面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

惜別

2011年01月28日 | よもやま
喜劇研の先輩U師の告別式参列のため、久しぶりに東上。
米原から関ヶ原にかけて雪に見舞われたものの、式には余裕で間に合った。
式場周辺は、途中の雪が嘘のように、風もほとんどなく穏やかに晴れ渡っていた。

クラブの先輩お二人に後輩と合流して式場へ入ると、祭壇の前に棺が安置されていた。
祭壇には、生前のお人柄とお仕事ぶりが偲ばれる総々たる献花。
さすがU師!

棺のそばにいらっしゃった奥さんも“落研仲間”で、顔見知りでもあるのでご挨拶に伺う。
聞けば、1年半ほど前にガンが見つかった時点で悪性であることが分かっていたという。
そして余命1年半ばかりと宣告されていたのだとか。

全く知らなかった。

年末年始にかけてクラブ関係者から、U師がガンだったことは聞いていたが、そんなに前の時点で既に覚悟をされていたとは!
ご家族にも一切、弱音を吐いたり嘆いたりすることなく、また痛みを訴えることもなく、最後まで気丈に振る舞われていたとか。
実にU師らしい。
U師と同期のY先輩が堪えきれずに涙するのを見て奥さんは、
「そんな、泣かないで笑ってください、楽しいことが大好きな人なんですから…」
と言いながら涙ぐんだ。

来るときの新幹線でたどった自分の記憶を、もう一度たどってみる。
もう10年以上U師とはお会いしていなかったが、最後に会ったのは名古屋在住の先輩I師の結婚披露宴のとき。
余興に二人で漫才をしたのが最後の思い出で、名古屋城を見ながらネタ合わせをしたことなどを奥さんに話すと、頬を涙で濡らしながらも笑顔になられた。

棺を拝ませていただくと、今にも「…て、死んでたらどうする!?うひゃひゃひゃひゃっ!」と言いながら起き上がってきそうな、実に穏やかな表情。
ただ眠っているだけのようで、しかしもう目を開けられることは無いということが信じられない…

告別式と繰り上げの初七日法要もつつがなく執り行われる中、弔電が読み上げられた。
まずひとつめ。
少し長めながらも型通りではない温かみのある電文だなぁと思っていると司会者が紹介した。

「同志社大学喜劇研究会第23代御一同様」

え!?

勤め先の社長名、労働組合委員長、果ては連合委員長名の弔電(勤め先の労働組合で委員長をされていた関係)を“差し置いて”真っ先に読まれたのは、なんと喜劇研の同期の皆さんからの電報だったのである。

「楽しいことが大好きな人なんですから。」

奥さんの言葉が脳裏をよぎり、ここまで涙ぐまずにいたのに、ふいに涙がこみ上げてきた。

落研出身の奥さんとはいえ、この選択はすごい!
U師が、いかにご家族を大切にされていたか、またU師がいかにご家族から慕われていたか、そして何より、どれだけ奥様がU師を理解し、愛していらっしゃったかが瞬時にうかがえて感動に震えた。

参列者全員で献花を棺に入れ、最後にご親族の皆さんが収め終わると、いよいよ「最後のお別れ」。
棺が霊柩車に乗せられ、皆が合掌しながら車を見送ったのだが、敷地を出た途端、すぐそばにあるJRの踏切にひっかかって停車。
「ゆっくり見送れるなぁ」などと思っていると遮断機が上がり、先頭の霊柩車と1台目の後続車が踏切を渡ったところで、再び警笛が鳴って遮断機が降りてきたため、後続のマイクロバスと「導師」のお坊さんの車が停車した。
先に踏切を渡った霊柩車は、またしても線路の向こう側で待機。
再び踏切が上がるのを皆で眺めていた。
「もうエエて早よ行きなはれ」とツッコむ余地を与えながら逝かれるとは、ツッコミ専門やったのに最期はボケに回りはったんですね♪
そう思って微笑んでしまったのだが、豪快な振る舞いながら寂しがりだったU師が、名残を惜しんでいただけかもしれない。

霊柩車に棺が運び込まれるまでの間、またお見送りした車列が全て踏切を渡って遠ざかるまでの間、暖かい日差しが降り注いでいた。
風もほとんどない中、黒い礼服が日の光を吸収してじんわりと暖かく、あまり寒さを感じないでいられたのは、人一倍“気ぃ遣い”な、U師の計らいだろう。
雲ひとつ無い抜けるような青い空は、先輩が「おう、まあ笑うて見送ってくれや」と言うてはるようで。

度々説教をくらったのに、今にして思えば全く懲りてなかったなぁと…
卒業式で、式典が終わって先輩が会場から出て来られるタイミングを逃してしまい、喜劇研の伝統である部員で胴上げするはずができずに終わって先輩に寂しい思いをさせてしまったのは、最後にして最大の失敗だった。
迷惑を面倒をかけるばかりでお返しもできなかったという、本当にロクでも無い後輩だったことを謝ったが、最後の最後をお見送りできたのは、本当に良かった。


もう誰にもどこにも気を遣われる必要はありませんから、ゆっくりお休みください。
て言うてもムリなんかな!?
すみません、こちらは気遣えない後輩で。
どうか安らかに…

合掌