鄒の孟軻の母、鄒は出身地、今の山東省鄒県のあたりという、孟軻は孟子のこと、孟子の母が居所を三遷したという故事成句である、孟母三遷について記す、列女伝を伝える蒙求に見える言葉である。断機之戒 だんきのいましめ、孟母断機 もうぼだんき とも言う。断機は、織りかけた機の糸を断ち切ることで、孟子が学業半ばにして帰省した際,孟子の母が織りかけの機の糸を断ち切り,学業を中途で放棄することはこのようなものであるといましめた故事を所載する。孟母断機の戒めである。
母親が子の教育のために三回違った場所に住んだこと、子供の教育には環境がいかに大切であるかというたとえとその意味が説明される、その故事の書き出しの言葉である。
>孟軻 … 孟子。軻は名。字は子輿。
http://kanbun.info/koji/mobosansen.html
〔蒙求、一三四 軻親断機〕
古列女傳、鄒孟軻母、其舍近墓。孟子少嬉遊、爲墓之事。孟母曰、此非吾所以居處子也。乃去、舍市傍。其嬉戲乃賈人衒賣之事。又曰、此非吾所以居處子也。復徙舍學官之旁。其嬉戲乃設爼豆、揖讓進退。孟母曰、眞可以居吾子矣。遂居。
蒙求に見える、軻親断機とは、物事を途中でやめてしまったり、諦めてしまってはいけないという戒め、学問のことを指している。軻親は孟子つまり孟軻の母親のこと、断機は織りかけている機の糸を途中で切ることである。
http://yoji.go-kanken.com/yojid/1627.html
> 孟子が学問を投げ出そうとしたときに、孟子の母親は織り途中の機の糸を切断して「学問を途中でやめることは、この織物と同じようなものだ」と言って戒めたという故事から。
列女伝は、中国の前漢の劉向によって撰せられた、女性の史伝を集めた歴史書とある。
中島みどり訳注 『列女伝』 平凡社東洋文庫全3巻、2001年 完訳 がある。
web漢文大系によって、読み下しを見る。
仮名書きにする。
>
これつじょでんにいう、すうのもうかのはは、そのしゃはかにちかし。
もうししょうにしてきゆうするに、ぼかんのことをなす。
もうぼいわく、これわがこをきょしょするゆえんにらず、と。
すなわちさりて、いちのかたわらにしゃす。
そのきぎするやすなわちこじんげんばいのことなり。
またいわく、これわがこをきょしょするゆえんにあらず、と。
またうつりてがくかんのかたわらにしゃす。そのきぎするや、すなわちそとうをもうけ、ゆうじょうしんたいす。
もうぼいわく、しんにもってわがこをおくべし、と。
ついにおる。
>孟子の母が孟子の教育のために三回違った場所に住んだこと。子供の教育には環境がいかに大切であるかというたとえ。
◦賈人 … 商人。
◦衒売 … 売ること。
◦徙り … 移る。
◦学官 … 学校。
◦俎豆 … 祭礼に使う祭器。
◦揖譲 … 敬礼。
〔蒙求、一三四 軻親断機〕
及孟子既學而歸、孟母問學所至。孟子曰、自若也。孟母以刀斷其織曰、子之廢學、若吾斷斯織也。孟子懼、旦夕勤學不息。師事子思、遂成名儒。君子謂、孟母知爲人母之道。
もうしすでにまなびてかえるにおよび、もうぼがくのいたるところをとう。
もうしいわく、じじゃくたり、と。
もうぼかたなをもってそのしょくをたちていわく、しのがくをはいするは、われのこのしょくをたつがごとし。
もうしおそれ、たんせききんがくしてやまず。
ししにしじし、ついにめいじゅとなる。
くんしいわく、もうぼはひとのははたるのみちをしれり、と。