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最高おススメ演技その16 シニアデビュー年のエキシビション「Vertigo」

2015-05-06 | プロアスリート羽生結弦・羽生結弦選手・最高おススメ演技集

 追記:  2015年6月  20歳の 新「Vertigo」の動画を追加しました!

2019年6月    さらに追記2  として、歌詞の本当の意味をつけ加えました。

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最高おススメ演技、その16は、シニアデビュー年(高校1年時)のエキシビション・プログラムだった、「Vertigo」 です。

これは、羽生選手が恥ずかしがって少々抵抗を見せていたことがあったので、載せないでおこうかと思っていたのですが、

昨年発売された切手集の中で、「若干恥ずかしい思い出もありますが」といいつつ、「カッコイイ プログラムなので大好きです」とコメントした羽生選手。

しかもそこで選ばれた写真は、なぜか、この写真だったということで、 

  これ → 

 

いや~もう、羽生選手は!(爆笑) よりにもよって、なぜこれを・・・! 面白すぎますよ!

・・・と、言いたいところですが、いやいや、 「本当に多方面に気を遣っているんだな…」と しみじみ。 

しかし、私としてはこれをもって、羽生選手からの事実上の 「これを宣伝してもOK!」の許可が出たようなものだと勝手に判断させて頂きまして、ここに改めて堂々とご紹介したいと思います。

 

 

さて、このプログラム、「Vertigo」は、U2 というグループが歌っているのですが、これを選んだのは、当時のコーチ兼振付師の、阿部奈々美先生。

そして、注目したいのは、これを選んだ理由が、U2(ユーツー)と、羽生選手の名前「ゆづる」の愛称、「ユヅ」が、似ているから、とかいう、

ネット上でおやじギャグを連発しているという、どこかの羽生ファンでさえ、猛烈にビックリしたというほどの、まさかのオヤジギャグな理由!!

 

ああ、さっそく「Vertigo」(めまい)が起きてきたわ・・・ というアナタ様には、覚悟をもって(?)この演技を見て頂きたいと思います。(笑)

 

最初におススメしたいのは、衝撃の2010年NHK杯の時の演技。 元気一杯の15歳です!   ↓ ニコニコ動画 (動画主様、拝借します!) 

 

 

これをやる羽生選手を初めて見た時の私の感想は、まさに、「度肝を抜かれた!」 の一言に尽きます。

 

ショートの「白鳥の湖」で、驚異の表現力と柔軟性、集中力、美しさを、そして、フリーの「ツィゴイネルワイゼン」では、15歳にしてまさかの4回転トーループを成功させるという、驚きの技術力と才能、将来性を、シニアデビュー早々で見せつけてくれた羽生選手。

ところが羽生選手は、試合の時の、白鳥やツィゴイネルワイゼンをやったのと同じ人だとは思えないような、クラシック路線とは真逆のロックに合わせ、衣装も表情も、完全に別人モードでご登場。

試合のプログラムとは真逆に、直線的で硬い動きを駆使しながら、最初っからエネルギー全開で滑りだしました。 

しかも、こんなロックな曲の中でまで、まさかの「レイバック・イナバウアー」を堂々と、「ヘ~イ!」っていうノリでやってくれちゃった羽生選手。

これ ↓

 

 

それまで、「レイバック・イナバウアー」というのは、優雅さの代名詞だと思っていた当時の私の驚きと言ったら・・・ とても言葉に表せません。(笑)

しかも直後に、ハイドロブレーディング(hydroblading, 略してハイドロ、羽生選手はハイドロブレードと呼んでいるようです)を見事にこなして魅せ、その後に、女子の象徴・ビールマンスピンまでもを、エキシビションの中でまでやってくれるサービス精神の満点さと、そのやる気。

レイバック・イナバウアーと、ハイドロブレーディングと、ビールマンスピン、驚異の柔軟レベルのシットスピン等を全部一つのプログラムでこなしてくれちゃう男子選手は、羽生選手が初めて。さらに15歳で既に4回転も跳べるとか、もうあり得ない!という感じで…。

羽生選手はそれらを当たり前のようにこなし続けてきたので、今では驚かなくなった人も多いかと思いますが、これって異常事態だったんです。

まだ15歳だとは言え、さすがはプルシェンコ選手に憧れ続け、プルシェンコ選手につぐ若さで世界ジュニア選手権の王者になった羽生選手、最後には、そのプルシェンコ選手が得意だった、まさかの「高速・頭ブンブンふりスピン」(笑)まで披露。

 最後の最後まで、「げげげ!」な演技を見せてくれました!

 

しかも、かなり楽しそうなのが良かった!(笑) 

技術的には、男女の枠を軽く超えながら、私が好きな技を次々と素早く、「出し惜しみせずに」 息もつかせぬ勢いで見せてくれた羽生選手に、

もう驚きすぎて目を真ん丸にして、「あぜーん、呆然、ぽか~ん」みたいな状態だった私でしたが、

終わってみたらなんだか凄く楽しくなっていて、「いや~!今、ものすごいものを見たわ!」という、今までにない満足感で一杯になっている自分に気が付いて、羽生選手の凄さに驚嘆しました。

 

まさに色々な意味でVertigo (めまい)」を起こすようなプログラムを披露してくれた、15歳の羽生選手。

 

その凄い才能と、多彩なプログラムをこなせる変貌自在性は、やはり「プルシェンコ選手」を思い出しますが、さらに柔軟性が高いという特異性により、「今までの常識を完全に超えた」選手だという印象を決定づけてくれたのが、このプログラムでした。

 

また、このプログラムを見ていた時に強く感じとったことがあります。

それは、「たとえ複数のプログラムをもってしても、とても見せきれないであろう程の羽生選手の才能や本当の凄さを、

なんとしても、エキシビションを使って、世間に少しでも示しておきたいと願う、コーチ&振付師の強い意志」————みたいなもの。

 

基本的には、背伸び気味の振付の入ったプログラムよりもは、年齢相応なもののほうが、本当の魅力が出るからより良いと思っている私ですが、 

このプログラムの、普通じゃない技の詰め込み具合を見て、この少年に対してどれほどの期待がかけられているのかがよくわかりましたし、また、それを出来ちゃう羽生選手を見て、感動せずにはいられませんでした。

同時に、あまりにも意欲的に見えた、羽生選手の演技に対する姿勢についても、試合のプログラムに続いて大いに衝撃を受け、

そんな、見たことのないほどの才能が「溢れるように光り輝いていた」15歳の少年に、ただただ圧倒されたというのが、当時の私の正直な感想です。

 

 

次にご紹介するのは、フリーで4回転トーループを決め、初出場の16歳なのに2位となり、銀メダル獲得した、2011年4大陸選手権の時のエキシビション。

 

 

 

 

さて、この演技で私が個人的に一番おススメなのは、2011年ネーベルホルン杯のエキシビションの、次の演技です。↓

高校2年・16歳になっている羽生選手。 2011年の震災後。

さすがに何度もやってきて慣れているのか、あるいは年齢が少し上がったせいか、落ち着いて演技していて無理がなく、余裕が感じられ、コケてもそれさえも演出にしてしまうような絶妙な対応は、さすがの一言です。(笑)

適度な脱力感があるのに、何故か全力感もあるという、この不思議さ。

衣装も良いかなと、個人的には思います。

レイバック・イナバウアーも、前年度よりも、よりキレイになってきています。

 

 

一つ目のジャンプ、アクセルを珍しく失敗してしまいますが、その失敗の仕方が、なんと両足を180度開脚して氷の上をクルクルと滑り、回転しながらまた起き上がっているという・・・

男子にあるまじき、驚愕のレベルの柔軟性をここでも発揮してくれて、なんとも貴重な一瞬を見せてくれました。

 

次のものは、同じ演技を、違う角度から撮影されたものです。 上の動画よりもは、よりアップで、羽生選手が見られます。 

 

観る角度によっても、同じ演技や技を見ても、印象が少しずつ異なってくる、そんな 「楽しさ」を 味わってみるも面白いかな、と思います。

 

 

追記:

2015年 ファンタジー・オン・アイス幕張で、20歳になった羽生選手が、久しぶりに 「新・vertigo」として、演技してくれました!

 

かつて私を驚かせた、「ヘ~イ!」というノリが斬新だったレイバック・イナバウアーを、これまた、「ヘ~イ!」というノリだけはそのままに、ユヅ・ランジとでも言うべき「へ型・変形ランジ」の新型(手の位置を上と横)に変更して新たな魅せどころを作り、さらにはビールマン・スピンを取りやめてあります。

腰の負担を減らし、なおかつ、より「男っぽさ」を本気で追求した形の演技になっています。

男女枠を軽く超えてしまった軽快で全力な天才少年の演技ではなく、成人して力強くなり、余裕と安定感を感じさせつつもパワフル、という演技です。20歳になった身体のことを考えれば、ビールマン・スピンを避けて正解だろうと思いますし、これはこれで素敵ですし、とてもカッコイイですね!

途中、かつてのプルシェンコ選手とそっくりのポーズをとって休止をしてみせる、過去にはなかった箇所は、その場にいたプルシェンコ選手へのリスペクトを表したのではないか思います。

途中で投げキスが投入されていますが、うっかり見逃しそうになる素早さだったので、「日本人による、不自然な投げキッス絶対反対派!」の私としては、とりあえず、「ぐ、ぐう・・」とだけ言っておきます。(笑) (←ぐうの音はとりあえず出た(笑)、という意味!)

 

こちらが、終了後のインタビュー ↓   (動画前半はVertigoなので、動画後半がインタビューです)

http://www.dailymotion.com/video/x2s1uwm

「ちょっとした男の色気というか、大人の色気というか、そういうものを出せれば」と・・・ 羽生選手から珍しく「色気」発言が飛び出します。

「まだ恥ずかしいですけど」「でも、恥ずかしさみたいなものは克服できたかなと思う」と、揺れる男心(?)を表明しますが、相変わらずまだまだ恥ずかしかったようで、質問されると、「そこはあまり触れてもらいたくないところなんですけれども」と、インタビューで再び大いに照れ笑いしながら答えた羽生選手。

「止まっている写真」はOKだったけど、「動いているオレ」の恥ずかしさは、また全然別物だったようです。

 まあ、羽生選手の、そういうところが良い… ということで。(笑)

 

 

 

追記その2:  2019年6月追記

ここからは、打って変わって、このEX「vertigo」が、本当は、かなりシリアスな内容の歌詞であることをご紹介したいと思います。

五輪2連覇するまでも、した後も、羽生選手は大変な状況を駆け抜けて来ましたが、今日のような羽生選手の未来を予告していたかのような歌詞内容。

頂点に立つことで、知らなければ良かったと思うような世界の実態が見えてしまい、知り、嘆く。でも、悪魔の支配下への強烈な悪魔からの誘惑を拒否し、本物の神にのみひざまずき、従う宣言をして終わっている歌なのです。

途中で出てくる歌詞は、聖書の中でも有名な、悪魔がイエスを誘惑して、自分の支配下におさまるかを試した時のセリフそのままがわざと使われていて、つまり、悪魔の戦略を聖書が暴露している箇所なのです。

(参考聖書箇所)マタイによる福音書4章8〜11節より  新約聖書

更に、悪魔はイエスを非常に高い山に連れて行き、世のすべての国々とその繁栄ぶりを見せて、「もし、ひれ伏してわたしを拝むなら、これをみんな与えよう」と言った。すると、イエスは言われた。「退け、サタン。「あなたの神である主を拝み、ただ主に仕えよ」と書いてある。」そこで、悪魔は離れ去った。すると、天使たちが来てイエスに仕えた。

 

聖書をある程度知っている人たちには、一発で通じる歌詞。

この歌の主人公は、その「イエスが受けたのと同じ誘惑」を、悪魔から受けたことを示唆しています。

そして歌のラストで、本当の愛を教えてくれた存在、Your loveの、Youとは、十字架につけられて自分の罪を身代わりに背負ってくれた神、イエス=キリストを指します。

自分は、「あなたにだけひざまずく」、つまり、悪魔ではなく、愛を教えてくれた本物の神、イエス=キリストにのみひざまずき、従って生きていくことを宣言して、悪魔の誘惑を退けて終える歌が、この「vertigo」なのです。

だから、当時、選んできた阿部コーチはすごいな、と私は内心思ってました。(笑)(勧めたのは阿部コーチの旦那様で、スケート靴のブレード職人として羽生選手を支えていた吉田さんだったそうですけど。)

フィギュアスケートの天才少年の未来を暗示し、しかも神への徹底服従と、悪魔への高らかな勝利宣言で終わっているこの歌を、シニアデビュー年に全力で滑っていた羽生選手の姿を、私は決して忘れないでしょう。

羽生選手はこの演技の当時、いつも十字架をつけて滑っていました。

当初このページを書いた時は、まだ書くべき時期と思っていなかったので、あえて歌詞の意味の詳細に触れるのは避けてきたのですが、ついにその時期が来たかなと思い、追記しました。

 

真の神様は、過去も未来も全ての事情をもご存知というのは、本当ですね…!

 

 

 

 


最高おススメ演技 その15 「ノートルダム・ド・パリ」

2014-10-22 | プロアスリート羽生結弦・羽生結弦選手・最高おススメ演技集

 

最高おススメ演技 その15 は、羽生選手がカナダに渡った後(2012年~13年シーズン)の最初のフリープログラム 「ノートルダム・ド・パリ」です。

 

技術力向上に全力を尽くしたこのシーズン、羽生選手は初めて、「4回転サルコウ」を試合に入れてきました。

「4回転トウループ」と「4回転サルコウ」の2本を入れる高難度プログラムは、翌年に控えたソチ五輪を見越して挑んできたもので、4回転のジャンプ構成はソチ五輪シーズンの「ロミオとジュリエット」と同じです。

休む暇もない、かなりの高難度プログラムで非常に大変そうでしたが、シーズン最初の大会でいきなり4回転サルコウを成功させ、「さすが」な技術成果を見せてくれました。

 

しかし、一方で、羽生選手がコーチ陣と、英語での意思疎通に苦労しているであろうことが、シーズン当初の演技からは、見ているだけでもよく伝わってきました。

それまでの羽生選手は、何を表現しようとしているのか、見ていてすごくよくわかる選手でしたが、カナダに渡ったあとしばらくは、何を表現すべきなのか、羽生選手がちょっと戸惑っているかのように、私には見えました。 

でも、言葉の問題が主原因なら、羽生選手は頭がいいから、上手く意思疎通ができるようになったら、次第にそれは解消されていくだろうと私は信じていました。

環境の変化が大きかったこの年は、羽生選手にとって、様々な点で、とても大変な年だったろうと思います。

 

 

このプログラムで個人的に一番おススメなのは、最も壮絶な演技となった、シーズンラストの 「2013年世界選手権」 で演技されたものです。

 

羽生選手は直前に体調不良や怪我が続き、あの得意のショートプログラム「パリの散歩道」(1年目のバージョン)で珍しく大失敗してまさかの順位に。

優秀な選手が多数いる状態の日本は、翌年のソチ五輪に出場できる権利を「3人分」絶対に欲しかったのですが、同じく代表だった他の2選手の不調も重なり、ショートの終了時点で、出場権「3枠」獲得が危ぶまれるほどの、まさかの「がけっぷち」状態に追い込まれてしまいました。

全日本選手権で初優勝していて、事実上トップ選手としての期待を背負っていた羽生選手は、そのことに相当な責任を感じたらしく、痛み止めを打ちながら痛みを堪えて出場し、まさに「決死の覚悟」「ど根性」を見せてくれた演技が、この演技です。

怪我のせいで技術面では絶好調とは程遠いものの、それでも、「本来の羽生選手らしさ」や「魂」が演技に完全に戻ったように見え、安心したと同時に、とても感動したのを覚えています。

 

このシーズンは、同じ「ノートルダム・ド・パリ」の曲を使って、(一部は羽生選手とは違う曲ですが)で、アイスダンスのメリル・デービス&チャーリー・ホワイト組(ソチ五輪・アイスダンス金メダル)が、とんでもなくロマンティックで秀逸な演技を披露していました。

男子シングルとアイスダンスとは評価ポイントが違うしやることも違うし、アイスダンスは男女二人で演じるから表現できる幅も違うし、迫力も違うので、もちろん比較はできないしそもそもが別物なのですが、シーズン途中で羽生選手はその彼らの演技の世界観を「素晴らしすぎる」と絶賛していて、「あの世界観を僕も出したい」とまで表明しています。 

 

(参考1 :羽生選手、当時のインタビュー(2012年NHK杯後) → http://web.canon.jp/event/skating/interview/int_hanyu3.html )

(参考2 → メリル・デービス&チャーリー・ホワイト組の、羽生選手絶賛の「素晴らしすぎる」演技  2012NHK杯「ノートルダム・ド・パリ」http://www.nicovideo.jp/watch/sm19427331  )

 

これを絶賛して、自分でも「この世界観を出したい」とまで思う羽生選手は、相当ロマンティックで情熱的、美しく崇高なのものが好きなのだな、とわかります。

この感性は、昨年のロミオとジュリエットにも少し出ていたと思うし、今シーズンの「オペラ座の怪人」にもきっと大きく出てくるでしょう。

男性一人だけで、あの二人の演じてみせたロマンティックで情熱的な世界観を表現するのは、本当に至難の業だし「男子シングルでそこまでは無理でしょ!(笑)」と私でもさすがに思ってしまいますが、同時に私は、こういう世界観を出したいと願い、ひるむことなく表明し、努力できるような、「17歳(当時)男子シングル選手」である羽生選手を、「素晴らしすぎる」と思ってしまいます!

 

また、羽生選手は上のインタビュー内で同時に、「自分の演技はまだ40%程度」と非常に冷静に分析していて、上の思いとは裏腹に、「まだ表現できた世界観はない」と言い、自分の演技を淡々と見つめています。

さらに、その前の大会「スケートアメリカ」の演技については、10%程度だった、とまで自分で酷評しているのです。

(しかし、このインタビューと同じ頃、当時のプルシェンコさんは、全ての点において高難度に挑み続ける羽生選手のこの演技を絶賛していて、ナンバー1だと言っていました。)

 

際立っている身体的な天賦の才能、強みに加えて、上のような豊かな感性と、徹底した冷静さを併せ持っているところ、また、妥協なく、一貫して最高のものを追求しようとする情熱を見せるところが、羽生選手の強みであり、底知れない可能性を感じさせるところです。

こういう羽生選手に、わくわくするな、期待するなといわれても、それは絶対に無理ってものです。(笑)

 

羽生選手は、(私の記憶に間違いがなければ、)何年か前に、「5歳頃に、自分の中にある世界観を、氷の上で表現したいと思った」という内容をインタビューで答えていたことがあったはずで、その言葉をきいて私は非常に驚き、でも納得し、そんなお子様だったなんて、やっぱりこの選手は、本当にフィギュアスケートをやるために生まれてきたような人なんじゃないか・・・と思った記憶があります。

羽生選手の子供時代の演技の数々からは、その「表現しようとする魂」が、確かに見て取れます。

 

技術面においては一歩一歩、出来る範囲から着々とこなしながら計画的に戦略的に目標に向かっていく羽生選手の姿は、

まさに戦略に長けた戦国時代の武将そのもののようでもあり、アスリートとしての理想的・典型的な姿である その一方で、

そういう芸術的世界観や表現へのあくなき追求心があり、美しさをも徹底的に追求しようとする姿は、本当に私が長年、

「こんな人がいたらいいのにね・・・」と漠然と思ってきた、「究極のフィギュアスケーター」の姿なのです。

 

いつのどの、どんなインタビューでも、羽生選手が妥協なく一貫して主張してきたことがあります。

それは、「表現も技術も、どちらにおいても、(あるいは全ての点において)、最高レベルのことが出来る選手になりたい」という内容の言葉です。 

インタビュアーが「技術と表現の、どちらに重点をおいて、頑張りたいですか」とか、「どちらに優れた選手になりたいか」などというような質問を尋ねると、必ず、「両方」とあっさり答えてしまう羽生選手。

「そこをあえて、あえて、どちらかを選ぶなら、どちら?」などというようにしつこく誘導されても、羽生選手は笑いながらも頑として、「両方です」「全部です」「どちらもです」などと答え続けてきました。 

普通の選手は、そこで、「どちらかといえばこちら」、という方を答えます。 それが当たり前だったのですが、羽生選手は、それをやったらまるで負けを認めるとでも思っているかのごとく、絶対にそこで妥協しない。 

決して、どちらかだと言わないのです。

何年にも渡る、その終始一貫した徹底ぶりは、見ていて本当に驚くほどでした。

上のインタビューでも、

スケーターって、『アスリート』であり、『アーティスト』でもある。そのどっちの魂も、捨てちゃダメなんだと思っています。」と答えています。

絶対に誘導もされないし、諦めないし、妥協しない。

羽生選手の目指すのは、この頃から既に「金メダルの先にあるもの」であって、メダリストになることが最終目標ではありませんでした。 

 

 

羽生選手のその目標に向かいつつある、その過程にある一つの演技として、またその羽生選手特有の「半端なき覚悟」と「凄まじいまでの根性」が、顕著に現れている演技として、この演技を見てもらえたら、と思います。

  

 

この演技動画は、ドイツ語解説です。

羽生選手がこの世界選手権(3月)の前―――つまり、4大陸選手権(2月)出場の後、酷いインフルエンザにかかって、10日間も氷から離れていたことを、きちんと説明してくれています。↓ 

その後さらに左ひざを痛めて1週間休んでいたそうですし、(ご本人インタビューによれば、「きついトレーニングをしてしまい、左足の腱を痛めてしまった」そう)、さらに試合当日も直前に右足首を捻挫した等、数多くの困難が続いた状態で迎えた試合です。

(この動画ではそこまでは説明されておらず、解説者はどうやら怪我のことは知らされていなかった印象です。)

 

 

 それでも、ドイツ語解説者たちは、「信じられないほど、凄い!」と驚嘆し、勇者だと絶賛し、羽生選手が翌年のソチ五輪で、金メダル候補であるとここでしっかりと認めてくれています。 

「勇者」という言葉は、羽生選手に本当によく似合います。

ドイツ語解説者たちは、「スポーツの本質」だという、自らの限界を探り出すことを羽生選手がここでやってのけ、4回転サルコウにひるむことなく挑戦してリスクをかけたこの演技を高く評価し、「どう取り組んだかが素晴らしい」と絶賛しています。

 

演技終了後、足の痛みや緊張も極限だったのか、感極まったように、リンクを出た途端、羽生選手が涙を流して泣いています。

得点表示を待つ間、よくよく聞いてみると、羽生選手が「足痛い、足痛い・・・」って、苦痛に顔を歪め、足をさすりながら小さな声で泣きそうに呟いているのがわかります。

見ているだけでも、辛かったですね。

 

日本男子シングルのソチ五輪出場枠「3枠」が危ぶまれることは、事前にはちょっと想像できない事態だったため、私もすごくハラハラしました。

でも一番ハラハラしたのは、「羽生選手がここで無理しすぎて、来年のソチ五輪に出られなくなるような致命的な怪我でも負ったら・・・、そんな身体の状態になっちゃったらどうするの!!」という点でした。 

私は、もちろん「3枠」あるに越したことはないけれども、たとえ出場枠が「2枠」だったとしても羽生選手は絶対に出られると信じていたため、正直に言えば、ここであまり無理してほしくありませんでした。

 

でも、「羽生結弦」という奇跡の天才スケーターは、そんなことを全く気にも留めていないかのように、「この試合に全力を尽くす」という、凄まじい責任感と根性を見せました。

その覚悟の強さと、かなりの痛みを耐えているのが表情からもわかるほどの壮絶さ――― 

羽生選手は、胸の部分に輝く巨大な十字架を、まるで逆に背負いながら演技しているかのようにさえ見えました。 

途中から何度も鳥肌が立ちました。 

羽生選手のこの演技にかける気迫の凄さ・・・ もう、涙なしでは見られなかったです。 

 

氷の上というのは、地上と比べても全然勝手が違い、ちょっとの変化でも非常に繊細に、体調の影響が反映されます。ちょっとした体のゆがみも、顕著にスケーティングに反映されてしまいます。

スケート靴は、ほんのちょっとでも、ブレードの位置や角度、エッジの状態が狂うと、あっという間にできるものも簡単にできなくなったりするし、逆に靴を変えたら出来ないものが簡単に出来るようになることさえあります。

それは、スケートが、本当に絶妙なバランスの上でなりたっているからです。

織田さんが少し前に、「朝起きて、立ち上がった瞬間に、その感触だけで、今日は4回転を飛べるかどうかがわかる!」などと告白していたほど、微妙な身体の変化に敏感なフィギュアスケート選手たち。それほど、繊細な競技。

ちょっとした体調不良でも繊細に影響が出てくるこのスポーツで、しかもこの重大な勝負のかかった究極の場で、病み上がりで怪我までしていた羽生選手がやってのけたこの演技が、いかに常識を超えているのか、(しかも、異なる種類の4回転2本!!) いかに精神面でも超人的なのかを、ちょっとだけでも想像してもらえたら・・・と思います。

 

結局、羽生選手がフリーで大躍進したおかげで、日本は「3枠」確保出来ました。 

羽生選手がこの時に見せたものすごい責任感の強さ、痛みへの耐性、恐れなき全力投球ぶりは、改めて羽生結弦選手の強さそものものだと思いましたし、本当にただただ圧倒されてしまいました。

日本人がソチ五輪に3人出場できたのは、この時の羽生選手の「決死の頑張り」があったから、です。

私は、この時の羽生選手の姿勢や態度、覚悟等を見て、深く感動する一方で、心臓には悪すぎたので、(笑)、羽生選手を応援していくには、応援する側にもそれなりの覚悟が求められるんだな・・・と強く感じました。

 

とにかく、ファンとしては怪我の早期回復を祈るのみの日々が、その後はしばらく続きました。

 

参考までに、当時の羽生選手の、オリンピック枠、「3枠獲得」への覚悟がわかる番組の動画が、こちらです。 → http://www.dailymotion.com/video/x16stm2_3%E6%9E%A0%E7%8D%B2%E5%BE%97%E3%81%B8%E3%81%AE%E8%A6%9A%E6%82%9F-%E7%BE%BD%E7%94%9F%E7%B5%90%E5%BC%A6_sport

 

 

こちらは、同じく世界選手権の、日本語解説のものです。画質がとても良く、カメラワークも良く、羽生選手の息遣いまで聞こえてきそうな演技動画です。

羽生選手に3枠獲得の行方がかかっていた日本での解説の、この異様に張り詰めた緊張感!

ニコニコ動画でご確認ください。 → http://www.nicovideo.jp/watch/sm20526867

 

当時、解説者の中で唯一の元4回転ジャンパーであった本田武史さん(2002年ソルトレイク五輪・4位、2002年・2003年世界選手権銅メダリスト)が、解説しています。 

怪我が完治しないまま世界選手権に出て壮絶な目にあったことのある元・選手として、この時の羽生選手の痛みや辛さ、この状態で4回転を跳ぶことの困難さや恐怖を、きっと誰よりも理解しているはずの本田さんが、この時の羽生選手がやったことに、驚愕しています。

 

直前の6分間練習では、怪我のせいで(羽生選手は)全くジャンプが決まっていなかったそうです。

にも関わらず、本番では、足元が危ういながらも、ことごとくジャンプを決めてきた羽生選手の驚異的な精神力と忍耐強さを見て、解説の本田さんの声が、感動と驚嘆で震えているように聞こえます。

その後、本田さんは、痛みを堪え抜いた羽生選手のこの演技が、技術点としてはどのように判定される可能性があるのか、同じく元4回転ジャンパーとしてよく理解しているその厳しいポイントなどを、非常に的確に解説してくれています。 

動画上のコメントではなぜか一部の人から批判的に書かれてしまっていますが、本田さんというのは、「男は黙って4回転!」とか、4回転のコツをきかれた時には、「4回まわって降りるだけ!」と答えたような、いくつかの名言(迷言?(笑))で当時の私を爆笑させてくれた、冷静でサバサバした面白い方で、4回転なしでは表彰台も無理な「元祖・4回転時代」を戦い抜いた方でもありますので、この時、怪我を抱えながらも「男は黙って4回転!(笑)」を、文字通り、しかも2度も実行してのけた羽生選手を、高く評価していないはずがないと思います。

私にはこの時の本田さんの声が、非常に感動し、羽生選手の痛みに深く共感しつつも、解説者としてきちんと解説し、羽生選手に良い点がつくのを本当に願ってくれていると感じられます。 

いつも淡々としている本田さんの震え声と驚嘆のため息のおかげで、この時、羽生選手が成し遂げたことの大変さが、胸にしみ入るようにわかりました。 

 

羽生選手の演技が、時に不思議な形で人々の胸を強く打つのは、誰にも真似できないほどの真剣さと、危険を顧みない、命がけに近いほどの演技を平気でしてしまうからこそ、なのかもしれません。

  

しかし、痛み止めを打っていても泣き出すほどの痛み・・・ やはり、無理しすぎたのではないかと思えたので、私はこの後しばらく、羽生選手の怪我の状態が非常に気になっていました。 

その後、1か月は、安静にしなければならなかったようです。

 

 

次のものは、同じ世界選手権の、イタリア語解説・(翻訳つき)です。 (ニコニコ動画・ 動画主様、拝借します。翻訳の方、ありがとうございます。)

(ニコニコ動画で画面上の文字を消すには、右下のセリフ吹き出しマークをクリックしてください。 ただし消すと、解説の翻訳も見られません。)

 

こちらでは、解説者たちが、直前の6分間練習でジャンプが全く決まっていなかった羽生選手を見て、

「6分の間、一つもジャンプは決まらず、フェンスにぶつかったりと 何かを失ったように見えたわ」といい、さらに、

滑走順が練習直後の1番目滑走だったため、その状態から全く休む暇もなかった羽生選手が、本番ではここまでやった姿を見て、

「彼は全てを出し切った」 「これは奇跡ですよ」 と述べて、大感動しています。 そして、

「私たちは本当に、彼に喜びを感じます」 「私たちは心からユヅルを嬉しく思います」(以上、訳・動画のまま)と演技中も演技後も、コメントしています。 

羽生ファンなら、みなこれに同感でしょう。

 

 

超のつく「負けず嫌い」で、徹底的に努力できるだけでなく、時に自らの利益をも省みず、選手生命を賭けるような演技が出来てしまう人。

最高難易度への飽くなき挑戦心。  

勝利を決して我がものだけにせず、他へ分かち合え、感謝して謙れる精神。

高い反省力、冷静な判断力と同時に、勝負時には躊躇なく決断・実行できる強い意志と情熱。

最高の芸術性を目指そうとする、妥協なき思いと感受性。

 

驚異の柔軟性・高い身体能力に加え、これらの精神面をも備えている稀な選手だからこそ、羽生選手には是非ともオリンピックチャンピョンになってほしかったし、絶対になれるだろうと思っていました。

しかし、一方で、このような「五輪出場枠のかかった」ような、特殊な試合であるという状況を除けば、この時のような怪我の状態のまま、無理して高いリスクを負って演技をしてほしいとは、私はもう思いません。 

羽生選手のそういう精神面はすごく好きだし心から尊敬するけど、演技そのものも本当に好きだから、本当に身体を大事にしてほしい。

 

でも、羽生選手の人生だから、最後は 羽生選手が自分で決めたこと、その決断を、全力で応援する。  

そういうファンでありたい、そうできるファンでありたい・・・  私個人は、そう思っています。 

 

 

 

ところで、羽生選手のこの衣装は、ジョニー・ウィアーさん(元全米王者)の過去の有名な「アヴェ・マリア」の一つの衣装とかなり似ています。

羽生選手は、ジョニーさんのこの「アヴェ・マリア」にかなり魅了されたことを、著書・「蒼い炎」の中で語ってくれているので、よほど気に入っていたのか、あるいは、似たような何かを目指したものと推測されます。

私の記憶に残っている、ジョニーさんの歴代演技の中で最も印象的だったのも、この「アヴェ・マリア」でした。

ため息が出るような、「これはもう男子シングル枠じゃなくて、女子シングル枠にいくべき!(笑)」などと思えたほどの美しさと優雅さでした。 

(参考: ジョニー・ウィアーさんのエキシビション「アヴェ・マリア」はこちら。 → https://www.youtube.com/watch?v=2G_E3cwRZ2o#t=129 )

 

演技が始まる前は、色使いの衣装の影響で、上半身が下半身に比べて華奢に見えすぎる気がして、羽生選手のスタイルが活かせていないように私には思えていたのですが、演技が始まってみると、逆に、ノートルダム・ド・パリの登場人物の精神的な脆さやはかなさ、切なさ等を表せているように思え、不思議な美しさが出てきます。

羽生選手の演技を見ていていつも凄いと思うのは、演技が始まると、衣装や音楽にまつわる、私の個人的な好き嫌い感情を軽く乗り越えて、魅了させてしまうほどの力をもっているところです。

左右の腕と手のデザインが対極になった、見ているだけで、混乱し、相反する感情さえもを沸き起こしてくれるこの不思議な衣装で、「ノートルダム・ド・パリ」の曲と話のテーマの複雑さを表現しようとしていると思われます。

恐らくこの衣装と音楽を見る限り、この演技で羽生選手は、ロミオとジュリエットの時の「ロミオ」のように、一人の人物ではなくて、「ノートルダム・ド・パリ」に出てくる、複数の登場人物を表現しているのだろう、と推測されます。

 

この「世界選手権」の時は、テーマである複雑すぎる悲恋、それに伴う”究極の苦悶の姿”と、羽生選手が切実な思いで、「実際に相当な身体的苦悶にあえぎ、精神的な格闘を伴いながら、演技した」姿とが、うまく重なってみえた気がします。

 『 是が非でも日本の3枠を獲得したかった羽生選手の強く激しく切ない思い 』は、その激しさと切実さにおいて、ノートルダム・ド・パリにおける 『 決して結ばれない相手への激しくも切ない恋慕 』と重なるようにして、見る者の胸を打ったのかもしれません。

 

(参考までに、ノートルダム・ド・パリの内容については、こちら。→http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%80%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%91%E3%83%AA

 

得点や技術の出来だけで見ていくなら、「もっと良かった大会」が他に複数あります。

しかし、シーズンを通して見てきて、私の中で一番印象に残ったのは、間違いなくこの「世界選手権」での演技でした。

 

人間は一体、何をもって「感動し」「感動させられて」いるのか・・・ 

人は、本当は演技の「何」を見ていて、「何」を感じ取っているのか・・・  そんなことを、強く考えさせられてしまった演技でした。

 

以前、プルシェンコ選手が、日本の本田望結ちゃんに、「本当の表現というのは、心でするものなんだ」と アドバイスしていました。  

まさに、それだったのかな、と思います。

長年、他を圧倒していた、フィギュアスケート界の皇帝・絶対王者の言葉の重みは違います。

 

羽生選手は、よく、見る者をも完全に巻き込むほどの演技をしてくれます。そして、そのレベルが凄いのです。

 「全身全霊」。 魂の叫びを感じさせるような演技。

――― 目には見えなくても、確かに、見ている側には届いているのです。

 

逆に、羽生選手の「覚醒の時」(DVD、ブルーレイ)にも収録されている、「2012年全日本選手権」で初優勝を遂げた時のものと、およびその直前に行われた、「2012年グランプリファイナル」の時のものは、足取りもしっかりしていて、怪我していた2013年3月の「世界選手権」のものとは、安定感や余裕が全然違い、それぞれ、細かい部分での美しさに違いがあります。

どんな違いがあるか、見比べてみると、きっと面白いと思います。  (下に続きます)

 

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世界選手権という、一番大きな大会で、必ず激闘ぶりを見せ、結果を出すことの出来る羽生選手は、本当に大舞台に強い方です。

 

オリンピックでもそれが証明された今となっては、もはや言うまでもないことですが、

ここまでの強いアスリート精神、ド根性、不屈の精神、男っぽさを見せてくれる選手というのは、フィギュアスケート(男子)という種目では、今まではなかなかいなかったように思います。

私は、羽生選手が文字通りトップに上がってきたら、男性にも広く人気が出てくるだろうと予想していたのですが、それは、そういう顕著な「アスリート根性」が男性受けし、

今までのフィギュアスケートの男子のイメージを覆していく可能性があるんじゃないかと、思っていたからです。

 

 

そういう風に、競技としても興味をもった男性たちが、気楽に、後ろめたさもなく、フィギュアスケートを「スポーツとして」、また同時に、「芸術の一つとしても」、楽しく見に行けるようになるといいのにな・・・、と私は個人的には思っています。

 

実際、羽生選手が登場してから、スポーツとして興味を持てるようになった男性は、以前よりもかなり増えているように、私は感じます。

 

新しい時代に向けて・・・  頑張れ! 羽生選手!! 

 

 


最高おススメ演技 その14 EX 「Hello, I love you」

2014-09-29 | プロアスリート羽生結弦・羽生結弦選手・最高おススメ演技集

2015年6月  20歳の羽生選手の、「Hello,I love you」の動画を追加しました

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最高おススメ演技 その14 は、2012年度にエキシビション・プログラムとして 使われた、「Hello, I love you」 です。

 

ワイルドな男臭さを前面に出してきた、羽生選手のプログラムです。

いつもとは雰囲気をガラリと変えて、演じてくれています。

 

羽生選手は、本当に並外れたものを沢山お持ちなので、そもそもシニアデビューの頃から、世界中のライバルとなりうる選手達にとって、それはもう危険すぎるほど危険な存在(少年)だっただろうと思います。  

観る側からすれば、もう、素晴らしいの一言でしたが。

 

このプログラムを見ることで、今まで紹介してきた羽生選手の凄さとはまた違った、羽生選手の多才さ、常識を超えたようなその凄さを、顕著に感じることが出来るかと思います。

まさにオールラウンドな才能をもつフィギュアスケーター。

 

いつか必ずやらされるだろうな・・・とは思っていた、ワイルド系、ロック系の演技。

過去の演技で、一番近い印象だったのは、羽生選手・シニアデビュー年のエキシビション「vertigo」で、その文字通り「めまい(vertigo) 」をおこしそうな(笑)プログラムでしたが、それよりもは、さらに体力もついて激しく男っぽく、完成度も高くなっているように思います。

「vertigo」は、羽生選手が嫌がっていたので取り上げないできましたが、競技プロとは真逆の路線をいくあれを見て、当時、顎が外れるほど驚いちゃった私には、羽生選手の才能・潜在能力の高さは恐ろしいほどよくわかったので、そういう意味では、思い出深い演技です・・・ おススメするなら コケても溌剌としていて楽しそうな、こちら →http://www.youtube.com/watch?v=Iv17fPuWzpI#t=27 

 

プログラム開始と共に見せる、一瞬での切り替わり方が、怖いくらいですね。

震災で悩んでいた、素朴で繊細な羽生選手とは別人のようです!

 

しかし、相変わらず、演技が終わると、そのとたんに、またもやサクッと一瞬で、元の普通の少年に戻っちゃうところ・・・

そこが、また本当に羽生選手らしいですね。 

 

その天賦の才能に、ただただ舌を巻く、そんな演技です。

 

この演技の中で特におススメなのは、アイスショーの一つ、2013年の「スターズ・オン・アイス」で滑ってくれたもの。

 

ニコニコ動画 (動画主様、拝借いたします)

ニコニコ動画で、画面上の感想を消すには、右下のセリフ吹き出しマークをクリックして下さい。 

 

全身から漲るパワー、エネルギーがすごい。

疲れそうなプログラムですが、最初の羽生選手の表情からは、「やってやる!」という、心の声が聞こえてきそうです。

それまでに数回披露してきたこのプログラム、ついにこなれてきてグレードアップした印象で、この回は、ノリにノッています。

振り付けは、カート・ブラウニングさん。 

 

慣れきっているような外国人がやるならまだしも、慣れていない日本人がやると、どうも無理があったり、妙に苦しそうに見えてしまって困ることもある「投げキッス」ですが、このプログラムには、「投げキッス」自体が、演技の中にバッチリと組み込まれています。(笑)

 

でも、この回で羽生選手は、実に自然で嫌味なくサラッとやっており、「あれ?今やった?やった?やったよね??」と思わず言ってしまいそうなほど、ナチュラルで演技に溶け込んでいて、長年、「日本人の不自然な投げキッス絶対反対派!」(笑)だったほどの私でさえ、思わずうっかり見逃しそうになるほどの素早さと自然さには感動するほどで、もはや、ぐうの音も出ませんでした。(笑) 

(逆に濃厚なのを期待されている方には、期待はずれかと思いますが…。)

 

個人的には、最後のほうで、”両手を離して”決めてくれる「ハイドロ」が、特に素晴らしいと思います!! 

  

しかし、最後に慣れない手つきでかっこつけながらルージュで引いた真っ赤なハートが、未完成かつ、まさかの「穴だらけ」な「ハートブレイク状態」で終わっているところ!(笑)が、羽生選手らしくて逆に良いですね。  

なんとなく、ホッとする瞬間です。(笑)

 

解説では、「男らしくなった」だの何だのと言われてきたプログラムですが、私は最初から、羽生選手は、(特に中身が)非常に男っぽい方だと思っていましたので、これを最初に見た時は、ああ、ついにきたな~、ぐらいの気持ちで見ていました。

日本の女子選手たちも、「日本の男子シングル選手たちの中で一番男っぽいのは羽生選手」だと、認めてきたくらいです。

(・・・そうはいってもまだこの時高校3年ですし、大学2年になった今の羽生選手の男っぽさにはもう適わないかと・・・)

 

 

もう一つのお勧めは、2012年グランプリシリーズアメリカ大会(スケートアメリカ)の時のエキシビションです。

 

こちらは、ロシア語解説。

演技開始前のインタビューを受けている羽生選手の様子が、(英語がよくわからずにただ頷いていて)とても面白いです。

こういう人は、どこの国にいっても大丈夫でしょうね・・・!(笑)

会場がちょっと暗すぎて見にくいのが残念ですが、その暗さでこれだけの演技ができるのが凄いです。(動画主様、拝借します)

 

(ニコニコ動画で画面上の感想を消して見るには、右下のセリフ吹き出しマークをクリックして下さい!)

  

 こちらは、ハートが、もはやハートにさえなっていません!(笑) いや、いいんですよ、それで、そのままで!(笑)

羽生選手本人も、「・・・あれ?」って感じで胸の部分を見つめていて、面白いです。

 

ところで、この演技をやってくれた年、羽生選手は同時になんと、あの「花になれ」(最高おススメ演技・その6)をも滑って披露してくれていました。

この、両プログラムの印象の違い、対極性と言ったら・・・!!  

 

恐れ入りました・・・!! としか、言えません。(笑)

先に、この「Hello,I love you」を滑っていて、後から「花になれ」を披露するようになり、その時の衝撃度はもう、凄かったです。

(どちらもエキシビション・プログラムです。競技プログラムではありません。)

 

成績を決める競技プログラムではなく、エキシビションプログラムだけで、観客を十分に満足させ、、沸かせることができるアマチュア・フィギュアスケーターというのは、そうそう多くない・・・ 

でも、羽生選手は、それが本当に最高レベルで出来る、数少ないスケーターの一人。

全力投球ぶり・そこで見せる技術力の高さ・エンターテインメント性、時に高い芸術性、 プログラムごとの変貌自在性。

羽生選手は競技プロはもちろん、徹底してエキシビション・プロでも・・・時には競技プロ以上に観客を魅了してきたほどの、本当に素晴らしい選手です。

 

これは、「競技で勝つことだけ」を目的にしている選手や、ちょっとでも自分が有利になるように計算しているだけの選手には、決して出来ないことです。

競技以上の、さらに遥に上のものを目指していて、さらに余力と情熱があり、本当にスケートが好きで好きで楽しんでやっていたり、表現で伝えようとしている目的のハッキリした、「本気の選手」にしか、絶対にできないことです。

ちなみに私はかなり以前から、エキシビション・プログラムを見て、その選手のフィギュアスケートに対する本当の姿勢とか、思いとか、真の実力、その後の将来性などを総合判断するようにしています。 個人的には、これでかなり当たると思っています。

 

羽生選手の凄さや魅力は、とにかく「エキシビション」で披露されてきた演技の「質の高さ」や「全力度」にまで顕著に現れているので、「最高おススメ演技」には、早期から、かなりの比率で「エキシビション・プログラム」が登場する結果になりました。

ついでに付け加えますと、羽生選手には、衣装なしの練習着姿の演技にさえ、最高レベルのものが見て取れることが度々あります。

羽生選手は、「練習で120%を出すようにしないと、本番で100%を出すことは決して出来ない!」(羽生選手・談)という強い信念をお持ちの方で、練習にも全力を出し尽くそうとされるので、結果、こういうことになっていきますね。

 

この曲は、原曲そのまま使用ではなく、元の曲をかなりアレンジして、さらにビートを利かせたものを、さらにかなり編曲して使っているようでして、元の曲はこんなにアップテンポでもダンサブルでもないようで、完全に別の曲になっている印象ですね。(私の受けた印象です)

 

このプログラムのもつ最大の欠点を、敢えて指摘させて頂くなら、

「氷上のカリスマ・ロックスター」と化した羽生選手に 「熱狂」を通り越して、理性が吹っ飛んでしまったファンが出てきた結果、様々な問題や被害が生じてしまう危険性をも併せ持っている点でしょうか・・・ (← 冗談抜きで、度を越す方々が現れると、時に、本当に深刻になり得ますので、笑えません・・・ )

 

 羽生選手におかれましては、「Hello、Hello 」 「I love you 」などという言葉に合わせながら、同時にファンをハートブレイクさせたり、演技の最後に、落書きで自分のハートまでうっかりブレイクさせちゃうような面白さを披露するのは、ほどほどの程度に、とお願いしたいですね・・・!

 

 

追記:

2015年、アイスショーで、20歳になった羽生選手が久しぶりに、(およそ3年ぶり)、この演技をしてくれました!

非常に素晴らしかった!! この演技の中では、「ベスト演技」と呼んでよいかと思います!

 

一つ一つがとても自然で、それでいて、ビシッと決まっています!

「別人のような羽生選手」・・・ではなく、「羽生選手らしい」ままに、カッコよく決めてくれました!

 

ラストのハートマークを描くのが苦戦していて、そのハートも、穴だらけの「ハートブレイク状態」なのだけは相変わらず…(笑)と思ったら、必死で書き足して、中に「Y」の文字まで入れたサービス精神!

しかし、そこには子供の落書きみたいないびつなハートの完成形が…!(笑)   

演技が大人っぽく、ナチュラルでクールになっても、ラストが面白い所だけは全然変わりありませんでした!

 

 


最高おススメ演技 その12 「パリの散歩道」

2014-07-11 | プロアスリート羽生結弦・羽生結弦選手・最高おススメ演技集

追加情報: 2015年国別対抗戦でのエキシビションの演技「パリの散歩道」を、最後の方に追加しました。

 

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最高おススメ演技 その12 は、ソチ五輪で、ショートプログラム史上最高得点を出し、

金メダルへと繋げた「パリの散歩道」です。

フィギュアスケートに興味のない人たちにも、一番知れ渡った羽生選手の演技と言えば、やはりこれでしょう。

 

このプログラムは、そもそも、羽生選手がカナダに渡った年、高校3年生だった(2012-2013)シーズンに演じられていたのですが、

それを、ソチ五輪シーズン(2013-2014)でも、一部振り付けと衣装を変更して、もう一度やりました。

(羽生選手はもともと新しいプログラムを希望していたそうですが、新しい候補の中で、音源で羽生選手が気に入るものがなくて選曲に難航した結果、コーチ陣との判断で、これをもう1年やることになったんだとか・・・)

結果的には、それが成功して金メダルへと繋がりました。 今では、羽生選手の代名詞のようなプログラム!

 

2012年3月の世界選手権で銅メダリストとなり、羽生選手を有名にした震災シーズンでの「ロミオとジュリエット」「悲愴」のシーズンの直後ですから、それまで、「情熱」「がむしゃら」「全力」「流麗」等のイメージの非常に強かった羽生選手が、いきなり「クール」と「カッコつけ」「余裕」を極めてきたように見えた演技。(笑)

フィギュアスケートでは滅多に使われないブルースを使って斬新にまとめ、その独特のリズムにあった動きが出来るのも、羽生選手のリズム感と技術力が抜群だからです。

冒頭から左右の肩をゆすってスタートするこのプログラムは、音楽イメージに合わせてあるだけでなく、恐らくは出だしで緊張をほぐすことが出来るように、振り付け一つとっても、実はかなり計算されたプログラムなのではないかと思います。

まだ高校3年生だった1年目のシーズンの段階で、既に羽生選手は、このプログラムで過去最高得点を数回、更新していました。

 

最初に過去最高得点を叩き出した演技がこちら。↓ 衣装は黒白のシャツで、大人っぽく、男っぽく決めています。(2012GPシリーズ・アメリカ大会時のもの)

ソチ五輪シーズンの時とは、振り付けの一部が違っていますが、今見ると、その違いを楽しめます。

このプログラムは、シーズン途中でもほんの少しずつ振り付けに変更が加えられていきました。

(当時、まだ17歳の羽生選手。シーズン当初の大会では、「羽生選手」にしては、ちょっとこの振り付けはカッコつけすぎなんじゃ…?(笑)などと思えた私ですが、この大会の時は、なぜかかなりカッコイイと思えた記憶が。さらに今、改めて17歳という先入観や当時のイメージを完全に取り払ったつもりで見てみると、単に「とてもカッコイイ」だけでした。(笑))

 

この後も、数回振付が変わっていき、ちょっと笑えるポーズが入ったり・・・(笑)それがさらに変更されたり・・・ 

 

振り付けが、ジェフリー・バトルさん(カナダ・元世界選手権王者、トリノ五輪銅メダリスト)なのですが、彼は、その活躍期が「プルシェンコ絶対王者時代」に重なってしまった、(私から見ると)ある意味では気の毒な選手たちのうちの一人でした。バトル選手は4回転が苦手で、それゆえに4回転帝王だったプルシェンコ選手には絶対に勝てないから、金メダルが永遠に取れない・・・かにも思われましたが、プルシェンコ選手が怪我で休養していた時期の2008年(2007-2008年シーズン)に、世界選手権王者となり、彼は満足して、その年の半ばに引退してしまいました。

4回転なしでも、世界王者になることを納得させるほどの演技を見せてくれたのが、こちら。→ (参考1)バトル選手の2008年世界選手権フリー演技 http://www.youtube.com/watch?v=5vJFdEfGk3w

羽生選手やプルシェンコ選手と違い、バトルさんはジャンプが苦手でしたが、音を表す表現力とスケーティングの際立つ美しさ、醸し出される品の良さ(当時)、端麗な容姿で、それこそ「王子様」「騎士」のようなイメージで有名、日本でも相当人気のあった方です。 

→ (参考2) バトル選手の2007年のSP (2分以降~後半が凄いです!)http://www.youtube.com/watch?v=bxlMDroBT3s

ジャンプ以外の部分だけで観客を魅了することが出来る才能をお持ちだった、踊りの上手いバトルさんが振付け、それを”ジャンプが最も素晴らしい選手”である羽生選手が演じてくれたのが、この「パリの散歩道」。

天才・プルシェンコ選手をひたすら目指してきた羽生選手の演技に、ついに個性が全く異なる「ジェフリー・バトル要素」が加わるという、私に言わせれば、”かなり素晴らしい組み合わせ!”が実現したのがこのプログラムです。(新シーズンもSPがバトルさんの振り付けプログラムになっており、さらにバトル色が強くなりました!)

 

バトルさんによれば、羽生選手のスケーティングの「荒々しい奔放さ」を活かし、羽生選手の「殻を破らせようとした」のだそうです。

確かに、かなり斬新なプログラムで、羽生選手の多彩でかつ自然体な魅力を良く引き出していますが、当初はちょっと背伸びしている感があり、当時の私には、「これ、あと1,2年後だったなら、もっと羽生選手にピッタリ来たのではないかしら?」と思えていました。

高校3年の時に、史上最高得点を獲得したこのプログラムは、先述した通り、結果的には(大学1年の)ソチ五輪シーズンにまで持ち越されました。

2年目のソチ五輪シーズンでは、羽生選手の意見を取り入れながら振り付けに変更を加えていくことをバトルさんが認めたそうで、演技の大人っぽさが羽生選手に合ってきたことや、滑り込んだ影響による美しさ、振り付けの一部がより「羽生選手らしく」変更されたこと等、プラス要素が重なり、さらに高得点を出す、見事に代表的なプログラムになりました。

ソチ五輪の、2013-2014シーズンでは、衣装を水色と白のシャツに変更。 より爽やかに明るく見えるようになりました。これも総合的な印象アップに繋がったと思います。

 

このプログラム、自信たっぷりで、非常に「余裕そう」「簡単そう」「楽々そう」にも見える羽生選手ですが、かなり難しいことをやっています。

4回転トーループの成功率と美しさは、2012年時点で、全選手中最高で、既にかなり安定している感じで、安心して見ていられました。

トリプルアクセル(3回転半)を跳ぶ前に、助走が全くない状態で跳んでいる、そのこと自体も難しいのですが、それだけではありません。

羽生選手は、カウンターという難易度の高いターンをしてからいきなり助走なしのトリプルアクセルを跳んでいるところ、つまり、(外国解説者たちの説明を引用すれば)、「左足でバック(後ろ向き)のアウトサイドエッジ(スケート靴の刃の外側部分だけで滑る技術)で滑ってきて、ターンしてフォワード(前向き)のアウトサイドエッジにチェンジし、そのままその滑ってきた左足だけで踏み切ってトリプルアクセルを跳び、キレイに成功させてしまう」というところにある、と。

つまり、難しいターンをしながら「片足だけで滑ってきてそのままの片足だけで(反対側の足を全く使わずに)トリプルアクセルに踏み切って跳んでしまい、なおかつ鮮やかに成功させてしまう」というジャンプ技術が、常識を超えた「信じられない」「驚異的な難易度」だそうで、外国の解説者や他選手たちを毎回毎回、驚かせています。

スケートの技術を横に置いておいても、地上で、片足をしばらくぶらぶらさせた後、そのまま立っていたほうの足だけで回転ジャンプしようとすることが、どれほどトンデモナイ脚力とバランス感覚を要するかを実践してみれば、羽生選手の「非常識ぶり」がよりよく解るかもしれません。

着氷後も直ちに別の動作に入っており、しかもバランスを崩しやすい姿勢をわざわざ複数使っている・・・それもまた難易度を上げている要素です。

 

バトルさんに言わせれば、最初はそんなに難しいことをやらせるつもりなんてなかったのに、羽生選手にやらせてみたら、どんどん難しいものが出来ちゃっていくので、取り入れることにしたのだとか。(笑)

しかもこれを、体力が落ち、緊張が続いてしまうからふつうは避けるはずの「演技の後半に持ってくる」ことで、得点が1.1倍になるようになっており、相当な「高得点プログラム」を滑りこなしていたことになります。

ジャンプそのものの飛距離、高さ、美しさ、軽やかさ、成功率が最高レベルであることと合わせて、「ジャンプの天才」と呼ばれる所以です。

そして、得点以上に、そのような精神的・身体的・技術的なリスクを何重にも負いつつ、それらを問題なく実現させてしまう羽生選手は、かなり「あり得ない」ことをやってのけているのです。

 

演技中のポーズ一つとってみても、非常にバランスを崩しやすい体勢をとっていて、かなり高い技術が要求される内容ですが、いとも簡単に、軽々と滑っているように見せることができるのが、羽生選手のすごいところ。(実際、羽生選手にとってはそんなに難しくないのかもしれません。)

 

2年目のソチ五輪シーズンにおける、私から見た”最高おススメ演技”は、振り付けの一部が「より羽生選手らしく」改良され、一部の振り付けのちょっとした「違和感」までもが完全に解消され、集中力も高く、羽生選手の良さが大爆発した、2013年グランプリファイナル初優勝の時のものです。

  

 

 

解説者たちの、演技終了後のスロー再生時の解説付き絶賛ぶりは、聞いてみる価値があります。

 

ご本人の言葉によれば、「自分自身に集中」しきっていて、「脳みその奥まで落ち着かせてみた」という(笑)この大会で、初めてチャン選手に勝ち、五輪金メダルを含む、3冠達成への最初の一歩となりました。

良い意味でリラックスできているのか、その魅力を最高レベルでアピールしており、まさに世間をあっと言わせる、圧巻の演技。

ジャンプが全て非常に美しく、文句のつけようがありません。

全選手中でも最高の成功率を誇る「4回転トーループ」の完璧さはもちろん、前述した、難易度を驚異的に引き上げたトリプルアクセル(3回転半)の凄さ、そして、トリプル(3回転)ルッツ+トリプル・トーループのコンビネーションジャンプが、高さ・飛距離の両方が凄くてなおかつ、着氷の美しさが素晴らしいです。 凄すぎてもう、笑うしかない感じ。(笑)

柔軟性が遺憾なく発揮されていて、足の上がり方の角度、腰の落とし方の深さ、スピード感までもが、最高です。

ラストのスピンでほんの少し横に移動してしまいますが、最後に、羽生選手自身も演技に満足したのか、自分で手をたたいています。

 

この直前の2試合(グランプリシリーズカナダ大会、フランス大会)では、チャン選手にスコアの上では完敗した羽生選手でしたが、そのおかげで、冷静さと本来の自分らしさを取り戻して、本格的な逆襲を開始したように見えました。

この時の羽生選手は、敵(ライバル)を全く見ていなくて、自分のベストを尽くすことに専念しており、本当の意味での「無敵」状態で臨んだ試合だったと思います。非常にかっこよく、素晴らしかったです。

 

 

 この後、史上最高レベルでの大激戦だった2013年年末の全日本選手権を優勝します。(国内史上最高得点をマーク、初の100点超え)

羽生選手はこのプログラムで、後半に行った「3回転ルッツ+3回転トーループ」の連続ジャンプで、最初のジャンプの回転軸が大きく斜めに曲がったにも関わらず、きちんと着氷してなおかつ、後続ジャンプではなぜかキッチリ軸まで修正して美しく跳ぶ、という離れ技を見せつけ、観ていた人々を驚かせました。

普通は軸が曲がると、上手く着氷できずに転倒するか、最低でも後続ジャンプが跳べなくなって単独ジャンプになるか、それでも無理してやると後続ジャンプが失敗するか、です。 相当な脚力、バランス感覚、強い意志があるのだろうと思われます。

(羽生選手は過去のインタビューで、調子が良い時にはジャンプ回転中に、周囲の景色が360度バッチリきれいに見えているのだとか、跳んだ瞬間に、自分のフォームが目の前で3D映像のように見えて、どこをどう修正したらよいのかが直ちにわかるので、跳んでいる最中に即座に修正できるのだとか、そんな感じの変態的天才的能力があることを告白していたことが数回あります。身体の隅々の感覚まで鋭敏で、それを脳で正確に処理して判断し、さらに運動神経にフィードバックできる・・・ ま、一言でいえば、ただの天才なのですね。)

こういう常識を超えた、ふつうは倒れるはずのところをなぜか成功させる「離れ技」は、かつてはプルシェンコ選手が得意でした。羽生選手も、同類のようです。

 

ソチ五輪団体戦SPでも、長年のあこがれのプルシェンコ選手のスコアを上回り、最高点を獲得して1位となり、ソチ五輪の個人戦では、プレッシャーも何のそのの堂々たる態度で、「歴代最高得点更新」「国際公認試合・史上初の100点超え」などという偉業までもを達成して、ついに金メダルを獲得します。

いずれもノーミスのパーフェクト演技でした。

特に圧巻だったのが、初出場の五輪ながら、不敵な笑みさえ浮かべてみせ、精神力の強さと才能を世界に印象付けた、ソチ団体戦での次の演技です。(動画主様、拝借します。)

 

 

この解説では、トリプルアクセルの入り方が、左足のインサイド(内側)エッジ(刃の端)で滑ってきてからアウトサイド(外側)エッジ(刃の端)に切り替える”スリーターン”(氷上に3の数字を描いたような跡がつく形の基本的なターン)だと説明されていますが、前述したように左足のアウトサイド(外側)エッジだけでターン後も滑りきる”カウンター”(というターン)の間違いだと思われます。

 どちらにしても、そのターンをしながら浮いている方の右足を氷の上につけずに、そのまま直ちに回転をつけて3回転半を跳んでいってしまうことで、羽生選手には恐ろしく素晴らしいレベルのコントロール力があることがわかる、と解説者は絶賛しています。 

{ 注: 一般的には、インサイドエッジ(足の内側に重心をかけて、ブレード(靴の刃)の内側の端だけで滑ること)よりも、アウトサイドエッジ(足の外側に重心をのせてブレード(刃)の外側の端だけで滑る技術)のほうが、バランスを崩しやすく、身体が横に倒れてしまいやすいから難しいです。 

  スケート靴は、刃の底部分の真ん中が縦ラインにくぼんでおり、両端の尖った部分で滑っています。平たくまっすぐに滑る(フラット)状態だと、氷の上に2本の縦の平行線がつきますが、その内側と外側のラインのどちらか部分をつかって滑ることが多く、両足の内側(内股側)のラインをインサイドエッジ、反対の外側のラインをアウトサイドエッジと呼びます。 }

 

全日本選手権やソチ個人戦金メダル獲得時のものも、もちろん、言うまでもなく非常に素晴らしくてご紹介したいところですが、近々発売されるブルーレイ・DVDに収録される様なので、そちらで御覧下さい。(笑) ↓

 

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さて、このプログラムで非常に有名になったのが、あの途中で出てくる、「へ」の字の形のようなポーズです。

あれは、羽生選手ご本人の解説によれば、「変形型のランジ姿勢」だそうで、名前はないもの。

「イーグル」の変形技では、とも噂されましたが、イーグルは基本的には足腰が曲るのは美しくないとされているだけでなく、180度近くの開脚両足のエッジを使って滑る技なのですが、この羽生選手の技は、主に曲げている側の片足で滑っているようなので、イーグル変形とは呼びがたい。(イナバウアーは足を前後にずらしたイーグルの変形技に当たるそうです。)

「ランジ」というのは、フィギュアスケート用語なのではなく、スクワットなどと同じ、筋トレの姿勢の一つの、一般的な呼称です。

腰を落として前方のひざを曲げ、後ろ脚を伸ばした、フェンシングでいう、「突き」のポーズに似ているもの。

検索してみたら、こんな動画が引っかかりました。お、面白い!(笑) 説明が詳しく、よくわかります。→ (参考3): ランジとは http://www.youtube.com/watch?v=vGzc5FikpRQ

 

羽生選手が、「ランジは、振付師のバトルさんが現役時によくやっていた姿勢だ」と指摘していましたが、上で紹介した、2008年世界選手権フリーの中でも、出てきます。 ランジ姿勢を美しく表現したものが見られます。

次の動画の、1分18秒から19秒のところで止めてみると、ランジ姿勢の応用と思われる、バトル選手の美しいポーズが見られます。http://www.youtube.com/watch?v=5vJFdEfGk3w

バトル選手得意の、騎士のようなポーズですね。バトル選手についてまわった、「王子」やら、「中世の騎士」のようなイメージは、このランジ姿勢の上手な多用によるものだったのかと、今更ながら気づかされました。 羽生選手、ありがとうごさいます。(笑)

 

日本では、羽生選手の足の形が日本語の「へ」のような形のランジだから、「へ・ランジ」などと呼んでみたりされていますが、正式名称はないし、「へ」は日本人にしかわからない言葉なので、国際的に共有できる正式名称をつけてくれるといいですね。

「イナ・バウアー」さんが始めたから「イナ・バウアー」、「デニス・ビールマン」さんが始めたスピンだから、「ビールマン・スピン」という名前なのですから、羽生選手が始めたこの印象的な「ランジ姿勢」の滑走技術は、「ユヅル・ハニュー」とか、「ユヅル」又は「ハニュー」だけ、「ユヅ・ランジャー」(←ふざけてみました)等、なんでもいいですが、羽生選手の名前のついた正式名称になるといいのですけどね・・・。(笑)

「出ました!ユヅル!」とか、「出たー!ハニュー!」と世界の解説者たちが叫ぶと、そこにはあのポーズをやっている他の選手の姿が・・・みたいな未来が、いつか来るといいですね。

羽生選手によれば、「僕はふざけると、こういうことになる」というポーズだそうで、羽生選手の持っている”やんちゃ坊主”っぽさ(笑)が大いに発揮されていて、面白いです。(笑) 自由で勢いがあります。

このプログラムで発揮されている「カリスマ性」も、高く評価されていて、「氷上のエルビス・プレスリー」だの、「氷上のロックスター」だの、「氷上のカリスマ」だのと各国の解説者たちにも絶賛されました。

 

ソチ五輪・シーズンの羽生選手が、このショートと、さらにフリーの両方で合わせてこなしてきた演技の”難易度”は、全選手中でも他の誰にもできない最高難易度だったことは既に周知の通りですが、それをこなすのが一体どのくらい難しいのか・・・ 「一般人」には、雲の上のようで想像もつかないレベルなのですが、

①振付師のバトルさんがこの難易度のプログラムを滑りこなせる羽生選手に、思わず嫉妬してしまった

②過去最高の天才として名高いプルシェンコ選手が「ユヅルは天才!」を連発した、

③女子で技術力最高の浅田真央選手は、滅多に男子選手を絶賛したりしない発言の慎重さをもっていますが、すご技連発を見て驚きのあまり、「ユヅル君は、ハイもハイも、ハイ・ハイ・レベル!」「尊敬しています」と本気で言わせた ・・・

・・・というほどの、超・高難易度だった、ということは、ファンとして知っておいて損はないかもしれません。

  

参考までに、上述の3選手に対する、私の評価はどれも非常に高く、次のようなものです。

  ①ジェリフー・バトルさん → (羽生選手を除く) 歴代男子選手の中で、一番、「観てよかった!」と思える美しい表現力をお持ちだった方

  ②エフゲニー・プルシェンコ選手 → (羽生選手を除く) 歴代男子選手の中で、圧倒的に桁違いの天才だった方、 もはや説明不要の存在

  ③浅田真央選手 → 歴代女子選手の中で一番、私の理想像を体現し続けてくれた最高の選手 女子では完全に別格 こちらも説明不要の存在 

このお三方に、このように絶賛されてしまう羽生選手・・・ 私が初めてその演技を見たとき、数十秒で鳥肌が立って惚れ込んだのも無理はなかったのですね。 特に技術に決して妥協しない浅田選手の昨年の上の発言を聞いて、羽生選手がどれほど凄いことをサラッとやっちゃっているのか、改めて実感できました。

 

 

さらに、2015年の国別対抗戦の、エキシビションで、羽生選手が久々に、「パリの散歩道」をやって下さいました!

その映像がこちら。

 

大事故・怪我・手術で大変に苦しんだこのシーズンの最後に、エキシビションとして羽生選手が選んだのは、なんとこのプログラム。

試合ではないため、余裕気味で、かつノリノリなのですが、エキシビションで4回転が入っているプログラムをやる人って、

本当に羽生選手くらいでは…(笑)と思いますが、そんなことは関係ないよとばかりに、

試合と違わぬいつもの羽生選手らしい、本気の全力モードで魅せて下さいました。

解説の荒川さんも、最後に驚嘆・絶句気味です。

このチカチカしたライトの中でこれが出来、しかもなぜか、超・余裕ぎみ… ということで、

1年前と比べたら、大変だったこのシーズンでも、どれほど成長していたのかをしっかりと証明して見せてくれて、会場は大いに沸きました。

 

 

さて、最後におまけをどうぞ。

同じ衣装+やっている内容はほぼ同じものを組み替えただけなのに、音楽が変わるとこんな感じ、という演技。 

曲の印象に合わせて、雰囲気をきちんと変えています。 特に「へ型変形ランジ」が、「優雅」バージョンになっていて、これまたカッコイイです。驚きます。

見ていて眩しすぎる気がするのは、決して照明や映像のせいだけではないでしょう!(笑)

 

 ドリーム・オン・アイス2014でのオープニングの羽生選手 ↓

 

ジャンプを終えた直後、片足をふり上げる角度があまりにも高すぎて、もう驚愕の一言!!

 

 

引き続き、今シーズンの活躍を、期待しております!

  


最高おススメ演技 その11 「悲愴」 (スクリャービン作曲)

2014-05-18 | プロアスリート羽生結弦・羽生結弦選手・最高おススメ演技集

最高おススメ演技 その11は、2011年~12年のシーズンに、あのロミオと一緒に演じ続けられたSPの「悲愴」(スクリャービン作曲)です。

 

ファンの間で人気が高く、海をイメージしたといわれる、幻想的で流れるような美しいデザインの「青」の衣装で有名です。

羽生選手の写真や本の表紙、CMなどによく使われており、羽生選手に興味がなかった人でも、見たことがある方も多い衣装。

蒼い炎
      
扶桑社

 

この「悲愴」は、芸術性が高い、このエネルギーは一体どこから出てくるのか、などと外国解説者たちには絶賛されていました。海のイメージと言われた通り、ひたすら流れるような動作が続く、流麗な演技です。

2011年~12年シーズンで大震災直後であり、羽生選手は、当時の複雑な思いを、この演技で「昇華」させようとしていたように見えました。 そういう迫力はとてもありました。

 

試合では、上手くまとめてきたグランプリシリーズ中国杯と、ショーの時の演技が、落ち着いていて、全体がより美しくまとまっている印象があるので、以下の3つをおススメです。

 

フレンズ・オン・アイスでの演技  ↓  

https://youtu.be/Hv6zwmd3b_Q

 

上のこの演技の冒頭で、羽生選手は、4回転トーループ+3回転トーループのコンビネーションジャンプを跳んでいます。 羽生選手、当時16歳。

非常に落ち着いて、あまりにもあっさりと、高速で4回転跳んでしまっているので、思わず、「あ然」としてしまいます。

(羽生選手が、4回転+3回転のコンビネーションを跳べないのではと思っている方々が中にはいらっしゃるようなのですが、この動画で解るように、そんなことは全然ありません。)

また、続く3回転アクセルも流れに乗って美しいです。

 

 

こちらは、別のショーの演技。  ニコニコ動画です。(動画主様、拝借します。) 

(動画説明の「ホーホー低減」っていうのは、観客の歓声やため息の雑音の音量を絞って下さったとの意味だと思います。)

 

ショーでは、青や紫の照明により、全体が幻想的なイメージになっており、美しく統一感をもって見える点が素晴らしいです。

 

グランプリシリーズ 中国杯 

 

キス&クライでのコーチとの会話が鮮明に録音されています。 

英語解説の翻訳はついていないですが、英語がわかる方はどうぞ。 

解説者に非常に気に入られていて、とにかく絶賛されています。コンビネーションジャンプについてのとっさの判断力も褒められています。 

 

 

次のものは、昨年秋のグランプリシリーズ「スケートカナダ」(GPシリーズ・カナダ大会)のエキシビションとして演じられたもの。↓

上の3つは2011年の羽生選手ですが、 こちらは2年経った、2013年の羽生選手。 

冒頭のジャンプの失敗が残念ですが、比べてみると、体格や滑りの違いが明らかです。非常に力強くなり、以前とは別の形の美しさが醸し出されてきています。安定感が増しています。

カナダに渡って、スケーティングを基礎から鍛えなおしてきたというだけのことはあります。

 

でも、以前の羽生選手にしか出せない「独特の」流麗さ、類稀な「しなやかさ」も貴重な個性でしたし、どちらも素敵です!

 

 

 

最後に参考までに。 このシーズンの集大成として、ニースで行われた、2012年世界選手権でのものです。世界選手権には、この時が初出場でした。現地解説イタリア語版。(翻訳なし)

前半はイタリア解説者たちにも絶賛されていますし、いい感じだったのですが、中盤ジャンプの失敗が出てしまい、最後の羽生選手は、非常に悔しそうな表情で終えています。

でもこれがあって、この後のフリープログラム、あの伝説の世界選手権「ロミオとジュリエット」の演技(「最高おススメ演技その4」で紹介)に繋がっていくのですね。

 

こちらは、もっと画質の良い動画です。(フリー演技と表彰式もついています。)

 

 


最高おススメ演技 その10 「ツィゴイネルワイゼン」

2014-05-09 | プロアスリート羽生結弦・羽生結弦選手・最高おススメ演技集

最高おススメ演技 その10 は、シニアデビューの2010年 のフリープログラムだった「ツィゴイネルワイゼン」です。

羽生選手が初めて4回転を入れてきたプログラムです。ショートの「白鳥の湖」の衝撃と併せて、まだ15歳の少年による、鮮烈なシニアデビューでした。

 

曲に合わせた独特のデザインの衣装が目を引いて、見た目だけだと中性的なイメージがまだある頃でしたが、一度演技を開始すると、しっかりと「男子シングル」の演技なのが羽生選手。 

女子並みの柔軟性を発揮していながら、男子だからこその力強さ、独特のしなやかさ、スピンやジャンプにみる技術力の高さを併せ持ち、見るものをハッとさせる・・・ この持ち味こそが、当時の羽生選手の強烈な個性であり、過去にいなかった、まさに「天賦の才能」を感じさせる部分。

このプログラムでも、それは遺憾なく発揮されています。

男子シングルの「皇帝」と呼ばれ、技術・表現ともに男性として最高レベルに君臨していた「プルシェンコ選手」と、異色の女性らしさで時に悩ましい演技を披露、異彩を放っていた「ジョニー・ウィアー」選手という、ある意味では対極ともいえるこのお二人を、「足して2で割ったような選手」を目指したいと言っていた羽生選手。

それだけでももう普通じゃありませんが(笑)、それが一体どんな演技になっていくのか、言葉を聞いただけでは、ちょっと想像つきませんでした。

でも、その言葉通りの、”実に不思議な魅力の演技”が見られるのが、このプログラムです。

 

おススメは何と言っても、初出場でいきなり2位、銀メダルに輝いた、2011年2月の4大陸選手権の時のものです。 

 

私は羽生選手の演技を初めて見た時に、「この選手は未来の五輪金メダリスト!」と、非常に強い直感を抱いたのですが、(あまりにも才能が凄かったので)、問題は、それがこの3年後のソチで実現出来そうなのか、それともそのさらに4年後の大会になりそうなのか・・・ というのが、当時の私のもっぱらの関心事でした。

このシーズンの集大成となるこの4大陸選手権大会を、私は個人的に、「羽生選手が3年後のソチ五輪で金メダルを取れるかどうか」を判断するための大会として、すごく注目していました。

注目していたポイントはやはり、4回転トゥループをこの大きな大会で、プレッシャーに負けずに美しく決められるかどうか、でした。

ここで決められたら、羽生選手はこの先、ソチで金が取れるところまで総合的な実力を必ず伸ばせるだろう、と予想していました。

この1年前のバンクーバー五輪では、4回転を跳ばなかった選手が金メダリストになってしまい、それが議論になりました。その問題提起をしたのは、羽生選手が尊敬し憧れてきたプルシェンコ選手。

ですから、羽生選手は、4回転を1度どころか、ソチ五輪シーズンまでには複数回入れる覚悟でいるだろうと思っていました。

 

結果は、見事に成功!この大会で4回転トゥループジャンプを成功させた唯一の存在として、羽生選手は16歳で、シニアの国際大会で堂々の銀メダリストになりました。

演技開始前の羽生選手の様子を見て、「これはいけそう・・・」と期待してドキドキしていた私が、冒頭の4回転のキレイな着氷を見て、上記の理由から、すごい興奮状態になったのは、言うまでもありません。(笑)

その他のジャンプにミスが出ましたが、ラストはバシッと決めてくれてスカッとしました。

 

ジュニア時代の実績と合わせて、「大舞台や肝心なところで、強さを発揮できる羽生結弦」のイメージが、この大会でより強化されました。

 

本当にソチ五輪の金メダリストになった今、改めて振り返ると、色々と感慨深い演技です。

もちろん、私の直感がどうであれ、それが実現するかどうかは、羽生選手次第なわけですが(笑)、当時、私と同じように思いながらワクワクと見ていた羽生ファンの方々は、きっと大勢いらしただろうと想像します。

また、この大会があったのは、東日本大震災が起きる、約1ヶ月前のことでした。  

震災後の羽生選手は、アイスショーに次々と呼ばれ、その経験が羽生選手の実力をさらに上げていくことになりましたが、この時の「4大陸選手権 銀メダル」の実績は、ただ単に「羽生選手が震災で困っているから」というだけでなく、アイスショー主催者側が羽生選手を呼びたくなる大きな理由になったのではないかと思います。

 

 

 

まるで孫を見つめるかのような視点からの解説者の解説と話し方が、ちょっと笑えます。

 

下に載せたニコニコ動画は、2010年NHK杯の時のもの。 この時はまだ15歳ですが、シニアデビューでいきなり4回転トーループを決めてきて、多くの人を驚愕させました。(かつてプルシェンコ選手が初めて4回転Tを14歳で跳んだ天才っぷりに次ぐ衝撃度。)

後半かなりバテ気味ですが、ラストで頑張って少し盛り返してきます。 特にシットスピンの素晴らしさに思わず目を見張ります。

演技開始時の眼光の鋭さが、「タダ者じゃない」感を漂わせています。(笑) 

 

(ニコニコ動画は、右下の吹き出しマークをクリックすると、画面上に表示される感想を消すことが出来ます。)

 

この独特の衣装は、見た瞬間に、元全米王者・ジョニー・ウィアーさんを連想させるようなデザインだったのですが、それもそのはず、

実際に、ジョニーさん本人が羽生選手のためにデザインしたものであり、そのことを羽生選手自らが、詳しく解説してくれているのが、下の動画です。(デザインにこだわったのは羽生選手側と言うより、やはりジョニーさんのようですが・・・)

薄いピンクが子供を表し、次第に色が濃い色へ変わっていくことで大人への変化、「ジュニアからシニアへの移行」を表しているんだとか・・・

こちらは、シニアデビューして、グランプリシリーズ初出場となった2010年のNHK杯 (この大会で初めて4回転を決めた) の後に応じたインタビュー番組。

しっかりとした口調で、涼しい顔をしていますが、強い決意と内に秘めた激しい闘志を感じさせるのは、この頃から同じですね。

普段、男性のお肌には興味のない私でも、この時の羽生選手の透き通るような白い美肌には、何度見ても驚かされます。

 

 

一番上の、記念すべき「4大陸選手権・銀メダル」の演技は、どうやら7月発売に延期になった羽生選手の初DVDにも、収録される予定のようです。 ↓ 

この演技を、「解説なし」で、演技そのものに集中しながら見られるであろう点は、私にはちょっと魅力であり、楽しみなところです。

 

羽生結弦「覚醒の時」 (初回限定豪華版) [DVD]
クリエーター情報なし
ポニーキャニオン

 

 

羽生結弦「覚醒の時」 (通常版) [DVD]
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以下は、Blu-ray版

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最高おススメ演技 その9 羽生選手13歳の頃の「sing sing sing」

2014-03-24 | プロアスリート羽生結弦・羽生結弦選手・最高おススメ演技集

羽生選手の最高おススメ演技 その9 は、まだたったの13歳の頃の演技 「sing sing sing」 です。

全日本ノービスAで優勝しただけでなく、全日本ジュニア選手権で3位、という結果を叩き出した2007年頃の映像だそうです。

 

一度つぶれたリンクが復活し、練習環境も良くなって、恐らくは、非常にやる気に満ちていた頃のものですね。

まず、より完成度の高い印象の、エキシビション版をご紹介します。

映像はあまり良い状態ではなく、かなり見難いのですが、それでも、その演技の凄さに驚かされます。

この少年は、フィギュアスケートのために生まれてきた・・・ そう思わせてくれる映像です。

 

とにかく、手足が長い!(笑) 衣装もとても良く似合っています。 

13歳の紳士!(笑)

一番の見所は、その表現力というか・・・ 幼いながらも、魅せつけてくれるプロ根性ですね。

スピンも全て速くて美しくて素晴らしい!もう、笑うしかない。天才少年ってこうなんですね。

解説の最後で、荒川さんが「出来ないことが何もない選手」だと、絶賛しています。

 

まだ幼い風貌の羽生選手ですが、既に立派な役者であり、エンターテイナーでありアスリートです。

帽子の使い方も立派です。 

「和製プルシェンコ」などと呼ばれている、とは、テレビ解説者のお言葉です。

 

スピード感があり、リズム感の大変良い曲ですが、それに動きもピタリと合わせています。

羽生選手の得意とするところでしょう。

ご本人もとても楽しそうだし、観る側も、楽しくなってくる、笑顔になる・・・そんな素敵な演技です。

羽生選手の得意技・長所が、よく表現できている、優れた作品だと思います。

 

 http://www.youtube.com/watch?v=ibp4NCZiJlU  (← You Tube )

 

ニコニコ動画はこちら。 (画面上のコメント文字を消して見るには、右下のセリフ吹き出しマークをクリックします)

 

また、同じ「sing sing sing」でも、もう一つのおススメはこちら。  元になった、ショートプログラムの演技のものです。

このニコニコ動画の最初の数分間は、練習中の様子の映像です。

実際の羽生選手の演技は、4分30秒ぐらいのところから始まります。

 

 

 

もう一つ。

 

本当に楽しそうに滑っていて、動きにもキレがあって、何も言うことがない…というか、ただただすごい、としか言えません。(笑)

 


最高おススメ演技(動画) その8 「羽生結弦ジャンプ集」

2014-03-21 | プロアスリート羽生結弦・羽生結弦選手・最高おススメ演技集

最高おススメ演技 その8 は・・・羽生結弦選手の、歴代ジャンプ集です。

今回も、プログラムそのものではないのですが、見る価値があると断言できます!

意欲的な方が、羽生選手のトリプルアクセル(3回転半)を中心に、ジュニアの年から連続で、

羽生選手のジャンプだけに焦点を当てて、映像をつないでくださったものが、ニコニコ動画に公開されてあります。 

 

なかなか良い動画なので、ご紹介します。 音楽のセンスもかなり良いです。

見ていてワクワクしてきます。(笑)    (動画主様、拝借します。)

 

ニコニコ動画 羽生結弦選手 3A(トリプルアクセル)、ジャンプシークエンス 変遷集

 

(ニコニコ動画は、コメントが画面に大量に表示されてしまいますが、表示を消したい時は、

右下の「セリフ吹き出しマーク」をクリックすれば、人々のコメントを画面から消すことが出来ます。)

 

今さら言うまでもないのですが、羽生選手のトリプルアクセル(3回転半)&4回転は、本当にきれいですね。

思わずため息が出ます。

 

最後の、ジャンプシークエンスのところでは、近年羽生選手が、試合外で跳んでくれた、

4回転+3回転半+3回転半、などの驚愕の連続ジャンプの映像が見られます。

 まだ見たことがないという方は、必見です。

 

すでに練習では、3種類目の4回転ジャンプに挑戦中だという羽生選手。いずれは全ての種類の4回転に挑んでくるつもりのようです。

さらに、まだ誰も跳んだことのない4回転半(クワドアクセル)にまで挑戦していて、あともう少しだとのインタビューもありましたし、

数年以内にその成功する姿が見られる可能性は高いと思います。

 

プルシェンコさんが、「羽生選手には、4回転+4回転も可能。」と断言したようですが、(↓)

フィギュア界きっての天才にこんなことを言われるとは、これはもう、とんでもない期待の高さです。

http://news.livedoor.com/article/detail/8564642/  

以下、この記事に出てくるプルシェンコさんの羽生選手への言葉を抜粋します。

 

「私がコーチをすれば、結弦をあと頭2つ抜きん出た選手にできる」 (さ、さすがの自信です・・・笑)

「まず羽生選手は2種類だけではなく、もっと多くの4回転ジャンプが跳べるはず。4回転、4回転のコンビネーションの可能性もある。4回転トーループ、4回転トーループです。彼はまだ19歳ですから、絶対にできる」

「羽生選手は4回転ジャンプが素晴らしい。滑りが柔軟でカリスマ性がある。表現力が豊かで芸術的。他の人にはない多くのものが備わっている」

 

 ・・・素晴らしい絶賛ぶりです。 今後はひたすらプルシェンコさんに語ってもらいたいくらいです。

でも、羽生選手自身が、たとえ誰に言われずとも、4回転については、「俺には出来る」と思っていそうです・・・(笑) 頑張って下さい!

 

この先、このジャンプ集の続きに、どんなすごいジャンプが加わっていくのか、楽しみでもあります。

(でも、本当にどうか、無理のし過ぎや怪我にだけは気をつけつつ、の挑戦であって欲しいです・・・)

 

ジャンプについては、つい最近、羽生選手本人の口から、

「ジャンプ自体が、技ではなくて、プログラムの1つの流れとしての一部分、として思われるように魅せるのが僕の理想形」 なのだと、

カナダのトロントで語ってくれました。  ↓ 

デイリーモーション動画 羽生結弦 3.17 

 

私が、最初に羽生選手の演技に惚れ込んだ時のプログラム、「2010年のショート・白鳥の湖」の中のジャンプは全て、そういう

「プログラムの一つの流れの一部分」になっていた、まさに魅惑のジャンプだったと私は思っていますけれども・・・ 

(上のジャンプ集動画の中の、3番目に出てきます)

まだまだ、羽生選手の理想には程遠いのでしょうか? 4回転でもそういう形を目指していくのでしょうね。

  

デイリーモーションの動画の中で、「金メダルをとって燃え尽きたりしないのか?」と質問された時の映像が出てきます。

「燃え尽きるわけないじゃないですか!超悔しいですもん!」と言ってくれていた、その言葉そのままに、これから益々、燃え上がって欲しいですね。

羽生選手には、スケートに「燃え尽きる」なんて言葉は、全然似合いません。

 

たとえ引退する日がいつか来ても、やっぱり別の形でスケートに燃えていそうです。(笑)

今は、燃え尽きるどころか、むしろ周囲を「燃やし尽くす」心配さえあります。

 

シニアデビュー以来、炎のような勢いで、男子フィギュア界の選手たちの魂に、火をつけてまわった男・・・ それが羽生選手です。

おかげさまで、他の選手達が、かつてないほどに真剣に取り組んでくれ、今シーズンは特に、各選手が自分の個性を追求した、素晴らしい演技を見せてくれました。 

羽生選手の、桁違いの本気度が、そういう状況を引き出してくれたと思っています。

選手達は大変だったと思いますが、見ている側としては、シーズンを通して素晴らしいものが沢山見られて、かなり有り難かったです。

 

さすがに、羽生選手は、「ライバル全員がベストな演技をして、なおかつその中で自分もベストの演技で圧勝したい!」 というほどの強烈なパーフェクト願望を持つだけのことはあります。

今度はこれに、少しでも近づけると良いですね。

 

織田選手の作年末の引退は、私はものすごく残念に思いましたが、羽生効果で(?)今、一番良い形で燃え上がってくれているのが、

「逆バレンタインができるよう、頑張ります」発言で強烈なインパクトを残した、町田選手です! (笑)

(茶化しているのではなく、町田選手のあの時の眼差しは、明らかに本気で真剣だったのでとても良かったです。)

ソチ五輪を見る限り、彼は今後益々伸びてくると思われます。 エキシビションも凄く良かったですし。

数年前の羽生選手に感じたものと同じような、ハングリー精神と強い自信を、今の町田選手には感じます。

怪我で欠場となった高橋選手の代わりに出場が決まった小塚選手も、五輪出場を逃した分、必ず全力を尽くしてくるでしょうし、非常に楽しみです!

 

このお二方には、良いライバルがいるほど燃える体質の羽生選手を、今後も、大いに刺激するほどの存在であり続けて欲しいです。

 

羽生選手の、最後のロミオとなるであろう一週間後・・・、渾身のロミオ演技を期待しています!


最高おススメ動画 その7 「ソチ・フリー練習・ロミオ・4回転サルコー成功」

2014-03-14 | プロアスリート羽生結弦・羽生結弦選手・最高おススメ演技集

今回は、おススメ演技とは言っても、「練習演技の動画」です。しかし、これはかなり見る価値があります!

 

今期のフリープログラム「ロミオとジュリエット」。

まだ、残念ながら試合では冒頭の「4回転サルコー」を成功させていない羽生選手ですが、

練習では何度も何度も成功していて、確率も相当上がっていると報道されていました。

 

ソチ五輪での練習時間に、羽生選手が音楽をかけて通して「ロミオとジュリエット」を練習していて、

その貴重な「4回転サルコー」を成功させている姿を、動画でUPして下さっている方がいました。

 

今シーズン最後の試合となるであろう、世界選手権まであと2週間ですが、そこでの成功を祈りつつ、

この「必見!」とでもいうべき、4回転サルコーを成功している素晴らしい練習動画へのリンクを貼らせて頂きます。

 (練習ですから、他選手もチラチラ映ります。)

 

Sochi 2014 HANYU Yuzuru practice FS 00712

http://www.youtube.com/watch?v=3eJhJHfwWeU

 

 

私個人は、羽生選手の練習着姿も練習の様子も、すごく好きです。

シンプルに真っ黒なだけですが、衣装の装飾がない分、動きが氷上でクッキリと映え、見やすくて尚且つ、美しいです。

頑張っている姿はいいですね。

さすがに練習着だと、その雰囲気から「ロミオ」には見えにくいですが、むしろ「スポーツ選手だな…」と改めて思わされます。

カッコイイです。

 

ソチでの本番直前時期の練習ですから、気迫も十分、完成度も高めです。

冒頭の2つの4回転ジャンプはもちろんですが、後半部分もかなり観る価値があります!!

ただし、スピンだけは、この通し練習ではあえて避けているようです。(ラストのスピンのみ)

 

他にも、途中休み休みしつつ、全体の演技の確認をしている様子ですが、

スピンなし、衣装なし、それでも、羽生選手の演技そのものが、すごい魅力を放っているのだと気づきます。

動画をアップしてくださった方に、感謝です!

 

この練習演技では、4回転サルコーも、難なく、美しく跳んでいる姿が見られます・・・

ブラボー!!

練習でこれだったなら、ソチ五輪のフリーを、非常に悔しがっている羽生選手の気持ちも、よくわかります。

 

試合本番でもこれが見られるといいですね!

 

世界選手権、楽しみです!

羽生選手、良い成功イメージで頑張って下さい!

次はきっと成功出来ます!!


最高おススメ演技 その6 生きる勇気と希望を与える、羽生選手の熱い想いと表現力の結晶・渾身のEX「花になれ」

2014-03-10 | プロアスリート羽生結弦・羽生結弦選手・最高おススメ演技集

おススメ演技 その6は、ファンの間でも非常に評価が高い、エキシビション「花になれ」です。

このブログのタイトルもこれからヒントを得ており、載せている羽生選手の写真もその演技中のものを使わせてもらっています。

私自身は、この演技が特に特別に、とても好きです。

 

このエキシビションが特別なのは、羽生選手自身が、この歌が大好きで、落ち込んでいる時に非常に励まされたそうで、

強いメッセージ性と熱い思いと優しさを込めて、まさに「渾身の」演技をされているからです。

世界中の人が見ますので、世界に向けて発信されてはいますが、特に、被災地となった地元・仙台や、福島も含めた東北、及び日本の方々への羽生選手の思いや励ましが、強く表されていると考えられます。

 

自ら歌いながら、本当に嬉しそうに、情感を込めて氷の上を「舞い続ける」羽生選手。

曲、歌詞がそもそも素晴らしく、振り付けも歌詞に合致させてあり、見ていて本当にわかりやすく、気持ちの伝わってくる作品です。

衣装も和風で、非常に個性的ですが、色合いもデザインもとても似合っています。

この衣装が似合い、しかもこんな繊細かつ独特な演技が出来るのは、やはり羽生選手しかいないだろうと思わされます。

 

「花になれ」は、どの回でも非常に心を込めて演技されているので、おススメを選ぶのに非常に困るので、演技が披露された年代順に、遠慮なく沢山ご紹介していきたいと思います!(笑) 

 

 

まず、最も素晴らしい演技だった一つ、2012年NHK杯の時のEXの「花になれ」。

これは、試合のエキシビションとしては初披露となった時で、仙台で行われた大会だったため、羽生選手の心のこもり方が、また格別に見えます。本当に透明で澄んでいて、珠玉の演技。

 

胸が震えるような感動がある、全身全霊の演技です。

アンコールの「パリの散歩道(2012版)」がついています。 

 

 

次は、2012年の全日本選手権で、初めて優勝した時のもの。

18歳になりたての羽生選手の演技です。

アンコールで、2011年度版 ロミオとジュリエットをこの衣装のまま演じてくれていて、とても新鮮です。

歌手の指田さんの生演奏で舞っているので、非常に丁寧に、情感が込められています。  とても美しいです。

全てがよく調和して、完全に一つの芸術作品になっていると思います。まさに、祈りのような演技です。 (デイリーモーション動画)↓

http://www.dailymotion.com/video/x16ss9e_%E7%BE%BD%E7%94%9F%E7%B5%90%E5%BC%A6-2012-%E5%85%A8%E6%97%A5%E6%9C%AC-ex-%E8%8A%B1%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8C-%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%AB-%E3%83%AD%E3%83%9F%E3%82%AA-%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%83%83%E3%83%88_sport

 韓国語字幕を付けて下さってある動画

この時、羽生選手はこのアンコールのロミオの演技の一番最後に、世界中のスポーツ選手が成果を出した後でよくやる、天を指差すポーズ 「神に感謝します」の意味(基本的には世界共通)のポーズを、天を仰ぎながらやっています。

これは、(世界共通認識では)その出した成果が自分自身の力だけではないことを、選手本人が実感している時に、本来は「天の神様に感謝して行うポーズ」です。

初めての全日本優勝という結果を受け、また、「花になれ」に込められた思い、ロミオとジュリエットを演じてきた2011年のこと、壮絶な被災地であった仙台のことなどを思いながら、今生きていること、スケートが出来ていることなども含め、もろもろの感謝の気持ちを、意図的に表したもの。

余談ですが、この天を指差すポーズを、「俺が一番!」の意味だと勘違いしてしまう人が結構いますが、本来の意味ではそれは間違っていて、むしろ正反対の意味になります。

ただ、その意味を知らずに勘違いして、あるいは意図的に個人で、「俺が一番!」とか、「既に天国にいる(特定の)誰かに捧げます」等の意味で、そのポーズをとっている選手がたまにはいるのも、また事実ではありますが、本来それは正しくありません。

本来の意味は「神に感謝」ポーズなのです。(ごく稀に解説者でも間違えている人がいるので、厄介ですが…。)

羽生選手は、2012年ニースの世界選手権で銅メダル獲得時、フリーの「ロミオとジュリエット」の直後にも、強い表情で最後にこの天を指差すポーズをとっていて一部で話題になりましたが、これについてはインタビューで、「最初はガッツポーズをしようとこぶしを上げたけれども、上げている途中で、ああ、これは自分ひとりの力ではないと思って・・・色々な人の思いや、天からの力をもらったりだとか…(中略)とっさに天を指差した」というような説明をしていました。

(参考: 文章インタビューと映像でのインタビュー、どちらでも似たようなことを答えていました。映像で残っているのは、次の動画の、8分50秒頃から⇒ http://www.dailymotion.com/video/x1asuu6_18%E6%AD%B3%E3%81%AE%E6%B1%BA%E6%96%AD-%E7%BE%BD%E7%94%9F%E7%B5%90%E5%BC%A6_sport )

野球に非常に詳しい羽生選手ですので、世界中の野球選手やサッカー選手たちがよくやる、「神に感謝」等の、「この結果は、自分だけの力ではない」という謙虚な意味を込めながら行っているものと、私は推測しています。

また、「(これは)自分の力だけではない (と思った)」は、羽生選手が、よく言う言葉でもあります。

周囲の人たちに大いに支えられていることも含めて、常日ごろから感謝している羽生選手の思いや姿勢を表しています。

 また、特に「天才」系のスポーツ選手たちは、「天からのギフト」としてその特別に優れた能力を授かったことを実感しているので、そのことへの感謝を表すことはよくあることであり、キリスト教圏ではこういう姿勢は特に重要と考えられています。

これを徹底してやる選手は、決して一時の成果でうぬぼれて傲慢に陥ったりしないことや、その「ギフト(才能)」を使って使命(自分に与えられた役割)を達成しようと努力するため、その後も継続して優れた結果を出し続ける傾向があります。

羽生選手にも、今のところ、この原則が当てはまっているように私は思っています。

優勝者や大活躍した選手に、よく見られるポーズですね。

 

 

 

もう一つのおススメ動画が、2013年の全日本選手権、圧倒的な優勝で連覇を達成し、ソチ五輪代表をトップで確定させた時のもの。

羽生選手自身が、「気持ちよく滑れた」「僕のほうが(観客に)感動をもらった」と、半分恍惚の表情でインタビューで答えています。

(アンコールで、「パリの散歩道」を、この衣装のまま披露してくれています。)

ニコニコ動画です。(動画主様、拝借します!)

 * 画面上に表示されるコメントを消すには、右下の、セリフ吹き出しマークをクリックして下さい。

珍しくジャンプの失敗がありますが、笑って見過ごしましょう。(笑) 

歌詞の通り、「ぶつかっていいんだ」「泣いたっていいんだ」「苦しいほど、その命は強く輝く」な曲ですから、

まさにその歌詞を自らが体現してくれている、と、いうことで・・・ (笑)

むしろその後の、羽生選手の心のこもった表情、テレ笑いしながらも前向きに演じ続ける明るい姿勢に、注目です!

 

「ジャンプの羽生」と高く評される昨今の羽生選手ですが、実は羽生選手、絶えず最高難易度のものに挑戦し続けるからこそ、ジャンプを失敗する姿も、意外とチラホラと見られるのです。(笑)

しかし、彼が一貫してすごいのは、それを暗い顔でひきずったりせずに、すぐにケロッとしたりカラッと笑って済ませたりして、その後の演技に影響させずに、感情を込めて渾身の演技をし続けるところです。

(さすがにオリンピックのフリー演技の時には、ケロッというわけにはいかなかったようですが… それでも諦めない態度が結果的に金メダルを呼び込みました。)

だから、見ている側に、「あれ?そういえば、さっきジャンプ失敗したような?」と忘れさせてしまったり、むしろ「なんだ、羽生選手でもジャンプ失敗するんだ」「失敗って、別に大した問題じゃないんだ」と思わせてくれ、見ている者を逆に励ます効果さえ生じさせています。

私個人は、羽生選手のこの点を、前から強く尊敬しています。

 

「自分は泣き虫」と平然と告白してきた羽生選手ですから、この曲の「泣いたっていいんだ」という歌詞も、非常に本人の実感のこもったものだと思われます。

そして、こういうメッセージを堂々と表現できる…弱点を決して隠さずに、自分や他人の弱さを受け止めて認めてあげられる…さらには、全ての人への励ましにまで変えられる…そういうところにこそ、羽生選手の本当の強さが表れていると思います。

総合的に見て、このエキシビションは、本当に羽生選手にピッタリです!!

 

この演技の直後に撮影された、ソチ五輪代表確定の3人による、エキシビション後のインタビュー動画も、合わせてどうぞ。

高橋選手の意欲的な問いかけに、力強く「うんうん」と頷き、メダルを持ち帰る気満々な日本代表3人も、別の意味で必見です。

羽生・町田・高橋 ソチ五輪に向けてのインタビュー動画

 

 

同じく、最高に素晴らしい演技の一つ、(←いくつ最高があるんだって突っ込まないで下さい(笑))

2013年の名古屋フィギュアスケートフェスティバルの時の、「花になれ」 です。 非常に美しくて、ただひたすら感動、感涙の演技です。

私は、特にこの時の羽生選手が演技がとてもとても好きです!

この衣装のまま、「パリの散歩道」もアンコールでついています。(このときはまだ2012年ー2013年シーズンの時の「パリの散歩道」です。)

最後、インタビューに答える羽生選手も、汗だくですけど、素敵です。全力投球ぶりがうかがえます。(笑)

  

こちらは、スペイン語の翻訳をつけて下さった同じ演技の動画。

 

こちらは、ちょっとうるさいけど、日本語の解説つきの同じ演技。↓

 

そして、ソチ五輪で金メダルを獲得後に、日本のアイスショーで何度も何度も披露して下さった時の演技。

これは、その中でも、スターズオンアイスの時の演技です。

この頃には、高校生だった最初の頃と比べると体格がかなり良くなってきていて、さすが金メダリストですね!

金メダルを獲得後、羽生選手は本当に多忙を極めていて、疲労が蓄積していたはずの頃だったのですが、それでも演技中は疲れを見せないようにして本当に頑張って、渾身の想いで演じて下さっています。

 

どれも本当に素晴らしいですね…!

 

この「花になれ」は、全日本選手権の時のエキシビションのものが、羽生選手の演技DVD「覚醒の時」に、収録されています。

DVDのページはこちら →http://blog.goo.ne.jp/hananinarouyo/c/fe23ffbb4dbb9980d774f67b63dd81b6

 

「花になれ」のピアノ楽譜がこちら↓

ピアノピース ピアノソロ&弾き語り 花になれ(うた:指田郁也)
 

オンキョウパブリッシュ