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ブラック企業にとって人など燃料用の薪にすぎない。灰になろうが、二酸化炭素を大量に排出しようがかまわない。命の熱を金に換えることができるなら、それで十分。人を壊してつかい捨てる企業は、古の公害垂れ流し企業と変わらないんだが、もうあまりに数が多すぎて野放し状態だ。企業経営に環境基準は適用されない。 「西一番街ブラックバイト」より
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石田衣良氏の人気小説「池袋ウエストゲートパーク・シリーズ」。外伝を除くと、今回の「西一番街ブラックバイト 池袋ウエストゲートパークⅫ」は第12弾となる。
4つの中編小説から構成されているが、何れも“現代社会が抱える闇”を取り上げていて、読み応えが在る。
又、「立教通り整形シンジケート」では「派手だけれど意味不明なCMに、自身が登場している美容外科医。」、そして「西一番街ブラックバイト」には「2年前、大々的に批判されたブラック企業のトップ。」(2人共、胡散臭さでは双璧だが。)がモデルと思われる人物が登場する等、キャラクター面でも作品世界に引き込まれる。特に、「普段はクールで、人に弱い面を見せない様な“キング”の“本当の姿”。」が垣間見られる「西一番街ブラックバイト」は、此のシリーズのファンとしてグッと来る物が。
近年、「セックスを描く事こそ、人を描く事で在る。」と思い込んだ様に、執拗なセックス描写が目立つ石田作品には、辟易とした思いが在った。だからこそ、「そういう描写が無く、世の中の不条理な出来事に対してエッジの利いた表現力で斬り込む池袋ウエストゲートパーク・シリーズ。」の新作は、本当に嬉しい。