児童文学作家を目指す日々 ver2

もう子供じゃない20代が作家を目指します。ちょっとしたお話しと日記をマイペースに更新する予定です。

顔のない戦争

2021-01-14 | 物語 (電車で読める程度)
頁をめくり、数字ばかりのランドマークを歩いた。

殺戮者の顔出し看板に顎を当ててみた。

ごく普通の人だったんだろう

ごく普通の人が

至極当たり前にしんで

よくころしたんだろう

そうするしかほかない檻に閉じ込められて

愛のために優しい人が愛を知る人をころしたんだろう


よかった、

今はあまり頭が吹き飛ぶこともないし、
尊厳を踏みにじられた奴隷になることもない

愛する人のためにという檻のなかで
この世で一番大切な人が
優しい人をころさなくてもいい


逃げたしたって

失敗したって

文句をいったって

処刑されることもない


よかった




命を軽んじられる檻に閉じ込められなくてよかった。



けれども、いつのまにか大きなその檻が

音も立てずに狭まっていたとすればどうすればいいんだろう。

おそろしい


きっと戦争は日常の顔をしてやってくる

きらきらとした戦争のゲートをくぐった。

戦争ランドで戦争ライドに乗って戦争にゃんと一緒に記念写真を撮って、帰りに戦争土産に戦争饅頭を買った。

楽しかった

おもしろかった

ちょうどいいおもいでになった

そのうち、人をころすことは仕方のないことだとちゃんとおもえるようになった




顎がぴたりとはまった





【おわり】