ガイド日誌 - 北海道美瑛町「ガイドの山小屋」

北海道美瑛町美馬牛から、美瑛の四季、自転車、北国の生活
私自身の長距離自転車旅
冬は山岳ガイドの現場をお伝えします。

アーサーズ・パス村 自転車で旅するニュージーランド

2016年12月08日 | 自転車の旅 海外

雨があがったArthur's Pass(アーサーズ・パス)村。
アーサーズ・パス(サザンアルプスの峠)の麓、南極ブナの森の中にある小さな村だ。

きょうはこの村のユースホステルに泊まり、
明日は峠を越えて、西海岸側に降りていく。

途中からタスマン海が見えるだろう。



再び、カンタベリー平野を走る。オアマル、ティマル、アッシュバートン、ラカイア、そしてスプリングフィールド 自転車で旅するニュージーランド

2016年12月07日 | 自転車の旅 海外

オアマルから先は、久しぶりのカンタベリー平野を走る。
戻ってきたのだ。

国道1号線を北上する。
旅の基点であり、僕らの家があるクライストチャーチに向けて走り始めた。

旅はもうすぐ終わる。

10年以上、ずっと続けてきたNZ旅だけど、今年で最後にするつもりだ。
1号線の荒すぎるアスファルトの、じゃりじゃり感。
いつもと同じように、タイヤを通して伝わってくる。

走り始めてすぐに雨が降ってきた。

突然の雨にて待機中。
こういうとき、国道数十キロおきにあるレスト・エリア(駐車・休憩公園)は本当に助かる。
雨があがったら、出発だ。

何度走っただろう。
国道1号線カンタベリー平野。
飽きるということはない。

アルパカが不思議そうに、こちらを見ていた。

「あら、誰かしら?」

秋まきの麦が風に揺れている。


ちょっと、北海道っぽい。


北海道に、帰りたくなってきた。


休憩。

やはり、いつまでも走り続けていたい。

相棒よ、どうする?

気持ちは揺れる。

道端で揺れるタンポポは北海道の道端のと同じだった。


カンタベリー平野を走り始めて3日目、
再びラカイア河の長い長い橋を渡る。

クライストチャーチが近づいてきた。

さらにラカイアの北、24km地点。
このまま直進したら、あと半日で旅は終わるところまで来た。

どうする?

VIA Arthur's Pass
アーサーズパス経由、西海岸へ

しかしながら、クライストチャーチ側の東から西へ、自転車でのアーサーズパス峠越えは尋常ではいかない。
最初の峠、ポーターズパスから先、
標高600〜800m前後、延々と続く荒野を約100kmにわたって遮るもののない吹きさらしのまま激しい西風に向かって耐えなければならない。
天候は山岳気象、ひとたび荒れると極めて厳しい。
それに言うまでもなく、東から西に向かう場合、西風は向かい風である。

風を敵に回してはいけない。
人は、お天道様には勝てない。

この辺りの事情を知っているチャリダーはアーサーズパスを西から東に向けて横断する。西海岸側の傾斜は極めてキツイが、それは最後の10kだけだし、だいいち西風の援護がある。
逆に風の味方がなければ攻略はただの苦難となる。東海岸クライストチャーチ側から西海岸を目指す場合、地形上の傾斜は幾分和らぐものの、常に吹いている西風に押し戻されることになる。
自分も過去に幾度かアーサーズパスを越えたが、すべて西から東だった。風を味方につけたわけで、だから峠の攻略は容易かった。

風に逆らう西海岸行きは、きつい。

ま、峠は越えなくてもいい。
そこまでしなくていい。

左へ、曲がった。

良い名前の道だと思ったのだ。

山から吹き降りてくる西風をまともに真正面から受け止めながら、僕はなんとなく西に向けて走り続ける。速度は一気に時速10k前後まで落ちた。
平野でコレだ、荒野ではどうなるだろう?

どうしたいんだ?俺?

天気は急速に悪化。まもなく雨が降ってきた。

徐々にサザンアルプスが、近づいてくる。

行く先は空が暗い。
明日は雨だろう。

水路にはクレソンが生えていた。もう白い花をつけている。

小雨が降っている。

サザンアルプス最初の峠、
ポーターズパスの麓、
スプリングフィールドに着いた。
小さな村だ。

まもなく本降りの雨になった。

僕は2日間、スプリングフィールドにいる。
空を眺めながら、自分はどうしたいのか、ぼんやりと考えている。

ニュージーランドが、大好きだ。









マッケンジー盆地オマラマから、東海岸オアマルへ 自転車で旅するニュージーランド

2016年12月03日 | 自転車の旅 海外
リンディス・パスを下った僕は翌朝、
サザンアルプスの山麓、マッケンジー盆地の町オマラマからプカキ河に沿って、
東海岸に向けて走り始めた。

有名なテカポ湖をはじめ、この流域は南島の電力供給地帯となっていて、川も湖も自然の姿を留めてはいない。
発電用ダムや水門が連続していて、それらの中では巨大なタービンが回り続けて電力を生み出している。



この国には原発がないかわりに、地域によっては河川が原型を留めず徹底的に利用されている。
しかし、
もし南島の人口が日本の本州並みであったなら、単純に計算して今の80倍になったらどうなるだろう?
これだけでは、とても足りないだろ。
そう考えたら空恐ろしい。

そのように考えたら日本は「あの程度」で済んでいるのだから大したものだと思えなくもない。
日本も、もしも人口が今の30分の1以下になればニュージーランド以上に素朴な国になるだろうな。
エネルギー事情のことなど考えながらペダルを漕げば、ニホンもなかなか捨てたもんじゃないぞ、なんて思えてくる。

とはいえ、ここは美しい。
いったん破壊された川は浄化され、変化を受け入れ、大地に根付き、再生している。

力強い。

大地、太陽、水、空、雲、そして風。

森羅万象の祝福を全身に受け止めながら、僕は走り続ける。


初めて通る道だった。
主要な国道は網羅したつもりだったが、まだ残っていたのだ。

古い時代の村の跡があり、


力作があったり、


丸一日走り続けて、ようやく東海岸の国道1号に合流した。

10kmほど南に下り直してオアマルの町外れに宿泊した。

オマラマと、オアマル。
なんだか、ややこしい。

資料によっては、「オマルー」と書いてあることもある。
だけどまあ、発音は、確かに「オアマル」が正しい。

さて、オアマルだ。
たまたま取った宿は若干失敗だったけど、スーパーに近くて便利だった。

そのスーパーで夕食の買い物を済ませて出てきたら、お爺さんに声をかけられた。

なんでも、自分もプッシュバイカー(こちらでは自転車をそう呼ぶことがある)で、若い頃にオーストラリア大陸を横断したことがあるそうだ。

「ああ!僕も横断しましたよ!」
僕たちはその場で大いに盛り上がった。

お爺さんの右目は半分潰れていた。

なんでも、豪大陸横断中、ナラボー平原の半ばで、ハイウェイを爆走するトラックが跳ね上げた石が右目を直撃したそうだ。

「セデューナで3週間!入院したんだよ」
3週間!?

驚いたり同情したりしながら、セデューナという南氷洋に面した、ナラボー平原唯一の小さな町を思い出して懐かしくてたまらなかった。

僕もそういえば、セデューナで傷んだ自転車を修理したっけな。
ここを出れば次の町は1000km以上ずっと先の、西オーストラリア州まで、何もない。
100キロおきにガソリンスタンドがあるだけだ。

「でも私は旅を続けたんだ。結局パースまで行ったよ。」
「いい旅だった。良い人たちに巡り会えた。」
「そして今、君にも逢えたしね。」

ひとしきり話をして、僕たちはガッチリ握手をして別れたが、なんだかもうこの数分間が永遠と思えるほどに愛おしい。

僕の英語はかなりいい加減だけど、相手によってはガッチリと、深いところまで通じ合える。
このときも、そうだった。自分でもびっくりするくらい流暢だった。(ような気がする)
もちろん話せることに越したことはないが、

やっぱり、

コミュニケーションは「心」なんだと。

いい時間だった。
オアマルに来て良かった。
レイク・テカポよりも、ずっといいぞ!

あああ、
そういえば。

今朝、宿泊予約の電話した、とあるアコモデーション。
面倒臭さそうに対応したよな。

心、全然通じなかったけど、
苦手だった英語での電話が、いつのまにか出来るようになってて、自分でも非常に驚いた。

慣れって凄い。
為せば成る、だな。

必死だったし。(笑)

必死も、大事だ。


Lindis Pass (リンディス・パス) 自転車で旅するニュージーランド

2016年12月02日 | 自転車の旅 海外
リンディス・パスは、クイーンズタウンとレイク・テカポ、マウント・クックを結ぶ動線上にあり、初めてニュージーランド南島を旅する旅行者は必ず通過する主要国道の峠である。

なかなかでっかい峠なので、チャリダーのなかにはなんとか回避したいと考える御仁もいることと思うが、心配はいらない。この路線を通るほとんどのバス会社はちゃんと自転車を積んでくれる。(プラス10ドル)
ただ、前後車輪を外して輪行状態にする必要があるので、輪行には慣れておこう。

さて。
お待たせした。
自力で越えたい同志諸君のために、ちゃんと峠越え諸々をレポートさせていただこう。

クロムウェルから、峠の向こうのオマラマを目指す場合。
クロムウェルの標高は180m。
435m、965mのふたつの峠越え、走行距離110kmを超えることを考慮して、8時までには出発したほうがいいだろう。

タラス村までの30kmは単調だ。

人造湖の湖畔を走る。

タラス村にはカフェが一軒あるだけだ。
宿泊できるところはない。
一応、村の小学校の緑地に一晩限りでテントを張らせてもらえるというローカル・ルールはあるのだが、それはエマージェンシーと考えよう。

タラス村を過ぎると、徐々に登り始める。
まわりは相変わらず、牧場だ。

なんだなんだ?
怪しい人物発見!

ブリキ人間だ。アンドロイドかもしれないぞ。

こういう標識があるから、分かりやすい。

峠の山頂まではまだ、46kmもある。

山道に入る。
そこらへんじゅうに、ルピナスが咲いている。

綺麗だが、特定外来種だ。

1つ目の峠をクリア。

明るい峠だ。

いったん下って、また、ほぼ最初から登り直すのだ。
つぎはいよいよリンディス・パス。

もう、そこらへんじゅうが、ルピナスだ。


もう、どこもかしこも…


自転車は登っていく。

長い道のりだけど、そんなに急坂ではない。

またあの標識の続き。

峠の山頂が近づいてきた。
とは言っても17kmある。17kmずっと、ひたすら登り坂だ。

見上げると、でかい空、でかい雲。

ここを車やバスで通過するのは、なんとも勿体無い。

長いので、所々で小休憩をいれる。

こういう、ちょっとした空きスペースはあちこちにある。水を飲んだり、バナナを齧ったり。

どんどん登る。

遠くまで来た感、半端ない。

山頂直前は急坂だけど、1×1で十分登れる。

手前5キロがいちばん急。

山頂が近づいてきた。

予想に反して大したドラマもなく、

着いた。

でっかい峠だったなあ!

下り坂だけど、

ひたすら長い。

向かい風だったので、ノーブレーキでも時速50kmにも達せず。

むしろ、せっせとペダル漕いだ。(泣)

オマラマ遠い。

道、長い。

オマラマでは、ホリデーTOP10キャンプ場のキャビン(バンガローみたいなもの)に宿泊。
4スクエア・スーパーマーケットまで徒歩3分。
なかなか便利だった。

他に、ヘリテージリゾートホテルとモーテルがある。たぶん一泊150ドルくらいだろう。さほど高くはない。
値段は、2人でも1人利用でも変わらない。

ちなみに、
この先はあの有名な「テカポ湖」だが、
近年、星空の世界遺産だとかナントカでえらいことになっているので、宿泊予約が極めて取りにくい。

「テカポ湖」へは、予約もなく自転車旅で舞い込んだとしても、どこにも泊めてもらえず、右往左往することになりかねないから気をつけよう。
レイク・テカポはチャリダー危険地帯だ。一泊3万円の部屋ですら瞬殺で予約済みの海に消える。

行き先は、きょうたどり着いた町や村。
宿は、現地で決める。
そんな自由な自転車旅だが、年々やり辛くなってきた。

山小屋はずっと以前からテカポ湖とは相性が悪く、まともに泊まれた試しがない。

右往左往。

山小屋もまた、何度かそういう目に遭ったのだ。
今回もまたしても予約は取れず、仕方なくオマラマからルート変更したが、結果は正解だったと思う。

臨機応変に対応するのもまた、旅の醍醐味だろう。