2014年の世界選手権、エキシビション。
世界選手権王者と同時に、3冠王となった羽生選手が最後に演じてくれたのは、2年前の「ロミオとジュリエット」の後半部分でした。
もう一つのロミオとジュリエット・・・ いやいや、こちらこそが、羽生選手の元祖「ロミオとジュリエット」です!
今シーズンは、大会ごとに、違うエキシビションプログラムを披露してきた羽生選手。
シニアデビュー後の4年間の集大成と位置づけていた最後の大会であることや、
この大会で、「ロミオとジュリエットという物語の”完結”を目指したかった」とのインタビュー発言もあったことから、
どう考えても、残っている演目の中で、この「日本開催の」しかも「世界選手権」の場でやるのに相応しいのって、
世界選手権で初銅メダルをとり、「羽生結弦」「Yuzuru Hanyu」の名を世界中に最も知らしめた、2年前のあの「ロミオとジュリエット」ぐらいしかないんじゃないか…とは思っていました。
でも、羽生選手本人が「あれと同じものはもう出来ない」と言っていたくらいだし、今の腰を痛めていそうな体調を考えると
かなり厳しそうなプログラムだから、ここは避けるのか、やっぱりやってくれるのか… どっちかな?? と思っていたのですが。
同じ事を思っていた方々は相当多いようで(笑)、フリー終了後の「スモールメダルセレモニー」のインタビュー時に、同じような質問をした方がいて、それに対して、羽生選手が答えています。 ↓
(この時点では演目は結局秘密にされていますが。)
その時の羽生選手の動揺ぶり、困惑の様子、その他の質問に羽生選手が答えてくれた全内容も含めて、羽生ファンならかなり見ておく価値はあるかと思います。
特に、今後もアイスショー等で、どこかでやるかもしれない「旧・ロミオとジュリエット」について、
”(2年前の)ニースで行われた世界選手権の時と同じ演技は、自分では(悔しいけれども)、もう絶対に出来ない”
”今の自分のベストな演技というものを見せるので、そういうつもりで暖かく見守ってほしい”、という趣旨のことを、あの演技の再現を期待するファン向けに話していることは、是非知っておくべきでしょう。
(余談ですが、この動画の中での「表現力」についての質問への町田選手の答えが、かなり秀逸です。羽生選手もせっかくだから、ぜひカナダの大自然を心から味わって楽しんでおいて下さい!)
世界選手権2014 スモールメダルセレモニー4 羽生・町田・フェルナンデス
これを今シーズンの最後のエキシビションで演じる、というのは、かなり前から決めていたのだろうと推測します。
世界中の、多くの羽生ファンがエキシビション当日、感激しているであろうことが、容易に想像できました!(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=5zETc8_Mg1c#t=277
以前よりも優雅で滑らかな舞で、特に前半部分は2年前よりもさらに強く「静」の部分、どちらかというとロミオの内に秘めた恋心というか、激情を抑え込もうとする側面を強く感じさせるような演技になっていました。
以前の、「情熱のまま突っ走る」、「繊細なのに激しくてがむしゃら」「命つき果てても、最後には愛の高らかな勝利宣言で終わる」かのような印象の羽生ロミオは、やはり16~17歳当時だったからこその魅力。
原作のロミオと同じあの年に、あれを演じさせたコーチの判断は、素晴らしすぎます。
私はもともと、羽生選手を「王子様像」のようには見たことは全然なかったし、ただひたすら「すごい天才少年!」というイメージでいたのですが、ソチ五輪のEX白鳥も、今回のロミオも、すべりが滑らかになって動作がやや優雅になってある種の品を感じさせたせいか、あるいは、年齢的な見た目や体格も影響したのかわかりませんが、どちらかというと、白鳥やロミオというよりもは、まさに「どこかの国の戦う王子」のようなイメージが強く残りました。 (肩書きと根性は既に王子を超えて王者になっていますけど…。)
後半のステップ部分、優雅ながらも全力で演じてくれていて、それが「戦う」王子イメージにつながったかも。(腰と膝が大丈夫なのか気になりましたが…特に最後のビールマン。)
羽生選手は本当に「その時に出来るベスト」のものを、本当に全力で見せてくれる人だな・・・ と、改めて感心させられました。
ソチ五輪のエキシビションでもそうだったんですけれども、演技終了後の羽生選手のなんともいえない眼差しを見て、
やはり、震災のことやこれまでの様々な苦労その他を思い出しているのかな… と思いました。
でも、これで本当に、完結となりましたね。
未来に向けて、また新たな一歩を踏み出して頑張って欲しいです!
エキシビションのオープニングでは、女子優勝者の浅田選手との共演で、羽生選手はロミオ衣装でハイドロを披露してくれました!!
これはとても素敵な演出でした。
旧・ロミオ衣装でハイドロですよ!!(笑) 浅田選手のスピンも素敵です!
これは羽生選手の仙台時代のコーチ、阿部奈々美さんの演出だとのことです。
さすが、17歳までの羽生選手のコーチ、それまでの全プログラムや、旧ロミオとジュリエットのプログラムを印象的に振り付けしてきただけのことはあって、どこで何をどう羽生選手にやらせると観る側に効果的になるのか、本当にすごく良く解っていらっしゃるのだな…と、しみじみと感動!
テレビでは放映されなかったのが残念でしたね。 羽生選手は、以下の動画の、本当に最後のほうで出てきます。
(画面上に表示される多くのコメントを消して見るには、右下のセリフ吹き出しマークをクリック)
その後のテレビ出演などでは明るい笑顔に戻っていて、忙しそうだけどちょっと安心しました。
羽生選手自身、「金メダリスト」「王者」、というような一時的な肩書きよりも、まだまだ「挑戦者」状態を望んでいるようですし、
不動の最強アスリートを目指したいようです。
見た方も多いと思いますが、羽生選手の今の本音がよくわかる、松岡修造さんとの対談動画です。 ↓
http://www.youtube.com/watch?v=S4uRDlnAjsY
松岡修造さんと羽生選手の対談ではいつも思うのですが、「熱すぎるほど熱い男」で有名なはずの松岡さんが、
年齢を重ねて落ち着いてきたとはいえ、羽生選手と並ぶと、大して熱くないように見えるところが、怖いところです。(笑)
羽生選手の内側から、静かに、でも、激しく燃えている闘志の熱さが、それだけ凄いのか…。
この対談では、いつか絶対に言うことになるだろうなとずっと思っていた「(名前はゆづるだけど、)絶対に譲らない!」(笑)発言が、ついに出てきます。
松岡さんも、「名前からすると譲りやすい・・・?」 なんてわざわざ。(笑)
”3冠王者”の座も、そう簡単には譲らない強い覚悟で、羽生選手はいることでしょう。
羽生ファンには今さら言うまでもないですが、羽生選手の名前の平仮名表記は「ゆづる」であって、「ゆずる」ではありません。
英語だと、どちらも同じ「yuzuru 」表記になるので混同されやすいですが。
「結弦」の「弦」は、「つる」ですから。
弦はしなればしなるほど、折れるどころか、さらに強い勢いで跳ね返ってくるものです。 まさに羽生選手の性格そのもの!(笑)
「羽が生えたような演技」と呼ばれるその演技にマッチした印象的な苗字も合わせて、ご両親から、本当にすごい名前を頂きましたよね。
最初の頃は国際大会で「ハンユー(han・yu)」だの「アニュー(hを読まずに発音する言語国中心)」だの「ハニャ・ハンニャ(hanya)」だの(←日本語的には、これは失礼ですね…(笑))と、読み&書き間違えの多かったお名前も、ついにどこでも正確に読まれるようになってきて、めでたい限りです。
今後はもう間違えられることはないでしょう。
でも、さすがの羽生選手も、金メダリストになって、余計な苦悩を抱えたであろうことが、言葉の端々からうかがえました。
羽生ファンとしては、特に名誉毀損レベルの酷い記事や、羽生選手を貶める目的が見え隠れするもの、暴利むさぼり目的で羽生選手をただ都合よく利用しているようなもの、明らかに羽生選手本人が喜ばないだろうと感じさせるようなもの等には、振り回されたり、関わったりしないようにしたいものです。
日本にいる間は、外に出歩かずに、こもるようになってきたという羽生選手。
今日の状況を見るに、カナダが拠点で良かったと本当に思います。
この「逆境」さえも逆手に、上手く乗り切って益々飛躍してほしいですね。
羽生選手、身体が辛いであろう中、渾身の新・旧ロミオ演技を、本当にどうもありがとうございました!