文在寅が青ざめる…韓国経済がいよいよ「ピンチ」を迎えているワケ
真壁 昭夫(法政大学大学院教授)
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輸出が激減
足元で、新型コロナウイルスの感染再拡大が韓国経済の先行き不透明感を高めている。
特に、韓国の経済成長をけん引してきた輸出への負の影響は軽視できない。
今年3月以降、世界全体でコロナ感染が拡大し、多くの国でロックダウン=都市封鎖などの移動制限が行われた。
その結果、3月から8月まで韓国の輸出は前年同月の実績を下回った。
人の移動が制限されると需要は低迷し、基本的に世界の貿易取引は減少する。
10月以降、米国では感染の第3波、欧州では第2波が発生し、移動制限が強化された。
韓国同様に輸出依存度の高いドイツでは非製造業の景況感が悪化に転じ、景気の先行き懸念が高まっている。
11月の韓国の輸出は2か月ぶりに増加したが、感染再拡大が韓国の輸出に与えるマイナスの影響は過小評価できない。
感染の再拡大以外にも、韓国経済の不確定要素は増大している。
韓国にとって最大の輸出先である中国は経済成長の限界を迎えつつある。
それに加えて、国際市場における韓国企業の競争力低下も懸念される。
法相と検察総長の対立に加え、経済の先行き不透明感が高まっていることも、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率が過去最低に低下した一因だろう。
懸念高まる輸出主導型の韓国経済の運営
韓国企業の競争力低下懸念やウォン高の影響
それに加えて、韓国企業の競争力が低下していることも見逃せない。
その一つとして、現代自動車はリコールへの対応が遅れ、米国当局から制裁金を課された。
それは、同社のブランドイメージを悪化させる。
対照的に、文政権がわが国に対して強硬な姿勢をとってきたにもかかわらず、足許の韓国ではトヨタのレクサスブランドの販売が回復している。
それは、日韓自動車産業の技術力の差を確認する良い材料といえる。
サムスン電子の先行きも楽観できない。
世界の半導体産業では設計開発と生産の切り離しが進む。
米国の半導体企業は台湾のTSMCに製造を委託し、ソフトウェア面での競争力向上に注力している。
TSMCは5ナノの最先端の製造ラインに加え、柔軟に顧客の要望に対応する生産体制を整えて米国企業との関係を強化し、受託製造分野でのシェアを高めている。
その一方で、サムスン電子は半導体の開発に加えて受託製造事業の強化も重視している。
コロナショックを境に世界経済のデジタル化(DX)が加速していることを考えると、加速化する変化への対応という点で、米国や台湾企業のビジネスモデルの方がサムスン電子よりも有利だ。
また、製造技術面で韓国はTSMCの後塵を拝していると指摘する半導体の専門家もいる。
外国為替市場では米国の財政支出増加や金融緩和強化の観測がドルを減価させ、ウォン高が鮮明だ。
輸出依存度の高い韓国経済にとって、ウォン高のインパクトは大きい。
世界経済の回復に欠かせないワクチンに関しても、安全性や供給への不安がある。
輸出を中心に韓国経済の不安定感は高まりやすい。
そうした状況下、韓国の社会心理が追加的に悪化し、文大統領の政策運営が一段と難しい局面を迎える展開は否定できない。
真壁 昭夫(法政大学大学院教授)