𝓛𝓮 𝓖𝓻𝓪𝓷𝓭 𝓜𝓮𝓪𝓾𝓵𝓷𝓮𝓼
さすらいの青春(295)
—————————【295】——————————————
En ce lieu coulait une lumière si douce qu'on eût
cru pouvoir la goûter. Près de la première fenêtre,
une jeune fille cousait, le dos tourné, semblant atten-
dre son réveil ... Il n'avait pas eu la force de se
glisser hors de son lit pour marcher dans cette demeure
enchantée. Il s'était rendormi... Mais la prochaine fois,
il jurait bien de se lever. Demain matin, peut-être !...
———————————(訳)————————————————
そこでは光があまりにも甘く差し込むので、食べて味わ
うことができるんじゃないかと思えるほどだった.1つ目
の窓の近くに若い女がくるりと背中を向けて、縫物をして
いたが、その姿は、モーヌの目覚めを待っているようにも
思えた...彼にはベッドから飛び出して、その魅力的な館
の中を歩くために忍び入るほどの体力はなかった.モーヌ
は再び寝入った.しかし、その次には、ちゃんと起きる決
意をしていた.朝になったらきっと起きようと!...
..——————————《語句》——————————————
lieu:(m) 場所、ところ;
en ce lieu / ここでは、そこでは
coulait:(半過去3単) <couler (自) 流れる;
La Seine coule vers l'ouest. /
セーヌは西に向かって流れる
cousait:(半過去3単) <coudre (他) 縫う
tourné:向けて、曲げて、本文は「背中を曲げて」の解釈も
可能ですが、素直に「こちらに向けて」としたほうが
自然です.
réveil:(m) 目覚め
se glisser:(pr) 忍び込む [dans に]
hors de ~ :~の外に、~の外で、~を外れた;
Il a sauté hors du lit. / 彼はベッドの外に飛び出した.
Il a dîné hors de chez lui. / 彼は外で夕食をとった.
demeure:(f) 邸宅、屋敷、館(ヤカタ)、[文]住まい
enchanté(e):(形) ①非常にうれしい、②魔法にかけられた;
<enchanter (他) うっとりさせる、魅惑する
La chanteuse a enchanté l'auditoire. /
その歌手は聴衆を魅了した.
se rendormir:(pr) 再び眠る
jurait:(半過去3単) <jurer (他/自) 誓う、断言する
jurer de + 不定詞 ~する決意をする
———————— ≪仏文解釈≫ ——————————————
Il n'avait pas eu la force de se glisser hors de son lit
pour marcher dans cette demeure enchantée.
この部分が今回の難易度の高い文です.文中 marcher
があるので、「ベッドから飛び出して歩いていってその
館の中へ忍び込もうという力はなかった」と訳せば、
残念ながら100点はもらえません.
フランス語はドイツ語と違って前置詞が格支配しないので、
前置詞のあとが、場所なのか、運動の方向なのかが、明確
ではありません.
dans cette demeureをドイツ語に置き換えると
in dem Château (館で) とin das Château (館の中へ)
の二通りが出来上がります.
ですから、dans cette demeure には両方の意味解釈が可能
になってしまいます.そこでse glisser が先回りして、
「忍び込む」作業をさきに済ますようにして、忍び込み
の目的はpour 以下で表現させているわけです.
つまりここでのdans cette demeure はin das Château
に相当します.
縣題の文の訳は「この魅了する館の中を歩こうにも
彼にはベッドから起き上がって、忍び込む体力がすで
になかったのであった」
—————————— ≪文法≫ ——————————————
coudre はd が消えたりs が出没したりします.
意味は「縫う」.他動詞ですが目的語はしばしば
ありません.フランス語の他動詞は目的語を
かなり自由に省略させることができるので、
いちいちこれは自動詞、これは他動詞などと
区別しないでもいいかも知れません.という
か、基本的にはすべてが他動詞です.
coudre 直説法現在.....................coudre 直説法半過去
je couds........n. cousons..............je cousais.......n. cousions
tu couds........v cousez.................tu cousais.......v. cousiez
il coud......... ils cousent..............ils cousait.......ils cousaient
————————(調べ間違いの単語)—————————
せっかくなので、付けておきます.
demeure:(直現1,3単) <demeurer (自) [ドゥムーレ, demœre]
❶ (ある場所に) 留まる、残る
Il demeure toute la journée dans sa chambre.
彼は1日中部屋にこもっている.
❷ (同じ状態に)いる、…のままでいる
Elle est demeurée silencieuse toute la soirée.
彼女は一晩中黙っていた.
【反省】なんでもかんでも辞書を引きゃいいってもん
じゃない.単語を調べるときは、先にテキストを読ん
である程度、意味見当をつけてから辞書を引きましょう.
今回の場合、少なくとも品詞は動詞ではなく名詞であ
ることはdans cette demeure... を見れば明らかだったは
ず.【結論】相手をよく見て対処せよ.
子供にはキャンディー、大人にはワイン、なめくじに
は塩、鬼には柊、悪魔には十字架、お化けにはお経、ネ
コには鰹節、梅に鶯、ハーキュリーはオリンピア…
ところで、マイティー・ハーキュリーをご存じですか?
「オリンピアー」と叫んで帰ってゆくお兄さん.
ちなみにオリンピアOlynmpia はフランス語では
「オランピア」古代ギリシャの都市名です.