主語述語により文の成分を説明する話しことばの研究は、1960年代に、1960年と1963年の報告書をもってピークとなる。その分析は、その後に起こる、会話、談話の研究に先駆けた。ただ、文型研究から、これは談話分析、物語分析という新たな潮流を受ける、テクスト、コーパスなどの資料に展開していく。
その詳細は、宇佐美氏の談話研究と言語教育による、
>2018 年 8 月 3 日(金)、2018 年日本語教育国際研究大会(ICJLE2018)おいて行った、『国立国語研究所連続講義』1 に基づくものである
を参照。その結びに、次のように述べている。
>言語教育は、談話分析、会話の分析、第二言語習得論、語用論、広くは、広義の「談話研究」と連動しながら、併行して発展してきた感がある。しかし、厳密に言うと、談話研究の成果は、日本語教育のカリキュラムや教材、指導法などの現実的実践に直結する部分に体系的に反映されるまでには至っていない。21 世紀を迎えようとしていた頃、他の分野と同様、日本語教育においても「パラダイムの転換」が声高に叫ばれた。
https://eaje.eu/pdfdownload/pdfdownload.php?index=208-219&filename=kokuken-usami.pdf&p=icjle2018
談話研究と言語教育
―1960 年代から現在までの流れ―
宇佐美 まゆみ 国立国語研究所
>広義の「談話研究(discourse studies)」は、既に 1970 年代頃から、言語学のみならず、
心理学、哲学、文化人類学、社会学などでも使われてきた。むしろ、言語学のほうが、関
連分野の影響を受けて、社会言語学、語用論などが盛んになってきたという面がある。1980
年代以降は、さらに、言語処理、人工知能研究などにおいても、「談話」という用語が、そ
れぞれの分野における意味を持って使われるようになってきている。
>また、1960 年代から 1970 年代には、H. Sacks ら(1974)に端を発する社会学の一派とし
てのエスノメソドロジストが行ってきた会話分析(Conversational Analysis)も、会話デー
タを対象とする言語学者に影響を与え、現代に至っている。用語としては、英語では、エ
スノメソドロジストが「会話分析(Conversation Analysis:CA)」という用語を用いていた
ことから、Tannen らが発展させてきた「会話の分析」は、英語では、“Conversational Analysis”
として、エスノメソドロジストの「会話分析(Conversation Analysis:CA)」とは区別され
ている。
このように、会話をデータとする研究については、主にアメリカで、1970 年代頃から、
「ことばの民族誌」(Hymes 1962, 1974)、「CA(会話分析)」(Sacks, Schegloff & Jefferson 1974)
など関連分野に影響を受けながら、「インターアクションの社会言語学」(Gumperz 1982;
Tannen 1984 等)として展開し、現代に続いている。
どちらかと言うと、初期は、質的分析が主であったが、1980 年代以降は、言語学者、心
理学者、認知科学者、工学者などが連携して、書き言葉のコーパスのみならず、話し言葉、
すなわち、「談話のコーパス」を作成する動きが英語を中心に盛んになった。