児童文学作家を目指す日々 ver2

もう子供じゃない20代が作家を目指します。ちょっとしたお話しと日記をマイペースに更新する予定です。

再会

2021-01-06 | 物語 (電車で読める程度)
同じ車両に乗る人がどんな人か知らないように、

おそらく車窓に映る影が何者であるかわからないだろう。

右端からこぼれた都会の明かりが次々に左へと消えてゆく。


目を凝らせば、父も母も、祖父も祖母も、兄弟も姉妹も、従兄弟も親戚も、友人も知人も、二度と会いたくない人ももう一度会いたい人も、みんないた。

光は音かもしれない

音は文字かもしれない

目の前を横切る羅列は

線となって軌道を描き

一筋の稲妻のような

かけ上がる旋律のような

噛み締める物語のような

ありふれた人の一生のような

そんな気がした


過ぎ去った流星を、

消えた前の楽章を、

破られた前の貢を、


追いかけることはできないけれども



吹き込むすきま風から
よく知る匂いが鼻をくすぐった。



そうやって、度々再会した




そのうち、
どこかで別れた自分とも出会った





気付かれないように
息をひそめた



目頭が熱くなった。




【おわり】