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羽生結弦選手の演技動画でジャンプを見分ける! その1 ~ジャンプの種類と特徴~

2020-10-13 | フィギュアスケート技術と羽生選手

このページは、2015年2月に初掲載したページです。

それまで、フィギュアスケートでは、某人気選手に対する、一部の「色気目的」の自称ファンばかりが激増し、その人たちが長年にわたって羽生選手を散々馬鹿にし続け、ジャッジをこきおろし、文句を言い続け、ネット上でも現実の場でも、羽生選手へ侮辱と暴言と悪魔呼ばわりを繰り返し、徹底的に苦しめてきていました。

「羽生選手が好き」だというと、こちらを一方的に「にわか」と決めつけて馬鹿にしてくるような人たちが大勢いる、そんな「異常な状態」が続いたのです。いやいや、その人たちよりもはるかに、ずっと長く見ていた人たちの多くは、羽生選手の凄さにとっくに気づいていたと思いますけどね!

当時の誹謗中傷は、本当にもの凄かったのです。でも、当時、誰かこれをきちんと止めた人がいたでしょうか?

そのうち、その人気だった某選手自らが、「どんなに騒がれても、本当に応援されている気がしない」と、公の場で、明確に言い出すようになりました。これにより、その一番ひどい人たちの一部は姿を減らしていきました。某選手は、大変だったと思いますけど、これは本当に、有難かったですね…!

また、2014年の中国杯で羽生選手が大怪我を負った際、その状態で無理をすると将来が危険だと、立場を思いやって言いにくいことをハッキリと言って下さったのが、他でもない、プルシェンコさんと、この某選手だったんですよね。私はよく覚えています。誰よりも覚えているのは、羽生選手ですよね…♪

例えば、体操選手たちがもし、もっと女性の目を引く、人気が出るような「衣装」「体操着」に変えたなら、騒ぐ人たちはいくらでも出るでしょうし、今よりはるかに注目も浴びるでしょう。

でも、それをしないのはなぜですか?

内村選手がもし、首回りに「立体装飾のバラ」を大量につけて現れたら、それまでとは違う人たちが注目して、大いに騒ぐことでしょう。でも、そうしたら、彼の最高の技術は殺されるのです。たとえ怪我していなくたって、動きや回転が狂うから、当然、勝てなくなります。

そんな、当たり前すぎるほど当たり前のことがわからなくなったら、それは競技でもスポーツでもなくて、スポーツ風の、ただのショーです。

フィギュアスケートで、かつてないほどの高難度技術を羽生選手に求めておきながら、そしてかつてないほどの芸術性をも同時に求めておきながら、どちらをも同時に根底から破壊するようなことを、意図的に平気で煽り続ける人たちがもたらす結果は何でしょう?

その人たちが、その競技のことも、選手の努力もその背後にある人生のことも、大事に思っていないのは明らかです。

 

懐かしいので、再UPしておきます…♪

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初掲載 2015年2月27日

 

さて、今回は、羽生選手の演技動画で、ジャンプの種類と名前を覚え、

さらには「スロー再生動画」を使って、ジャンプの技の詳細を確認し、見分ける訓練をちょっとだけしてみたいと思います。

 

(フィギュアスケートは、技の詳細を全然知らなくても、観ている分には十分に楽しめます。 

でも、見分けるのが無理でも、ジャンプの種類と名前、難易度ぐらいは覚えておいた方が良いだろうと思います。 

羽生選手が何をやっているのか、どのくらい難しいことなのか、少しはわかってくると思うからです。 )

 

素晴らしい動画を作成して下さっている方がいらっしゃるので、そちらをまずはご紹介。(動画主様、ありがとうございます!!)

 

まず、ジャンプの種類の説明です。(かなり基本的な内容です)

ジャンプは、「トリプル・アクセル」 のように呼ばれますが、最初の言葉 「例:トリプル(3回転)」が回転数で、その後ろの言葉 「例:アクセル」が、ジャンプの踏み切りの種類を表します。

ジャンプは、踏み切る時の足と、使われるエッジ、踏み切り方で、6種類 に分かれます。

1回転(シングル)、2回転(ダブル)、3回転(トリプル)、4回転(クワド、またはクワドルプル)、と呼ばれ、どれかが頭につきます。

5回転より上は、現在、公式試合で成功した人間はいません。 

 

 

次は、踏切です。

”一般的に”やさしいと呼ばれている、踏み切り方法の順番から。

 

トーループ(トウループ)  →  サルコウ(サルコー) →  ループ  →  フリップ  →  ルッツ  、そして、最後に最難関の、 アクセル です。

 The Toe Loop            →       The  Salchow    →    The Loop  →     The Flip   →    The Lutz            →           The Axel

 

アクセルジャンプは、+半回転が加わったジャンプなので、同じ回転数の中では最も難しく、レベルが高いです。

現在のところ、最難関は4回転ジャンプ(ほぼ男子のみ)で、その次に難易度が高いのが、3回転の中でも、3回転アクセル(トリプル・アクセル)です。

トリプル・アクセルも男子が中心で女子選手はほとんど跳びません(普通は跳べません)が、浅田真央選手(バンクーバー五輪で計3度も成功)や伊藤みどりさん(女子史上初のトリプル・アクセル・ジャンパー)をはじめ、女子でも過去に、数人程度が跳んだことがあります。

 

ジャンプは、基本的に必ず、「後ろ向きに」着氷します。 (靴の構造上、前向きに着氷は不可能。)

 

ですから、基本的には踏み切るときも、「後ろ向きに踏み切って」跳び上がり、回転を開始します。

しかし、アクセルジャンプ「省略記号:A 」は、半回転多く回るために、踏切が「前向きスタート」になります。

逆にいうと、素人目にも、最も「見分け」やすいです。

もし、選手が前向きにジャンプを跳びあがったら、それは、「○○・アクセル」ジャンプです。

現在までのところ、試合で、「4回転アクセル (クワド・アクセル)」 を成功させた人間は、まだいません。 

(羽生選手は、今後跳べる可能性の最も高い選手だとみられていて、練習中。 少し回転不足程度にまでは既に回れているらしいです。 )

 

ジャンプの難易度については、選手個人の個性からくる、得手・不得手もあるため、選手一人ひとりにとって異なり、必ずしも上の通りになるとは限らないようです。

羽生選手は、4回転トーループは非常に成功率が高く、昨シーズンまでは、全選手中で成功率がトップです。前回のグランプリファイナルでも成功した4回転サルコウも出来ますし、試合ではまだ入れていないものの、アイスショーでは今年、4回転ループまでは成功させています。

そして、4回転フリップよりも、通常はもっと難しい、4回転ルッツのほうに取り組んでいて、練習では既に4回転ルッツは跳べているそうです。(成功率までは不明。)

 

しかし、かつて高橋大輔選手は4回転サルコウやループには挑戦せずに、4回転フリップのほうに挑戦していて(バンクーバー五輪シーズン)、公式練習では成功させていましたし、

一般的にはトーループが一番やさしいと言われますが、サルコウのほうが得意だという選手もいれば(安藤美姫さん・村上大介選手等)、

4回転トーループよりも、3回転アクセルのほうが苦手になってしまう選手も、何人もいらっしゃいます。

 

羽生選手は逆に、アクセルが非常に得意で、3回転(トリプル)アクセルまでは助走もなしで跳べてしまうほどです。 

羽生選手もかつてはトリプル・アクセルを跳ぶのにかなり苦労したようですが、浅田真央選手が実際に跳んでいるところを間近で見ていて、

「タイミングで跳んでいる!」と分析して、それを見て覚えて、真似してコツをつかんだら出来るようになったそうです。

 

アクセルが苦手な選手は、前向きに跳びあがるのが怖いからだという話をよく聞きますが、羽生選手は基本的にリスクを恐れない勇敢なタイプですから、なるほど、極めて得意になるのも納得ですね。

 

ちなみに、この「アクセル」という名前は、最初にアクセル・ジャンプを跳んだ、ノルウェー人の名スケーター、「アクセル・ポールセン」さんの名前からきています。1882年にウィーンで行われた、最初の国際競技会でアクセルを跳んだそうです。

 

 

 

使われる足、エッジ、踏み切り方の違いは、以下の通りです。

今回は基本、羽生選手が跳んでいる、普通の「左回り、または反時計回り」に回転していく「普通の」選手たちのケースで説明します。 

反対回りをする選手もたまにいて、その場合、全て左右が逆になります。

 

ジャンプは、トウ・ジャンプと、エッジ・ジャンプに分かれます。

トウ・ジャンプというのは、トウ・ピック(スケート靴のつま先部分・ギザギザになっている箇所)を氷について、その勢いをも使って跳ぶジャンプです。

エッジ・ジャンプというのは、エッジ(スケート靴の刃の、縦長方向の端)を使って踏み切り、跳びあがるジャンプです。

 

 

 トウ・ジャンプ >                          

トーループ(トゥループ)(左足のトウ +右足・外側(アウトサイド)エッジ)

フリップ (右足トウ + 左足・内側(インサイド)エッジ)

ルッツ (右足トウ +  左足・外側(アウトサイド)エッジ)

 

< エッジ・ジャンプ 

サルコウ(サルコー) (左足・内側(インサイド)・エッジ踏み切り)

ループ (右足・外側(アウトサイド)・エッジ踏み切り)

アクセル (左足・外側(アウトサイド)・エッジ「前向き」踏み切り)

 

 

次に、使われる足の違いです。 

 

まず、トーループ(トウループ)と、ループについて。 

これはどちらも、右足の外側のエッジ(右足・アウトサイド・エッジ)を使って後ろ向きに滑ってきて踏み切る点は同じです。

(ループ(Loop)というのは、「輪」という意味ですので、そのように見えるジャンプと、それに「トウ(トー)」(Toe)をつけ加えたジャンプという、形を表した表現だと思われます。)

 

トウループ(トーループ) 「省略記号:T 」――――― 右足のアウトサイドエッジで踏み切り、左足のトウを突いて跳び上がります。

                                   全てのジャンプの中で最も目にする機会が多いのが、トーループです。 4回転や、連続ジャンプ(コンビネーション・ジャンプ)の後続ジャンプで、最も沢山跳ばれるジャンプです。 左足のつま先(トウ)をついて身体全体がまっすぐに伸び上がり、きれいに自然に跳び上がっていくように見えます。

世界初の4回転トーループは、1988年の世界選手権で、カナダのカート・ブラウニングさん(羽生選手のEXプログラム「Hello,I love you」の振付師)によって、成功されました。

 

ループ 「省略記号:Lo 」 ―――――  右足のアウトサイドエッジで踏み切ります。 

                           左足が右足の前に出て交差し、ひざを曲げて深く腰掛けたような形から跳びあがります。

                           滑ってきた勢い、または、氷上でつけた半回転の勢いを利用して、エッジで踏み切るのが、ループです。

ループは、基本的な回転のポジション(足の交差のさせ方、腕の収縮のさせ方、左肩の上への頭をもっていき方)を学び覚えるのに、特に有効なジャンプと言われます。 回転のための上半身のコントロールが、カギとなります。

ループは、滑っている足(=スケーティング・レッグ)と反対側の自由になっている足(=フリー・レッグと呼ぶ、この場合は左足)を前に出し、跳ぶ瞬間、膝を深く曲げるため、腰をかがめて椅子に座るような形に見え、左足が前方でクロスするように見えます

このように、跳び上がる直前に左足が前に出て、クロス(交差)したように見える形で踏み切り、跳んだ直後も、両足がねじれ輪のように交差して絡まりながら跳んでいくように見えることが多いのが、ループです。

 

トーループ と ループ この二つの違いは、跳ぶ瞬間に、左足のつま先をつくかどうか、と、左足(踏み切らないほうの足)の、位置がどこにあるか、です。 

 トーループは、左足が後ろに下がって、(つまり両足が前後に開いて)、左足のトウをついて跳びあがります。 

 ループは、左足が右足の前に出て交差(クロス)し、ひざを曲げた状態から、トウをつかずにそのまま踏み切って跳びあがります。

 ループとトーループはかなり形が違うので、トーループだけでも見慣れてくれば、ループを見ると明らかにトーループとは何かが違うとわかるようになるはず。 

 羽生選手のキレイな4回転トーループを沢山見慣れれば、ループは跳ぶ直前の形がかなり違うので、”なんか違う”と確実にわかるようになると思います。

 

 

では、具体的に、羽生選手の演技動画で、4回転トーループだけを見てみましょう。↓ (動画主様、丁寧なスロー化、ありがとうございます!)

 

これは、1年前(2013年年末)の、全日本選手権での羽生選手のSP「パリの散歩道」での4回転トーループです。

左足のつま先をついて跳びあがっています。 

離氷時(スタート時)の、右足のブレード(刃)の角度、 さらには、着氷時のブレードの角度まで、丁寧に示されてあります。

今、動画を動かさない「静止状態」では、羽生選手の、「着氷時の瞬間」が映っているはずです。

両足ともに黒く映っているので見難いとは思いますが、前方に伸びているのが左足です。

そして、この時、滑っているのは、折れ曲がって見えるほうの足で、それが「右足」です。 その外側(アウトサイド)エッジを使っている状態です。

 

着氷時ですので、斜め後方へと滑っていますが、右足首が右奥に傾いているので、右足の外側(アウトサイド)エッジに体重が乗っていると解ります。

こうすると、氷の上では、反時計回りの緩やかな孤を描くことになります。(この 画面上では、奥のほうへとカーブを描く)

 

 

 

次に、「ループ」の動画です。 こちらは、羽生選手が練習で4回転ループを跳んだものを、スロー化した動画です。↓

トウはついていないことをご確認下さい。 ひざが曲がり、腰が低く、「座るような体勢」からスタートしています。 

左足を前に出して交差させ、後ろになっている、右足の外側エッジで踏み切ります

 

 

トーループとループ、この二つは、連続ジャンプ(コンビネーション・ジャンプ)の、後続(2番目)のジャンプにも、よく使われます。

ジャンプの着氷は、全て右足の外側(アウトサイド)エッジを使いますので、最初に跳んだジャンプで着氷した足(右足)の外側エッジを使って、そのまま続けて、踏み切って跳ぶことができるジャンプは、この二つだけだからです。

(ループを後ろにつけるほうが、より難しく、そのジャンプの性質から回転不足も取られやすいので、最近では避ける選手が多いですが、浅田選手はソチ五輪・フリーで、この難易度の高い3回転ループを後続につけることを、臆することなくやっています。)

 

 

次に、羽生選手が2種類目の4回転として、必ず演技に取り入れている、4回転サルコウについて、見ていきます。

 

サルコウ(サルコー)「省略記号:S 」――――― 左足の内側(インサイド)エッジで踏み切り、右足の太ももを左足の上に勢いよく振り上げて、跳びます。 

                                反対の足のトウは使わない、エッジ・ジャンプです。

                                跳ぶ直前、足が、スキーでいうところの、「ボーゲン」の形のように、カタカナの「ハ」の字のように一瞬開きます

                                (内側(インサイド)エッジを使っている状態です。)

                                つま先(トウ)をつかずに跳ぶことと、一瞬「ハ」の字形に両脚がなること、右足を勢いよく振り上げて跳んでいくのがポイント。

羽生選手の4回転サルコウは、そのスピードのせいか、ハの字になってから、さらにスキーのパラレルの時のように、身体全体が右側に大きく傾いて、両足が一瞬平行な形にまで見えるほどに傾いてから、ガッと右足を振り上げて、一気に跳びあがっていくように見えることもあります。

同じエッジ・ジャンプの「ループ」との違いは、サルコウの場合、跳ぶ直前に両足は少し開いた状態で、跳び上がる時になって初めて、右足が左足の上に重なっていきますが、ループは跳びあがる前に、左足が前に出て、氷上の段階で先に両足が交差しています。 (注:サルコウは左足のエッジで、ループは右足のエッジで跳びます。)

 

 

では、羽生選手の4回転サルコウを、スロー動画で確認してみましょう。 ↓

次の動画では、羽生選手がショーで、かなりの高難度である、「4回転サルコウ+3回転アクセル」 のジャンプ・シークエンス(ターン等、体重移動を挟む、連続ジャンプのこと)を見事に跳んでいますが、動画主様がそれをスローにして下さっています。

「1分00秒過ぎ」からの、羽生選手の4回転サルコウのスローモーションが、非常にわかりやすいと思います。 

両足が、きれいなハの字になってから跳びあがっています。  

(ついでに、続けて、左足に踏みかえてから前向きにジャンプする、3回転アクセルのスローも見ておいてください。)

 

ここで羽生選手が後続ジャンプとして跳んでいる「アクセル」ジャンプは、前向きスタートのジャンプなので、別のジャンプの後ろに続けて跳びたい場合、第一ジャンプの着氷の「後ろ向き・右足アウトサイドエッジ」状態から、前に向きを変えなければならないため、着氷そのままのエッジで踏み切って跳びあがらなければならない「コンビネーション」(結合・接続・合体、のイメージ)とは、呼ばれません。 

足を踏みかえて、体重移動(くるっとターン)をしてから跳ばなければならないため、「シークエンス」(連続・つながり・一連の)と呼ばれる、連続ジャンプになります。

 

 

次の動画の、3分30秒からも、羽生選手が4回転サルコウを跳ぶ映像が、スローにされています。

この説明・スローは、とてもわかりやすいと思います。  ↓ こちらも、参考までに。

https://www.youtube.com/watch?v=0YowxQ-tkCM

 

サルコウという名前は、最初に、スウェーデンの「ウルリッヒ・サルコウ」さんという、1900年から1911年の間に10回も世界王者となった人によって開発されたジャンプなので、こういう名前がついています。

 

次の動画は、ソチ五輪のフリー「ロミオとジュリエット」の、公式練習時の、動画です。

以前、最高おススメ演技集の中でも紹介しましたが、ここで羽生選手は「4回転サルコウ」を成功させています。(本番は残念でしたが。)

最初に登場するジャンプが、「4回転サルコウ」です。 確認してみて下さい。  ↓ 

 

 

 

次に、フリップとルッツについて 見てみます。

フリップルッツは、どちらも、左足のエッジで踏み切り、右足のトウ(つま先)をついて跳ぶ、トウ・ジャンプです。 

違いは、踏み切る時の左足のエッジです。

フリップ 「省略記号: F 」――――― 左足の「内側」(インサイド)のエッジで踏み切り右足トウ(つま先)をついて跳びあがる。

ルッツ 「省略記号: Lz 」――――― フリップとは逆で、左足の「外側」(アウトサイド)のエッジで踏み切り右足のトウをついて跳びあがる

 

また、フリップ とは、単に 「トウの補助をつけた、サルコウ・ジャンプ」であり、だから、ヨーロッパでは、「トーサルコウ」(Toe Salchow)とも呼ばれている・・・と、私の持っているやや古い英語の解説書には書かれてあります。

(左足のインサイド・エッジで踏み切るという点では、サルコウとフリップは同じです。)

最初にこのジャンプを開発した人は「ブルース・メイプス」さんであり、それゆえ、フリップ・ジャンプは最初は何年も「メイプス」(Mapes)と呼ばれていたそうです。

しかし、トウをつくことで、ジャンプ・テクニックについては、サルコウとはかなり異なっていきました。

英語の「フリップ」(Flip)には、「ピンとはじく」とか、「パッとめくる」というような意味があるので、このジャンプの見た目の形態を表した名前なのだろうと思われます。

 

一方、ルッツ は、第二次世界大戦前に、ウイーン・スケーティング・クラブ(Viennese Skating Club )のメンバーだった、「アロイス・ルッツ」さんという方によって開発されたので、「ルッツ」と呼ぶようになっています。 アクセルを除いた、後ろ向きスタートのジャンプの中では、最難関ジャンプです。

 

先に、ルッツを見てみましょう。

次の動画の、33秒のところで動画を静止して見て下さい。 跳びあがる直前のところで止めて下さい。

https://www.youtube.com/watch?v=884tV7DCm00&feature=player_embedded

これは、羽生選手のソチ五輪ショート「パリの散歩道」の時の映像ですが、ちょうど33秒~34秒のところから、3回転ルッツ+3回転トーループを跳びます。

その3回転ルッツを、羽生選手の正面から撮影してある映像なので、そこで静止すると、跳ぶ直前の体勢&エッジの傾きがよく解ります。

左足首が身体の外側に傾いている(=アウトサイドエッジを使っている)のが解り、右足は、大きく後ろへ下がっていて、トウをついています。これがルッツの踏切です。(フリップは逆に、左足首が身体の内側に傾きます。=インサイドエッジを使うため。)

ルッツの、横から見た形については、一番上に載せた最初の動画で、再度ご確認下さい。

こちらは、ロシアの技術説明動画の、「ルッツ」です。

 

ルッツが難しいと言われ、アクセル以外では最難関とされるのは、後方滑りの左足のアウトサイド・エッジで滑ると、時計回りの流れのゆるやかな孤を描いて滑っていくことになるのですが、跳ぶ瞬間に右足のトウをつき、そこから、それまで滑ってきた流れとは反対周り(反時計回り)の方向へ回転をつけて跳んでいかなければならないから、逆方向へ回転をかけることになるので、難しいと言われます。

ルッツは、左足のアウトサイドエッジを使うために、左腕をしっかりと前に出して右腕は後ろに大きく引き、跳ぶ直前に、滑っていないほうの自由な足(フリーレッグ)である「右足」を後ろにぐいっと引き下げて、左肩をぐっと下に落として左ひざを深く曲げる前傾姿勢をとってから(=左のアウトサイドエッジに乗る)、ドーンと右足のトウ(つま先)をついて跳びます。

横から見ると、左足で後ろ向きに滑ってきて、そのまま右足を大きく後ろに引き下げ、前のめりに構えた体勢になってから、右足のつま先(トウ)をついて跳んでいくように見えます。これが、ルッツです。

中には、後ろ向きに右足で滑ってきて、直前に左足の外側エッジに切り替え、パッと右足のトウをついて跳んでいく選手もいます。これだと、フリップと印象が似ていて、見分けにくくなると言われます。

 

しかし、フリップは、直前に氷上でくるりと、またはくるくると、跳んでいくのと同じ方向(左回り・反時計回り)にターンをして、後ろ向きのインサイド・エッジになったところで、そのまますぐに、同じ回転方向へと「ポン」と跳びあがるような準備態勢をとるのが普通なのに対し、

ルッツは最初から後ろ向きに直線的に滑ってきた姿勢のまま、グイッと右足を後ろに下げてドーンとトウをついて跳びあがっていくように見えるのが一般的です。 また、ルッツの方が、逆回転をかけるために、跳ぶ直前の構えの姿勢が、フリップより大きくなるのが普通です。

一番上の動画で、羽生選手はルッツを跳ぶ時、滑る足を右足から左足に入れ替え、右足と右腕を大きく後ろに引いて前かがみになり、左肩を落とした体勢になってから(=左足のアウトエッジに乗る)、右足のトウをついて勢いよく跳んでいきます。

 

フリップは、たいてい最初は前向きに滑ってきて、跳ぶ直前にパッとターンをして、後ろ向きになります。 

しかし、直前にターンをしたら何でも「フリップ」なのではなく、その直前に行う動きの流れの最後に、インサイドとアウトサイド、どちらのエッジに乗る形になることが自然になる動きをしているのか、あるいは、どちらのエッジに乗るための動きなのかを見れば、どちらを跳ぼうとしているのかがだいたいわかると思います。

「左足・前向き・アウトサイドエッジ」スタートからのスリーターンを使うと、後ろを向いた時には、左足の内側(インサイド)エッジに乗っており、かつ、フリップジャンプで回転していくのと同じ方向への回転の勢いもついているので、フリップの場合は、普通はそれを先にやってから跳びます。

向きを変えた途端、やや内股気味に軽く構えた形になったところで、直ちに右足のトウをついて、直前と同じ回転方向へ、ポーンと跳んでいきます。

羽生選手のフリップは、氷上でくるくると回転を繰り返してから、そのまま同じ回転方向へ、右足トウをついて、ポンと「軽く」跳んでいくように「見え」ます。

 

 

最後に、最難関の「アクセル」ジャンプを、羽生選手のスローモーション動画で、じっくり見てみましょう。

次の動画の、0分28秒過ぎから、羽生選手のトリプル・アクセルの、スロー動画が見られます。 これはオリンピックの時の公式動画です。↓

https://www.youtube.com/watch?v=bwS9BuAJVYw&feature=player_embedded

 

左足のブレード(刃)の、「外側(アウトサイド)エッジ」(=outside edge of blade と動画には書かれてあります)

「前向き回転に」踏み切っていて、(=Forward rotation & take off)

空中で3回転半して(3.5 rotations) 、1260度回ってから、

着氷が、踏切とは逆の足の(=landing on the opposite leg to take off) (羽生選手の場合は右足)、「外側(アウトサイド)エッジ」になっているのを、動画でご確認下さい。

 

この動画で最初に登場するのは、ソチ五輪銅メダリストのデニス・テン選手で、その後に登場するのは、「初代3冠王」の、アレクセイ・ヤグディン選手です。(プルシェンコ選手のかつてのライバル)  

注)羽生選手は昨年、ヤグディンに続く、二人目の3冠王になりました。(3冠とは、グランプリ・ファイナル、オリンピック、世界選手権の、世界3大大会を同シーズンに全て制覇したことを指しています。)

 

(上の、サルコウのところで紹介した、「4回転サルコウ+3回転アクセル」の動画でも、アクセルのスローモーションを見ることができます。)

 

次の動画は、羽生選手の過去の、3回転(トリプル)アクセルばかりを集めた動画です。 約2年前までの映像を集めたもの。

これだけ沢山見れば、前向きに跳び始める特徴の、トリプルアクセルについては見慣れてくる・・・はず。(笑)

 

 

 

 

 上に書いたこととほぼ同じ説明ですが、全ジャンプの図解が簡単にされている動画を、おさらいと参考までにどうぞ。↓

 

 

 

フリップと、ルッツの見分けが最も難しいと言われています。

エッジ・エラー(=エッジを使い方が間違っていると判定される)を取られる選手も多いことからも、跳びわけそのものも難しいのだと思います。

この点については、以下の、鈴木明子選手が詳細に説明してくれている動画のHPが参考になるかと思います。

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/special/figureskate/video/jump

フリップ と ルッツだけでなく、トーループ等の他のジャンプの説明動画も、上のページの下の方についています。 参考にどうぞ。

 

 

 

以上、ジャンプの見分けを少し紹介してきたものの・・・

個人的には、ジャンプの見分けに執着しすぎて、そこにしか意識がいかなくなったりして、ジャンプ前後の全体の美しさや流れ、表現されているもの、プログラム全体の面白さを見落としてしまうのは、非常にもったいないと私は思っています。

 

選手や選手候補の子供たち、スケートをスポーツとして実践していて技の習得に励んでいる人たちには、

とても重要な技の見分けですが、そうでない一般人で観ているだけの場合は、そこまで気にしなくてもハッキリ言って、十分に楽しめます。

『 次に、羽生選手は「4回転サルコウ」というのを跳ぶらしい・・・』、『 へえ、そうなんだ 』 程度でも十分に楽しめます。(笑)

 

見分けたい人はそれでいい。  ですが、何もやっきになる必要はない・・・というのが、私の個人的な考えです。

ストレスになるくらいなら、無理しないで気楽に見たほうがいいと思います。

楽しく見ようよ、フィギュアスケート!って感じですね。(笑)

 

ジャンプの回転不足や成否は、点数に大きく影響しますし、競技としては非常に重要なのは間違いないのですが、そこにばかりに注目して意識を集中させすぎて、他の美しさ、プログラムの工夫、音楽との調和性等、プログラム全体としての出来や魅力などにまで注意が払えなくなってしまうと、フィギュアスケートの魅力を半減させてしまって、もったいないように私は感じます。

 

選手が何のジャンプを跳ぶのかは、試合のプログラムとして、あらかじめ決まっていますし、時に、アクシデントや体調等その他で、演技中に急遽変更することもありますが、そんなに多くはありません。 

あらかじめ「次に何を跳ぶのか」を知っておけば、十分かなとも思います。

 

どちらにしても、選手たちは最善を尽くして頑張っていると思うので、楽しく見られて、その努力を称えられるといいですね!

 

 


羽生選手本人の実演解説による、トウループ、サルコウ、ループの3種類のジャンプの跳び方と見分け方

2017-10-14 | フィギュアスケート技術と羽生選手

 

 

羽生選手が、ご本人実演つきで、トウループ、サルコウ、ループの3種類のジャンプの、跳び方と見分け方を解説してくれました!

 

その番組動画がこちらです。

この3種類は、現在(10月半ば現在)羽生選手が、試合で跳んでいる4回転の、3つです。

(ルッツもアクセルも練習では跳べるという話もありますが、まだ試合に投入はしていないので…)

 

 

こ、こんな簡単な解説でいいのでしょうか…?(笑)と、思わず笑えて来ましたけど、

「簡単に説明」できることは大事ですね。

 

かつての本田武史さんみたいに、「4回まわって降りるだけ!」とか、

かつての羽生選手みたいに、「シュッと跳んでパッと降りる!」とか、ええ、いつもいつも、本当に解りやすくて、

思わず「なるほど!」と、笑顔で涙が出ますね!(笑)

 

さて、羽生選手ご本人の解説によれば、それぞれのジャンプの跳び方は、こうだそうです。

ループ・ジャンプ

「僕は、最初左足をついていて、そのあと、右足で跳びます。」 「これがループです。」

(注:後ろに右足があり、前に左足がある状態から、右足で跳びます。)

 

サルコウ・ジャンプ

「後ろ向きで滑ってて、左足でジャンプを跳ぶのが、サルコウです。」

(注:アクセル以外のジャンプは基本、全て後ろ向きから跳びあがります。)

 

トウループ・ジャンプ

「左足で氷を蹴って、このまま、跳んでいきます。」

(注: 確かに、左足で氷を蹴るのは、トウループだけです。 右足で蹴るジャンプは、ルッツかフリップになります。)

 

文字にしてみると、なんとシンプルな…!!(笑)

簡単すぎて、読むだけでは詳細はわかりませんので、どうぞ映像で羽生選手の動きを見ながら、ご確認ください!

 

 

細かく見ると、体の内側と外側の、どちらのエッジで蹴って跳びあがっているのかが、重要になります。

これを間違えると、エッジ・エラーとなります。

 

より詳細にジャンプを知りたい方は、こちらのページを参考にどうぞ。

 

 

 

羽生選手はどうぞお身体をお大事に、どうか無理なく楽しく、一番良い形で足腰・体調が守られていきますように…!

 

 


「1回転アクセル」「オープン・アクセル」「ディレイド・アクセル」「リバース・ディレイド」それぞれの定義と違い

2017-03-14 | フィギュアスケート技術と羽生選手

3月24日: タック・アクセルの動画を追加しました!

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 「Notte Stellata(星降る夜)」の羽生白鳥が跳ぶ、毎回少しずつ異なっている、優雅にアレンジされている 1回転アクセル(シングル・アクセル)は、私はとても好きです。(白鳥の演技全体が全て好きなのですが。)

 

ですから、羽生選手の素晴らしい演技に、余計な一言を加えることになりそうでなかなか気が進まなかったのですが、

羽生選手の、あの演技の中に出てくる、1回転アクセルは何と呼ぶべきなのか、について、出来るだけ正確な定義の下で書きたいと思い、できる範囲で、丁寧にみてみます。

 

スケート・カナダの後に出されたスケート関係の雑誌等では、羽生選手の白鳥の中に出てくる「1回転アクセル」が、どれも全てが「1回転アクセル」の表記で統一されていました。

 

中には、「あれはディレイド・アクセルでは?」と言う声もあったりしましたが、

実は、ディレイド・アクセルは前から、その技の定義や認知に、関係者の間でさえ混乱があったようで、それが過去の日本の解説で、きちんと説明されていたことがありました。

 

「出だしがディレイド(遅れた)な1回転アクセル」(=羽生選手が言うところの、ディレイドなジャンプ)と、いわゆる「ディレイド・アクセル」と呼ばれる技は、正確には別物なのだけど、混同されたまま広まってしまっている、という説明がされていたと記憶しています。

 

当時の同じものを見ていて記憶している方々もいらっしゃるかと思うのですが、ディレイド・アクセルを滅多に見ることがない昨今では、羽生ファンの多くの方は知らないと思いますので、当時の解説者による解説の記憶と、英語の解説書等にある「正確な定義」から、それらの違いを見てみたいと思います。

 

 

まず、これらのジャンプの、それぞれの定義について見てみます。

 

1回転アクセルは、「アクセル」ジャンプの定義に基づいて跳ぶ1回転、つまり、実際には1回転半のジャンプだということで、特に問題はないですね。

アクセルは、全ジャンプの中でも、「前向きに跳ぶ唯一のジャンプ」で、アウトサイドエッジ(刃の外側)を使って踏み切ります。 アクセル・ポールセンさんという方が最初に跳んだ人であることから、アクセルという名がついています。

(ジャンプについて、わからない人は、「フィギュアスケート技術」のジャンプの解説ページでどうぞ御確認下さい。)

 

 

次に、オープン・アクセル、についてです。

私の持っている英語の解説書(跳び方の指南書みたいな本・やや古い)に書かれている、

「オープン・アクセル」の定義は、以下のようになっています。


オープン・アクセル (The Open Axel)

「このアクセルでは、離氷の時の体勢を、少しの間維持させます。

空中に上がったら、開いた両腕を、僅かにだけ縮めて、まるで大きなビーチボールを抱えているかのような状態にします。

両腕が、空中では多少なりとも開いている状態にあるため、

着氷の時に回転を止めるのはより難しくなり、

より大きな力とコントロールが、通常のアクセルジャンプよりも必要となります。

ジャンプが高ければ高いほど、観客にはより大きなスリルが味わえます。 

このジャンプは、観客にとても好まれます。」

 

また、こちらの英語の解説ページでは、オープンアクセルはシンプルに、次のように説明されています。

 

オープン・アクセル… いくぶんか身体を開いた体勢のままで、回転が本来より不足気味で実行されるアクセル。


 

次に、ディレイド・アクセルについて、定義を見てみます。

上と同じこちらの英語解説では、こう説明されています。


ディレイド・アクセル… 跳びあがった後に、ワルツ・ジャンプの体勢をより長く維持してから、ジャンプの回転の終わりごろには、回転速度がより速まっていく、アクセル


こちらの英語の解説ページ(クリックどうぞ)では、このように説明されています。

(Delayed Axel )  It is identical to the regular axel, but there is an appearance that the rotation stops momentarily while the skaters is in the air.

ディレイド・アクセル…  普通のアクセルとそっくりだが、スケーターが空中にいる間に、回転が一瞬だけ止まったかのように見えるところが異なるアクセル。

 

私の持っている解説書では、この上の二つの文章に載った特徴を両方合わせたものが「ディレイド・アクセル」とされています。(後で詳述します)

 

さてここでちょっと先に、過去に日本の解説で、「正しいディレイド・アクセル」として説明されていた内容(私の記憶に残っている内容)を、説明してみたいと思います。

 

少なくとも羽生選手がスケートを始めるよりもは前の頃かと思われる、恐らくは20年前後~30年前の間頃だったように思うのですが、

当時の私があまり興味を持っていなかった外国人男子選手(誰だったか名前を思い出せません、本当に失礼でスミマセン)で、思わず目を見張るような、すごくカッコイイ印象的なディレイド・アクセルを跳んで、特徴のある、見事な着氷をしてみせた男子選手がいました。

 

その時に、日本のテレビでのベテラン解説者が、それを見て、

「今のが本当の、正しいディレイド・アクセルです!」という感じで声を大にして言いまして、

「ディレイド・アクセルというのは、実は、今のように、着氷の直前に、明確な空中での一時静止があってから、このように(力強く)着氷するのが正しいのであって、

そうでなくて、回転しながら普通の着氷をするものは、「出だしの遅れた1回転アクセルに過ぎない」のであって、

今現在、ディレイド・アクセルだと思われ、そう呼ばれてしまっているもののほとんどは、正確には実は、ディレイド・アクセルに なっていないんです!! 」

 

と (決して一言一句まで正確なわけではありませんけれども、) だいたいこういう内容を、

日本のベテラン解説者が、ここぞとばかりに力説されていたことがあったと記憶しています。

正確にはディレイド・アクセルではないという、「空中に上がってから回転を開始する、出だしが遅れた(=delayedになった)1回転アクセル」が、「ディレイド・アクセル」と呼ばれて認知され、広まってしまっている当時の現状に、解説者の方はお困りだった印象でした。

それで、「こういうのこそが、本当のディレイド・アクセルなんです!」と、その選手が跳んだのを見た時に、強調され、力説されたんですよね。

 

その時に、「へー!そうだったんだ…!なるほど~!」と大いに感動してしまった私は、そのジャンプの映像だけはしっかりと記憶に残っているのですが、それは、

跳びあがってから回転を始めることで、回転始めがディレイド(=delayed)になるだけでなく、回転し終え、着氷前のまだ空中にいる間に、「フッ!」という一瞬の静止状態があって、

(=両腕をバッと横に開いた、いわゆる「回転を止める」姿勢を、1回転半まわった後に、空中で行うことによって、ほんの一瞬の空中静止状態が起きる ) 

それから着氷するため、着氷のタイミングがほんの一瞬遅れたように見える(Delayed=遅れた)形になっていたのが、正しいディレイド・アクセル、と呼ばれていたと記憶しています。 

 

つまり、「正しいディレイド・アクセル」と呼ばれたそのアクセルは、

着氷直前に、止めの体勢による「空中一時静止」、すなわち「両腕を開いたポーズ」を行ってから、そのまま後方に落下するように、ズサッと、力強く印象的な着氷で終わるもので、

「明らかにただのアクセルジャンプとは違う」、「かなり特殊な技」として、誰にでも認知できる、明確な特徴のあるジャンプだった と思うのです。

 

例えば、羽生選手が良く言う、「シュッと跳んで、パッと降りる」 「シュッ・パッ」 という感じの言葉で表現するならば、

その時に「正しい」と説明された ディレイド・アクセルは、

「フワ~ン(まっすぐ方向へ離氷・長く空中を維持)」→「クルクッ(急速に1回転半・後半スピードアップ)」→ 「バッ(両手を広げて、回転の勢いを止める空中での一時静止)」→「ズサッ(両手を開いた姿勢のまま落下して力強く着氷)」

という感じで行われた技でした。

 

英語の解説書での技の説明と定義は、以下のようになっています。

  

ディレイド・アクセル (The Delayed Axel)

「 まっすぐに前方・地上から20フィートの高さの地点を目印として見つめ、前方の目印を見つめたまま(回転をかけずに)跳びあがり、両腕を離氷時の瞬間から前方で肩の高さの位置に保ったまま、空中の一番高いところに到達してから初めて回転を始めなければならない。

空中に上がりきってから、両腕と頭と足を急速に締めて回転姿勢に入り、

ここから急速にスピードアップしながら1回転半回り、通常の着氷ポジションに自然に入るより前に、1回転半を完全に回り切ってから、着氷しなければならない。

ジャンプの終わりごろ、空中での回転速度が増しているため、着氷の時には、

通常のアクセルジャンプの着氷よりも、より強い「止め」(=チェックと呼ばれる、両手を横に広げた体勢) が必要となる。」

 「 ディレイド・アクセルは、正しいテクニックとタイミングで行えば、通常の着氷体勢に入っていくより前に、アクセルの1回転半の回転を、しっかりと回り切ることが可能である。 」

 
 
と、書いてあります。(実際には跳び方の説明はもっと長い文章ですが、要約) 
 
 
ここには、空中一時静止が要件とは書いていないのですが、「着氷前に、1回転半をしっかりと回り切ってから着氷に入ること」 と「力強い『止め』(=両手を広げた体勢)が必要とされる」 ことは明確に書かれておりまして、
 
多分この点が、上の別の英語の解説文にもあった「まだ空中にいる間に一時静止したかのように見えるアクセル」と書かれ、また、昔の日本のベテラン解説者が仰っていた、
 
「回り切ってから、着氷直前に空中一時静止があるのが、正しいディレイド・アクセルであって、そうでないものは、出だしの(回転始めの)遅れた1回転アクセルに過ぎない」

と指摘していた点に該当する部分なのではないかな…?と、思われます。 
 
 
(※ 「今現在の正式な定義はこうだよ」ということがどこかで解説されて判明した場合で、ここに書いたものに間違いがある場合は、該当箇所を、謹んで訂正させて頂きます。 )
 
 

離氷と同時に回転を始める通常のジャンプと違って、空中に跳び上がってから初めて回転を始める「ディレイド(=delayed 遅れた)」になるところが、オープン・アクセルとディレイド・アクセルは共通しているのですが、

「ディレイド・アクセル」という名で呼べる技は、オープン・アクセルより長い滞空時間を、真っすぐの方向にむけて回転をかけずにギリギリまで維持する必要があるようで、さらに空中で回転を始めてからは、今度はジャンプ終わりに向かって、回転速度がスピードアップしていくのが、「ディレイド・アクセル」という技の特徴として、定義されています。

(オープン・アクセルは、回転速度の変化には言及されていません。) 

 

これらの基準で見ると、スケート・カナダのEX本番での羽生選手の、あの1回転アクセルは、

回転開始はディレイドだったとしても、ジャンプ後半の、特に着氷直前を見ると、白鳥っぽくアレンジしているせいで「普通に回転しながらの滑らかで優雅な着氷」になっているため、ジャンプ後半が明らかに定義から外れていて、正確にはディレイド・アクセルとは呼べない状態だろうと思えるのです。 

 

 スケート・カナダEX本番の演技  (動画3:00頃からのジャンプです)

 

 

かつて「正しい」「完璧」と言われたディレイド・アクセルを跳んだ選手が、いったい誰だったかを覚えていなくて、大変申し訳ないのですが、
 
ちょっと探してみた範囲で、まだそれに「近い」ように見え、当時の解説者の基準から見ても、きっと正しいディレイド・アクセルと呼べる範囲内と思えるジャンプの動画が、こちらです。 ↓
 
 
ジョセフ・ソバフチックさん   
動画の、1分17秒あたりで跳びますので、ご確認下さい。
 

 

私が見ていた「正しいディレイド・アクセル」なるものは、これよりもさらにもっと、「着氷直前に、明確な空中一時静止があった」ジャンプでしたが、

それでも、これは一応「ディレイド・アクセル」に該当するのでは、と思います。

(もっと適切なものを見つけたら、その時は差し替えるか、追加しておきたいと思います。)

 

 スケート関係の雑誌で、羽生選手の白鳥の1回転アクセルが、「ディレイド・アクセル」と書かれずに「1回転アクセル」の表記に統一されていたのは、以上のような理由では、と思います。 

 

また、私がこのブログでの、スケート・カナダの「白鳥」演技のページで、あの1回転アクセルを、最初に「オープン・アクセル」と書いておいた理由は、

本番ではなく、「公式練習」の時の1回転アクセルのジャンプを見て、当初、羽生選手が跳ぼうとしているのはオープン・アクセルなのでは?と思ったからです。

羽生選手がスケート・カナダ時の「EX公式練習」で練習していた1回転アクセルは、ディレイド・アクセルには該当せず、むしろオープン・アクセルに非常に近かったことと、「白鳥がテーマ」だと羽生選手は語っていたので、より白鳥に見えるのは、よりふんわり跳ぶオープン・アクセルだと思ったので、そう推測したまでです。

記憶に残っている「正確なディレイド・アクセル」は、私から見るとかなり男っぽいイメージで、カッコイイ技ではあるものの、あまり白鳥のイメージではなく、むしろ完全に別の鳥に見えてくる気がしたので、振付師がそう指示している可能性は極めて低いだろうと思ったのです。

 

その公式練習の時のジャンプとは、こちらです。 (スケート・カナダEX公式練習)

現地の動画主様たちが撮影したものを、使わせて頂きます。  

 

この動画、3:00あたりのところで、羽生選手が、1回転アクセルを跳んでいます。

右下の、歯車マークのところをクリックすると、「速度」という項目があり、スピードを変更できますので、

普通は「標準」となっている、そこの数字を「0.25」という、最もスローな設定に合わせてから再生してもらえれば、羽生選手の動きが、通常よりもスローにした状態で確認できます。

より正確に、羽生選手が跳んだ形がどうなのか確認できますし、細かく判明します。

(羽生選手、失礼します!)

 

ここでは明らかに全く両腕を閉じることもなく、ふんわりと開いた状態のまま(=オープン)になっており、もしディレイド・アクセルなら空中に上がってから、キュッと両腕と身体を締めなければならないのですけど、それが見られません。

着氷直前に、いわゆる「止め」=「チェック」と呼ばれる体勢で、空中で回転を止めてもおらず、だから「空中一時停止」もないですし、回転速度もほぼ一定のまま、回転しながらふんわりと優雅に着氷していますので、

これはディレイド・アクセルとは呼べず、むしろ「オープン・アクセル」に近いジャンプ になっているだろう、と私は思いました。 

(でも、だからこそ、白鳥らしく見えるのですが。)

 

もう一つ、同じ、練習の時の演技の、別の動画主様の動画を確認してみます。

同じく、動画3分頃から、羽生選手が跳びます。

こちらの映像でも、羽生選手はわずかに両腕を閉じかけただけで、広げたまま回転していて、さらには片腕だけを横に開き、回転しながら普通のアクセルのように着氷しているのがわかります。

昔の解説者が言っていた「正確な」という基準で見るならば、やはりディレイド・アクセルとは呼べないジャンプになっているだろうと、私は思いました。

だけど、このジャンプ、私は好きですね…!!とても良いと思います。

この公式練習の羽生選手の演技自体も、とても情感あふれる感じで、素晴らしいですね。(笑) 練習なので、イナバウアーを、「レイバック」なしでやっていますし、ハイドロも省略されてしまってはいるのですが、それでも見ていて思わず惹き込まれるような演技です。

 

 

次に、NHK杯の時の白鳥演技の、1回転アクセルについて見てみます。

この時は明らかに「オープン・アクセル」とは決して呼べない、両腕を途中で完全に閉じて(締めて)いる形の、1回転アクセルを羽生選手は跳んでいました。

 

日本のテレビ解説では、この時、織田さんはディレイド・アクセルだと語ってくれたのですが、確かに一番近いジャンプになっていたとは思いましたが、

ただそれでも、上に書いてきたような、昔の日本の解説者の解説による基準を思い出すと、ジャンプ前半の離氷については明らかにディレイド(=delayed)にはなっているのですが、ジャンプ後半や着氷を見ると、うーん、どうなのでしょう…?

でも、織田さんがそのように解説したのもちゃんとした理由があり、昔の解説が言っていたように、正確には「出だしの遅れた1回転アクセル」なものが、ディレイド・アクセルだと思われ、そのように広まってしまっている現状があったはずなので、今でもそれを受け継いでそのように思っている人たちが大勢いるのは判りますし、だからこそ、織田さんがそう解説したのも、特に驚きはないです。

 

ちなみに、羽生選手のこのNHK杯の1回転アクセルは、ジャンプの高さの頂点に達したあたりから、早くも「両腕も両足も開き始めている」ため、

むしろ、ジャンプの終わりごろに「ディレイド(=delayed)」要素を入れることが定義となる、

「リバース・ディレイド・アクセル」というものにちょっと近づいたジャンプになっています。

 

しかし、正しい「リバース・ディレイド・アクセル」の定義を見ると、この時の羽生選手の1回転アクセルは、正確には、ジャンプ前半部分がこれに該当しないことになるかと思います。

 

「リバース・ディレイド・アクセル」 (The Reverse Delayed Axel) とは

「delay」(遅れ)を、ジャンプの最初ではなく、ジャンプの終わりにだけ取り入れる。

(delay(遅れ)を、ジャンプの最初に取り入れているのが、ただの「ディレイド・アクセル」、逆に、ジャンプの終わりに取り入れているのが「リバース・ディレイド・アクセル」。)

離氷の時は、通常のアクセルジャンプと同じように跳びあがり、むしろ両腕と右脚を急いで引き寄せて回転体勢にもっていくことが重要で、

ジャンプの最も高い位置、すなわち、4分の3回転したところから両手と両脚を開いていき、残りの4分の3回転の間はスピードダウンさせていき、とても滑らかに流れるような着氷で終える1回転アクセルのこと。

着氷の瞬間には、既に両腕も両脚も開いた体勢でいなければならず、閉じていてはならない。 


 

また、こちらの解説では、リバース・ディレイドは、このように定義されています。

リバース・ディレイド・アクセル… 

(1回転半のうち、空中で)1回転を回り終えたあたりから、回転を解いていくアクセル。 

(ただのディレイド・アクセルとは逆に)ジャンプの回転始めのほうが、よりスピードが速く回っているアクセルのこと。

 

 結局、このNHK杯の時の羽生選手の1回転アクセルは、ディレイド・アクセルと、リバース・ディレイドを、前半と後半で合体させたような形になっているように思いました。

 

ディレイド・アクセルが、「空中に上がってから回転し始めさえすれば、それだけで ディレイド・アクセルと呼んで良い」 という基準だったら、確かに、羽生選手の跳んでいるものは、みんなディレイド・アクセルに該当することになっていくことでしょう。

しかし、全てのスケート雑誌で「1回転アクセル」と書かれていたのは、やはり正確な定義では、ディレイド・アクセルという技の名で呼ばれるための基準を満たしていないからだろうと…。

関係者が誰もディレイド・アクセルを知らない、などということは、絶対にあるはずがないですから。

 

 

羽生選手の1回転アクセルは、「優雅に、より白鳥らしく美しく魅せるため」のアレンジによる振付の影響であのような形になっていると私は思うので、

決して、「羽生選手が正確な技を跳べていない」などと言いたいのではなく、

「あのジャンプの形はどう呼べばいいのか?」という問題なだけですので、そこはどうか誤解なきよう、お願いいたします。(笑)

 

私はむしろ、正確にディレイド・アクセルを跳ばれるよりも、白鳥の演技としては、羽生選手が今現在跳んでいる形にアレンジされたもののほうが、ずっと白鳥らしいと思っていますので、演技そのものについては何も言うことはないのです。

 

 

最後に、グランプリ・ファイナル2016の時の白鳥の1回転アクセルについて見てみます。

グランプリ・ファイナル2016の「白鳥」

 

この時、羽生選手はそもそも、空中で「両腕を締めて」さえもいなくて、片腕だけを身体に引き寄せて、もう片腕だけを開いたままの状態にして回転しており、スピードアップもしていないし、空中一時静止もなく、回転途中から片腕だけを先に開ききって優雅にアレンジされていたため、回転速度(スピード)もジャンプの終わりごろにむけて、スピードが落ちてさえいますし、

回転しながら優雅に着氷していたので、やはりこれは明らかに「正確にはディレイド・アクセルではない」ジャンプになっていて、

やはり、「独自の優雅アレンジの施された、出だしを遅らせた1回転アクセル」ということになるかな、と思います。

 

オープン・アクセルは、「普通のジャンプと違って、身体を締め切らずに、いくぶんか身体が開いたままの状態で回転していればそれで良い」ようにも読める解説もあるのですが、

羽生選手のこのGPFの時みたいに、回転途中から片腕だけを完全に横に開いて、片腕は胸側に閉じているような形の場合は、一体どう判断するのか… よくわかりません。(笑)

両腕が、まるでビーチボールを持ったかのような形になっていないことは確かです。

結局、「1回転アクセル」の優雅なアレンジ版 と呼ぶのが一番無難なのかな、と思います。

 

 

 

  

こちらの雑誌のインタビューでは、羽生選手はあれを、練習の時に、空中に上がってから回転を始めるジャンプをよく跳んでいて、それを見て、振付師のデビッド・ウィルソンさんが気に入って、取り入れることになった、というエピソードを語っていました。 ↓

 

フィギュアスケート日本男子ファンブックQuadruple(クワドラプル)2017 (SJセレクトムック)
スキージャーナル
スキージャーナル

 

 

フィギュアスケートの技術の定義については、時々混乱していることがある印象というか、

指導者の流れによって、あるいは国によって、ちょっとずつ違っていたり、

うるさい点が違ったり、あるいは、定義そのものが、ある時からいきなりガラッと変わったり、ということがあるし、

また技術の定義や、評価のポイントなどで、関係者間でさえも、大きくもめていたり違っている様子も過去にはチラホラあったりしたので、難しい時があります。 

このディレイド・アクセルは、ここの解説を読む限りでは、アクセルジャンプを初めて跳んだ人である、アクセル・ポールセンさんが、アクセルのバリエーションとして跳んでいたジャンプの一つかのように読めますが、こちらの解説を読むと、オーストリアのフェリックス・カスパール選手が良いお手本だと書いてあり、でも、検索した限りでその映像は出てこないので、どのように跳んでいたのか、ちょっとわかりませんでした。

 

でも、20年前くらいの当時の日本の解説によれば、ディレイド・アクセルについては、選手やスケーターや関係者の間でさえ、かなりの誤解や混乱があったようでしたので、

私ごときがあまり余計なことには書きたくなかったのですが、

出だしがディレイドなジャンプになっている1回転アクセルと、「ディレイド・アクセル」という名で呼ばれる技とは、正確には違うのに混同されている、と解説されていた記憶がどうしても残っていたので、丁寧に書いてみたつもりです。

 

 

 

技の定義については、時々変更があったりするが難しいところです。

 

例えば、羽生選手たちが現在よく跳んでいる「1回転ループを挟んだ、3連続ジャンプ」ですが、

プルシェンコ選手の時代の頃は、この真ん中のループ・ジャンプは、「ハーフ・ループ(=半分のループ)」と呼ばれていまして、(先日、4大陸の時に、羽生選手もハーフ・ループという表現を使っていました)

その当時は「1回転ループ」とは決して認められていなかったのですが、その後、

「ジャンプの着氷の足は、左右のどちらで着氷してもよい」という重大な定義変更がされた結果、

それまでは「ハーフ・ループ」と認定だったものが、ある年からいきなり、「1回転ループ」と認定されるようになって、そう呼ばれ、得点もそのように計算されるようになりました。

このように、技術については、基準の変更や、大きな定義変更も、たまにあるので…。

 

 

羽生選手のファンである私としては、細かい定義や技の名前を気にしなければ、

あの素晴らしい「星降る夜」の演技において、その名前がなんであろうと、とても魅力的に思える、あの「1回転アクセル」はとても好きなので、私としては正直、どう呼ばれようと関係なく、演技そのものには何も問題はないです。

 

ですから、余計なことをあまり書きたくありませんでしたが、きちんと説明しておかないと、かえって皆様を混乱させそうで申し訳ないと思い、このページを作成しました。

参考になりましたら、幸いです。

 

 

さて、ここで有名なオクサナ・バイウル選手の、リレハンメル五輪EXの白鳥演技を観てみます!

 

この動画の2分40秒過ぎに跳んでいる1回転アクセルは、

これは明らかにディレイド・アクセルにはなっていなくて、もちろん、オープン・アクセルでもなく、

明らかにただの1回転アクセルなんですが、それを、優雅に美しく、白鳥っぽくアレンジした着氷になっているだけなんですよね。

羽生選手のも、これに非常に近いイメージで、特に着氷はこれと似たアレンジになっているように思います。

でも、羽生選手の1回転アクセルは、跳び始めが明らかに空中に上がってから回転を始める「ディレイド(遅れ)」の状態でスタートさせているところが、このオクサナさんのアクセルとも決定的に違うのですが、

こういうオクサナさんのような 「ただの1回転アクセルの優雅アレンジ」だけでも、演技としては十分白鳥らしくなっていて、これはこれで素晴らしいとわかると思います。

 

 

 

最後に、アクセルジャンプの、他のバリエーションの説明を載せておきます。

 

タック・アクセル (The Tuck Axel)… 

回転体勢に入りながら両腕を引き寄せる時に、両脚をも、スクワット・ポジションに引き寄せるアクセルのこと。

 

こちらの説明によれば、 タック・アクセルとは、スクワットの体勢のように、両足を曲げた状態で跳ぶアクセルのこと。

 

こちらの動画、2:35のところで、実際の「タック・アクセル」が見られます。↓ 

 

 


クロス・タック(・アクセル) (The Cross Tuck)…

基本的には、タック・アクセルと同じだが、スクワット・ポジションに両脚を曲げる時に、両脚をクロスさせるという点だけが異なる。

 

こちらの説明では、 両脚を曲げて、交差した状態で跳ぶ、アクセルのこと。


(タックアクセルとクロスタックアクセルは、定義から見ると、離氷の時にその姿勢を維持する、いわゆる「ディレイド」要素は必要なく、普通にすぐに回転を始めるアクセルの一つと見て良いようです。)



インサイド・アクセル (Inside Axel)…

左足・前向き・内側・エッジの踏切で跳びあがり、1回転半をまわって、右足・後ろ向き・外側・エッジで着氷するアクセル。


ワンフット・アクセル (One Foot Axel)…

通常のアクセルと同じように、「左足・前向き・外側エッジ」で踏み切って跳びあがるが、

踏切と同じ足である 左足で着氷し、「左足・後ろ向き・内側エッジ」を使って着氷する ところだけが、普通のアクセルとは異なるアクセル。

 

 

 

羽生選手には、より自分の理想とするイメージの演技に向けて、ますます頑張ってほしいと思います! 

 

今後の演技も、楽しみにしています!! 

 

 

※ このページに書いた内容で、間違いがある場合は、どうぞ遠慮なくご指摘下さい。

その他、訂正すべき内容等が発覚した場合は、その段階で、謹んで訂正させて頂きます。

 


羽生結弦選手の演技動画で、ジャンプを見分ける! その4 「しっとり系エキシビション」

2015-10-10 | フィギュアスケート技術と羽生選手

 「羽生結弦選手の演技動画で、ジャンプを見分ける!」の その4は、

羽生選手自身も、「自分らしい」とも語っていた、 「しっとり系のエキシビション」集を使って、ジャンプ を 一つずつ観ていきます!

 

 

「元気系のエキシビション」集である、その3は、こちら

 

ジャンプの種類と基本的な説明、羽生選手のスロー動画による見分け方は、その1 を、

試合での練習動画や本番動画等を使った、プログラム内での全種類の見分け方については、その2のページをそれぞれ、ご参照下さい。

 

なお、羽生選手は、エキシビションの演技では、同じ演技プログラムでも、その時によってジャンプを変えてくることが結構ありますので、

同じタイトルの演技だからと言って、ここに載せた演技でのジャンプと同じものをいつも跳んでいるわけでない、ということに、どうぞご注意ください。

 

 

 1:  まずは、 「story」から。  ファンタジー・オン・アイス2013 in 福岡でやってくれた時のニコニコ動画です。(動画主様、拝借します!)

 

*画面上に表示されるコメントで、答えを書いてしまっている方がいらっしゃるので、コメントを消してから見てください。

コメントを消すには、画面右下の「セリフ吹き出しマーク」をクリックして下さい。

 

一つ目のジャンプ。  右足を後ろに引いて、右足トウをついて、ポン!と跳んでいます。

     この形になるのは、フリップ(インサイド・エッジ踏切)かルッツ(アウトサイド・エッジ踏切)ですが、この映像角度だと、エッジの角度は良くわかりません。

しかし、直前の動き「くるくると反時計回りを繰り返して、後ろを向いた瞬間にすぐにジャンプ」=踏切となる左足が、「インサイドエッジ(内側のエッジ)にのる状態で即ジャンプ」に踏み切っていますので、インサイドエッジ踏み切りの、フリップだと解ります。

 ですので、 フリップです。 3回転フリップ

              

二つ目のジャンプ。   前向きに跳びあがりましたので、 アクセルです。 3回転(トリプル)・アクセル。 

  ソチ五輪シーズンにずっと「パリの散歩道」で披露してきた、左足の「バック・アウト・カウンター」(後ろ向きスタートでアウトサイドエッジからのスタートで滑る、カウンターという種類のターン、の意味)から、反対の足を氷の上につかずに、そのまま直ちに跳びあがって跳んでしまう、(助走なしの)トリプルアクセルで、羽生選手は超お得意ですが、他の選手たちには普通はできない、非常に高難度のものです。

 この演技の羽生選手は、思いがこもっていて、しっとり系ではありながらも、躍動感がすごいですね。

また、最後のインタビューにも、注目です。 

これは、ソチ五輪シーズンが始まる直前のインタビューですので、羽生選手がこのシーズンの最終目標である「2月のソチ五輪」を目指して、先に行われる12月のグランプリ・ファイナルに向けてどのくらい意気込んでいるのかがよく解るかと思います。(笑)

そして本当にこの年のグランプリ・ファイナル(会場:日本の福岡)で優勝し、羽生選手は再びこの「Story」をそのエキシビションで滑ってくれました。(このブログで、今年の最初にご紹介した演技動画が、その演技です。)

 

 

2:   今度は、2014年、ソチ五輪で金メダリストになった後のアイスショー、ファンタジー・オン・アイスの時の演技、「言えないよ」 を使ってみます。

      羽生選手、19歳。 大学2年生になっています。

 

一つ目。  両足をハの字に開いて、トウをつかずに、右足を振り上げて跳んだので、サルコウです。 3回転サルコウ

 

二つ目。  左足を後ろに引いてパッとそのトウをつき、右足のアウトエッジで踏み切って跳んでいますので、トーループです。 左足を後ろに下げてトウをつくのは、トーループ(トウループ)しかありません。

    3回転トーループ。 

 

三つ目。  右足を後ろに引き、右足のトウをついて跳びました。(=フリップか、ルッツがこの形です。踏切の足のエッジが内側に傾いているか外側なのかで、決まります。)

    跳ぶ直前に、左肩をぐっと下げて、左足のエッジを明らかに体の外側(=アウトサイド)に傾けてから、右足のトウをついて跳んでいますので、アウトサイドエッジ踏切となる、ルッツです。 3回転ルッツ。 

    フリップの場合は、ルッツの時よりも上半身がまっすぐに起き上がっていることが多いです。

  これは、自分でその場で「左足を前に、右足を後ろに引いて」試してみるとわかります。

   左肩を下げて体を腰から前方に倒すと、左足の裏の外側に体重移動が起きるのがわかるでしょう。 そこから、また身体をまっすぐに立てて戻すと、左足の裏側の内側に体重が移動するのがわかるかと思います。体重がかかった側にエッジ(スケート靴の刃の端)が倒れますので、そのエッジで踏み切ることになります。

 この演技は、羽生選手のプログラムとしては初めて、パスカーレ・カメレンゴさんが振付た演技です。 羽生選手は、難しかったという感想をもったようです。  歌詞の意味がよく伝わってくる演技でした。

「ひとりぼっちの夜が来ると~」でやっている、「片足を軸にして、くるくると内側に円を描きながら停止する」のは、ピボットと呼ばれる技です。昨シーズンの「バラード・第一番」でも羽生選手はやってくれましたけど、私はこれも大好きです!(笑) 

 バラード第一番の時より、羽生選手はこちらでは「寂しげに」演技してくれています。

 最後のスピンに入る前、回転するごとに片足を氷の上につきながら移動していくのは、「アラビアン」と呼ばれる技です。

 そこから、「バタフライ」をやり、そのままスピンを開始しています。 最後、男性には腰の負担の重い、ビールマン・スピンで終えています。

最初の「言えないよ~」での、「弧を描く長めのアウトサイド・イーグル」(= 体の外側のエッジを使い、背中側に傾くイーグル)と、二度目の「言えないよ~」でやってくれる、羽生選手にしかできない「手まで美しい、長めの レイバック・イナバウアー」の表現が、曲と合っていて特に印象的な、素敵なプログラムでした!

(レイバック・) イナ・バウアーをやっている時、羽生選手は息が出来ないのだそうです。

あれだけ上体をそらすのだから、当然かもしれません。 長くやるのはそれだけ苦しくなるはずなんですね。それをわざわざやってくれているのだから、どれだけ頑張ってくれているんだか! 

個人的には、この時の羽生選手のイナ・バウアーは、本当にカッコイイと思います。

大変なものを、大変ではなさそうにやってしまう羽生選手。 感謝したいと思います。

    

 

3:  次は、2014年のNHK杯エキシビション「花は咲く」 です。  

          羽生選手は20歳になる直前、 19歳の最後の頃の演技。 

   中国杯の事故後、まだ身体が完治していない状態で臨んだNHK杯、試合では絶不調、この前日のフリーの演技後にトイレで号泣したという、その翌日の演技です。

   羽生選手はこの時、最初に披露した「花は咲く」の演技とは、ジャンプを跳ぶ箇所を変えてきています。

   この日、羽生選手はジャンプを演技の最後に集中させることで最後まで体力を温存し、乗り切る作戦をとったようです。

   本当に頑張って滑ってくれたけど、それなりに無理をしていたであろうことが、この点からも、よく解ります。(涙)

 

 

 

一つ目: 前向きに跳んでいますので、アクセル。 3回転アクセル(トリプル・アクセル)です。  

   身体の調子は最悪だっただろうに、試合でも散々こなしてきた、非常に難しい、バック・アウト・カウンターから入る、トリプル・アクセルを披露しています。 (「パリの散歩道」で跳んで見せている、あれです。)

   試合では惨敗したけど、五輪王者としての、羽生選手の強いプライドや、少しでも良いものを見せたいという高い志が、見えるようです。

 

二つ目:  左足を後ろに引いて、左足のトウをついて跳んでいますので、トーループ  (トウループ、トゥループ)です。 3回転トーループ

 

演技の最後のほうで、羽生選手が得意の、ハイドロ ブレーディング(略してハイドロ) もやってくれています。

最後の最後は、花を高く掲げ、インサイド・イーグル (エッジを内側に倒し、体を前側に倒しながら滑るイーグル) で円を描きながら終わります。

 

 

4: 次は、「True Love」 です。 アート・オン・アイス2013での、藤井フミヤさんとのコラボ演技。 ニコニコ動画。(動画主様、拝借します!)

   羽生選手、18歳。 大学1年です。 

   羽生選手のエキシビション・ナンバーのタイトルには、「Love」という単語が入っているものが多いな!と気が付いたのは、私だけではないでしょう。(笑)

   

* 画面上のコメントを消すには、右下の「セリフ吹き出しマーク」をクリックして下さい。

 

一つ目:  両足をパッと開いて、トウをつかずに跳んでいきました。 上体もやや真っ直ぐ目です。

             後ろ向きスタートで、トウをつかずに跳ぶのは、サルコウとループしかありません。

        ループは、足を交差させてから跳びあがります。 上体も、腰を落として、前屈み気味になります。

                サルコウとループは、踏切足とエッジが違いますが、そこまでわからなくても、その2点を見ただけでも、 サルコウ    とわかります。 3回転サルコウ

 

二つ目:  前向きに跳びあがりました。 左足のアウトサイドエッジで踏み切っています。 アクセルです。 3回転アクセル

                  

 

5:  次に、 「花になれ」 を見てみましょう。 2013年 名古屋フィギュアスケートフェスティバルの時の演技です。 羽生選手18歳。 高校3年です。

    表現を堪能しつつも、ジャンプを見分けることが、できるか? に、挑戦してみて下さい。

 

 

 一つ目:  左回り(反時計回り)をくるくるとしてから、右足を後ろに引いてトウをつき、そのままの勢いで軽くポン!と跳んでいますので、    踏切となる左足は、インサイド(内側)になった状態から跳びあがっています。  したがって、フリップです。 3回転フリップ

 

二つ目: 前向きに跳びあがっていますので、3回転アクセルです。  しかも、イーグルから跳ぶ、トリプル・アクセルです。

 

三つ目: 画面奥のほうでちょっとみにくい角度ですが、跳ぶ直前に後ろを向いた時、前にある右足の外側、すなわち、アウトサイドエッジに体重が乗っています。 

      後ろに引いた左足のトウをついているかは、角度のせいでよく見えないのですが、それらが確認できず、エッジやトウがどうであろうとも、

                 この形=「右足が前で、左足が後ろという、前後に開く形」から跳んでいくのは、トーループだけです。

      ですから、これは、3回転トーループだとわかります。

     

 

6. 次は、2014年ソチ五輪・優勝して金メダルを獲得した時のエキシビション、「白鳥の湖~ホワイト・レジェンド」を見てみます。(羽生選手19歳)

   羽生選手の「白鳥の湖」の動画は、著作権の関係かと思いますが、ことごとく音を消されてしまっていますので、

   同じソチ五輪の時の映像に、ある動画主様が代わりに『ベートーヴェンの「月光」の第一楽章』 をつけて下さったものを、今回は使わせて頂きます。

   (選手は基本的には音楽に合わせて表現しているので、勝手に音楽だけを変えてしまうのは失礼に思えて、私は基本的には「音の差し替え動画」は好きではないのですが、この動画はかなり衝撃的で、ちょっと気に入ってしまいました。)

   ソチ五輪の時の羽生選手は、金メダル獲得直後にも関わらず、非常につらそうに「白鳥の湖」を演じたように、私には見えました。

   特に見ていて辛かったのが、照明が「赤」にされてしまったことで、湖のような「青」の場合と比べると、連想されるものがちょっと悲惨なイメージになったように感じられてしまった点です。羽生選手が非常に苦しそうで、「切なさ」が強烈で、見ていて胸が痛かったです。

ところが、この動画で「月光」とともに見てみたら、あまりにも印象が変わり、雰囲気も静かな曲に合っていたので驚いてしまいました。

   この動画主様が、両サイドをカットして下さり、「赤い湖」に見えるような照明の幅を狭くして下さったのも、功を奏したように思います。

   まるで、月の光に照らされて、夜の静けさに包まれた湖で 切なさと苦悩を抱えつつ静かに舞っている白鳥のようで…   

   羽生選手の白鳥を初めて見た時も衝撃でしたけど、「約4年後の白鳥の演技」+「月光」でも、再び心を奪われた感覚に襲われました。

  もともとこの音楽に合わせた演技ではありませんので、もちろん、音にバッチリと合っているわけではないのですが、大半は違和感なく観ることが出来、音が違ってもここまで魅了されることに改めて驚きました。

   

 

 

 一つ目: くるくると反時計回りにまわりながら、右足のトウを後ろについて、直ちにジャンプしていますので、 フリップです。 3回転フリップ

     羽生選手は、今までは「白鳥の湖」のここで「アクセル」ジャンプを跳んでいたのですが、このソチ五輪のエキシビションの時だけは、ここで「フリップ」を跳びました。

     理由は明確で、フリーの「(新)ロミオとジュリエット」で、まさかの「3回転フリップの失敗」をしてしまったからだと思います。

     先に述べたように、この時の羽生・白鳥には、痛烈な切なさと苦悩の色が見られますが、震災への思いと、その時に感じていたという無力感に加え、試合でまさかの失敗をしてしまったジャンプを、なんとしてもオリンピック会場のこの場で跳んでおきたかった、それを見せたかったであろう羽生選手の気持ちも、影響しているのではないかと思いました。 

                観ている側までなんだか切なくなります…  でも、無事に跳べてよかったですね! 

       

  二つ目:  両足を軽く(ハのように)開いてから、トウをつかずにエッジで跳んでいて、右足太ももを左足の上に振り上げてますので、サルコウです。 3回転サルコウ

        

   参考までに、本来の音楽つきでの、本当のソチ五輪のEX 「白鳥の湖」の動画は、こちらです → デイリーモーション動画  http://www.dailymotion.com/video/x1qu14j_%E3%82%BD%E3%83%81ex-%E7%99%BD%E9%B3%A5_sport

 

  

  

 7. 2014年3月、ソチ五輪後の世界選手権で優勝した時のエキシビション、「ロミオとジュリエット」EX版 です。 

    ジャンプ数も多いです。  羽生選手、19歳。 

    これが「しっとり系」に入るのかは、ちょっと疑問なのですが、ジャンプが集中している箇所だけは、確実にしっとり系だよ、ということで。(笑)

 

 

一つ目:  左足が前で、右足のトウをついています。 

     フリップかルッツになりますが、右側に身体を反転させてから前向きに戻る時に左足を踏み込んで、その勢いの流れの中で跳んでおり、体重移動の流れから、アウトサイドエッジになると解ります。 ですから、ルッツです。 

     実際、試合プログラムの「ロミオ」の時も、ここで跳ぶのはルッツです。

     後続ジャンプは、左足を後ろに下げてトウをついていますので、トーループです。 

       3回転ルッツ+2回転トーループ(両手上げ)  とても美しい コンビネーション・ジャンプでした! (私はこれが大好きです。)

 

二つ目:  前向きになった瞬間に跳びあがりました。 アクセルです。 (アクセルは、左足のアウトサイドエッジで踏み切ります。)

      後続ジャンプは、左足を後ろに引いてトウをついて跳んでいますので、トーループです。

       3回転アクセル + 3回転トーループ。  男子では目玉の一つとなりやすい、難易度の高いジャンプです。

 

三つ目:  右足を後ろにしてトウをついて跳んでいます。 

      カメラが後ろから映していますので、今度は明確に、左足のアウトサイドエッジ(外側エッジ)で踏み切って跳んでいるのがわかります。 ルッツです。

       後続ジャンプは2つとも、左足を後ろに引いて、トウをついて跳んでいますから、トーループです。

       3回転ルッツ + 2回転トーループ + 2回転トーループ  の3連続のコンビネーション・ジャンプです。

 

四つ目:  トウをついていません。つまり、エッジ・ジャンプです。 後ろ向きスタートのエッジ・ジャンプは、サルコウ か ループ だけです。 

     跳ぶ直前に両足を交差させるようにねじらせた状態から、腰をぐっと低く落として、腰掛けるような体勢から、そのまま跳びあがっています。 

    ですから、ループです。 3回転ループ。  細かく言うと、後ろになった右足の、アウトサイドエッジで踏み切っています。

    (サルコウの場合は、両足をぱっとハの字に開いた状態から、右足を左足の太もも上に振り上げて跳んでいきます。)

 

五つ目:  トウをついていません。これもエッジ・ジャンプです。

     両足を開いた状態から、跳ぶ瞬間に右足を左足の太もも上に振り上げて跳んでいますので、こちらは、サルコウです。 

             3回転サルコウ。 踏切は、左足のインサイドエッジになります。

     

 このエキシビションでは羽生選手は、フリップ以外の全てのジャンプを跳びました。 

アンコールでは、ロミオ衣装での「パリの散歩道」が見られます。  

カッコイイのですが、時代と国籍が不明の、謎の青年みたいで、不思議な面白さがありますね。(笑)

 

 

8.  最後は、2015年の「ファンタジー・オン・アイス幕張」で披露して下さった、「Believe」を見てみます。  羽生選手、20歳。

 

 

一つ目: ちょうどカメラが引いた時に跳んでいますので見難いかもしれませんが、

     両足が交差(クロス)した状態(右足が後ろ)から跳びあがり、トウをついていません。 

     したがって、エッジジャンプのうちの、「ループ」です。 3回転ループ

 

二つ目: 前向きに跳びあがりましたので、アクセルです。 3回転アクセル。 (=3回転半ジャンプ)

    しかも、羽生選手お得意の、難易度の超高い、バックアウト・カウンター(というターン)入りの、助走なしトリプル・アクセルです。

 

この演技は、しっとり系でも、燃えるような情熱が印象的な演技で、スケーティングもとても自由自在でスムーズな感じが素晴らしいです。

今までにないような手の振り付けが加わったこの時のイナバウアーは、非常に個性的で、何とも言えないセクシーさがあります。

 

そもそも男性でレイバック・イナバウアー(=上体を後ろに反らす イナ・バウアー)が出来ること自体が稀ですから、本来なら、年々やるのが難しくなるはずだと思うのですが、

「言えないよ」のイナバウアーといい、このイナバウアーといい、羽生選手のイナバウアーは、(体の負担は重いはずなのに、)  少しずつパターンを変えながらも、年々美しくなり、かつ色気が増しているのが、本当に驚異的です!

 

 

いかがでしたでしょうか。 

何を跳ぶのか事前にわからないプログラムで、見分けられるとちょっとした感動があると思います。

見分けにこだわりすぎて、羽生選手が表現してくれているものを見落とすのはもったいないと思うのですが、いろんな楽しみ方ができると、フィギュアスケートは何倍も楽しくなると思います。

 羽生選手が特に心を込めて滑ってくれるエキシビションの演技は、私は大好きです。

 

楽しみつつも、それぞれの演技とジャンプに込められた羽生選手の思いが、皆様の心に届きますように・・・!

 

※ 万が一、間違い等がございましたら、遠慮なくご指摘下さい。

 


羽生結弦選手の演技動画で、ジャンプを見分ける!その3 「元気系エキシビション」

2015-05-10 | フィギュアスケート技術と羽生選手

 

羽生選手の演技動画でジャンプを見分ける! その3 「元気系のエキシビション・プログラム」 です。

 

今回と次回で、実際のエキシビション・プログラムの中で、それぞれのジャンプを見ていきたいと思います。

今回は、羽生選手の活発・元気系のエキシビション・プログラムばかりを集めました。 (次回その4は、しっとり系エキシビション・プログラムで)

 

ジャンプの種類と特徴、基本的な説明とスロー動画は、羽生結弦選手の演技動画でジャンプを見分ける!の「その1」を、

 

練習動画や試合プログラムを使った全種類の見分けについては、「その2」 をご参照ください。

 

(エキシビション・プログラムでは、羽生選手は時々、回によって違うジャンプを跳ぶことがあります。

ここで説明されている演技と同じ演技でも、回によっては跳んでいるジャンプが同じではない場合もありますので、そこはご注意ください。)

 

 

1:  まず最初に、羽生選手がまだ14歳なりたて・中学2年時の、2009年の名古屋フィギュアスケートフェスティバルでの 「Change」を使ってみます。

全日本ジュニアで、優勝した後です。  見事な身のこなしです。 踊れる踊れる。 回る回る。 

「ビールマンを男のくせにやるんですよ!」なんて解説の山田コーチ(村上佳菜子選手のコーチ)に言われています。(笑)

 この動画では、ハイドロブレーディングの拡大スローモーションまで観ることが出来ます。

 

一つ目。 両足を開いてから、トウをつかずに、右足を振り上げて跳んでいますから、サルコウです。 3回転サルコウ

        (動画の最後に、スローモーションが出てきます。)

二つ目。 前向きに跳びあがりましたので、アクセルです。  3回転アクセル。 

      直後に続けた後続ジャンプは、左足を後ろに引いて、左のトウをついていますので、トーループです。 2回転トーループ。  

      したがって、このジャンプは、3回転アクセル + 2回転トーループ コンビネーション・ジャンプだったことになります。

      (最後、ちょっとステップ・アウトしてしまいましたが。)

 

三つ目。 左足を後ろに引いて、トウをついて跳んでいますので、トーループです。  3回転トーループ

 

(注意:  解説で、「ハイドロ」を、ハイドロ”プレーニング”と呼んでいますが、「ハイドロブレーディング」(hydroblading)の間違いです。 

最初にこの技を作った人が、水の「ハイドロプレーニング現象」の言葉からヒントに、ブレード(=スケートの刃)と掛け合わせて、「ハイドロブレーディング」とあえて名付けたそうですので、うっかり混同したのだと思います。

 羽生選手は、この技を、「ハイドロブレード」ってよく呼んでいます。)

 

 

2:  次は、シニアデビュー年のエキシビション「Vertigo」を、2011年にやってくれた動画で、ジャンプを見てみます。

    羽生選手、16歳、高校2年です。

 

一つ目。  前向きに跳びあがりました。 アクセルです。 3回転アクセル

       しかし、180度開脚して着氷するという、前代未聞の荒技を見せてくれました。(笑)

二つ目。 トウを使わずに、後ろ向きに跳びあがりました。 つまり、エッジジャンプのうち、候補はサルコウかループとなります。

      右足を振り上げて跳びあがっています。 サルコウです。 3回転サルコウ。 着氷失敗ですが。

 

 

 

3:  今度は、羽生選手の2011年のエキシビション「somebody to love」 で、見分けてみたいと思います。  羽生選手16歳、高校2年の時です。

    こちらも、最高おススメ演技内では紹介していない、2011年の中国杯のエキシビション動画を拝借します。

 

 

一つ目・  最初に出てくるジャンプは、前向きに跳びあがって、ジャンプを開始していますので、アクセル。 3回転アクセルです。

 

二つ目・  次が、くるくると左回転(反時計回り)を繰り返してから、そのままポンと跳んでいくのが解ります。 

       (= ジャンプを跳ぶ直前の、後ろ向きになった体勢の時に、左足のインサイドエッジに乗る)

       右足を後ろに引いて右足のトウをついて跳んでいますので、フリップがルッツになりますが、

       インサイドエッジ踏切でジャンプしたので、3回転フリップです。

      (足の傾きが内側か外側かが見えずに解らなくても、直前の動きで、フリップを跳ぼうとしていると判断できます。)

 

三つ目 ・ 最後のジャンプは、ちょっと難しいかもしれませんが、まず、トウをつかずに跳んだことに気が付いて下さい。つまり、エッジジャンプです。 

       前向きに跳んだらアクセルですが、これは後ろ向きに跳びあがっていますので、候補はサルコウかループに絞られます。

腰を低く落として、右足を後ろに引き、左足を前に交差させてから後ろ足となる右足のアウトサイド・エッジで離氷していて、足がねじれるようにして跳んでますので、ループだと解ります。 3回転ループです。

エッジ・ジャンプは、右足が後ろで、両足を交差させて腰を深く落としてから跳びあがったら、ループ、

両足を横に(ハの字型に)軽く開いてから、右足を(左足の太ももの上に)振り上げるようにして跳びあがったら、サルコウ、です。(左足インサイド・エッジ踏切)

 

 

 

4:   今回最後に観るのは、2012年のエキシビション「Hello,I love you」です。  羽生選手、17歳。 高校3年生の時です。

    一番ジャンプが見やすい、最高おススメでは紹介してないものを、ニコニコ動画から。

    アイスショー「THE ICE 」の時のもの。(動画主様、拝借致します!)

    実は、この映像がなんとも怖いのは、最後の最後に、正真正銘の「羽生選手のファントム(幻)」が出現するところです! 

    何それ?という感じですが、ぜひ、最後のスロー動画まで、注意してしっかり見て下さい。

    画面上の文字を消すには、画面右下のセリフ吹き出しマークをクリックして消去して下さい。 (答えを書いてしまっている方がいるので!)

     解説者が、ジャンプの種類をその場で言ってしまうものが二つありますが、スロー再生映像まで含めて、

     残りの3つのジャンプが何なのかを、特に注意して見て下さい。

 

一つ目。  解説者が言ってしまいましたが、左足を後ろに引いて、そのトウをついて跳んでいますので、トーループです。 3回転トーループ

 

二つ目。  前向きに跳びあがりました。  アクセルです。 しかし、回転が抜けてしまい、1回転アクセル。(=1回転半ジャンプです) 

       なんと見事な、ド派手な 1回転アクセルでしょう!このようなものを跳ぶ羽生選手は、滅多に見られませんね!(笑)

三つ目。  羽生選手、先ほどのリベンジに挑みました。 再び前向きに跳びあがりました。 解説者が答えを言ってしまいますが、アクセルです。

       見事な 3回転アクセル(=トリプル・アクセル)でした!

四つ目。  トウをついていません。後ろ向きスタートのエッジジャンプです。 (=サルコウか、ループになります。)

       両足を横に開いた状態から、右足を振り上げて跳んでいるので、サルコウです。 3回転サルコウ

 

五つ目。  演技が終わって、スロー再生でのジャンプを、注意して見て下さい。 

       このジャンプは何でしょうか?

       右足が後ろで左足を前に交差させた状態から、腰掛けるような、腰を落とした低い体勢からトウをつかずに跳びあがっています。

       これは、エッジジャンプのうちの、ループです! 3回転ループ

       え? あれ? あれれ? 演技中に、ループ跳んだ瞬間なんて、ありましたっけ? そんな記憶はないような…? 

       ・・・なんど動画を再生して確認してみても、ループを跳んでいる瞬間は、ないんですね… 一度もありません。

       キャ~! 羽生選手の「ファントム」(Phantom)=幻 出現!! 

        誰よこれ!って、どう見ても羽生選手本人だよ!

        この映像は、いったいどこから持って来られたのでしょうか…  謎です。(笑)

        テレビ局の中には、羽生選手のファントムが大勢記録・保管されているのでしょうね、きっと。(苦笑) 

       衣装が同じなだけに、大混乱させられますが、どう考えても、別の回でループを跳んだ時のものが間違って流されたとしか思えません。

       沢山のジャンプの種類が観られて、実にお得な映像を見たということにして、今回は笑って済ませておきましょう!

       

 

 

いかがでしたでしょうか。

羽生選手はアクセルが非常に得意なので、ほぼ必ずと言っていいほど、アクセルは跳んでくれます。

 

楽しく観ながら、覚えられるといいですね!

 

この続きの「その4」では、しっとり系のエキシビション・プログラムについて、観ていきます。

 

  (万が一、間違いやミス等がございましたら、遠慮なくご指摘下さい。)


羽生結弦選手の演技動画で、ジャンプを見分ける! その2 ~プログラムの中で見てみよう~

2015-04-16 | フィギュアスケート技術と羽生選手

羽生結弦選手の演技動画で、ジャンプを見分ける! の 「その2」 です。

 

基本的な知識、ジャンプの詳細やスロー動画は、「その1」 のページ → http://blog.goo.ne.jp/hananinarouyo/c/217fb2b0feccfe085fb5870b5c98705d を見て、ご確認下さい。

 

まず、ちょっとしたおさらいです。

その1でもご紹介した、こちらの動画をどうぞ。 

 

 

最初に、ジュニア時代の SP「ミッション・インポッシブル」を使ってみます。 

ぜひとも、ポイントを押さえて、ジャンプを見分けるという、「ミッション(=mission)」(=使命、特別任務) を、

「インポッシブル」(Impossible)=不可能! なんて言わずに、「ポッシブル」(=Possible)=可能!へと、変えてみて頂きたいと思います!(笑)

 

名付けて、「あなたも出来る! 「ジャンプの見分け」 ミッション・ポッシブル!」       

 

2009年ジュニア・グランプリ・ファイナルの時の、公式練習動画を拝借致します。

 

 

一つ目   :最初のジャンプは、前向きに跳びあがりましたので、 アクセル です。 つまり、3回転アクセル。(=トリプル・アクセル)

 

二つ目   :次のジャンプは、コンビネーション・ジャンプです。

        後ろ向きから跳びあがろうとしていて、(=アクセル以外の全てのジャンプ) 、

        跳ぶ前に、足が前に出て、右足が後ろになり、右足のトウをついています。この形になるのは、フリップとルッツです。

        跳ぶ直前の形が、後ろ向きに真っ直ぐに長く滑走して、左肩を深く落として、外側にエッジを傾けて跳んでいますので、ルッツです。

         3回転ルッツ。 

        着氷と同時に直ちに次のジャンプに跳びあがる、「後続ジャンプ」は、基本的には、トーループとループの2つしかできません。

        ここでは、後ろに足を引いてトウをついていますので、トーループだとすぐに解ります。 

        (ループだと、片足が後ろにいかずに、両足が前方で交差してすぐに跳びあがる形になります。)

         2回転トーループです。 

         つまり、このジャンプは、3回転ルッツ + 2回転トーループ のコンビネーション・ジャンプだったことになります。

 

三つ目   :  これが一番難しいです。 

          右足のトウをついて跳んでいますので、フリップかルッツだとわかります。

          直前の形は、左回転(反時計回り)にターンをしてから直ちに跳んでいるので、

          内側に傾いたインサイド・エッジから跳ぼうとしていると思われ、基本的には、3回転フリップで、羽生選手はその予定で跳んでいます。

          しかし、もし外側に傾いてしまい、アウトサイドエッジで跳んでしまった、と認定されると、それは本当は「ルッツ」だということになります。

          「フリップを跳ぼうとしていたのに、うっかり ルッツみたいになっちゃった」とか、

          その逆の、「ルッツを跳ぼうとしたけど、フリップみたいになっちゃった」

           ということが、ルッツとフリップの間ではよくあります。 選手の得意・不得意によっては、そのパターンは異なります。

          これらを「エッジ・エラー」(edge error)または、「ロング・エッジ」(wrong edge)と呼びます。 

                   どちらも同じことで、エッジの使い方を間違えた場合です。 

           正しく跳んだ場合と比べれば、見た目、ジャンプは成功していても、評価は下がってしまいます。

           (このシーズンの羽生選手は、このフリップでエッジ・エラーをとられることがありました。)

 

 

さて、次は、いわゆるフリーでの長いプログラムを使って、ジャンプの全てを確認していきたいと思います。

 

まずは、2012年世界選手権で銅メダル獲得時のフリー「ロミオとジュリエット(旧)」の、それも、直前の公式練習の動画を使って、見てみたいと思います。(動画主様、拝借致します。)

この動画は、目の前で撮影されているため、至近距離で羽生選手の演技・跳ぶ姿が見られ、また、練習着で色が真っ黒なので、動きがとても見やすいです。 ただし、フェンスで見えなくなったりもありますが、近くで見ている感覚で、ご覧になって見て下さい。

 

① 最初のジャンプは、4回転トーループ。左足でトウをついて鮮やかに跳びあがります。

② 2つめのジャンプは、羽生選手得意の、3回転アクセル。前向きに跳びあがるのを確認して下さい。

③ 3つ目に跳んでいるジャンプが、今回、特に確認したい、3回転フリップ。 

  先にくるくると左回り(反時計回り)に氷上で回転してから、左足はやや内向きに倒れ、右足のつま先(トウ)をついて、直前のターンと同じ回転方向へ、軽く跳んでいきます。 

   左足で後ろ向き(バック)で滑っている時、インサイドエッジを使うと、足首は内側に倒れ、左回り(反時計回り)の緩やかな孤を描きます。

   そのまま同じ回転方向へポンと跳んでいるので、フリップだと解ります。

 (ルッツと比べると、フリップのほうが左肩が上がっており、跳ぶ直前にルッツほどには大げざに構える様子がなく、跳んでいく。)

 

④ その後少し休んだ羽生選手が、次に挑戦するジャンプが、3回転ルッツ+2回転トーループ(両手あげジャンプ)の連続ですが、残念ながら近すぎてフェンスのせいで足元はあまりよく映っていませんが、カメラは斜め後ろから映してくれています。 

  羽生選手は、この跳ぶ直前の姿勢の時、左肩が下がっていて、左側に(画面だと手前側に、)身体全体が斜めに傾いています。 

  ですから、足元が見えなくても、左足のアウトサイドエッジに乗った状態だと解ります。 

   そこから、後ろに大きく引き下げた右足のトウをつく、「ドン」という大きい音が聞こえます。 そして跳んでいますから、「ルッツ」だと解ります。

   後続の2回転トーループでは、左足が後ろへと下がり、トウをついてから跳んでいることを確認して下さい。 

   (羽生選手はこの時、両手を上にあげることで見た目を美しくし、難易度の高くしています。)

 

⑤ その後は3回転アクセル+3回転トーループで、最初のアクセルが、前向きにスタートして跳びあがるのを確認して下さい。 

  (しかし、ここの後続ジャンプの3回転トーループで、動画の羽生選手は転倒してしまいます。)

 

⑥ その後が、3回転ルッツからの3連続ジャンプの予定でしたが、練習ではパスしていて、跳んでいません。

 

⑦ そのさらに後に単独で跳んでいるのが、3回転ループです。 

  トウ(つま先)はつかずに、ひざを大きく曲げて、腰が据わったような姿勢で、左足が右足よりも前に出て両足を交差させてから跳びあがります。

  後ろ側の、右足のアウトサイドエッジ踏切で跳びあがるのが、ループです。 

  跳んでいくときの足が少し「輪」のような形に見えるかと思います。

 

⑧ 最後に跳ぶのが、3回転サルコウです。 ハの字に脚が一瞬開くのを確認して下さい。 左足が内側に倒れています。 (=左足インサイド・エッジ)

  エッジで跳んでいます。

 

 

では、実際の試合の動画で、もう一度ご確認下さい。 2012年世界選手権フリー「ロミオとジュリエット」 スペイン語解説です。(翻訳なし)

こちらでは、上の練習動画では確認できなかった、4番目と6番目のジャンプである、「3回転ルッツ + 2回転トーループ(両手上げ)」と、 「3回転ルッツ + 2回転トーループ + 2回転トーループ」 の、ルッツからのコンビネーション・ジャンプをよく注意して見てみてください。

1.4回転トーループ

2.3回転アクセル

3.3回転フリップ

4.3回転ルッツ + 2回転トーループ(両手上げ)

5.3回転アクセル + 3回転トーループ

6.3回転ルッツ + 2回転トーループ + 2回転トーループ

7.3回転ループ

8.3回転サルコウ

 

 

次に、今シーズンの羽生選手のフリーのプログラム「オペラ座の怪人」を見てみます。

フリーのプログラムはジャンプ数が多いので、先に、頭の中に何のジャンプを跳ぶのかを、頭に入れてから、確認していくつもりで見てみてください。

 

羽生選手は、全日本選手権、グランプリ・ファイナル、世界選手権では、次のような構成で跳んできました。 

 

 「オペラ座の怪人」

前半 ① 4回転サルコウ (4S)

    ② 4回転トーループ (4T)

    ③ 3回転フリップ (3F)

後半 ④ 3回転ルッツ(3Lz) + 2回転トーループ (2T)

    ⑤ 3回転アクセル(3A) + 3回転トーループ (3T)

    ⑥ 3回転アクセル (3A) + 1回転ループ(かつてのハーフループ)(1Lo) + 3回転サルコウ (3S)

    ⑦ 3回転ループ (3Lo)

    ⑧ 3回転ルッツ (3Lz)

 

基礎点としては、6番目に跳ぶジャンプである、「3回転アクセル+1回転ループ+3回転サルコウ」からの3連続ジャンプが一番高くて、(後半だからさらに1.1倍の点がつく)、次が5番目の「3回転アクセル+3回転トーループ」のジャンプ(同じく1.1倍)が、最難関のアクセルからスタートしていて難しいために、その得点が非常に高くなっています。

次いで、最初に跳ぶ4回転サルコウ、そして、2番目に跳ぶ4回転トーループ、の順番です。 

普通は、4回転のほうが3回転アクセルよりも難しいので、単独で跳ぶなら、4回転のほうが難易度も高く得点も上ですが、

現在(2015年時点)の採点制度では、3回転半(トリプル・アクセル)からの連続ジャンプを跳ぶと、4回転単独ジャンプよりも、より高い得点になります。

 

アクセル以外のジャンプの中では一番難しいジャンプである、「ルッツ」。

そのルッツからのコンビネーション・ジャンプである、4番目のジャンプは、比較的高得点になります。

羽生選手がジャンプを大量に後半に入れているのは、疲れてくる後半のほうが、より成功率が低くなるし、精神的プレッシャーも高まるので、その分難易度が上がり、得点が高くなるため、あえてそのようにしています。

 

6番目のジャンプを、見てみて下さい。

⑥ 3回転アクセル (3A) + 1回転ループ(かつてのハーフループ)(1Lo) + 3回転サルコウ (3S)

この、「間に1回転ループ(かつてのハーフループ)」が入るジャンプが難しいのは、その分そこで勢いが落ち、助走なしジャンプと同じような感覚になり、その後のジャンプがより跳びにくく難易度が上がるから、という理由と、もう一つは、普通の連続ジャンプではつけられない後続ジャンプ(サルコウ、フリップ)をつけることが出来るからです。

普通の連続ジャンプ(コンビネーション・ジャンプ)は、後ろにトーループか、ループしかつけられません。

ジャンプの着氷は、右足外側(アウトサイド)エッジになるのですが、そのままで再び踏み切れるジャンプが、この二つだけだからです。

 

間に「1回転ループ」(シングル・ループ、かつて、ハーフループと呼ばれたもの)を入れる、このようなコンビネーションジャンプは、

最初のジャンプで右足後ろ向きのアウトサイド(外側)エッジで着氷した足を、左足後ろ向きのインサイド(内側)エッジで踏み切る体勢に足を変えることが出来るので、左足インサイド・エッジ踏切でスタートする「サルコウ」か「フリップ」ジャンプを、その後ろに続けてつけることが出来ます。

基礎点も、それぞれのジャンプ3つ分が加算されてくるので、単独ジャンプと比べると、非常に高くなっています。

 

今では大勢の上位選手たちがこの、間に「1回転ループ」を入れる、3連続のコンビネーション・ジャンプを跳んできますが、

羽生選手は、この難しい3連続ジャンプの最初のジャンプに、難易度が高くて苦手な人が多い、3回転アクセル(トリプルアクセル)を跳びますので、

他の選手たちの3連続ジャンプよりさらに難易度が高く、得点も非常に高いものになっています。

(単独4回転ジャンプよりも、現在は基礎点はこちらの方が高い。)

 今の採点制度だと、トリプルアクセルから始まる、この3連続ジャンプだけで、羽生選手は普通の3回転ジャンプの2~3倍、あるいは、一つのコンビネーション・スピンの4倍程度にあたるほどの高得点を獲得できます。(2014年時点での話)

 

 

羽生選手の演技で、実際の各ジャンプを確認して見て下さい。 ↓

これは、冒頭の4回転サルコウを成功した、2014年グランプリ・ファイナルの時のものです。(最後のルッツだけが失敗。)

 

 

前半 ① 4回転サルコウ (4S)

    ② 4回転トーループ (4T)

    ③ 3回転フリップ (3F)

後半 ④ 3回転ルッツ(3Lz) + 2回転トーループ (2T)      (後半に入ったここから先のジャンプは、得点が1.1倍になる。 ↓ )

    ⑤ 3回転アクセル(3A) + 3回転トーループ (3T)

    ⑥ 3回転アクセル (3A) + 1回転ループ(かつてのハーフループ)(1Lo) + 3回転サルコウ (3S)

    ⑦ 3回転ループ (3Lo)

    ⑧ 3回転ルッツ (3Lz)

 

 

そして最後に、世界選手権2015の演技を見てみます。

 

冒頭の4回転サルコウは、回転が抜けて2回転サルコウになってしまい、現在の採点制度では、得点がかなり低くなってしまいます。 

しかし、得点を抜きにしてみれば、転倒よりもは見た目も美しく、演技の流れも止まらないため、演技全体の印象としてのダメージは少ないと私は思います。

 

二つ目の4回転トーループは、転倒してしまいますけど、跳ぶ瞬間の踏み切りの「トーループの形」は、この映像だとよく解ります。

その後のジャンプは、全て成功です。

途中で入る、後続ジャンプの両手上げ2回転トーループが、とてもキレイに見えました。

上のグランプリ・ファイナルでは失敗してしまった、最後の3回転ルッツ が成功していますので、跳びあがる直前の流れと形を、よく確認して見て下さい。

やはり、ラストがビシッと決まると、ちょっとカッコイイですね。(笑)

 

 

いかがでしたでしょうか。

楽しく見ながら、覚えられるといいですね。

 

羽生選手、無理なく 頑張れ!!

 

 

 


羽生結弦選手の、最強4回転トーループの科学的分析と解説動画

2015-01-23 | フィギュアスケート技術と羽生選手

羽生結弦選手の、4回転トーループについて、比較的詳細に分析された、NHKの「ザ・データマン」という番組の動画です。(動画主様、拝借します。)

 

「秒速4.29m 羽生結弦・氷上の美」というサブタイトルがつけられたこの番組。

羽生選手の4回転トーループの凄さ、美しさについてのみならず、ジャンプやスケート靴のこと等についても比較的わかるようになるかと思い、ご紹介します。

見た方もいらっしゃるとは思いますが、まだ見ていない方は是非。

ジャンプは、毎回毎回少しずつ異なってくると思うので、数字については、実際には羽生選手でさえ、毎回毎回その都度少しずつ異なっているだろうと思いますので、参考としてご覧下さい。

 

本田武史さん(ソルトレイク五輪4位、2002年、2003年世界選手権銅メダリスト) が中心となって、解説して下さっています。  

 

① まず、こちらは、フィギュアスケートの基本的なルールについての解説と、羽生選手のジャンプの分析が入っています。(2014年時点)

 

ショートプログラムが、2分50秒。 フリースケーティングが、男子が4分30秒。(女子が4分。)(+-10秒まで可)

ショートが、ジャンプ3要素、スピン3個、ステップシークエンス1個を入れなければならず、

フリーが、ジャンプは男子8要素、(女子7要素)、スピン3個、ステップシークエンス1個、コレオグラフィックシークエンス1個、という構成であることが説明されます。男子はショートとフリーの合計で11要素のジャンプを跳ぶことになります。

得点は、現在は「技術点」と「演技構成点」の二つから成り立っており、技術点は、「基礎点」と「GOE(技の出来栄え点)」から成り立っていることの説明があります。

 

その後、この「GOE(出来栄え点)」が出た「美しさ」の秘密について、科学的に分析しよう、という試みに入ります。

中京大学の湯浅教授と、羽生選手のジャンプコーチを務めたこともあるという、プロスケーターの田中総司さんの協力で、羽生選手とのジャンプの違いを解析します。

本田さんの「GOE」(技術の出来栄え点)についての解説が面白いです。 

 

オリンピックの「パリの散歩道」時点では、羽生選手は、3.72mの飛距離で、4回転を跳んでいたようです。 ジャンプにはいる直前の助走の水平速度が、秒速4.29mだったそうです。

羽生選手の4回転トーループは、幅跳び型とはよく言われますが、水平速度が、秒速4.29m、 垂直速度が、秒速2.62mだそう。(ソチ五輪時)

つまり、水平速度が垂直速度の、なんと1.6倍にもなった、「幅跳び型」の選手たちの中でも特に、「超・幅跳び型」なのだと結論付けています。

「高さを出すほうが、軸が作りやすいから、回転はしやすい」。そして、「幅を出そうとすると、流れに乗って飛んでいかなければならないので、軸がブレやすくなる」のだと、説明して下さる本田さん。

その分、幅を出すジャンプのほうが難しく、跳ぶ側にも怖さが出るようです。

怖いもの知らずの、羽生選手らしいジャンプなわけですね。

 

 

② 次の、続きの動画では、ジャンプの回転軸やスピードと、腕を広げることの関係等がわかります。

 

まず、GOE(出来栄え点)の評価基準について、説明が入ります。

ジャンプのGOEの採点ガイドライン。

  ① 予想外の / 独創的な / 難しい入り

  ② 明確でハッキリとしたステップ / フリースケーティング動作から、直ちにジャンプに入る

  ③ 空中での姿勢変形 / ディレイド回転のジャンプ

  ④ 高さおよび距離が十分

  ⑤ (四肢を)十分に伸ばした着氷姿勢 / 独創的な出方 

  ⑥ 入りから出までの流れが十分

  ⑦ 開始から終了まで無駄な力が全くない

  ⑧ 音楽構造に要素が合っている

 

羽生選手の4回転トーループの滞空時間は、わずか 0.7秒 程度だそう。 そこで、この高速回転の秘密に迫ります。

腕の広げ具合で、回転数が変わることを示し、慣性モーメント(=回りにくさ)が小さいほど、速い回転になることの説明があります。

人並み外れて極めて速いのは、細身の体型が可能にしている、と。

 

本田さんが、実際に陸上で、ジャンプをする時の身体の動きの再現をして下さっています。 (本田さん、カッコイイ!さすが元4回転ジャンパーです。)

羽生選手も、よくやっているのを映されていますが、陸上であっても、羽生選手は3回転近くまで回れるようです。軸が細く、回転速度が速い。

また、スケート靴の「エッジ」(刃の端)について、少し説明が入ります。

 

羽生選手の、滑ってくる時の助走速度は、秒速6.9mだそう。 これはトップ選手たちの中でも極めて速い、と。

千葉大学の吉岡教授の協力で、助走のどこが凄いのか、その謎を解析。

また、スリーターン(3を描くターン)についても説明されており、羽生選手のスリーターンが極めて深いカーブを描き、エッジワークが良く、滑らかに方向転換しているため、減速しにくくなっていることが明かされます。 (つまり、助走の速度が落ちずに済んでいる) 

 

注) この中で登場するトップ選手たちは、十分すぎるほど凄い方ばかりです。

 

 

③ さらに続きの動画です。 まとめに入ります。 

 

深いスリーターンを可能にしている、羽生選手の「巧みなエッジ・ワーク」(エッジの使い方)について。

動画3分ちょうどあたりから、エッジワークを磨き直している羽生選手の映像が見られます。(過去に何度もファンなら見たことがあるかと。)

羽生選手の、スリーターン(3を描くターン)の軌道が、前年度シーズン(2012年~2013年)と比べて、ソチ五輪(2014年)時に、どのように変化しているのかが解ります。

より軌道の深いスリーターンになっています。 それをするには、エッジをしっかり倒さなければならないので、上半身のコントロールが難しくなるが、滑りが良くなると、本田さんが説明しています。

スピードが速い分、着氷が難しくなる羽生選手の4回転トーループですが、羽生選手の着氷時の身体の傾きが43度になっていて、他の選手たちよりもかなり傾斜が小さく、それゆえ、着氷後のスピードも落ちずにすんでいる、という特徴があることが分析されています。

そして、体幹を鍛えてきた羽生選手の様子も、少し映っています。

 

 「空中で4回転(しっかり)回って、余裕がある状態で降りてくるから、美しい姿勢がキープできる」と、本田さんが解説して下さっています。

 

ここからは、ちょっとだけ、私の感想です。

確かに、超幅跳び型と呼ばれる羽生選手のジャンプは見栄えがすごく、迫力があります。特に羽生選手は軽く大きく速く跳ぶので、まるで羽が生えて飛んでいくかのように見られますし、移動距離(=飛距離)が凄いです。羽生選手のジャンプが非常に魅力的なのは確かです。

羽生選手は、ジャンプに理想的な体型をしていると良く言われますので、そこにさらに不断の努力が加わり、だからこそ可能となった結果なのだろうとも思います。

 

ただ、高跳び型のジャンプも、高さがある選手はそれはそれですごく違った迫力や美しさがあるように、私は思います。  着氷も、深く沈むタイプでも美しく見せることのできる選手は、美しいポーズで決めてくれますので、また違った魅力として、私は見ています。(笑)

 

 

最後に、今まで日本人で、フリープログラムに4回転を3回入れたことがあるのが、この「本田武史さん」一人だというのも、しっかり紹介されています。(笑)

4回転を3回入れることの精神的な大変さに、本田さんが実感を込めながら語って下さって、番組は終了。

 

では、本田さんの、4回転が3回成功したプログラム2003年の4大陸選手権のフリー「リバーダンス」を、どうぞ。(21歳) ↓

 

 

この中で本田さんは、最初に4回転トーループを、次に4回転サルコウを、そして、動画の2分20秒あたりに、再び4回転トーループを成功させています。

本田さんはこの大会で優勝しました。

(今とは、色々と採点や評価の基準も違いますので、間の取り方等も大きく違います。)

本田さんの演技は、良いもの色々ありますけど、1999年の世界選手権のフリーが、4回転トーループもキレイで、なおかつプログラム全体も素敵だったのでご紹介。「仮面の男」 (17歳~18歳になる頃)

 https://www.youtube.com/watch?v=vgx4st5qJP8

 

2002年ソルトレイク五輪4位の時のフリー「アランフェス協奏曲」(4回転は惜しくもステップアウト、でもプログラムがとても素敵です) (20歳) →https://www.youtube.com/watch?x-yt-ts=1421914688&v=QB1AjoD1oMw&x-yt-cl=84503534

 2003年の「ムーランルージュ」のボレロ (画像は悪いですがこれもプログラムが素敵で、滑りで魅了されます) → http://www.nicovideo.jp/watch/sm15177248 

 2003年世界選手権銅メダルの時のSP「レイエンダ」 (中盤のステップから後半が魅力的)→ https://www.youtube.com/watch?v=x6jEyFyZ1so

他にも、羽生選手が滑ったのと同じ「ロミオとジュリエット」、「sing sing sing」なども好きでした。

 

 

羽生選手の4回転トーループは、成功率も極めて高く、極めて高速で美しいのが特徴ですので、その詳細の科学的分析を試みたものは貴重かなと思い、ご紹介してみました。

フィギュアスケートの魅力は、多面的なものがあると思うので、これが全てではないけれども、ご参考までに。