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し合わせ 人間関係と信頼度

2016-03-14 | わくわく
TED Technology Entertainment Design の頭文字をとったもの、米国発のビデオコンテンツというが、プレゼンテーションでの内容を持つ。TEDxと称するイベントが各地で開催されている。NHK番組のスーパープレゼンテーションにも見える。1984年にスタートしたTED、それはIdea Worth Spreadingのコンセプトのもとに幅広いジャンルのプレゼンテーションを提供している。2009年から2013年、4年間で、TEDxカンファレンスの開催は世界133カ国、1200市町村にまで拡大した。その数は4300に達して、日本では、TEDxTokyo、TEDxSeeds、TEDxSapporo、TEDxKyoto、TEDxTohokuと地方で開催、TEDxTodai、TEDxKeioSFC、TEDxWasedaなど大学を中心に開催されるものがある。

>TEDが主催している講演会の名称をTED Conference(テド・カンファレンス)と言い、学術・エンターテイメント・デザインなど様々な分野の人物がプレゼンテーションを行なう。講演会は1984年に極々身内のサロン的集まりとして始まったが、2006年から講演会の内容をインターネット上で無料で動画配信するようになり、それを契機にその名が広く知られるようになった。

https://www.youtube.com/user/TEDxTalks?hl=ja&gl=JP
TEDx Talks



次の新聞記事は2015年秋にボストンで開かれたイベント、TEDxの講演会をもとにした、エコノミストのものである。


時代の風
幸せな人生をつくるもの=元世界銀行副総裁・西水美恵子
http://mainichi.jp/articles/20160313/ddm/002/070/050000c
毎日新聞2016年3月13日 東京朝刊 コラム
解説


いい人間関係に尽きる

 「幸福追求の経営理念」と題した本欄(2014年1月26日)以来、よく読者から問われる。エコノミストなのに、なぜ人の幸せにこだわるのかと。

 エコノミストだから、こだわる。国も組織も成すのは人間。家庭がそうであるように、不幸な人々が豊かな住み心地のいい社会や、持続性が高く働きがいのある企業などを作ることは、無理だろう。

 そう答えながら、いつも内心恥ずかしかった。心理学その他多様な分野の研究によると、幸せの理由は人さまざまだ。国民や、地域の住民、会社員など多くの人に共通して幸せをもたらす普遍的な理由はないというのが、常識らしい。幸福の根拠が個々別々なら、政策や経営には役立たず。エコノミスト失格である。

 その常識をくつがえす研究結果が、昨年秋にボストンで開かれたイベント「TEDx」で発表された。多様な分野のリーダーが「広める価値のあるアイデア」を披露し、刺激し合って、世のため人のためになろうという趣旨の集いである。NHK番組「スーパープレゼンテーション」で、ご存じの読者も多かろう。

 米国ハーバード大学の臨床心理医学教授ロバート・ウォルディンガー博士が、自ら率いる「ハーバード成人発達研究」について発表したのだ。1938年から今日まで継続され、史上最も長い研究としても知られる。戦前から戦時中のハーバード大学卒業生268人と、当時ボストンのスラム街に住んでいた若者456人の心身健康診断に始まった研究で、後に彼らの配偶者と子孫も加え、人生のさまざまな側面を約75年間詳しく追跡調査してきた。

 博士は、「何がいい人生をつくる?」と題した講話で、答えは「いい人間関係に尽きる」と言い切った。豊富なデータの分析結果は「量より質」。家族や、友人、地域社会の人々などとの「信頼度の高い」関係が、幸せな人生の根拠だと判明したそうだ。その上健康にもよく、特に脳の健全な働きを守ることも分かった。

 博士の講話を聞き終えた時、長年自分の脳の中心にかかっていた霧がサッと晴れたような気がした。

 振り返ってみると、その霧は大学院時代に始まったと思う。博士論文の研究で、生産性には、資本と労働、技術だけでは説明できない何かがあると、察知した。簡単に言うと、全く同じ技術を持つ労働者が同じ機械を使っても個人の生産性が異なる、と考えるといい。この差を推定したところ、経済成長に相当の影響を与えうるほど大きかった。

 働く人の心構えだろうかと、心理学や経営学などを雑学的に読む癖がついたのも、その頃だった。しかし、一介の大学院生に解ける問題ではなかった。

 ヒントを得たのは、ブータンの先代国王、雷龍王4世に拝謁し、王の政治哲学「国民総幸福」を拝聴した時だから、もうふた昔前になる。「いつの世も不幸な民が国を滅ぼすと、世界史が教える」とのお言葉に、体に電流が走ったような気がしたのを覚えている。

 親から子へまたその子へと、何世代も極貧から抜け出せない鬱憤が、若者を犯罪やテロにはしらせるパキスタンやアフガニスタン。そういう国の草の根でホームステイをした体験から、国王の思考が腑(ふ)に落ちた。

 国家政治がそうならば、企業組織でも人の幸せは重要だろうと、当時勤めていた世界銀行の組織改革に国王の哲学を応用した。目的は、職員とその家族の幸せ。それを妨げる規則や、慣習、組織の形と文化は、職員が一番よく知る。彼らに問題を発掘してもらい、皆で力を合わせて変える参加型プロセスの改革にした。

 目的とプロセスを話し合い、皆が納得したとたんに改革が加速。その上、仕事の量と質に地殻変動のような上昇が起きた。組織改革は生産性を下げるのが常なのにと、経営学者の知人がしきりと首をかしげた。幸せが生産性に与える威力を実感した経験ではあったが、参加型プロセスが必然的に生む「信頼度の高い」人間関係がその根拠だとは、思いもよらなかった。

 ウォルディンガー博士のおかげで、日本の未来を見つめる時の問題意識が変わった。スマホとつけっ放しのテレビ。人口の大都市圏集中。口先だけの地方分権。そして、投票率の低迷がほのめかす政治不信……。

 それぞれみな、人間関係と、その信頼度に関わる。


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