J SPORTSの「KENJIの部屋」 羽生結弦選手の第2回が先週から配信されています。
http://front.jsports-ondemand.com/p/150823-232417V
今回は、私から見ると、とても面白かったです。
フィギュアスケートの、細かい話というか、ややマニアックな話、技術的な話に突入していました。主にジャンプについて。
でも、「フィギュアスケート技術と羽生選手」の項目を読んで下さっている方々には、よくわかる話だろうと思います!
一応、要約的に文章で書き起こされたものは、こちら。↓
前半 http://www.jsports.co.jp/press/article/N2015090817252506.html
後半 http://www.jsports.co.jp/press/article/N2015090817402406.html
上に載っている文章は、放送の全てではないです。
抜粋、要約、という感じ。
映像放送だと、もっといろいろなことを話しているし、羽生選手の細かい反応の違いとかは文章では省略されているし、もうちょっと雑談・冗談的なものも交じっています。
なんといっても注目すべきは、今回、宮本賢二さんが、「それ、変やわ」と何度も羽生選手にツッコミを入れているのですが、
そのたびに、羽生選手も、「はい」「変人だと思います」と、自分の変人性を、何度も認めているところです!(爆笑)
「アクセルは変人だと思います。」と、自分でキッパリ。
特に、アクセル(最難関ジャンプ)については、羽生選手は自分がいかに変人か、自分でも大いに自覚しているようです。
アクセルは特別感があって、「キング・オブ・ジャンプ」だから、すごく好きだった、と。
シングルアクセルは、異常なほど早く跳べて、びっくりされていたそうです。
アクセルのどこがどう好きなのか、色々と細かい感覚を話してくれています。
お子様時代に、ウルトラマンに憧れて変身(ヘンシン)ポーズをたくさんやったに違いない羽生選手ですが、何もやらなくても、そもそも最初から「変人」(ヘンジン)だった! という、オチ!
羽生選手は、かなり「ビジュアル」イメージを強く持って、そこから実践に移すタイプだと、過去にも何度も語って下さっています。
そうであるなら、私としては、「オペラ座の怪人」のノーム・ルイス(Norm Lewis)さん&シエラ・ボーゲス(Sierra Boggess)さんを、是非とも生の舞台で見ていただきたかったですね。(笑) (←もう彼らの主演も共演もとっくに終わっていますが。)
その一番のクライマックスのシーンで、私は羽生選手がパッと思い浮かんだのですが、なぜかというと、彼らの舞台から放たれていた凄まじいまでの、最高レベルでの情熱のぶつかり合いーーー(天才特有の情熱)に圧倒され、それが羽生選手の演技から感じ取る情熱の凄さと重なったからです。
ただ正確に、とか、ただ上手にできる、などというレベルではなく、まさに「心の琴線に触れる」ような、感情の細部までとらえ表したものすごい演技力と歌唱力、深みのある圧倒的な声量と、魂に訴えかけてくる迫力ーーーそれらをまとめて「表現力」と呼ぶのなら、まさに技術力と表現力が、素晴らしい形で融合していたと思いましたし、会場を出る時に、周辺にいた女性という女性がすべて皆、号泣して泣きはらした後の(悲惨な)顔になっていたことが印象的でした。それも納得できるほど、本当に凄かったので。
(ユーチューブ動画にUPされている昨年のブロードウェイの宣伝動画より、実際に観た舞台のそれは、最低でも5倍は良かったというほど違います。宣伝動画は、あまりにもサラリと歌いすぎていて、上手いけど、まだ感情表現が全然です。おそらく初期の練習映像か何かだと思うので、舞台はこれとは全く別物でした。)
宮本さんのアクセル・エピソードも出てきます。羽生選手が、アドバイスしたようです。(笑)
対談の途中で、「言い訳をしない」話になり、宮本さんに、「かっこいいじゃん」と言われ、「え、かっこいい人?」「かっこいい人、どこかにいました?」と自分の横を何度も見ながら確認する羽生選手。
ええ、羽生選手は、本当に「いい人」ですね…! (←カッコ、いい人。カッコとじ!(笑))
浅田真央選手が、骨折しながらやっていたこともあったのに、マスコミ等に一切公表しなかったことなどに触れています。
結果や事情について「言い訳をしない」のは、アスリートとしては確かに非常にかっこいいけれども、
「言い訳をしない」結果が、「真実を捻じ曲げちゃう」「世の中のミスリードに結びつく」「責任の所在を間違ったところに向けちゃう」等に繋がっていくと、途端に、「間違ってる感」が出て来てしまいます。
「言い訳をしない」のがカッコイイのは、「真実を見つめて受け止めて、きちんと受け入れているから」であって、そこに精神的な強さを見出すからであって、
「言い訳をしない」理由が、「真実から目をそらしているから」こそであるように見えるときは、「かっこ悪い」と人は逆に判断します。
だから、「言い訳」ではなく、「真実を見つめる」ために、恐れずに明確にモノを言った、バンクーバー五輪の頃のプルシェンコ選手は、私から見ると、「かっこいい人」でした。(笑)
シニアデビュー年のNHK杯のフリーで、4回転トーループを成功させて、「調子に乗っちゃった」そうです。(笑)
確率低かったのに跳べちゃったから、と。 でも、それで跳べちゃうのが凄いですね。
この頃から、羽生選手の本番での勝負強さは、顕著でしたね。インタビューがすごく面白かったのを覚えています。一番印象に残っているのは、まったく飾らない、ストレートすぎるほどの正直さ。(笑)
一番印象に残った大会は、小学校4年で出た、2004年の全日本ノービスB選手権だそうです。
それは、どんな演技かというと、こちら。「ロシアから愛を込めて」
… 私、これを以前も見たことはあるのですけど、最高おススメに載せるかどうかで検討したのですが、やはりまだ幼い時の演技なので、よほどフィギュアスケートに興味のある方でないと興味が持てずに無理かな、と思ってやめたのですが、
このくらいの年の子が、どのくらい滑れるものなのか、「普通」を少しでも知っていると、今改めて見ても、羽生選手は、本当に本当に凄すぎて、絶句しますね。
これを見る限り、やっぱりどう見ても羽生選手は、とんでもない天才少年。
まだ小学生の羽生選手だけど、リンクに登場する様子や、最初の構えだけですでに、目をクギ付けにする何かがあるし、演技も始まると本当に惹き込まれて惚れこむ感覚があって、もう「恐れ入りました」という気分です。
当時羽生選手が、「絶対に金メダル獲ってやる!」、しかも「2度獲る!」と目標を決めていたというのも、「まあ、これなら、そう思うのも無理はないわね(笑)」と思えてしまいます。
最初と最後に跳んでいるジャンプが、当時こだわっていたという、ダブルアクセル(2回転半)です。2度成功させていますね。
それ以外にも、当時のプルシェンコ選手がやったことはあるけど、男子は普通はやらない(できない!)、フリーレッグを片手だけでつかむビールマン・スパイラル(スパイラルとは、フリーレッグ(滑っていないほうの足)を腰より高い位置に上げてキープしたまま滑る技)を難なくやっています! 凄いですね!
これは正式には、「Cross-grab one-hand Biellmann spiral (クロスグラブ・ワンハンド・ビールマン・スパイラル)」と言い、(手をクロスさせてつかむ、片手のビールマン・スパイラル、の意味) 浅田真央選手がやったことがあると思いますけど、そもそも普通のビールマン・スパイラル(両手)自体が、すごく難しい技だと思いますので、男子でこれができるって、やはり凄すぎです!
さらに、今では滅多に見られない、バック・スパイラル(スパイラルの、後ろ向きに進むもの)も、この演技の中で見られます!
デス・ドロップからのフライング・スピンも華麗にやっています!(驚)
ラストのほう、減速するどころか、音楽に合わせて一部加速していますね。 しなやかさといい、技のキレといい、醸し出している雰囲気といい、漲る「やる気」といい、スピードのある滑りといい…
本当に、ブラボー!としか言えない。
当時の都築コーチが、「芸術家になれ!」「絶対に世界のトップを獲れ!」って言っていたというのが、本当によくわかります。(演技終了後に、リンク外で羽生選手の頭をポンポンと嬉しそうに叩いているのは、今より若かりし頃の都築コーチですね。)
何より一番凄いのが、この演技に対するものすごい積極性! やる気と喜びがあふれ出ていて、見ていて楽しくなっちゃいます♪
出だしからもう、当時のプルシェンコ選手を鮮やかに思い出す、そんな振付の数々。それを本当に「ミニ・プルシェンコ」のごとく、次々と軽く鮮やかにこなす姿!
採点制度がまだ、旧採点法の「6.0」時代なのですが、演技がすごくいいですね。ため息が出ますね。(笑)
羽生選手は本当に、この頃の気持ちを思い出して、 これからも楽しく、「はつらつと」頑張って下さい!
あまりの凄さに、なんかもう、私が何か書くのも申し訳ない気持ちになりました…(涙)
ついでにこちらは、もう少し大きくなった時の羽生選手。中学1年。
全日本ノービスAクラスで優勝、全日本ジュニア選手権でいきなり3位に入った年の、「sing sing sing」の演技です。(会場が外国のようですので、おそらく、スケートコペンハーゲンで優勝した時のものかと。)
羽生選手が大好きだったというプログラム。 振付とコーチは、阿部奈々美コーチ。
こちらも、「良すぎて絶句」です。(←「カッコ」よすぎて絶句!と言いたい。(笑))
またぜひ、いつか滑ってほしいですね! 内容はちょっとグレードアップさせて、今の羽生選手で見てみたいです ♪
このプログラムは、ソルトレイク五輪(2002年)で、本田武史さんが4位入賞でエキシビションで滑った曲と同じです。
私はこの本田さんの「sing sing sing」が、当時すごく好きでした!
こちらは、本田さんのソルトレイク五輪でのEX演技 ↓
本田さんがこちらで、シットスピンの前にやっているのは、「バタフライ」です。(=先に上半身を水平に倒してから回り込み、跳びあがっています。)
この時代の男子のシットスピンは、このくらいの腰の高さが普通でした。
今の羽生選手のシットスピンの、氷スレスレの腰の低さが、男子として、いかに変人的・超人的柔軟性でこなしているのか、わかるかと思います。
優勝のヤグディンが「overcome」を、プルシェンコ選手が「カルメン」を、そして本田さんがこの「sing sing sing」をエキシビションでやったのですが、本田さんのは、とても軽快で元気で楽しくて、逆に強く印象に残りました!
会場も盛り上がっています。
ところで、「人生、ほぼ計画通り」というのは、20代前半までは、結構いると思うのです。 それまでは、自分のために生きてきている人が多いから。
問題は、自分以外の人間に対しても責任が出てくる、20代後半からの社会人になってから、かな、と…。
羽生選手がすごいのは、この年齢にして、すでに「自分のため」だけでなく、他の人たちのためになることにまで、次々と躊躇なく行動していっているところですね。
羽生選手が、ソルトレイク五輪を見て、「獲れる」「獲れない」ではなくて、「絶対に金メダル獲ってやる!」って思っていた、というのを聞いて…
本当に、非常に頼もしく思いました。(笑)
そう思えたのは、やはりそもそもそれだけの才能があったからでしょう。 なければ、そうは思えないと思います。
ここでは、羽生選手が、ソルトレイク五輪の結果(ヤグディン選手・金、プルシェンコ選手・銀、本田武史選手・4位)についてどう思っていたのかは語られていないけれども、
でも多分、そう思った一因に、憧れのプルシェンコ選手が銀メダルに終わったことが悔しかったこともあるのではないかな?と思うと、プルシェンコ選手が金をとれなかったことや本田さんが4位に転落しちゃってメダルを逃したことで、がっかりしていた当時の私なんかと違って、あれを見て、「絶対金メダル獲ってやる!」って決めていた7歳の少年が、日本にいただなんて…
そしてそれが、羽生選手の金メダルへの原動力になっていたのだとしたら、プルシェンコ選手のあの銀さえも、ある意味では有り難いものだったように思えて、色々思い出すと、なんだか感無量です。(笑)
普通は、プルシェンコ選手対ヤグディン選手を見て、「自分もあれができる!」「あのようになれる!」とは思わないですよね。
ほとんどのフィギュアスケーターは、プルシェンコ選手を見て、「自分はどう考えても彼には勝てない」「あそこまではさすがに無理」と思ったはず。
そこを疑わなかったところ、憧れて、「自分もなれる!」「超えてみせる!」みたいに思えているところが、実行していく以前に、羽生選手にそもそも半端なき才能が備わっていた証拠じゃないかな、と私は思います。
「僕、将来絶対に羽生君を超える!」とか騒いでいる幼稚園児や小学生の男の子が、今あなたのそばにいたら、要注目ですね。(笑)
なかなか興味深い、楽しい回でした!
第3回も、楽しみにしたいと思います!