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地球に向けて、巨大な小惑星“ダイス”が接近中。人類は、後5日で終わりを迎える。人々は其の瞬間、『裁きの刻』をどう迎えるのか?
高校生の漆原亮(うるしばら りょう)の姉・圭子(けいこ)が殺された。秋桜の咲き乱れる花壇で、全裸で胸にナイフを突き刺された姿で発見された姉は、亮にとって唯一の家族、“世界其の物”だった。恋人・日下部雪乃(くさかべ ゆきの)の事も其方退けで、亮は兎に角、犯人を見付け出し、自分の手で復讐したいと暴走。そして、“或る物”を手に入れる為、クラスの“禁忌”と呼ばれる異端児・四元美咲(よつもと みさき)に接触する。
優しく、美しかった圭子を殺したのは、圭子の恋人だったのでは?然し、其れが誰なのか判らない。犯人を追い求めて、亮は圭子が入っていた天文学同好会、そしてダイスを崇拝するオカルト集団「賽の目」に踏み込んで行く。
人類滅亡迄、後幾日も無い中で、何故、圭子は殺されなければならなかったのか?
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知念実希人氏の小説「神のダイスを見上げて」は、2023年10月15日から20日迄という、近未来の“5日間”を描いた作品。
2020年に発見された直径400kmの巨大な小惑星は“ダイス”と名付けられ、専門機関の軌道計算により、「2023年の秋には地球から数千万kmに迄接近するが、衝突の危険は無い。」と発表されたが、其の後、「地球に衝突し、全人類を跡形も無く消し去る可能性が在る。」という噂が世界中に広まって行く。衝突する可能性が在るのは、日本時間で「2023年10月20日午前10時13分」。
2023年10月8日、全裸で胸にナイフを突き刺された姿で、花壇に横たえられた漆原圭子は発見された。唯一の家族で在る姉を殺害された亮は、自身で犯人を見付け出し、そして殺害する事を決心する。ダイス衝突を恐れ、世界中が無秩序状態になって行く中、警察による捜査には全く期待が出来なかったし、何よりも「ダイス衝突が現実となれば、犯人は裁かれる事無く、自分達と共に滅亡する。」という事が許せなかったからだ。
「“未来SF”という色合いを帯びた“ミステリー”。」という感じ。“無秩序状態に向かっている日本”という設定だから、まあ何でも在りなのだろうが、其れにしても非現実的と思える設定も見受けられる。そういう部分、ミステリー好きは評価を下げる事だろう。
“犯行動機”に関しても、正直弱さを感じる。“人類滅亡”を前にして、非常に追い込まれた気持ちになったとしてもだ。
でも、“犯人当て”という面に関しては、意外性が在って、悪く無かった。“裏”の“裏”を読んで犯人を推理したけれど、全くの外れ。「予想外の人物が犯人!」と思いきや、どんでん返しで「もっと予想外な人物が真犯人!」という展開だったので。
先日読んだ同氏の「ひとつむぎの手」が、総合評価「星5つ」と余りに良い出来だったので、「今一つ。」という思いが拭えない。総合評価は星3つ。