先日、青空百景様が高い評価をされていた小説「配達あかずきん 成風堂書店事件メモ」(著者:大崎梢さん)を読んだが、自分も満足の行く内容だった。其処で「『成風堂書店事件メモ』シリーズ」の第二弾「晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ(出張編)」を読む事に。
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2年前迄、書店「成風堂」で同僚として共に働いていた美保から、杏子に一通の封書が届いた。今は故郷に帰り、地元の老舗書店「宇津木書店」、通称「まるう堂」で働く美保の手紙には「まるう堂で幽霊が何度か目撃され、はが存亡の危機に立たされている。就いては成風堂のアルバイト店員で、名探偵として幾つかの謎を解いて来た多絵を連れて助けに来て欲しい。」と在る。
杏子は気が進まないまま、多絵を伴って信州の高原へと赴く。其処で待ち構えていたのは、27年前に弟子の手で惨殺されたと言う老大作家の死に纏わる謎だった。
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シャーロック・ホームズシリーズで言えば店員の杏子がワトスン役で、アルバイト店員の多絵はホームズ役。「半端無く不器用な癖に、鋭い洞察力&推理力を有するというアンバランスなキャラクター設定。」が多絵の魅力で在るが、今回の作品でも其れは変わらない。「『配達あかずきん 成風堂書店事件メモ』が短編集で在るのに対して、『晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ(出張編)』は長編で在る事。」そして「日常の中でポンと生じた出来事ばかりを取り上げたのが『配達あかずきん 成風堂書店事件メモ』ならば、『晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ(出張編)』は過去の血腥い殺人事件が絡んでいる。」というのが、第一弾と第二弾の大きな違いと言えるだろう。
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制服姿の駅員は多絵に向かい、「がんばって」、「期待してます」などと言い残し、足早に戻っていった。「どこに行ったのかと心配しちゃった。あの人、何?ナンパ?」。「杏ちゃんってば。ちがうちがう。たぶん『熱烈歓迎 名探偵さま』のひとりなのよ。顔を見たことあるわ。うちの店でミステリをいっぱい買う人よ。」。「ええ。そうおっしゃってましたよ。幽霊事件もよく知っているみたいでした。」。「でしょ。けっこう広まっているからね。なんて言われたの?」。「『この町の人たちの噂話には、耳を傾けたほうがいい。』って。」。「へー、ゲームの中のセリフみたい。楽しくなってきたでしょ。」。
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「『この町の人たちの噂話には、耳を傾けたほうがいい。』って。」という答えに対して、「へー、ゲームの中のセリフみたい。」という返し。書けそうで、意外と思い浮かばないユーモアではないか?こういった文章からも、大崎さんのセンスの良さを感じてしまう。
元書店員の大崎さん。一般人が窺い知れない「書店の実状」を描き上げ、本好きの人間としては堪らない。本に対して、そして書店に対して、深い深い愛情に溢れた内容なので。次の文章なんかは、読んでグッと来る物が在った。
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変わっていく中にあって変わらずにいるものもある。『自由自在』は昔から馬のマークの参考書であり、『ぐりとぐら』は仲良くかすてらを作り、『坊ちゃん』は文庫の棚にそっと収まる。そうやって変わらぬものたちを守り続け、雨の日も風の日も門戸を開けていた店が、ある日突然、シャッターを下ろしてしまったら。杏子は握った拳を、窓ガラスに押し当てた。これまでも物言わぬシャッターの前に立ちつくし、何度も心に穴の開くような思いを味わった。誠実で勤勉で客思いの良い本屋だったのに、「長い間ありがとうございました。」の一文で消えてしまう。無念さのにじむ文章で、「いつかまたお目にかかれますように。」と締めくくられた挨拶文もあった。ああいうのを見たくない。どうすれば見ずにすむのだろう。
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真犯人及び其の動機に付いては、比較的当て易いかもしれない。なのでミステリという観点からすると物足りなさを感じない訳では無いけれど、作品全体の出来は決して悪くないと思う。総合評価は星3.5個。
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2年前迄、書店「成風堂」で同僚として共に働いていた美保から、杏子に一通の封書が届いた。今は故郷に帰り、地元の老舗書店「宇津木書店」、通称「まるう堂」で働く美保の手紙には「まるう堂で幽霊が何度か目撃され、はが存亡の危機に立たされている。就いては成風堂のアルバイト店員で、名探偵として幾つかの謎を解いて来た多絵を連れて助けに来て欲しい。」と在る。
杏子は気が進まないまま、多絵を伴って信州の高原へと赴く。其処で待ち構えていたのは、27年前に弟子の手で惨殺されたと言う老大作家の死に纏わる謎だった。
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シャーロック・ホームズシリーズで言えば店員の杏子がワトスン役で、アルバイト店員の多絵はホームズ役。「半端無く不器用な癖に、鋭い洞察力&推理力を有するというアンバランスなキャラクター設定。」が多絵の魅力で在るが、今回の作品でも其れは変わらない。「『配達あかずきん 成風堂書店事件メモ』が短編集で在るのに対して、『晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ(出張編)』は長編で在る事。」そして「日常の中でポンと生じた出来事ばかりを取り上げたのが『配達あかずきん 成風堂書店事件メモ』ならば、『晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ(出張編)』は過去の血腥い殺人事件が絡んでいる。」というのが、第一弾と第二弾の大きな違いと言えるだろう。
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制服姿の駅員は多絵に向かい、「がんばって」、「期待してます」などと言い残し、足早に戻っていった。「どこに行ったのかと心配しちゃった。あの人、何?ナンパ?」。「杏ちゃんってば。ちがうちがう。たぶん『熱烈歓迎 名探偵さま』のひとりなのよ。顔を見たことあるわ。うちの店でミステリをいっぱい買う人よ。」。「ええ。そうおっしゃってましたよ。幽霊事件もよく知っているみたいでした。」。「でしょ。けっこう広まっているからね。なんて言われたの?」。「『この町の人たちの噂話には、耳を傾けたほうがいい。』って。」。「へー、ゲームの中のセリフみたい。楽しくなってきたでしょ。」。
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「『この町の人たちの噂話には、耳を傾けたほうがいい。』って。」という答えに対して、「へー、ゲームの中のセリフみたい。」という返し。書けそうで、意外と思い浮かばないユーモアではないか?こういった文章からも、大崎さんのセンスの良さを感じてしまう。

元書店員の大崎さん。一般人が窺い知れない「書店の実状」を描き上げ、本好きの人間としては堪らない。本に対して、そして書店に対して、深い深い愛情に溢れた内容なので。次の文章なんかは、読んでグッと来る物が在った。
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変わっていく中にあって変わらずにいるものもある。『自由自在』は昔から馬のマークの参考書であり、『ぐりとぐら』は仲良くかすてらを作り、『坊ちゃん』は文庫の棚にそっと収まる。そうやって変わらぬものたちを守り続け、雨の日も風の日も門戸を開けていた店が、ある日突然、シャッターを下ろしてしまったら。杏子は握った拳を、窓ガラスに押し当てた。これまでも物言わぬシャッターの前に立ちつくし、何度も心に穴の開くような思いを味わった。誠実で勤勉で客思いの良い本屋だったのに、「長い間ありがとうございました。」の一文で消えてしまう。無念さのにじむ文章で、「いつかまたお目にかかれますように。」と締めくくられた挨拶文もあった。ああいうのを見たくない。どうすれば見ずにすむのだろう。
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真犯人及び其の動機に付いては、比較的当て易いかもしれない。なのでミステリという観点からすると物足りなさを感じない訳では無いけれど、作品全体の出来は決して悪くないと思う。総合評価は星3.5個。

シンクロニシティーですね♪