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「やくみつる氏が持論展開、不適切動画投稿者に『モザイク報道は要らない。』」(2月23日、スポニチ)
漫画家のやくみつる氏(59歳)が23日、関西テレビ「胸いっぱいサミット!」(土曜正午)に出演。飲食店やコンヴィニで働く従業員による不適切動画をモザイク報道する事に付いて持論を展開した。
飲食店やコンヴィニエンス・ストア等の従業員が、食品を不衛生に扱う不適切動画を投稿する問題が多発。今年に入ってから中華料理レストラン「バーミヤン」、回転寿司チェーン「くら寿司」、コンヴィニ「ファミリーマート」や「セブンイレブン」等で“バイトテロ”問題が発覚し、会社側が謝罪している。
やく氏は「ネット配信している従業員達に、モザイク報道は要らない。」と言い、「“どうぞ御覧下さい。”とネット配信している訳ですから、望みを叶えて上げ様と。其れが、彼等にとっての御望みなら。」と主張した。
出演者の中尾ミエ(72歳)も、「此れは、悪巫山戯では無い。罪ですからね。巫山戯の範囲を超えてます。」と賛同した。
進行役の八木早希アナ(40歳)が、民放のモザイク報道に付いて、一般的には「18歳以下かどうか?」、「逮捕・起訴される可能性が在るかどうか?」によって判断するという規定が在ると紹介。
作家の乙武洋匡氏(42歳)は、「僕は、顔出し迄は慎重派なんです。と言うのも、今、此れだけネットでの“私刑”が蔓延っている中で、(不適切動画投稿は)“私刑”の材料を提供しているに過ぎないと思う。“私刑”を加える側のモラルを、何処迄信じて良いのかと思う。こういう事を遣らかした家族に迄、色々言って来る人が沢山居る。」と述べた。
やく氏は「バイトテロを遣らかす様な連中は、新聞読まない、テレヴィを見ない人も居て、こうやって話題になっている事も知らない可能性が在る。連中は基本、ネットは見る訳だから、ネット・ニュースは見ろと思いますね。」とコメント。
タレントの千原せいじ(49歳)は、「こんなもん、家族の教育やから。“こんな事したらアカン。”て、家族の教育の問題やから。社員教育でも何でも無いから。」と語った。
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相次いで発覚している“バイトテロ”には、強い憤りを覚えている。遣らかした連中からすれば“軽い気持ちからの御巫山戯”という事なのだろうが、店側からしたら堪らない。大きな損害を受け、過去には店を畳む事になったケースも在ったし。2月7日の記事「法的措置と同時に」の中で書いた様に、「被害を受けた店は“厳しい法的措置”を取るべきで、『軽い気持ちでした事かも知れないが、代償としてこんなにも重い罰(損害賠償請求等)が科せられるのだ。』という事を広く知らしめ、愚行の歯止めとする。」事が必要だと思っている。
そんな思いを持っている自分だが、やく氏が主張する「バイトテロをネット配信している従業員達に、モザイク報道は要らない。」というのには賛成出来ない。「“どうぞ御覧下さい。”と、ネット配信している。」というのは其の通りだろうが、遣らかしている連中の多くは「そういう行為が、何れだけ多大な被害を与えるのか。」を理解出来る程の“頭”を持っていないと思うからだ。
「こんなもん、家族の教育やから。“こんな事したらアカン。”て、家族の教育の問題やから。社員教育でも何でも無いから。」という千原氏の主張も其の通りだけれど、だからと言って乙武氏が言う様に「遣らかした家族に迄“私刑”が及ぶ。」事を懸念するし、何よりも「遣らかした連中だから、“私刑”を受けるのが当然。」という事にはならないだろう。“正義心”からで在っても、私刑は私刑。もっと言ってしまえば、正義心とかからでは無く、単に“ストレス発散”を目的として、面白おかしく“叩いている連中”も少なく無い様に思うし。
又、先月話題になった“暴行動画”の様に“一部を切り取られた動画”の様な場合や、(技術は進んでいるので)“顔等の加工が行われた動画”の場合等、モザイクが外されてしまったら、全く無実の人間が私刑を受け、多大な被害を受ける可能性も在るだろう。
そういう点を考え合わせると、自分は「バイトテロをネット配信している従業員達に、モザイク報道は要らない。」というのに賛成出来ない。法治国家で在る以上、罪は法によってのみ裁かれるべきで、私刑が介在する可能性は、徹底的に排除されなければならない。
戦の熱情が冷めぬうちにした蛮勇は、普段の人柄を示すものではないと思いますし、この根っこには、企業とバイトが、賃金の額を超える信頼関係を築けていない事にあると思います。
しょせん、解雇の自由なバイトであって、その立場の弱さ、というのは、義務感の弱さに通じる、と思います。これが、正社員とか、幹部とか、賃金だけでなく、立場を保証され、企業との関係も深い人であれば、問題だと思います。
それに、かようなバカはバカをやった者は現行犯であって、「容疑者」ではなく「有罪」であるのは確実ですが、いかなるおしおきを加えるのかを決めるのは裁判所です。ですから、裁判所で最終的な判決がでるまで、あくまで「容疑者」として扱うべきではないでしょうか。
千原氏の家庭の教育というのも一元的な見方ではないでしょうか。ろくでもない親から、ひじょうに優れた人物に育つこともあるでしょうし、ひじょうに良い両親から、バカ息子アホ娘が育つこともあります。
心情的にはやく氏に賛成なのですが、「自発的に自分の素顔をさらす」ネット動画投稿と、公的立場で報道するマスコミではおのずと意味が違ってくると思います。
その点マスゴミと揶揄されることもあるが、守るべき一線はちゃんと守っている点を高く評価したい。
私刑を危惧するgiants-55さんのお考えに同感です。
2月7日の記事「法的措置と同時に」の中でも同じ考えを書きましたので、「此の根っこには、企業とバイトが、賃金の額を超える信頼関係を築けていない事に在ると思います。」というのは、「そういう面“も”在ったのかなあ。」と思います。勿論、全部が全部では無いだろうし、仮にそういう背景が在ったとしても、バイトテロを行った事が許される訳では全く在りませんが。
“法治国家”や“容疑者”という切り口での御考え、全く其の通りだと思います。個々人が“心の中”でどう思おうが、其れは全くの自由だけれど、「裁くのは裁判所によってのみで在って、個人が私刑を加えるのは論外。」という大前提が崩れてしまうと、最早無法地帯になってしまう。
又、やく氏の「バイトテロを遣らかす様な連中は、新聞読まない、テレヴィを見ない人も居て、こうやって話題になっている事も知らない可能性が在る。連中は基本、ネットは見る訳だから、ネット・ニュースは見ろと思いますね。」というのは推測の上に推測を重ねた主張で在り、偏見の謗りは免れ得ない。
そういう意味で千原氏の主張も、そういう類いと言えるのでしょうが、でも「“家庭内の教育”というのは、子供にとって非常に大きな影響を与える。」というのは非常に確率の高い確かさが在ると思うので、此の点に関しては、彼の主張に頷けてしまう。
「心情的にはやく氏に賛成。」、八方美人的と言われてしまうかも知れませんが、此の考え方にも、共感出来てしまう自分が居ます。と言うのも、被害を受けた側、特に店を畳む事態になってしまったケースを考えると。バイトテロを行った輩に、強い憤りを覚えるからです。
バイトテロでは在りませんが、以前書きました様に、W杯で馬鹿騒ぎした輩(はっきり言って俄かファンだと思います。本当にサッカーを愛する人達ならば、結果としてW杯を貶める様な事はしないと信じるから。)によって、店の構造物が“破壊”され、泣き寝入りさせられた知り合いが居るので、こういう連中は本当に許せない。
でも、だからと言って、私刑が“公認”される世の中というのは、非常に恐ろしい。綺麗事に過ぎるかも知れないけれど、法治国家という“看板”を掲げる以上、罪は裁判によってのみ裁かれる物と思うので。