夕方から風が強くなってきました。今晩から明日にかけて荒れ模様になるそうで、それを良いことに今日こそ休肝日にしようかと思っています。
JRの寝台特急「富士」と「はやぶさ」が、14日のダイヤ改正で引退、今日をもって東京駅を発着するブルートレインは全て姿を消すことになるんだそうで、私は鉄ちゃんでもありませんし、過去二度ほどしか利用したことのない身ですから、これといった影響もありませんが、それでもあの一種独特の雰囲気を持つ寝台特急が次々と廃止になるのは、ちと寂しいような気もします。
ブルートレインといえばやはり頭に浮かぶのはコルトレーンが唯一ブルーノートに残したリーダー・アルバム「BLUE TRAIN」であります。(むりやり得意分野に持っていく、私の常道です。笑)
「BLUE TRAIN」の録音風景です。
以前もお話ししましたが、私がJAZZを聴き始めたきっかけは、ブラス・ロックに興味津々の頃「もっといろんなトランペットの音を聴いてみたい」とジャズ喫茶に顔を出したのが始まりでした。(のちにこのジャズ喫茶でアルバイトをすることになるんですが)
中坊の分際でジャズ喫茶というのはいささか無理はあったものの(当時はまるで「不良の集まるところ」みたいな間違った認識がありました。実際は不良と呼ばれる連中の溜まり場は別にあったんですよ。)それは親に隠れて、時に受験勉強をダシに「図書館行ってくるから」なんて嘘をついて立ち寄っていました。
そしてすぐにコルトレーンとの出会いが、
衝撃的でした。「ヒビーン!」とか「ガーン!」とかそんな擬音じゃ表しきれないような感じ・・・・・・
ところが、不思議なもので初めての出会いが「TRAIN」だったのか「TRANE」だったのかよく覚えていないんです。
えっ?「なんじゃそりゃ」ってですか?
つまり、「BLUE TRAIN」だったのか「SOUL TRANE」だったのか、どちらかには違いないんですよねぇ・・・どっちだったんだろう?それは「SOUL TRANE」の表題曲のあの冒頭のソロだったようにも思うし、「SOUL TRANE」のバラード「THEME FOR ERNIE」だったようにも思うし・・・・・ほら、「初恋の相手は覚えていても、その出会いはかなり誇張された自分の妄想が加わっていて、忘れている部分が多い。」てな感じですよ。(こりゃまたなんじゃそりゃですね。)
ただし、「AT THE VILLAGE VANGUARD」でとどめを刺されたことは間違いありません。
あはは、これは笑い話ですが、聴き始めて間もないコルトレーンの命日(7月17日)に、「大好きなコルトレーンを聴きほうだいだ」とそのジャズ喫茶に行ったら、何だかとんでもない音楽が流れていて
「あのう、コルトレーンを聴きたいんですがぁ」
「これコルトレーン」当時バイトをしていたSちゃんの冷たい答え方、忘れられません。
かかっていたのが「OM」かなんかじゃなかったですかねぇ(笑)
話を戻しましょ、
「BLUE TRAIN」は、ブルーノートに残るコルトレーン唯一のリーダーアルバムであるとともに、ブルーノートの他に、プレスティッジ、リバーサイドという二大ジャズレーベルが協力という形で名を連ねるアルバムでもあり、「猫事件」など逸話を秘めたアルバムでもあります。
この件は以前「BLUE TRAIN」を紹介した時にチラッと書きましたのでそれを見ていただくこととして、今日は珍しく私なりのレビュー、いやそこまで行きませんね、レブーなどを一つ
何といってもこのアルバムの聴き所は一曲目の「BLUE TRAIN」そしてジェローム・カーンとジョニー・マーサーが作った曲「I'M OLD FASHIONED」この二曲だと思います。
「BLUE TRAIN」の出だしのソロパート、これぞ以降のコルトレーンを大いに想像させる演奏であり、約4分の間に磨き上げられるブルースは「心にこれほど突き刺さるブルースは他に無いのではないか」との思いさえいだかしてくれます。
また「I'M OLD FASHIONED」、彼のバラード表現の巧みさは、みなさんが最も聴きやすいと称すインパルスの「BALLADS」で気付くものではないということ、例えばこの2年ほど前に録音されたマイルスの「ROUND ABOUT MIDNIGHT」での表現と、この「I'M OLD FASHIONED」そして「BALLADS」の「SAY IT」を比較すれば、彼のバラード表現がいつ確立されていったのかが明白です。
6人編成でありながらこれほどまでにリーダーの存在を意識させられるアルバムはそうそう無いと私は思います。それはマイルスから学び取ったものなのか、それともモンクから学び取ったものなのかはわかりませんが、リズム隊は完全にコルトレーンに引っ張られているし、「トレーンにはどんなに速いテンポでもみごとに演奏してのける力があった。それにバラード・・・あの誰にも真似の出来ないプレイは、本当に心打つよ。でも、それだけじゃない。あのセッションが特別だったのは、スピリチュアルな雰囲気が漂っていたからなんだ。」と語ったカーティス・フラーもリー・モーガンもアンサンブルとしての存在が主で、ソロパートに関してはコルトレーンの圧倒的なパワー(いや、それがフラーの言うところのスピリチュアルなのかもしれませんけど)に屈している感があるからです。
今になって一つ不満を言うなら、「まとまり過ぎの良いアルバム」という点でしょうか。いやいやこれが悪いと言っているわけじゃありません。このアルバムはいかにもブルーノートらしいそこが魅力でもあるのですから。
ただ、真面目すぎるほど真っ直ぐに音楽と向き合うコルトレーンの魅力が、それゆえに止めどなく突き進むその都度都度の演奏にあるのだとすれば、やはりリズム隊と感化し合いながら、フラーではありませんが「スピリチュアルな雰囲気」を大いに膨らます演奏に終始して欲しいとの希望が私なりにはたらくのです。
それが、「OM」を聴かされても「あのう、コルトレーンを聴きたいんですがぁ」とは言わなくなった私の結論かもしれません。(笑)
いやいや長文です。コルトレーンの話になるとけっきょくこんなふうになってしまう、まさにこれぞバブ・レブーであります。これが私のスピリチュアルですよ。(笑)
ともかくブルー・トレインの終末に「BLUE TRAIN」を語ってみたと、まっそういうことで・・・・お後がよろしいようで(笑)
さて、今日の一枚は、「BLUE TRAIN」でいいじゃないかって話ですが、ニューポートのコルトレーンを選んでみました。といっても、コルトレーンの演奏は1曲のみ、当日持ち時間が30分しかなかったために、演奏したのが「ONE DOWN, ONE UP」と「MY FAVORITE THINGS」の二曲だけ、内このアルバムには「ONE DOWN, ONE UP」だけが収録されています。(「MY FAVORITE THINGS」はCDで収録盤有り)
どちらかといえば、アーチー・シェップのニュー・グループがメインと考えて良いアルバムです。
問題作「ASCENSION」収録4日後というスケジュールが、かなり疲れを感じさせますし、この時期のマッコイ・タイナー、エルビン・ジョーンズの心境がどれほどのものであったかとの不安も感じてしまいます。それでもそこはコルトレーンということで、信者としては無視することは出来ません。
この時期、コルトレーン自身は、二つのことを並行してやっていけると信じていたようです。つまり、従来のカルテットでの演奏と新たな方向へ突き進むためのメンバーによる演奏の二つです。しかし、私に言わせればコルトレーンという人はそれほど器用な人では無かったのだと思いますよ。
それは確実に従来のメンバー、マッコイ、エルビンにとって大きな重圧となったことは、周知の通りですし、ここでの演奏にもまさにそのあたりがかいま見える気がします。
てなこと言いながら、この月の最終週にパリのアンティーブ・ジャズ・フェスティバルでの「至上の愛」のライブ演奏を必至に探していた私なのですけどね。(笑)
ともかく、
そういった意味で、シェップとのカップリングというこのアルバムは、象徴的といえば象徴的なのではないでしょうか。
NEW THING AT NEWPORT / JOHN COLTRANE, ARCHIE SHEPP
1965年7月2日録音
JOHN COLTRANE(ts) McCOY TYNER(p) JIMMY GARRISON(b) ELVIN JONES(ds)[2]
ARCHIE SHEPP(ts) BOBBY HUTCHERSON(vib) BARRE PHILLIPS(b) JOE CHAMBERS(ds)[3~6]
1.INTRODUCTION - Father Noman O'Cornor
2.ONE DOWN, ONE UP
3.RUFUS
4.LE MATIN DES NOIRE
5.SKAG
6.CALL ME BY MY RIGHTFUL NAME