肺炎を引き起こす場合。」、「『せめて水だけでも・・・。』と過剰に水分を取らせたり、不必要な点滴をしたりして、心臓に負担を掛けさせたり、腹水を増やしたり、痰絡みが続く等、患者に余計な苦しみを負わせる場合。」等だそうだ。