「バブさん、この前の日曜日、蟹食べてきましたよ、蟹」
とはN君。
腹が立ちますねぇ、というのも先日
「そういえば、今シーズンは、缶詰以外の蟹を食べてないかもしれない・・・・近くの漁港であれだけあがっていて、どうして俺の口には入らないだろうねぇ」
と、私が言っていたのを聞いていてそういうことを言うわけで
「なに?蟹?日曜日?何処で?何蟹喰ったのよ?」
的反応はまったくせずに無視しました。(笑)
するとN君
「バブさん、何で蛍には源氏と平家があるのに、蟹には平家しかないんですかねぇ?あれ?それとも源氏蟹っているのかな?」
とトンチンカンな事を言い出しまして、
「けけけけけ、しょせんオヌシは、その程度の常識も知らずにおるわけだ、蟹を喰う資格もないね。」
とこれもまたトンチンカンなやっかみ返事をしたのでありました。(笑)
「じゃあ、バブさんは知ってるんですか?」
「およよ、バカにしちゃいけやせんぜぇ、知ってるも知らないも、常識中の常識だぁて言ってるじゃござんせんか。」
「そう、源九郎義経を大将とする源氏が、平宗盛率いる平家一門を長門の国、赤間ヶ関の壇ノ浦まで追い詰めたのは季節でいえばちょうど今ごろ、平家一門は、船の扱いなら源氏には負けぬとばかり、海戦で最後の抵抗をと、御歳八歳の安徳天皇とその母、建礼門院を奉じて船の上、ベベンベンベン」
「その話、長くなります?」
「だからだ、最後は知ってのとおり、平家一門は戦いに敗れて、安徳天皇もろとも海の藻屑と消えたわけだ。つまり、その平家の武将達の怨念が蟹になったのが平家蟹ってわけだぁね。仮に源九郎義経率いる源氏が海の藻屑となっていれば、源氏蟹だったかもしれないという。『一門は蟹と遊女に名を残す』ってぇわけよ。」
「なんで遊女が出てくんですか」
「だから、全員が入水はしたものの何人かは助かったわけよね、ところが男は生き残るわけにも行かず、女性は・・・つまりほら、宮中の生活みたいな事しかしたことのない人ばかりだから、生きて行くにも潰しがきかないわけだ。だから、身体を売って身を立てるしか方法が無かったという、可哀相なお話で。」
確かに平家蟹の甲羅は人の顔にも見えますよね
「ふ~~ん、じゃあ何で源氏蛍は源氏で、平家蛍は平家何すか?」
(おいおい、今度は蛍かい?)
「あれはねぇ、厳密に言うとその源氏じゃないんだなぁ、ほら蛍だから光るジャン、光ると言えば『源氏物語』の光源氏、ねっ、こっから来たわけよ。ところが、平家蛍はこれまたへんな話なんだけど、源氏の対比で平家という名が付いちゃったんだねぇ」
「しかし、バブさん良く知ってますねぇ」
「うん、古今亭志ん朝の本を読んだから」(笑)
「ほんじゃ、源氏パイは何で源氏なんです?」
「源氏パイ??????」
これは、志ん朝の本にも書いちゃありません。
「何でだろうねぇ、形が義経の花押に似てるとか?????」
「花押って何すか?」
「ほら、サイン代わりに使ってた記号っいうか符号っていうか・・・いいよもう、どっちにしてもハート型の花押なんて無いだろうから」
いつの間にか「蟹を食べたい話」を忘れてしまいました。
ところで『源氏パイ』の名の由来ですが、しゃくにさわったので調べてみました。
なんと、発売になる翌年1966年(昭和41年)のNHKの大河ドラマが『源義経』だったので、「これにあやかって売れないかなぁ」って付けた名前だそうですよ。
昭和41年の『源義経』といえば、緒方拳が弁慶を演じたヤツですねぇ、もちろん私はほとんど記憶にありませんが、それにしても、未だ名も変えずに販売している『源氏パイ』、ある意味狙いが的中したんでしょうね。
さて、今日の一枚は、久しぶりですねぇマイルスです。ギル・エバンスとの共同作業盤の一枚ですね。
ギルとの共同作業盤は「BIRTH OF COOL」は別ものとして、例のマラソンセッションの後に「MILES AHEAD」、「MILESTONES」を挟んで今日のアルバム、そして「KIND OF BLUE」を挟んで「SKETCHES OF SPAIN」と、まさに私的には最も輝いたマイルスが「レギュラー・バンドの面々があまりに気を遣いすぎるもんで、逆に疲れちゃうんだぁ」ってギルにただ癒しを求めて行っただけみたいに思えて、
それとも「BIRTH OF COOL」のように「今やっていることは、ちと違うんだよなぁ俺的には・・・・ギルちゃん、ヒントちょうだいよ」てんで行ったというんでしょうか?
いずれにしても、ビッグ・バンドものをあまり得意としない私はビッグ・バンドとの共演はどうも苦手なんです。(笑)
しかも「PORGY AND BESS」といいながら、ガーシュインの原曲からはそうとう離れている感がありますよねぇ「SUMMERTIME」なんて、オリジナルメロは最初だけじゃありませんか。
さぁ、文句はボロボロ出てきます・・・・・とは言っても、これは高校生の頃のお話。
こんなんでよくO君というマイルス信者と論争しながら一晩飲み明かしたのですよ。(高校生がやっちゃいけません。)
いわゆる「かぶれの始まり」みたいな時期にはこんな事良くありませんでした?
最近は「MILES AHEAD」も「SKETCHES OF SPAIN」も今日のアルバムも、けっこう聴いたりしています。少なくとも電化マイルスの30倍は聴いてますね。(笑)
ロバータ・フラックはこのアルバムを聴いて「マイルスはまさに言葉を演奏している」と称したそうですが、私にも少しだけそれが分かってきたということなのでしょうかねぇ?
PORGY AND BESS / MILES DAVIS
1958年7月22,29日, 8月4,18日録音
MILES DAVIS(tp,flh) GIL EVANS(arr,cond) and Orchestra
1.THE BUZZARD SONG
2.BESS, YOU IS MY WOMAN NOW
3.GONE
4.GONE, GONE, GONE
5.SUMMERTIME
6.BESS, OH WHERE'S MY BESS
7.PRAYER
8.FISHERMEN, STRAWBERRY AND DEVIL CRAB
9.MY MAN'S GONE NOW
10.IT AIN'T NECESSARILY SO
11.HERE COME DE HONEY MAN
12.I LOVE YOU, PORGY
13.THERE'S A BOAT THAT'S LEAVING SOON FOR NEW YORK