児童文学作家を目指す日々 ver2

もう子供じゃない20代が作家を目指します。ちょっとしたお話しと日記をマイペースに更新する予定です。

憂焼け

2021-01-26 | 物語 (電車で読める程度)
しんどい

しんどい

もう何回失望されれば気がすむんだろう

もう何回惨めな思いをすれば気がすむんだろう


焼け落ちる寸前の太陽が
絶命する間際

なにかが溶けだして、
重く纏わりついていた


安直にも帰りに好きだったラーメン屋に寄った。

こってりした味がかえって吐き気をもようした。

なんのために、って言葉が口をつく

続きに意味はなくて、ただ憂鬱だった


袋小路に迷い混んだ

自分で進んで迷い混んだ


憂鬱の原因は仕事だし

仕事の原因は職場環境だし

職場環境の原因は人間関係だし

人間関係の原因はどんくさい自分だし

どんくさい自分の原因は自分の低い能力だし

自分の低い能力の原因は頑張っても空回るなんか昔からの呪いだし

頑張っても空回るなんか昔からの呪いの原因は自分の生まれながらの気質だし

自分の生まれながらの気質の原因は自分が生まれたことなんだろう

自分が生まれた原因は父と母にあるし

父と母の原因は父と母の生まれ育ちによるのだろう

父と母の生まれ育ちの原因は父と母と父と母の父と母なんだろう

父と母と父と母の父と母の原因はさして興味もないけれど父と母の父と母と父と母の父と母の父と母なんだろう

さして興味もないけれど父と母の父と母と父と母の父と母の父と母の原因は父と母の……

職場から遠ざかるにつれ、胸の痛みは静まり、先程のニンニク臭が喉に絡み付いた。




せめて自分が生まれたことぐらいは否定したくはなかったし、自分の愚鈍さを父と母のせいにもしたくなかった。ただ上手くいかないことにやけくそに当たり散らしたかった。

定期券の右端駅に着く


外を眺める

ここは安全なところだ

ドックに滑りこむ潜水艦だ

暗闇に保安灯が鈍く光る


格納された棺が今日の無事を祝うのはひどく滑稽だった。

帰宅後

少しだけを酒を飲んだ。

少しだけ長く息を吐いた。

少しだけ目を閉じた。

少しだけ明日を信じた。





【おわり】