万葉集にある叙景歌の美しさは第28番歌に続く。
きたるらし、ころもほしたり 実写か、きにけらし、ころもほすてふ 伝聞か、そのありようである。
写生を自然にうたったものである。
柿本人麻呂の歌 第29番歌である。
近江の荒れたる都を過ぐる時に、柿本朝臣人麻呂が作る歌
たまたすき うねびのやまの かしはらの ひじりのみよゆ
あれましし かみのことごと つがのきの いやつぎつぎに
あめのした しらしめししを そらにみつ やまとをおきて
あをによし ならやまをこえ いかさまに おもほしめせか
あまざかる ひなにはあれど いはばしる あふみのくにの
ささなみの おほつのみやに あめのした しらしめしけむ
すめろきの かみのみことの おほみやは ここときけども
おほとのは ここといへども はるくさの しげくおひたる
かすみたつ はるひのきれる ももしきの おほみやところ
みればかなしも
反歌
ささなみの しがのからさき さきくあれど おほみやひとの ふねまちかねつ
ささなみの しがのおほわだ よどむとも むかしのひとに またもあはめやも
歌の引用は国歌大観番号、角川日本古典文庫を用いる。
この書の注釈と解説による。
伊藤博校注 万葉集 上下巻 角川書店
世界大百科事典 第2版の解説
じょけいか【叙景歌】
和歌を性格上から分類した用語。自然の風物を主観を交えず客観的に表現した歌。したがって叙事詩などとともに抒情詩と対立する概念の歌をいうが,和歌は本来抒情詩の一種と見るべきものであり,主観を排した表現であっても自然の風物そのものが作者の感情の象徴的表現となっていると考えられる場合が多く,純粋な叙景歌は求めにくい。要は和歌の本質に即した分類とは言えず,概念にもあいまいさが残る。しかし,日本では自然の景観への関心が《万葉集》時代から発達し,後世ますます深化して叙景的要素の濃い歌が多く作られているのも否定できず,それらを便宜叙景歌と呼ぶこともできよう。
きたるらし、ころもほしたり 実写か、きにけらし、ころもほすてふ 伝聞か、そのありようである。
写生を自然にうたったものである。
柿本人麻呂の歌 第29番歌である。
近江の荒れたる都を過ぐる時に、柿本朝臣人麻呂が作る歌
たまたすき うねびのやまの かしはらの ひじりのみよゆ
あれましし かみのことごと つがのきの いやつぎつぎに
あめのした しらしめししを そらにみつ やまとをおきて
あをによし ならやまをこえ いかさまに おもほしめせか
あまざかる ひなにはあれど いはばしる あふみのくにの
ささなみの おほつのみやに あめのした しらしめしけむ
すめろきの かみのみことの おほみやは ここときけども
おほとのは ここといへども はるくさの しげくおひたる
かすみたつ はるひのきれる ももしきの おほみやところ
みればかなしも
反歌
ささなみの しがのからさき さきくあれど おほみやひとの ふねまちかねつ
ささなみの しがのおほわだ よどむとも むかしのひとに またもあはめやも
歌の引用は国歌大観番号、角川日本古典文庫を用いる。
この書の注釈と解説による。
伊藤博校注 万葉集 上下巻 角川書店
世界大百科事典 第2版の解説
じょけいか【叙景歌】
和歌を性格上から分類した用語。自然の風物を主観を交えず客観的に表現した歌。したがって叙事詩などとともに抒情詩と対立する概念の歌をいうが,和歌は本来抒情詩の一種と見るべきものであり,主観を排した表現であっても自然の風物そのものが作者の感情の象徴的表現となっていると考えられる場合が多く,純粋な叙景歌は求めにくい。要は和歌の本質に即した分類とは言えず,概念にもあいまいさが残る。しかし,日本では自然の景観への関心が《万葉集》時代から発達し,後世ますます深化して叙景的要素の濃い歌が多く作られているのも否定できず,それらを便宜叙景歌と呼ぶこともできよう。