ないものを数えて
後ずさるよりも
あるものを思い出して
抱きしめるほうがいいね
春風のアルペジオ
くるくるステップするベースライン
えらい人の言葉はぴんとこない
だから、大してえらくない言葉に
耳をすました
両耳から流れ込む思い出に
心をひたした
いまじゃないあの日を歩く
深く息をすった
肺にたまったグロテスクなものを
都会の淀みにとかした
これまで、大事にしてきたものは
いまでも、大事にできているだろうか
両手はもうかじかんでうごかなかった
マッチのない僕はどこに火を灯せばいいんだろう
ささやかな魔法使いでいたい
半径0.5mの平和を守れるような
そんな魔法が褪せないよう
握りしめていたい
幼い願いだ
けれども、それでいいとおもった
【おわり】