ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

RENTの訳詞のこと

2008年12月29日 | ミュージカル・演劇
年の瀬に書く話題でもないような気がしますが(汗)忘れないうちに書き留めておきたいと思いまして・・・
東宝でRENTをやる、と知った時にまず思ったことのひとつが、「訳詞変わっちゃうんだろうなあ」ということでした。
昔のJAPAN RENTの訳詞、強引な部分もあったけれど、歌詞としてカッコ良くて好きだったんですよね。超訳すぎて意味違うじゃん! というところもあったけれど、逆に上手く意味を汲み取っているところもあって。
今回の東宝RENTの訳詞、昔の訳詞よりも原詞の意味に近づけようという努力は見られたと思います。というか、昔の訳詞、超訳すぎた部分も多々ありましたから・・・(汗)
ただ、昔の訳詞は、歌詞としてのカッコ良さを重視していたなあと思うんですよね。
今回一緒に見に行ったRちゃんがいみじくも言っていたのですが、「なんかミュージカルっぽくなったよね」と。・・・
原詞の意味を正しくわかりやすく訳した結果、台詞っぽくなったというか。
ミュージカルなんだからそれでいいんじゃないか、という向きもあるかもしれませんが、なんかロックじゃないんだよなあ、と思えて。
昔の訳詞も全部覚えているわけではないのですが、覚えている部分で今回の訳詞と比べてみたいと思います。

まず「RENT」より。
How we gonna payを、今回は「どうやって払う」と訳してました。まあ確かに直訳なんですが、よく考えてみたら、ストレートに訳しても「どうやって払う=払えるわけがない」という意味ですよね、これ・・・
昔の訳詞では、このHow we gonna payの3回繰り返しを、「払えはしない 払う気はない/払えるはずがない 去年のRENT」と訳してましたが、これが上手いなあと思ったんですよね。原詞の同じ言葉の繰り返しをちょっとずつ変えたところも。
で、最後のWe're not gonna payは、今回は「払うもんか」でしたっけ? ちょっと忘れてしまったんですが(汗)
昔の訳詞では「誰が払うか」になってて、これもカッコイイなあと思ったものでした。
途中でマークが言う"We light Candle."(だったと思うけど)が、昔は「キャンドルに灯を!」となってて、今回どう言ってたのかは忘れましたが、昔の方がインパクトあったな・・・と思いました。ここ好きだったんだよなあ。
ちなみにnext years rentを「未来のrent」と訳しているのは今回も昔と同じで、これは明らかに昔の訳詞を持って来てるよなあ。

次にChristmas Bells are Ringning.を今回はそのまんま英語で歌ってましたね。まあいいんだけど・・・
前回は「クリスマスベル鳴るよ」と歌ってました。とても自然な訳だと思うんですが・・・敢えて昔の詞と変えようとしたのかなあ?
そのあとのAnd it's begining to snow.は、今回は「雪が降り出した」と順当な訳。
でも、昔は「ほら雪が降る」だったんですよね。これがなかなか印象的な歌詞でしたねー。曲調が優しくなる雰囲気も上手く掴んでたと思います。

そして問題の?「Will I?」から。
Will I lose my dignity? Will someone care?が今回の訳詞では「尊厳なくして死んで行くのだろうか」になっていましたが・・・
ここ、dignityをそのまんま訳したのにはびっくりですねー(汗)
確かにそうなんだけど、ここではlose dignityというのは単に「死ぬ」ということを表しているのだと思うけれど・・・
ここはむしろ、後半のWill someone care?の方が重要な気がするけどなあ・・・
何よりも、いきなり「尊厳」という固い言葉が来るのはなんか違うよなあ・・・
ちなみのここ、昔の訳詞ではどうなっていたかというと、部分的にしか覚えていないんですが「救いはあるか・・・」という歌いだしだったと思います。
はっきりいって原詞にはない超訳なんですが、曲調にはとても合っていたと思います。聞きながらすーっと涙が出てきたものです。
後で原詞を見た時は、原詞の方がもっとグッと来るなあとは思いましたが。
多分、無理して同じ意味に訳すことよりも、曲の流れを重視した結果の超訳だったんだと思います。
なんか、「尊厳」って出だしだとどうも曲に入り込めないんですよね・・・せめて「誇りなくして」とかなんとかできなかったんでしょうか・・・

あと、「Tango Maureen」でのジョアンヌの台詞。
You never call me Pooky.ってところ、今回は「今までプーキーって呼んだこと一度もなかったじゃない」と、まあそのまんまでしたね。
元の台詞が「You never call me...」なのか「You've never called me...」なのかで微妙に意味が違うと思うのですが(ってブロードウェイ版の歌詞カード確認すりゃいいのに(汗))、もし「You never call me...」だったら、むしろ「プーキーなんて二度と呼ばないで」ではないかと思うんですが。(You'veだったかなあやっぱり)
ここ、昔の訳では「何でプーキーって呼ぶの?」と、コミカルな感じで言っていて結構笑えたんですけどね。意訳だけど、こっちの方が面白くないですかね。「今まで・・・」だと長すぎてコミカルに言うのは難しいし。

続いて「Over the Moon」より。
Only thing to do is Jump, over the moon.が、今回の訳詞では最初のうちは「跳べばいいの Jump over the moon.」だったのに、後半では「信じて跳ぶの Jump over the Moon」に。
この「信じて跳ぶの」って、昔の訳詞のとおりです。ここは良かったから使ったのかなあ。「信じて」なんて原詞にはどこにも出てこないから、超訳ですよね。
Seasons of Loveでも、少し言葉を変えつつも明らかに昔の歌詞を元にしているようなところがありましたね。
いいところを受け継ぐのはいいんですが、それだったら他のところも・・・と思わなくもないです・・・

それから、これも台詞なんですが、マークの「Me? I'm here, nowhere.」が、昔の訳では「僕? 僕はここにいる。どこでもなく」だったのが、今回は「僕? 僕はここにいる。どこにもいない」になってたんですね。
ここにいてどこにもいないんじゃ今イチ意味不明な気もするんですが(汗)でも、今回の訳を聞いて、原文の意味を今までもしかして取り違えてた・・・というかわかってなかったかな、ということにも気がつきました。
昔の訳だと、「僕はどこでもない、ここにいる」という、自分の存在をわりとしっかりアピール?する感じになりますね。
「どこでもなくここにいる」なら、nowhere elseとかanywhere elseとかになるのかなあと・・・
マークのいる「ここ」というのは、他の皆のようにそれぞれのドラマの中ではなく、傍観者として外から見ていて、皆のところにはいない、そういう「ここ」なのかなあ、ということに気がつきました。
確かに、「どこにもいない」だとそういうnowhere感?は出ますが・・・でもやっぱりちょっと意味不明な気がする・・・(汗)
いや、このマークの台詞すごく好きなんで。なんだかんだ言って、山本耕史さんのマークが言うのが一番好きだったかなあ。「僕? 僕はここにいる。どこでもなく」って。
ちょっと原文のニュアンスとは違ってたかもしれないけれど、それでも「僕はここにいる」という自嘲気味で物悲しいマークの心境にすごく共感したものでした。

あと、Good-by Loveでマークとロジャーが言い合う場面。
マークが'Cause I am the one to survive.という場面、今回は「俺は生き残る 一人」と歌い上げてたんですが・・・
ここ、珍しく歌詞としてのかっこよさを追求しすぎかなーと思うのですが(汗)歌い上げちゃって、ロジャーに対する感情の強さが出てないかなーと思いました。
ここ、昔の訳詞では「俺は病気じゃないからな」となっていて、すごく胸を衝かれたんですが・・・とても印象的な訳詞でしたね。

とまあ、覚えてるのはこんなもんですが、特に印象的だったところが変わっていたのでやっぱり違和感はあったかな・・・
他にも、歌詞はうろ覚えだったものの、なんとなく説明っぽい歌詞になったなと思うところが結構あったように思いました。逆に、「あ、こういう意味だったのか」と思うところも結構あったけれど・・・(汗)
歌詞としてのカッコよさか、意味を取るか・・・というあたりの判断の違いなのかな、と思いましたが。

ついでですが、JAPAN RENT、昔も今回も「歌詞が聞こえにくい」という話がよく出るのですが・・・
今回見ていて、後ろの方で見た時はむしろ歌詞はよく聞こえて、逆にヴォーカル大きすぎでバランス悪いなあ、という印象でした。大音量の曲でヴォーカルが目立って聞こえるのはちょっとカッコ悪いと思うんだけど・・・
でも、前の方で見たら、確かに歌詞聞き取りにくいかな、というところはあったので、場所によっても違うのかもしれませんね。
しかし、私は昔も今も、歌詞が聞き取りにくいのが気になったことはないんですよね・・・
確かに聞き取りにくいところもあるんですが、そういう曲って歌詞頑張って聞き取る曲ではないような気がするのですが。
歌詞が聞き取りにくいと話がわからなくなって致命的、という場面は確かにあります。ミミとロジャーの言い合いの場面とか、マークとロジャーの言い合いの場面とか。
最初のToday 4 Uもよく聞いてないとエンジェルがベニーんとこの犬殺したのがわかりませんが・・・(汗)私最初はこの曲の歌詞思いっきり聞き流していて、かなりあとまで話がよくわかりませんでした(汗)
でも、ここ以外で(汗)歌詞が聞き取れないために話がわからなかったところは特にないと思うんですが。
もし、「歌詞が聞き取りにくい」というのがRENTとかOut TonightとかLa Vie Bohemeとかだったら、このあたりは別に聞き取りにくくても問題ないと思うんですが・・・(個人的にはWhat you ownとかも)
これは予想なんですが、1曲目からRENTでガーッと大音量でよくわからない歌詞で歌われて「ついていけない」と感じる人が多いのかなあ。私なんかは、初めて聴いた時、歌詞なんか気にせずに「うわ、カッコイイ」と引き込まれたものですが・・・
前に挙げた3曲については、はっきり言って、たいしたこと言ってないですよね(汗)結構抽象的な歌詞で、聞き取れてもそんなに意味ないと思う・・・
RENTは要するに「家賃払えないよ」ってことだけわかればいいし、Out Tonightはミミがハイになってるよ、てことだし、La Vie Bohemeにいたってはただの言葉遊びで盛り上がってるわけですよね。
こういう曲は、歌詞が聞こえなくても曲調で十分に言いたいことは伝わると思うんですよね・・・
一つのヴォーカル曲があったとして、その曲が伝えたい内容がこめられているのは、実は音楽8割、歌詞2割くらいじゃないかと思います。歌詞で感動していると思っていても、実はたいてい音楽に感情を刺激されてると思うんですよね。もちろん、歌詞が加わることでさらに感動が増すことはありますが。
特にRENTの場合、曲も歌詞もジョナサン・ラーソンが書いてますから、曲にすでに歌詞と同じ感情がこめられているはずです。
だから、別に歌詞聞こえなくても問題ないと思うんだけどなあ。むしろ、歌詞を聞かせるためにヴォーカルだけ浮き上がるようなバランスにしたら、ロックとしてかなりカッコ悪いですよ・・・
こういう曲に関しては、私は歌詞はそもそもあんまり聴いてないですねー(汗)音楽聞いてれば言いたいことはたいがいわかると思うから、歌詞に集中するよりも、音楽全体を感じたいと思う曲ですね。
本来音楽ってそういうものだと思うんですが、特にロックミュージカルの場合、音楽自体を感じた方が、より楽しめるんじゃないかとおもうんですが。
(まあ、やはり必要な部分は歌詞聞こえないと話わかりませんけどね。音楽だけでわかれば外国語ミュージカルなんて全く問題なく理解できるわけで(汗))
河野陽吾さんのブログのタイトルじゃないけど(笑)Don't thihk, Feel! 考えるよりも感じることが大事なこともあるんじゃないかなあと思うのでした。こと音楽に関しては特に。
そういう意味でも、意味を正しく訳すよりも歌詞としてのカッコ良さを追求していた昔のJAPAN RENTの歌詞、良かったなあと思うのでした・・・
コメント (6)
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