令和3年3月30日、みそかである。
みそかが巡りくると、晦は月籠り、つごもりである。
みそかと、密か、ひそかを想い合わせて、みそかには語が多い。
日国大
ひそ‐か【密か・窃か・竊か・秘か・潜か・陰か・私か】
〔形動〕(「か」は接尾語。漢文訓読系の語で、和文系ではおもに「みそか」を用いた)
1 人に知られないようにするさま。
人に見聞きされないようにするさま。こっそり。*石山寺本金剛般若経集験記平安初期点「潜(ヒソカニ)隠れて聞けば」
自分の心の中で、人知れず、思ったり、考えたりするさま。内々。*石山寺本金剛般若経集験記平安初期点「秘(ヒソカニ)心に自ら念ずらく」
仲間だけで、外にもれないように、小声で話したりするさま。*土左「ひそかにいふ」
2 公的な物事を個人のものとするさま。私するさま。*平家‐四「ほしいままに国威をひそかにし」
みそか【密】
ひそか。ないしょ。大和物語「むすめの内裏うちにたてまつらむとてかしづきけるを、―に語らひけり」
⇒みそか‐お【密男】
⇒みそか‐おとこ【密男】
⇒みそか‐ごころ【密心】
⇒みそか‐ごと【密事】
⇒みそか‐ぬすびと【密盗人】
⇒みそか‐びと【密人】
⇒みそか‐ほうし【密法師】
⇒みそか‐め【密女】
例文
・・・毎月の月給が晦日の晩になっても集金人が金を持って帰るまでは支払えなくて、九時過ぎまでも社員が待たされた事が珍らしくなかった。随って社員は月末の米屋酒屋の勘定どころか煙草銭にもしばしば差支えた。が、社長沼南は位置相当の門戸を構える必要があった・・・ 内田魯庵 「三十年前の島田沼南」
・・・そうして、そういう冷やかな態度を取らなければ満足の出来ない自分を密かに悲しみはしなかったか。 自分の内には、永い間、押えつけているものと押えつけられている者との間の争闘があった。苦痛が絶えず心を噛んでいた。この苦痛は主我の思想によって転・・・ 和辻哲郎 「自己の肯定と否定と」
密かで始まる言葉
ひそ‐か【密か/窃か/私か】
[形動][文][ナリ] 1 人に知られないように物事をするさま。「―に計画する」「―に思いを寄せる」 2 公のものを私物化するさま。「(清盛ハ)ほしいままに国威を―にし」〈平家・四〉
ひそか‐ごと【密か事】
ひそかにすること。みそかごと。「臣(やつかれ)等、其の―を知らず」〈舒明紀〉
みそか【密か】
[形動ナリ]人に知られないようにこっそりするさま。ひそか。「人にも知らさせ給はで、―に花山寺におはしまして」〈大鏡・花山院〉
みそか‐お【密か男】
「みそかおとこ」に同じ。「―の首代(くびしろ)なり」〈読・近世説美少年録・三〉
みそか‐おとこ【密か男】
忍んで人妻のもとへ通う男。また、夫のある女がそのような男をもつこと。密夫。間男(まおとこ)。みそかお。「妻(め)の―したりけるを見つけて」〈後撰・雑四・詞書〉
みそか‐ごころ【密か心】
人に隠しだてする心。ひそかな恋心。「―つきたる、ものの娘などは」〈源・蛍〉
みそか‐ごと【密か事】
1 秘密のこと。ないしょごと。「―して父母などに見られしに驚く小児に似たりき」〈鴎外訳・即興詩人〉 2 男女がひそかに情を通じ合うこと。密通。「突然―を発(あば)き立てられたので」〈谷崎・少将滋...
みそか‐ぬすびと【密か盗人】
こそどろ。「―の、さるべきものの隈々(くまぐま)にゐて見るらむをば誰かは知る」〈枕・一二四〉
天体に興味をお持ちの方の発想は興味深いです。
朔には明ける意味があるのか、「正朔」。
一方で、月が太陽と同じ方角にある、「新月」。→望
「晦渋」「韜晦」、かい‐さく〔クワイ‐〕【×晦×朔】
>「是より始めて、昼夜、―春秋、あり」〈神皇正統記・序〉
天体観測は(月蝕などの掩蔽以外では)月のない夜に行うものなので、けっこう月齢を気にする人もいるようです。あとは、潮汐を気にする漁師さんや釣り人でしょうか。もっとも「潮時表(しおじひょう)」は気にしても月までは気にしない、ということはあるかもしれません。
「望日」はありそうですが、見聞きしたことがありません。「望月」は「もちづき」なのでわかりやすいですが。