勝又壽良のワールドビュー
好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。
…
韓国は、妥協することを知らない社会だ。屁理屈をつけて敵味方に分かれ、自分の利益だけを主張して争うのである。その典型例が韓国の労資関係の悪化だ。
労働者のスト損失日数は日本の209倍にも達している。韓国労組は、些細なことでスト権を樹立してストを構える。スト権は、労組に認められた正当な権利である。
その濫用によって、韓国経済を蝕んでゆくのである。韓国企業は、すでに国外へ逃れて雇用を失う羽目になっている。
日韓対立も、この延長線にある。
韓国は、すぐに感情的になって対抗してくる。文大統領のように、「二度と日本に負けない」と段平を切ったが、現在は苦境に立たされている。「日本はかけがえのない大切な隣国」と歯の浮くようなお世辞を言って、日韓関係の融和を呼び掛けている
のだ。韓国に理性的な判断があれば、ここまで日本へお世辞を言わなくても済んだはずだ。
労使関係の悪化も、労組の理性的判断欠如がもたらした「国難」である。民族特性がもたらした落し穴と言うべきだろう。
『朝鮮日報』(12月7日付)は、「韓国の労働損失日数は日本の209倍、ドイツの10倍」と題する記事を掲載した。
韓国の争議行為(ストなどの集団行動)による労働損失日数が、主要先進国に比べてはるかに多いことが分かった。
韓国経済研究院(韓経研)は7日、韓国とG5(米国、日本、ドイツ、英国、フランス)の2008年から18年までの10年間の労使関係指標を分析した結果を発表した。
(1)「調査期間の「賃金労働者1000人当たりの年平均労働損失日数」は、韓国が41.8日、日本が0.2日、ドイツが4.3日、米国が6.7、英国が19.5日、フランスが40.0日だった。
韓国の労働損失日数は日本の209倍、ドイツの9.7倍、米国の6.2倍、英国の2.1倍に達する。韓経研は、韓国で労使紛争による労働損失日数が多いことについて、労使関係に対する国際機関の評価と相通じるものがあると分析した」
日本の年平均労働損失日数が、0.2日と飛び抜けて短いのも問題である。日本では事実上、ストがない状態だ。
これは、日本の平均賃金水準を引下げている大きな理由である。最近の日本経済分析では、個人消費の伸び悩みを指摘している。
それは、賃金水準が低い結果だ。韓国のようにストをやれとは言わぬが、ドイツ並みのストをする必要がある。
労組のスト自粛は、企業の内部留保を貯めるだけという弊害もある。日本の労組は、ドイツ並みのストを構えて、経営陣に緊張感を与える必要があろう。
(2)「世界経済フォーラム(WEF)による2019年の労使協力水準に対する評価で、韓国は141か国・地域のうち130位にとどまった。日本(5位)、米国(21位)、英国(24位)、ドイツ(30位)、フランス(92位)とは大きな差がある。
労働市場の競争力を総合的に評価するWEFの労働市場柔軟性評価でも、韓国は97位で米国(3位)、日本(11位)、英国(14位)、ドイツ(19位)、フランス(35位)に大きく水をあけられた」
WEFによる2019年の労使協力水準は、韓国が130位である。これは、韓国の労使関係の悪化を端的に示している。
「屁理屈をつけて敵味方に分かれ、自分の利益だけを主張して争う」結果である。これに、拍車を掛けているのが文政権である。労働市場改革とは逆であり、規制を増やして企業の自由度を奪っている。私の持論であるが、韓国経済は確実に衰退コースに嵌り込んだ。
(3)「過去10年間の平均労働組合加入率はフランスが8.9%、韓国が10.4%、米国が11.3%、日本が17.7%、ドイツが17.9%、英国が25.4%の順で、韓国は2番目に低かった。
しかし、労働組合加入率の10年間の推移を見ると、韓国は08年の10.5%から18年には11.8%と1.3ポイント上昇し、最も上昇率が高かった。
とくに18年の1年だけで1.1ポイント増加した。韓経研は「労組の社会的影響力の増大が労組加入者の増加につながった」と分析した。08年に比べ18年に労組加入率が増加した国は韓国のほかにはフランス(0.3ポイント)だけだった。それ以外の国は労組加入率が減少した」
韓国の労組加入率が10.4%と低いのは、組織労働者が大企業だけしか存在できないからだ。中小企業に労組が結成されないのは、労組の生産性を上回る高賃金要求に企業が耐えられない結果である。
つまり、韓国で高額賃上げ闘争に耐えられる企業は、寡占大企業しか存在できない異常な構造が原因である。
韓国経済の歪みは深刻だ。文政権には、そういう認識はゼロであり、さらに労働市場を規制しようとしている。
(4)「韓経研は、制度的な影響で韓国の労使協力や労働市場の柔軟性の評価が低かったと分析した。韓経研は「ほかの先進諸国とは異なり、韓国はストライキのときの代替労働を禁止し、事業場内での争議行為を部分的に認めている」として「不当労働行為について会社側だけを規制しているのに加え、刑事処罰まで科しているため、労使のバランスが悪く、労働者側に有利になっている」と指摘した」
労働者一人一人は弱者であるが、労組の結成で企業を上回る対抗力を身につける。
韓国政府は、労組による「集団権力」の過剰行使が、韓国経済を左前に追込む危険性を察知しなければならない。
それ故、労働市場の規制強化は諸刃の剣になる。韓国は、すでにその状態に入っている。企業の労働搾取は許せないが、労組の企業収益圧迫も異常である。生産性向上に見合った賃上げが理想型である。
好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。
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韓国は、妥協することを知らない社会だ。屁理屈をつけて敵味方に分かれ、自分の利益だけを主張して争うのである。その典型例が韓国の労資関係の悪化だ。
労働者のスト損失日数は日本の209倍にも達している。韓国労組は、些細なことでスト権を樹立してストを構える。スト権は、労組に認められた正当な権利である。
その濫用によって、韓国経済を蝕んでゆくのである。韓国企業は、すでに国外へ逃れて雇用を失う羽目になっている。
日韓対立も、この延長線にある。
韓国は、すぐに感情的になって対抗してくる。文大統領のように、「二度と日本に負けない」と段平を切ったが、現在は苦境に立たされている。「日本はかけがえのない大切な隣国」と歯の浮くようなお世辞を言って、日韓関係の融和を呼び掛けている
のだ。韓国に理性的な判断があれば、ここまで日本へお世辞を言わなくても済んだはずだ。
労使関係の悪化も、労組の理性的判断欠如がもたらした「国難」である。民族特性がもたらした落し穴と言うべきだろう。
『朝鮮日報』(12月7日付)は、「韓国の労働損失日数は日本の209倍、ドイツの10倍」と題する記事を掲載した。
韓国の争議行為(ストなどの集団行動)による労働損失日数が、主要先進国に比べてはるかに多いことが分かった。
韓国経済研究院(韓経研)は7日、韓国とG5(米国、日本、ドイツ、英国、フランス)の2008年から18年までの10年間の労使関係指標を分析した結果を発表した。
(1)「調査期間の「賃金労働者1000人当たりの年平均労働損失日数」は、韓国が41.8日、日本が0.2日、ドイツが4.3日、米国が6.7、英国が19.5日、フランスが40.0日だった。
韓国の労働損失日数は日本の209倍、ドイツの9.7倍、米国の6.2倍、英国の2.1倍に達する。韓経研は、韓国で労使紛争による労働損失日数が多いことについて、労使関係に対する国際機関の評価と相通じるものがあると分析した」
日本の年平均労働損失日数が、0.2日と飛び抜けて短いのも問題である。日本では事実上、ストがない状態だ。
これは、日本の平均賃金水準を引下げている大きな理由である。最近の日本経済分析では、個人消費の伸び悩みを指摘している。
それは、賃金水準が低い結果だ。韓国のようにストをやれとは言わぬが、ドイツ並みのストをする必要がある。
労組のスト自粛は、企業の内部留保を貯めるだけという弊害もある。日本の労組は、ドイツ並みのストを構えて、経営陣に緊張感を与える必要があろう。
(2)「世界経済フォーラム(WEF)による2019年の労使協力水準に対する評価で、韓国は141か国・地域のうち130位にとどまった。日本(5位)、米国(21位)、英国(24位)、ドイツ(30位)、フランス(92位)とは大きな差がある。
労働市場の競争力を総合的に評価するWEFの労働市場柔軟性評価でも、韓国は97位で米国(3位)、日本(11位)、英国(14位)、ドイツ(19位)、フランス(35位)に大きく水をあけられた」
WEFによる2019年の労使協力水準は、韓国が130位である。これは、韓国の労使関係の悪化を端的に示している。
「屁理屈をつけて敵味方に分かれ、自分の利益だけを主張して争う」結果である。これに、拍車を掛けているのが文政権である。労働市場改革とは逆であり、規制を増やして企業の自由度を奪っている。私の持論であるが、韓国経済は確実に衰退コースに嵌り込んだ。
(3)「過去10年間の平均労働組合加入率はフランスが8.9%、韓国が10.4%、米国が11.3%、日本が17.7%、ドイツが17.9%、英国が25.4%の順で、韓国は2番目に低かった。
しかし、労働組合加入率の10年間の推移を見ると、韓国は08年の10.5%から18年には11.8%と1.3ポイント上昇し、最も上昇率が高かった。
とくに18年の1年だけで1.1ポイント増加した。韓経研は「労組の社会的影響力の増大が労組加入者の増加につながった」と分析した。08年に比べ18年に労組加入率が増加した国は韓国のほかにはフランス(0.3ポイント)だけだった。それ以外の国は労組加入率が減少した」
韓国の労組加入率が10.4%と低いのは、組織労働者が大企業だけしか存在できないからだ。中小企業に労組が結成されないのは、労組の生産性を上回る高賃金要求に企業が耐えられない結果である。
つまり、韓国で高額賃上げ闘争に耐えられる企業は、寡占大企業しか存在できない異常な構造が原因である。
韓国経済の歪みは深刻だ。文政権には、そういう認識はゼロであり、さらに労働市場を規制しようとしている。
(4)「韓経研は、制度的な影響で韓国の労使協力や労働市場の柔軟性の評価が低かったと分析した。韓経研は「ほかの先進諸国とは異なり、韓国はストライキのときの代替労働を禁止し、事業場内での争議行為を部分的に認めている」として「不当労働行為について会社側だけを規制しているのに加え、刑事処罰まで科しているため、労使のバランスが悪く、労働者側に有利になっている」と指摘した」
労働者一人一人は弱者であるが、労組の結成で企業を上回る対抗力を身につける。
韓国政府は、労組による「集団権力」の過剰行使が、韓国経済を左前に追込む危険性を察知しなければならない。
それ故、労働市場の規制強化は諸刃の剣になる。韓国は、すでにその状態に入っている。企業の労働搾取は許せないが、労組の企業収益圧迫も異常である。生産性向上に見合った賃上げが理想型である。