面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

采配

2006年10月01日 | 野球
土曜日の天王山第2戦。
1対7という、完敗ムードの中、タイガースは9回裏の攻撃に臨んだ。

ここで落合監督は、好投を続けてきた山本昌をあっさり交代させた。
関本からの打順ということで右の鈴木を登板させたのだが、一死後シーツにヒットを打たれて金本を迎えると、すかさず左の小林を投入する。
6点も差がある中、慎重すぎる継投ではあるが、攻撃のリズムを断ち切るには効果抜群と言える。
差が大きく、ランナーがたまらなければ逆転の目が無いなか、たった一人ランナーが出ただけで投手交代で試合が中断されてしまっては、イケイケの雰囲気にはならないからだ。

小林はキッチリと金本を打ち取り、あとアウト一つで勝利という場面。
右の濱中を迎えて今度は岡本をつぎ込んできた。
正に“一人一殺”の継投である。
これを受けて岡田監督は濱中に代打・林を送ったが、セカンドゴロに打ち取られて万事休す。

この落合采配、監督として、選手達に「どんなことしても勝ちにいくぞ!」という意思を伝えるという点では、非常に明快な采配と言える。
また、試合の流れを絶対に相手(タイガース)に渡さない、というメッセージも伝わってくる。
(だからタイガースファンにしてみればハラワタが煮え繰り返り「落合憎し」の思いが高まるのだが)

しかし、6点も差をつけていながら1イニングも任せてもらえない鈴木の心情はどうだろう。
その点でも落合監督は、投手交代は全て自らマウンドに足を運んで降板する投手と話をし、そして次の投手を迎えるという姿勢を見せてぬかりは無い。
ではファンの心理としてはどうか。
6点も差が開いていれば、例えばまだ経験の浅い若手投手をリリーフに立て場慣れさせて育てる、あるいは登板間隔のあいたリリーフ投手を調整させるために投げさせる、という継投なら共感しやすい。

しかしこの継投には、そういったある種の“人間味”が感じられない。
この采配において各投手は全くの駒であり、それ以上でもそれ以下でもない。
この試合を「勝つ」ためだけに先鋭化した、冷徹な采配である。
果たして、それで何人のファンに“愛される”だろうか?
私見でしかないかもしれないが、冷徹な落合采配に対して、ムキになってまんまと「落合ペース」にハマったような、岡田監督の代打策(濱中に代えて林)を歓迎する。
(もちろん林の実力を認めた上での采配ではあるが、9月絶好調の濱中をそのまま打たせてもよい場面でもあった)

ここに、ナゴヤドームが甲子園ほどの観客動員を呼ばない理由が見えた気がした。
もし奇跡が起きて中日が優勝を逃したとき、落合監督更迭の声がフツフツと湧き起こるのではないだろうか。
でも彼のこと、中日監督という座には何の未練も無いのではないか。
そのときにはアッサリと身を引くような気がする。

いずれにせよ、我々タイガースファンは、奇跡を待つしかない…

いざ、最終決戦

2006年10月01日 | 野球
楽しみ最後に取っておく 阪神まだまだ元気 (共同通信) - goo ニュース

雨で中止の天王山最終戦。
「楽しみは後にとっておこうや!」
ということで、各選手は歓迎だったようだ。

アホみたいなミス連発で大敗を喫した土曜日の記憶を遠ざけ、気持ちをリセットして心機一転で神宮に乗り込むには、良いタイミングだったかもしれない。

しかしここでホッと油断してはならない。
各選手には、もう一度客観的に自分自身を見直し、残り試合を全勝し、最後の中日戦を決戦として龍を撃破するためには何をすべきか、しっかり認識してほしい。
相手投手の調子がよければ、どうすればいいか。
自分の調子がイマイチなときには、どうやって勝利に貢献するか。
自分の特長はどこにあるのか。
何をすれば相手チームは嫌がるか。
勝利に向かって貪欲に、かつ全員で試合を作っていく意識を持ってほしい。

土曜日の試合、7対1とリードした中日は、9回裏に“一人一殺”の継投に出た。
正確には「中日は」ではなく「落合監督は」である。
投手交代の度に試合は中断されるため、その都度試合の流れが止まる。
シーツがヒットで出塁し、反撃に向けて上がった場内のボルテージもしぼんでしまう。
何より攻撃のリズムが作れない。
打線は見事に断ち切られ、1点も取れないままに終わってしまった。

この落合采配の是非については後に触れるが、そこまで冷徹になれとは言わない。
そんな野球が面白いとは思えないからだ。
しかし、残りはたったの6試合。
勝つために何をすべきかを、冷静に意識して、確実にプレーすることを選手達には望みたい。
まだ、龍の尻尾はハッキリと見えているのだから。


天王山の崖

2006年10月01日 | 野球
今日は雨で中止となり、最後の天王山は水入りとなってしまった。
まあ、昨日の力み過ぎの意識過剰な状態から、一度アタマを冷やして冷静になれ!という天の配剤ととらえておこう。

というくらい、昨日の試合での金本の力みっぷりはすごかった。
初回の第1打席から、山本昌のスクリューボールをフルスイング。
相手を威圧するという点からは、それはそれで構わない。
しかし、左打者から見て外へ逃げていくボールに対して、頭をライトスタンドに向けたまま強振し、体制が崩れる姿を見せても、百戦錬磨の山本昌に恐怖心など植え付けられるわけもない。
結局、最後もおそらくはスクリューボールであろうが、体勢を崩しながらもなんとか追っつけてライト前へ運び、先制のタイムリーとして4番の務めは果たしたが、アニキの力みが消えることはなかった。

第2打席も初球からブリブリ振り回すアニキ。
前回、ノーヒッターをやられた復讐心に支配されたように強振を繰り返す。
しかも、どれだけ振ってもジャストミートできそうな雰囲気も無い。
ただ力んでいる姿しか見えないのである。

このアニキの“無言の力み”が、チーム全体に悪影響を及ぼしたのではないか。
第2打席でラッキーな内野安打で出塁しながら、初球に絶妙なスタートを切りかけたのに、1、2塁間で急停止した赤星。
続く2球目、山本昌のベストなクイック投法に高めの速球で捕手・谷繁も投げやすかった最悪のタイミングで盗塁を狙って楽々憤死。
走塁の勘が狂っているとしか思えない。

また、4回裏も酷かった。
二死から、一塁ウッズのプロとは思えない凡エラーと、完全なノーマークによる2塁盗塁で得点圏にランナー濱中を置き、中日をもう1点突き放すチャンスに、鳥谷は全身硬直状態で見逃しの三振。
せめてバットを出してカットくらいしにいけよ!というテイタラク。

アニキが、外角へ逃げるスクリューボールを強引に引っ張ってライト前へ運ぶのではなく、球に逆らわずレフト前へ痛烈な打球でクリーンヒットを飛ばしていれば、後続打者も見習って軽打でつないでいこうとする意識が高まったのではないだろうか。
先頭打者の赤星が、球に逆らわずにセンター左寄り方向へ打ち返してヒットにしていたのであるから、なおさらである。

決してストレートは速くなく、経験に裏打ちされた老獪な投球が持ち味の山本昌に対して、力で何が何でも捻じ伏せてやる!という力みは(決して「意気込み」ではない)、昌の術中にハマるだけである。
強引に引っ張って長打を狙うことなく、センター返しを中心に、左打者はレフト方向、右打者はライト方向と、逆方向へ鋭く打ち返すことを意識して、連打で打線をつなぎ、チーム全体で攻略することを心がけてほしかった。
チームバッティングという点で言えば、一人アニキだけの問題ではなく、守備の拙いウッズに対してセーフティバントで揺さぶりをかけずに漫然としたスイングに終始した、赤星と藤本も同罪である。

しかし、試合のスタートで見せたアニキの
「オレが決めたる!」
宣言のようなフルスイングが、他の選手に与えた影響は大きいと言わざるを得ない。
確かに、豪快なスイングでライトスタンドにホームランを叩き込めば、チームは一気に勢いづき、山本昌を木っ端微塵に粉砕できる可能性も高い。
だが、今は目の前の試合を全て勝っていかなければならない状況にある。
そのなかで、自ら「打線をつなぐ」というチームバッティングの姿勢を見せていれば、試合展開は全く異なったものになったことだけは確かである。

最後の天王山を滑落したと先に書いたが、まだ崖っぷちで手はひっかかっている。
原点に戻って、全勝を目指して突き進んでもらいたい。

滑落の場面

2006年10月01日 | 野球
↑いつものようにラッキー7は迎えたが…

先に軽くネタふりだけしていた天王山第2戦であるが、試合結果は見るも無残な7対1。
しかし、初回に早くも先制点を挙げ、試合のペースをつかんだのはタイガースの方だった。

流れは悪くなかった。
それどころか、序盤は今日も勝利を予感させるような試合展開。
トラの子の1点を守るべく、どんどん調子を上げていく福原。
スローカーブが面白いように決まり、福留にもウッズにも、安打を許さない。
圧巻は4回表。
二死後に出たアレックスのライナーは、センターバックスクリーンめがけてグングン伸びていった。
あぁ、同点の一発か…と思ったが、少し角度が低かった打球は赤星の頭越しに外野フェンスにダイレクトに当たった。
ところが、赤星は素早くクッションボールを処理し、振り向きざま中継に入った鳥谷へ送球、更に鳥谷からセカンドベースカバーに入った藤本へと球が戻ってきて、なんとアレックスはタッチアウト!
二死二塁のピンチが一瞬にしてチェンジに!
大歓声に覆われるスタンド。
流れは完全にタイガースに来ていた!…のだが。

今日のポイントとなった5回表。
先頭の井上が二遊間へ放った打球を掴み取った藤本は、一塁へ送球…と思ったら、せっかく捕ったボールが手につかず、お手玉して投げられない。
まんまとセカンド内野安打となった。
こないだの東京ドームのファインプレーは何だったのか?
あの集中力が微塵も見られない雑なプレー。
二回裏には俊足の左打者にあるまじき併殺打でチャンスを潰しているだけに、そのエエ加減さにまたしても頭にくる。
福原はなんとか二死まで持っていったものの、初回先頭打者としてヒットを打たれた曲者・荒木を迎えてイヤな雰囲気が。
1ストライク後、荒木は思い切りバットを振るも、詰まったような打球がシーツの右を襲う。
決して当たりはよくないが飛んだコースがよく、シーツが飛びつくも捕れず!
打球はライト線をタイムリーとなって同点にされてしまった。
これで力みだしたか福原は、続く井端に四球を与えてしまい、ランナーを二人もためた状態で福留を迎える。
こういうときの福留は最悪である。
キッチリとレフト線にツーベースを放ち、あっさり逆転されてしまった…。

一方の打線はといえば、初回、赤星がクリーンヒットで出塁し、すかさず関本が送りバンとを決めると、シーツは詰まったセカンドフライに倒れるものの、続く金本が4番の仕事を果たして1点先取!
幸先の良いスタートを切ったのだが、2回は一死一塁から藤本が併殺打で一瞬にしてチャンスを潰して流れが断ち切られた。

更に3回裏には、赤星が足を生かしてショート内野安打で出塁するも、思い切りの悪い走塁で盗塁死。
チームに勢いを呼ぶためにも、初球から果敢に走るべき場面。
案の定(?)初球は120km/hの十分勝算のある投球であったのに、2球目のうまいクイックモーションと高めに外した速球という危険な組み合わせでスタートを切ってしまい、難なく谷繁に刺されてしまって、またしても流れを呼び込めない。

続く4回裏。
二死から濱中の打球は平凡なショートゴロ。
井端が軽快にさばいて一塁へ送球!が、ちょっとだけ右へそれた。
すると、あろうことか一塁手ウッズが送球をポロリ!
やったー!ウッズ、さすがやで!!
ウッズがタイガースファンの心をつかんだのは言うまでもない。
そして濱中はなんと盗塁に成功!
当然ノーマークではあっただろうが、見事に相手のをついた。
相手のミスにつけこむ素晴らしい展開で、一気に押せ押せムードに!…となるはずだったのに、鳥谷は見逃し三振。
せっかくこの回の表にファインプレーで相手のチャンスを潰し、守備で流れを引き戻しつつあったというのに、この淡白な逸機も次の回に中日へと流れを引き渡してしまう要因であった。
くさいボールは全てカットで逃げて、粘りのバッティングでくらいついてもらいたかった。

こうして、重苦しい展開で迎えた7回表、信じられない光景が広がった。
先頭の谷繁を四球で出してしまったが、続く山本昌の“みえみえバント”は矢野の前に力なく転がった。
矢野は素早い動きで打球を掴み、二塁へ矢のような送球!足の早くない谷繁ということもあって、見事に送りバント失敗で投手がランナーに残るという中日には最悪の展開♪
と瞬時に想像が膨らんだにも関わらず、目の前ではグラウンドに転々と転がる矢野の送球…。
イマドキ小学生でもやらないような恥かしい送球ミスでピンチが広がったかと思うと、続く荒木の送りバントまで福原が一塁悪送球してなんと無死満塁。
ダイヤモンド内はすっかり浮き足立ち、井端にキッチリとセンター前へ弾き返されてタイムリーを打たれたところで、実質試合終了…となってしまった。

その後のイニングは、書くのもバカバカしい、「久保田劇場-失点編-」を含む“茶番劇”が繰り広げられ、結果1対7でボロ負け。
それにしても、昨日までとは明らかに動きが違っていたタイガースナイン。
負けるべくして負けたのかもしれない。
そしてこの要因を手繰れば、初回のアニキの打席に結びつく…のである。