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ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

異論を許さない雰囲気

2010年11月18日 | 其の他

松平健氏の奥様が自殺された件、3年前より心を病まれ、苦しんでいたで在ろう本人は然る事乍ら、残された松平氏と幼子も気の毒でならない。母親に甘えたい盛りだろう幼子の事を思うと本当に不憫だし、心が痛む。苦しみ抜いた末の決断だったとは思うが、幼子の事を考えて自殺を思い留まって欲しかった。

妻を亡くした哀しみの中、松平氏は公演中の舞台を休まずに続けている。舞台を見た観客からは「深い哀しみの中、そんな雰囲気を全く見せずに舞台を務めている松平氏は役者のだ。」とか、「非常に立派。此れぞ役者魂と思った。」等、絶賛の声が上がっていた。マスメディアでも同様の論調散見される。「親の死に目遭えないのが、有名人の定め。」という捉え方が在り、哀しみを堪え乍らも仕事を続ける姿にグッと来る人が多いのは、自分も理解出来ない訳では無い。

唯、自分が松平氏の立場だったら、とても同様の事は出来ない。誤解しないで欲しいのだが、彼の姿勢を批判している訳では全く無く、あくまでも自分の場合は無理という話。「多くのファンが楽しみにしているのだから、舞台に穴を開ける訳にはいかない。」というのが松平氏の考え方として在るのならば、其れは其れで尊重するけれど、自分は「仕事」よりも「家族」の方を取る。親を含めた家族の死に目には絶対に立ち合いたいし、仕事が理由で立ち合う機会を放棄したら、一生後悔すると思うので。

自分と同様の思いを持ち乍ら、「親の死に目に遭えないのが、有名人の定め。」という言葉に縛られ、家族の死に目立ち合う事よりも仕事を優先させざるを得なかった有名人も結構居るのではないだろうか?「仕事よりも親の死に目に立ち会う事を選ぶなんて、有名人の風上にも置けない。」等と陰口を叩かれるのを恐れ、不本意不本意極まり無い決断を下し、一生後悔する事になったとしたら、其れは非常に不幸な事だ。

今から22年前に起こった或る一件が、自分は今でも忘れられない。「史上最強の助っ人」とも称され、1985年にはタイガースを日本一へと導いた大功労者のランディ・バース選手。其の彼が1988年、シーズン序盤急遽アメリカに帰国したのは、水頭症に罹患した幼子に手術を受けさせるだった。此の事に対するマスメディアの報道には、「家族の事で仕事を放棄するなんて、とんでもない事だ。」といった批判調の物が多かったと記憶している。「親の死に目に遭えないのが、有名人の定め。」といった思考(美学と言っても良いだろう。)がマスメディアの中に“も”根強かったのだろうけれど、個人的には強い違和感が在った。其の頃から「仕事よりも家族の方が大事。」という考えが、自分の中には在ったので。

当ブログでは過去に何度も書いている事だが、人其れ其れ色んな考え方が在って良いと思っている。皆が皆、一つの方向の思考しか存在し得ないというのは、実に不気味に感じるし。でも、どんな考え方を持とうが自由だけれど、自身の考え方を無理強いしてはいけないとも思っている。誰かが自身の考えを多くに無理強いした結果、異論を許さない雰囲気が出来上がったとしたら、其れは非常に恐ろしい事だから。

「御国の為に子供が命を捧げるのは、非常に名誉な事。」という雰囲気が出来上がり、徴兵制度に疑問を呈せないどころか、「非国民」とされるのを恐れ、偽りの笑顔で子供を戦地に送り出さなければならなかった親達が嘗て我が国に少なからず居た事実を忘れてはいけない。自国を守る為に命を失った者達を心より哀悼するのは自然な事だけれど、だからと言って特攻隊の兵士達等の生き方を「誰もが真似なければならない、在るべき姿だ。」と無理強いする雰囲気が在れば、其れは決して正しくないと思う。*1

*1 チャールズ・チャップリン吐い名言は幾つも在るが、次の言葉も非常に深い物を有していると思う。

私は祖国を愛しています。でも、祖国に『愛せ。』と言われたら、私は遠慮無く、祖国から出て行きます。


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
興行 (今井)
2010-11-18 05:29:21
松平氏の件は、簡単に言うと「お金」ですよ。
興行はある意味、博打と一緒で先行投資でお金を儲ける仕組みです。
野球選手のように代わりがいる場合は良いですが、一人のために試合中止になるのと一緒です。
体調不良で公演中止になった際の保険はありますが、この事例では保険もおりないかと思われます。
中止のためにチケット払い戻し、スタッフのギャラ、その対応に対する経費等等、損害金額は何千万になるでしょうから、松平氏の一存では決められないのが現実でしょうね。
優先したくても優先できない辛い仕事です。
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Unknown (冬はナベ)
2010-11-18 12:54:05
主役で代役がきかないこと、チケットの返金がきかないこと、告知もなされており、主催・協賛各社・プロモーター・広告代理店・放送局・公演会場・スタッフ・所属事務所など関係各所がキャンセルの場合に被る損害を考えるとおそらく数億とかになればその責任は重大であろうと想像されます。胸中察するに余りあります。
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>今井様 (giants-55)
2010-11-18 14:48:55
初めまして。書き込み有難う御座いました。

金銭補償の絡みは、確かに在るでしょうね。長期且つ大規模に興業を打てば、其の分中止による金銭保証は莫大な物になる。そういう事も在って中止(乃至は休演)したくても出来ないという現状が在るのだとすれば、松平氏に同情せざるを得ません。

以前より「此の手の理由で興業を中止(乃至は休演)せざるを得なくなった場合に保障して貰える保険は無いのかなあ?」と思っていたのですが、保険自体は在るものの、下りない可能性が高いのですね。勉強になりました。でも人情的に言えば、こういうケースで在っても保障される保険が在って欲しいですね。余りに気の毒だし、そういう保険が在る事で「周りの目を気にして休めない。」という人も休める環境作りがされるだろうし。

今後とも何卒宜しく御願い致します。
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>冬はナベ様 (giants-55)
2010-11-18 14:58:48
書き込み有難う御座いました。

上で今井様も書いておられますが、矢張り金銭補償の絡みも大きいのでしょうね。松平氏の一存だけでは決められないだろうし、其れを考えると本当に気の毒。こういうケースでもきちんと保障して貰える保険が在れば、救われる人も多いだろうに・・・。
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海外のアーティスト (spa supernova)
2010-11-19 13:25:18
ロックなど海外歌手の公演は日本でも欧米でも近年は客を呼べる歌手=高齢(60~80年代のスターが殆ど。アメリカの興行ベスト10見て「なんだこりゃ1984年なのか今は」と愕然としました)。なので本人体調不良も起こり易い、また、いわゆる「ドタキャン」も多いので、保険には必ず入っています。

日本の興行はどうなんでしょうね。
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>spa supernova様 (giants-55)
2010-11-19 14:40:07
書き込み有難う御座いました。

保険関係には全く無知なのですが、「タレント自身の問題でのキャンセル」と「タレントの家族の問題でのキャンセル」というのは、補償対象と成り得るか否かが異なるのかもしれませんね。もし後者が補償対象にならない現実が在るのだとしたら、何とか対象になる様変えて上げて欲しいです。浪花節的な観点からすれば「親の死に目に遭えず、必死で頑張る姿」というのは受けるだろうけれど、当人からしたら此れ程辛い事は無いと思うので。
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